「配慮のある一般枠? 給与の高い障害枠?」 発達障害のある”在職者”も意識したサービスを!

Kaienマンスリーレポート2017年6月
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Kaien横浜の石川です。当社の就労移行支援利用者の就職実績と、発達障害*のある人の就職トレンドを毎月お伝えしている「Kaienマンスリーレポート」。今回は6月分のデータをもとにお話ししていきます。

6月の就職者数は13名、月給平均は19万円を超えました

6月の就職者数は13名でした。おめでとうございます!

当社の求人紹介での就職が8名、ハローワーク経由が3名、その他が2名でした。6月の就職者数は前年の同月と同じでしたが、相変わらず就職のペースは早いです。今年も折り返しの現時点で就職者数はすでに134人。去年の同時期に比べ1.6倍となっています。

就職者数の伸びもさることながら、6月は月給20万円以上が5人と、従来の当社の平均よりも高い方が多かったです。また、専門職につかれた方が3人いらっしゃいました。中には公認会計士の資格を持ち、月給25万円以上で監査法人に一般枠で入社された方もいます。しかも、ご自身の発達障害を開示し、必要な配慮を認めていただいた上での入社とのこと。今はまだちょっと特殊なケースかもしれませんが、今後はこうした方も継続して出てくることがひとつの理想ではないかと当社では考えています。

ただ現状では、こうしたケースが広がるのはまだ難しいです。一般枠と障害枠で働くことのメリット・デメリットは当社ウェブサイトでもたびたび触れてきましたが、やはり一般枠で働くとなると、幅広い仕事に対応できること、それにともない責任も増すことなどに加え、会社都合による残業や休日出勤などもあります。企業が一定の配慮の必要性を受け入れてでも「ぜひほしい」人であり、かつご本人に「特性による苦手さを克服する努力」は求められるといえます。

一般枠から障害枠へのためらいは

「配慮を受けつつお給料も高いほうがいい」というのは誰しも思うことでしょう。当社のウェブサイトへのアクセスのうち、およそ3分の1が在職中の方からのものです。おそらく今の職場で働きにくさを感じていて、それが発達障害と関係があるかもしれないと考えておられる方です。ただ実際に離職してまで就労移行をご利用にいたるケースはまだそんなに多くはありません。

そこには、障害を受容し「障害枠」で働いた場合、これまでの給与水準や待遇のレベルが大きく下がってしまうのでは…という懸念があると思います。当社でも障害枠で就労される方の平均月収は18万円ほどと一般枠の平均よりは低めとなっています。

発達障害者向けの給与水準の高い求人が増えています

しかし、そうした傾向には少し変化もみられ始めています。

当社は非公開の独自求人をいただいているのが強みのひとつですが、最近の求人には、求めるスキルが高く、それにともない月給も高めのものが増えています。実際、6月以降にいただいた求人を見ても月給も20万円前後からスタートするものが目立ちます。その代わり、高いパソコンスキルやプログラミング・語学力などの専門性、コミュニケーションの問題のなさなど、一般枠と変わらないレベルが求められるものもあります。

この傾向の追い風のひとつとなっているのが法定雇用率の引き上げです。詳しくは当社ウェブサイトにもありますが、数字を満たすだけではなく、せっかくなら優秀な人材をピンポイントで確保したいという思いは企業間で強まっているようです。また求人そのものも増えているため、選ぶ側の選択肢も広がっています。

理想は一般枠と障害枠のクロスボーダー化?

給与水準的には「一般枠に近い障害枠」、冒頭でご紹介した方のような「障害に配慮のある一般枠」がもっと増えてくると、両枠のクロスボーダー化が始まるかもしれません。そのときに、訓練生のみならず在職中の方・優秀な人材を確保したいという企業のニーズをしっかりつなぐことが今後の当社の役割になっていくのだと思います。

この7月に開所したKaien代々木も「一般枠への就職を意識し、給与水準の高いレベルを目指した職業訓練」をうたっています。このほかにも、在職者が使いやすい就労支援を拡充していきたいと考えており、今月のスタッフ合宿でも話し合う予定です。

今後新たなお知らせができるようがんばっていきたいと思います。

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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます