発達障害 障害者雇用の就活・仕事・配慮・給与・キャリア

増えつつある発達障害の方の障害者雇用を解説
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発達障害*の診断だけだと障害者手帳が出ないというのは今や昔の話です。診断後速やかに障害者手帳を申請する人が増えています。障害者手帳を取得すると障害者枠で働くという道が選べるようになります。しかし障害者雇用での就職活動は謎が多いもの。給与や昇給、仕事の種類、受けられる配慮、キャリアでの注意点など、賢く就職活動を進めるために知っておいて欲しいポイントをまとめました。

障害者雇用で働く場合の仕事内容は?

障害者雇用は主に3つの仕事に分かれます。1つ目が「事務補助」。2つ目が「専門職」。3つ目が「軽作業」です。ただし事務補助と専門職を組み合わせたようなものや、事務補助と軽作業を合わせたようなものも数多くあります。発達障害の方の場合もこの3つの組み合わせであることが多いでしょう。

事務補助は経理や総務、人事などの部署で業務を行います。一般雇用の社員が行う資料の準備をしたり、簡単な電話の取次をしたり、数字や文字のPC入力・確認作業をしたり、資料やデータをファイリングしたりデータベースに整えたり、といった業務になります。PCに向かって業務を行うことが多く、接客や打ち合わせなどの業務は外れたり、少なかったりという配慮を受けることが多いでしょう。

専門職は主にITやデザインの分野になるでしょう。ITでは社内SEやネットワークのヘルプデスク、機材の管理者としての役割を担う場合が多いようです。細かいことを追い求める人は専門職では経理(税理士、簿記)の経験があったり、法律やISOなどの規格に明るいと業務の深さがより専門的になります。統計ソフトなどを使いこなせる人はデータ分析を任せられることも多いでしょう。事務補助とも言えますが、Excelのマクロやクラウド上のアプリケーションを使って業務の効率化を任される人もいます。

軽作業はビル内の配達物(メール室勤務)、トナーなどの備品の補充、印刷や製本、片付け・清掃など手先や身体を使う作業が多くなります。夏は熱く冬は寒い外気にさらされた業務も考えられますが、最近はある程度空調のきいた倉庫内での作業や、あるいはビル内でのメンテナンス業務なども障害者雇用を支える軽作業として広まってきています。

障害者雇用の職域拡大の動きは活発です。SEやウェブデザイナーなど専門職の採用が増えたり、そもそも職種を固定せずにその方が力を発揮できる職種に合わせますという求人も出てきています。あるいは障害者雇用のグループリーダーといった管理職に近い業務も見られるようになりました。障害者雇用だから出来ないという職種は徐々に少なくなっていくでしょう。

給与レベルは?昇給は?正社員は可能?

発達障害の人向けの障害者雇用は確かに大きく広がっている印象があります。一部ではありますが発達障害の人の力に気付き始めた企業が出てきていることと、雇われている当事者たちが力を発揮して、発達障害の人のプラスのイメージをしっかりと企業内に浸透させ、次も発達障害の人を雇おうという好循環が生まれています。

実際当社の訓練生の就職までの期間は7か月ぐらい。給与も一般枠とあまり変わらない月額15万円~が多く、20万円を超える方もいらっしゃいます。就職していく人の多くは経歴もそれほどありませんし、資格もほとんどありません。誰でもチャンスがあるのが障害者雇用と言えます。

一方で障害者雇用の難しさは、昇給がなかなかないところです。もちろん少しずつ(月給が数百円上がるなど)はあるようですが、大きく上がることは珍しいケースです。というのも、障害者雇用は同じような業務を数年後も10数年後も行うということを前提にしている企業が多く、一般枠のように権限や責任が大きくなり昇給していくということが考えにくいためです。

残念ながらはじめから正社員になれる求人は少なめです。これは障害者雇用自体が離職率が高く、25%程度の人が1年以内に辞めていってしまうため、企業の側としても当初から正規社員にするのがリスクが高い背景があります。とはいえ、はじめは契約社員であっても、3年から5年後に正社員登用の制度を持っている企業は多く、最終的には安定した雇用形態で働けている人が多くなっていくのも、障害者雇用の特徴と言えます。

障害者雇用だと得られる配慮は?

実は障害者雇用だから得られる配慮というものはありません。一般雇用であっても事業主側が認めれば様々な配慮を受けられます。特に2016年度からは合理的配慮の概念が法令に導入され、障害が認められれば誰でも事業主に配慮を求めることが出来るようになりました。

ただし実際のところは障害者雇用促進法によって政策として進められている障害者雇用のほうが人員や助成金などの面で手厚い支援が受けられるのが一般的です。具体的には、上司を固定してもらう、指示系統が一つである、などの人的な面。業務指示を口頭だけでなく文書でもらえる、担当業務を限定してもらえる、苦手な業務については避けるように相談が出来る、など業務面。治具・補助具、IT・ツールの導入で障害特性の苦手さを補う、などハード・ソフト面。仮眠や時差通勤、時短など精神・体力面へのケアなどがありえます。

キャリアチェンジは可能?

