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合理的配慮とは 大学編発達障害のある大学生・院生の入試・学業・就活を合理的配慮の観点から考えます大学

 発達障害のある学生が急増しています。今まで明確な指針が少なかった大学・大学院や専門学校でも取り組みが求められるようになりました。特に「合理的配慮」は、今学校や職場など様々な現場でキーワードとなっています。ここでは大学などの高等教育機関において ▽どのように合理的配慮を求めていくのか ▽具体的な配慮の内容は? ▽配慮で解決する部分と解決しない部分 などを中心に、議論まっただ中の話題を解説していきます。

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  1. “合理的配慮” 国際・歴史的な背景
  2. 合理的配慮の肝 ”当事者自身”が”自分の権利”を主張
  3. 大学等に合理的配慮を求めるには?
  4. 配慮・支援の種類や具体例

1. ”合理的配慮” 国際・歴史的な背景

 2016年4月に「障害者差別解消法」が施行されました。これにより、障害を理由とする不当な差別的取り扱いの禁止や合理的配慮が求められるようになりました。元々は2006年に国連総会で「障害者権利条約」が採択されたことに端を発します。大げさに言いますと「合理的配慮」という国際的な概念に合わせるために日本の法律・条例が大きく変化しつつあるのです。そもそも「合理的配慮」というのは何者なのでしょうか?なにが今までと違うのでしょうか?合理的配慮を理解するには①当事者自身②自分の権利を主張するという二つのポイントがあります。

【参照】障害を理由とする差別の解消の推進(内閣府)

2. 合理的配慮の肝 ”当事者自身”が”自分の権利”を主張

 まずこれまでの法律は障害をどのように捉えていたのでしょうか?誤解を恐れずにお伝えすると、障害というものを「こういうことに困っているはず」と大きく考えて、その障害の広い概念に対応するように、住む場所や通う場所の建物の要件を決めたり、そこでの支援の在り方について定めたりしていました。つまり、一人一人のニーズというよりも、国が先回りして(推しはかって)障害を定義していたということになります。

出来合いのものからオーダーメイドの配慮へ でも過重な負担のバランスが必須

 ところが米国発の概念である「合理的配慮」はまったく逆のアプローチです。つまり国が先に障害を定義しすぎることはせず、一人一人の困り感は違うのだから個人個人に「自分はこれが苦手なのでこう配慮してほしい」という発信をしてもらい、それに対して各機関が対応できるかを考えましょう、という概念となります。障害に対する配慮が、障害のある多くの人にフィットする「出来合いのもの」ではなく、個人に合う「オーダーメイドの支援」となったわけです。このため、どこかに行って自分に合う支援を探すというよりも、それぞれの場所で自分からニーズを伝える必要が出ていました。

 ただし、自分からニーズを伝えたとしても、すべてが受け入れられるわけではありません。例えば、受け入れ側が、経済的に負担があまりにも重たい、支援者の配置がどう頑張ってもできない、などの「過重な負担」がない限りにおいて、配慮が認められるということになっています。この「過重な負担」をどの範囲にするかはまだまだこれからの社会での実際の例をもとに適切な例が決められていくかもしれませんが、可能な限り広く解釈されることが条約・法律の精神上も求められていることは言うまでもありません。

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配慮内容ではなく、配慮要求のプロセスの変化

 つまり「配慮内容が変わる」わけではなく、「配慮を求める過程(プロセス)が変わる」(より正確には今まではっきりしていなかった配慮要求のプロセスが明確化される)ということとなります。まとめますとオーダーメイド型の支援・配慮を求めていく過程では以下の2点がポイントとなります。

  1. 自分から声を上げることが原則で、周囲が慮って行動してくれるわけでは必ずしもない
  2. 過重な負担でないかが受け入れ可否の基準であり、すべてが受け入れられるわけではない

 これまでの受け身の支援が前提となっていた状況とは大きく異なることがお分かりいただけましたでしょうか。お気を付けいただきたいのが、事業者や大学などは障害のある人が声を上げるまで何もしなくてもよい訳ではないということです。当たり前に広く予想されるものは事前に配慮する必要は今まで通り。あくまで基礎的な配慮は事前にされることは前提です。その上で、各人に合わせた配慮を受けるために、障害のある人が能動的に権利を主張(権利擁護)することが求められます。

対話とモニタリングが重要

 すでにご説明した通り、配慮要求をしてもすべてが認められるわけではありません。「過重な負担」になるかどうかが基準になるからです。ここで重要なのが建設的対話の概念です。要求して拒否されて終了、というわけではなく、ご本人・大学側のお互いの状況をよく考え、どのようにしたらより良い配慮ができるのか、学ぶ権利を守れるのかを、両者が真摯に検討していくことが求められます。

 また特に発達障害の困り感は周囲の環境や取り組む課題によっても大きく変化します。決定された内容が過度になりすぎていないか、新たに加えたり修正するべき点はないかなど、継続的にモニタリングを行うことが必要ですので、大学の担当者とは定期的に連絡を取り合うことが必要です。

【参考】大人の発達障害者向けの職業訓練・就活支援
【参考】発達障害(疑い含む)のある大学生・専門学校生向け”ガクプロ”
【参考】見学/相談/利用希望の方は ”ご利用説明会”へ

3. 大学等に合理的配慮を求めるには?

 では大学等に合理的配慮を求めるにはどのような手順があるのでしょうか?実はまだその指針が文科省から明確に示されつつある中途の段階で、各大学でまだ温度差がありますので、どの大学でも通用する共通の手順はまだありません。しかし、大学では学長等の経営トップを含む教職員全員が合理的配慮について理解することが不可欠であることが国の指針には明記される見込みであり、窓口や専門委員会が設置されることが求められているほか、専門スタッフを養成し配置することも期待されています。

 ここでは①窓口探し、②根拠資料・情報、③自らの”障害受容”と”申し出”、④保護者の関与、⑤そのほか(紛争解決等)に分けてプロセスをご案内します。

①窓口探し

 合理的配慮を受け付ける窓口はウェブサイトなどで社会に向けて情報公開することが大学側に期待されています。ですので入学前から障害学生の対応窓口を探すことができる大学が今後広がっていくと思われます。ただ実際は膨大なウェブサイトの情報の中から見つけ出すことは難しいかもしれません。学生課や併設のカウンセリングルーム、学内の保健センターなど学生本人や保護者がつながった機関の職員にその大学の窓口を聞き、対話を開始することが良いでしょう。

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②根拠資料・情報

 合理的配慮を求めるためには根拠が必要です。根拠としては大きく2種類。障害があることの証明と、これまでの配慮・支援の実績です。まずは障害があることの証明についてですが、具体例としては障害者手帳(種類や等級)医師の意見書が挙げられるでしょう。またこれまでの配慮・支援の実績としては高校などの大学入学前の支援状況に関する資料が挙げられます。もちろんこうしたものがすぐに用意できないかもしれませんので、大学自体に学生の困難性をアセスメントする力があることが理想です。またご家族としては幼いころからの記録を保管しておくことが、要望をスムーズに聞いてもらいやすくなる大事なポイントとなるでしょう。

③自らの”障害受容”と”申し出”

 窓口を探して、根拠資料を用意して、○○や△△の支援をしてほしいという内容を決めたとします。しかし、合理的配慮の申し出は原則学生本人が行う必要があります。発達障害のある大学生にはこの「自ら申し出」が壁になる可能性があります。というのも、発達障害のある大学生では、まだご自身の障害特性を十分に理解していないことが多く、「ちょっと頑張れば大丈夫」「自分は普通だから特別扱いは不要」と、ご本人が頑なに支援を拒否するケースがあるからです。周囲から見ると明らかに困っているが、いわゆる”障害受容”ができていないため、差し出される支援の手を取れない状態です。

 決して障害を認めることを踏み絵のように強いているわけではありません。自分の不得意を受け止め、配慮してもらうことで、自分の良さがより活きるというポジティブな考え方に、大学に進学するまでにご自身が成長している必要があるわけです。客観視が苦手な発達障害の特性を考えると、18歳で自らの状態を理解し、支援を求めるのは難しいなと思われる方が多いと思います。しかしながら、これからの教育・職場では合理的配慮の概念が広まってきますので、自らの良い意味での障害受容と、自分の権利を自分で守り配慮を求めていく姿勢は、強調してもしきれないほど必要なの力になります。米国ではセルフ・アドボカシー(Self Advocacy)という考え方で教育現場で浸透しています。発達障害の傾向があるからこそ、自らが権利擁護する主体となる人になってもらう必要があるわけです。