これまでは障害者雇用というと一つの企業で勤め上げるということが多かったようですが、最近ではキャリアアップのために転職されることが多いようです。その際、違う業種や違う職種に転じることも一般枠に比べると割合に容易ということがあげられます。

つまり、一般枠では30歳前後になると、同じ業種で、同じ職種でないと、転職がしづらいですが、障害者雇用の場合は、事務の経験がなくても、年齢が高くても、事務職に初めて就くというようなことが比較的に可能性が高いのが実際です。

一つ注意したいのは、障害者雇用では選考に実習が多いことです。在職のまま転職活動をする際は面接だけで内定を出してくれるところを探す必要があるでしょう。あるいは最近増え始めた発達障害の転職エージェントを活用するのも一案です。

障害者雇用の就活は何か特別な準備が必要?

障害者雇用の就活で特別なことは、自分の障害特性をきちんと理解しているか、またそれについての自分の対策と周囲に求める配慮を適切に伝えられるかの2点です。障害者雇用は「マイナス面がマイナス面でないか」ということを伝える場になります。一方で志望動機や業界研究などは不要とは言いませんが、一般枠の採用試験ほど重視されません。残念ながらまだまだプラス面を見てくれる会社は少なめです。

企業での実習が主要なプロセスとなっている点が障害者雇用の就活の特徴です。つまり面接や筆記試験だけで評価されるわけではありません。1週間ほど企業の中で体験実習をすることで、どの業務が得意か、どのような配慮が必要かをお互いにすり合わせていくことができます。この企業実習は無償で行われることが一般的です。

発達障害の方は面接が苦手な方が多いですので、障害者雇用で実習が重視されているというのはプラスに働くことが多いようです。ただし実習はすべての企業で必須とされているわけではありません。面接だけで選考プロセスが終了(つまり内定)ということもありますので、それぞれの企業の選考情報を事前によく確認しましょう。

障害者手帳に必要な障害程度は?

障害者手帳を取得する時に「診断名」は実はポイントではありません。重要なのは「障害によって制約を受けているか?」です。制約には2種類あります。一つは生活面での制約です。例えばトイレに行くのに介助が必要であるなどです。もう一つが社会面での制約です。これには就職活動や働くために一定の配慮を受ける必要がある、ということも当てはまります。

障害者手帳を申請する時は、上記のポイントを医師が意見書にしたため、申請を受けた行政が審査します。このため診断名や障害の程度が見えやすいかというよりも、社会的な制約を受けているか、それが障害特性に由来しているかというところがポイントになります。たしかに医師によっては「あなたは軽度だから障害者手帳は出ない」ということもあるかもしれません。しかし正しくは「あなたは社会的制約を受けていないと思うから、障害者手帳の申請書は書けない」となります。社会的な制約をどう考えるかは医師によって異なることが通常ですので、医師を変えて手帳の手続きを続けることは珍しいことではありません。

【参考】発達障害と障害者手帳

障害者手帳の申請や障害者雇用の現状については、経験者の声を聴くことをお勧めしています。当社では「ようこそ先輩」という、修了生の話を聞く場を設けています。ほぼ週に1人のペースで登壇してもらっています。そこでは30分~1時間ほどかけて体験談を伺っています。なかなか同じような境遇の人の就活・就業・転職状況を聞くことはないので好評です。

【参考】大人の発達障害 就職活動 体験記

他の障害特性と比べて発達障害は障害者雇用の就活で有利?

障害者雇用ではまだまだ身体障害者が有利です。具体的な数字があるわけではありませんが、当社の現場感覚では9割を超える企業が身体に障害のある人の採用を第一に考えています。精神障害や発達障害、知的障害の人は身体障害の人が雇用できない時の次善の策と考えているところがほとんどと言えます。

発達障害のメリットは、勤怠が強い(つまり仕事を欠勤することが少ない)人たちが多い点です。他の障害種別に比べて1~2割ほど定着率が高いことからも安定した勤怠が強みであることが伺えます。またご本人の特性の凸凹と業務内容やオフィス環境がフィットすると高い成果を上げられるところもプラス面です。このようなところが広まれば、今後企業から魅力を理解してもらえる可能性もあります。

【参考】障害者の就業状況等に関する調査研究

ただし、気持ちのサポートを求める精神障害とはちがって、先天的な脳の違いで情報処理の仕方が違う発達障害の場合は、”多数派”(発達障害ではない企業人事)からは理解しづらく、敬遠されてしまうこともあります。特性や配慮がわかりにくい、それだったらやはり身体障害者や知的障害者、精神障害者を雇う方がやりやすい、と思われかねないということです。

このため、行政などを中心に企業に発達障害の人をわかってもらうための啓発が行われています。「発達障害でも採用しよう」ではなく、「発達障害だから採用しよう」という枠が増えてきています。一度わかればこれほど素直な人はいない(あまりにも嘘をつかなすぎるのですが…)というのが実感ですので、徐々に理解の輪が広がっていくでしょう。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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