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④保護者の関与

 合理的配慮を要求するときに、保護者は関与できないのでしょうか?答えとしては限定的に認められるであろうということです。当事者自らが申し出ることが前提ではありますが、発達障害の学生は自らの困り感があり意思表明をしたいと思っていても上手に言語化できなかったり、具体的な要望がまとめられなかったり、という状況が大いに予想されます。この際に、ご本人の意思表明を補佐したり促したりする役割で保護者が関与するのは可能でしょう。また医療や福祉の支援者の関与も否定されるものではありません。しかしながら、あくまでご本人が求める時という前提はあります。ご本人が合理的配慮を拒否しているときに保護者の思いや価値観を押し付けて、支援事項を要求することはできません。

⑤そのほか(紛争解決等)

 建設的対話が重要な合理的配慮ですが、話し合いでなかなか結論が出ず、大学側の対応に不服がある場合は紛争解決のための第三者機関等での調停になります。合理的配慮の対話で調停になるのは稀かもしれませんが、そもそも大学側から不当な差別的扱いを受けた時にも紛争解決のための調停が行われることになっています。不当な差別的扱いとは「正当な理由なく障害を理由として学習機会などを奪われる、あるいは制限されるような扱い」を言います。不当な差別的取り扱いについてはこの記事では詳しく解説しませんが、今回障害者差別解消法での大事な概念の一つです。

4. 配慮・支援の種類や具体例

 最後に大学での配慮の具体例を見てみましょう。参考にしたのは(独)日本学生支援機構が2015年にまとめた「実態調査分析報告」です。

【参考】大学、短期大学および高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査分析報告 (2015年3月 独立行政法人 日本学生支援機構)

入学試験での配慮

 発達障害学生について多いほうから並べています。2013年度の調査となります。

  • 別室を設定
  • 文書による伝達
  • 試験時間の延長
  • チェック解答
  • トイレに隣接する試験室に指定

 特別措置には「拡大問題・解答用紙の準備」、「パソコンなどの持参使用」なども項目としてありますが、データによると実施例はゼロであり、今後の対応が求められる部分でしょう。ただしこれも前述のとおり、高校までの時点で明確に同じような配慮がされていることが、入試時点の配慮になることが多く、そのような”実績”がない場合は認められないことが多いと思われます。

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学業の支援

 大学生の本分である修学についての配慮、支援事例です。当たり前かもしれませんが、あくまで学ぶ権利を守るということであり、点数のかさ上げや、卒業要件の緩和などを求めることはできません。他の学生と同じ条件、同じ機会を与えるというのが合理的配慮の考え方であり、障害の有無に限らずある学生を有利にするということは教育・アカデミズムの趣旨に反するからです。以下2013年での調査です。

  • 注意事項など文書伝達
  • 実技・実習配慮
  • 休憩室の確保
  • 教室内座席配慮
  • 講義内容録音許可
  • 試験時間延長・別室受験

 やや古い調査だからかもしれませんが、「解答方法配慮」や「パソコンの持込使用許可(ほかの学生が許されていない環境での許可)」は低い実施率です。

授業”以外”の支援

 同じ実態調査分析報告から、今度は授業以外の大学生活面を含めた支援を見てみましょう。こちらも実施率が高い順から並んでいます。

  • 保護者との連携
  • 学習指導
  • 専門家によるカウンセリング
  • 社会的スキル指導
  • 進路・就職指導

 発達障害支援センターとの連携、出身校との連携、といった項目は低い状態です。合理的配慮が進むと、一人一人に専門の配慮が必要になるため大学だけでは対応が難しくなることが予想されています。より支援実績のある大学との大学同士の連携や、大学の周辺の社会資源(ハローワーク、医療、福祉事業所等)との連携がとても重要になると思われます。

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