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注意欠如多動性障害(ADHD)の方に仕事を教えるコツを教えてください

発達障害専門医 宮尾ドクター監修「障害者雇用 Q&A」 2021年8月号ADHD企業人事 発達障害の豆知識宮尾医師 監修記事障害者雇用

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Q&A「注意欠如多動性障害(ADHD)の方に仕事を教えるコツを教えてください」

前回の記事「自閉症スペクトラム(ASD)の方に仕事を教えるコツを教えてください」に引き続き、本記事では上司や業務の指導員にはぜひ知っておいていただきたい「注意欠如多動性障害(ADHD)の方に仕事を教えるコツ」について記載します。

ひとことに発達障害といってもその特徴はタイプによって大きく異なります。発達障害の方に対して仕事を指導する際には、相手によって異なる障害特性を正しく見極め、その方に合った指導を行うことが重要です。ADHDに関しても、その特徴は人によって様々です。うっかりミスが多くでてしまう「不注意性」、落ち着かずひとつのことに集中するのが苦手な「多動性」、深く考えず思いついたらすぐ行動に移してしまう「衝動性」など複数の特徴があり、人によっていずれかひとつの特徴が出ていたり、併せ持っている場合もあります。

この記事では、職場の上司や指導員がぜひ知っておきたい、「注意欠如多動性障害(ADHD)」の方に業務指導をする上でのコツ」を、3つのポイントに分けてお伝えしていきます。是非参考にしていただき、日々の業務指導に活かしていただければ幸いです。

参考記事:大人の ADHD (注意欠如多動性障害)

ポイント1 復習する時間枠をこまめに設けて記憶を定着させる

前回ASDの回では、「ASDタイプの方は”予習”が大事」とお伝えしていましたが、ADHDタイプの方については”復習”が大事です。ADHDの特徴として挙げた「不注意性」「衝動性」の背景には、原因の一つとして「記憶力の弱さ」があると考えられています。

記憶する力は人によって異なります。ADHDの方の多くは、一度に多くの情報を脳内に留めておくことが苦手なため、教えたことが抜け落ちてしまうことがよくあります。そのため、教わったことを覚えることができず、「仕事の覚えが悪い」や「ミスが多い」という評価につながってしまうことが見受けられます。

記憶を定着させるためには、予習よりも復習が重要になります。ADHD、特に「不注意性」「衝動性」の特徴が見られる方に業務を指導する場合には、教えたことを復習して記憶を定着させたり、メモを整理するための「復習の時間」をしっかり設けてください。また、新しい業務を教える際には、いっぺんにぜんぶを教えるのではなく、作業のまとまりごとに細かく区切って、インターバルに復習・整理の時間をその都度挟むことで”記憶のオーバーフロー”を予防する配慮を行うとよいでしょう。

ポイント2 ミスや失敗があれば一緒に振り返り再発防止の対策を行う

ADHDの方が、業務に慣れるまで多少のミスが出てしまうのは、障害特性によるものです。上司や同僚は一つひとつのミスにあまり過剰反応せず「そういうものだ」という心構えで冷静に受け止めていただけるとよいでしょう。

大事なことは「ミスをしないこと」ではなく、「同じミスを繰り返さないこと」です。ミスが見つかったら、ご本人と一緒に振り返りを行い、ミスが起こった原因を特定しましょう。(ADHD傾向の方の、ミスの背景には「記憶の抜け落ち」や「手順の勘違い」がある場合が多いので、ご本人が単独で振り返りを行ってもミスの原因を見つけることが難しい場合が多いです。)

振り返りのコツは「作業工程をトレースする」ことです。作業工程のはじめから工程を一つずつ「次は何をしましたか?」「その次はなにをしまたか?」と追っていくことで、どこかに工程で本来のやり方とは違う部分が見つかるはずです。次に同じミスを起こさないための正しいやり方や、ミスの対策を講じて箇条書きにしていきましょう。

ミスが発生したらその都度対策。これを繰り返しおこなうことで、ひとつひとつミスの原因をつぶしていきます。これらの対策を「1枚紙のチェックリスト」にまとめて、作業中、常に視界に入る位置に置いて作業をすることで徐々にミスを減らしていってください。「1枚紙のチェックリスト」にすることで、記憶に頼らずミスなく作業を遂行することができます。

ポイント3 作業の指導だけではなく環境調整も上司が一緒に行う

ADHD特性がある方のなかには、一つの作業に長い時間集中し続けることが難しいと感じる方が多くいます。新しい業務を任せる際には、単に業務内容を教えたり、作業手順を伝えるだけではなく、作業を行う際の「環境調整」を上司が併せて行うことをお勧めします。環境を整えることで、ミスを減らし、効率的作業を進める大きな手助けとなります。実際の職場で行われている、ADHDの方が作業に集中するための工夫をいくつか紹介します。

物理的に環境調整し視覚情報や聴覚情報の刺激を減らす

注意があっちにこっちに次々に移ることを”転導性”といいます。ADHDの方のしばしば見られる、「ひとつの業務に集中できない」や「ミスや見落としが多い」という傾向は、この”転導性”に一因があると考えられます。これらの転導性を抑えるためには情報(感覚への刺激)を減らすことが有効です。具体例を挙げると、特定の作業を行う際には集中できるスペースに移動するなどです。パーティションのようなもので視界を遮断したり、壁に向かって作業を行うなどが有効でしょう。耳栓やイヤーマフで聴覚的な刺激を抑えることも有効です。

時間を区切り休憩をこまめにとる

一般的に、仕事中の休憩の取り方について「疲れを感じたら休憩をとる」「作業がひと段落したら休憩する」という方が多数だと思います。それに対してADHD傾向がある方の場合は、タイマーなどで時間を測り、決められたルーチンで周期的に休憩を挟むほうがフィットするケースが多いようです。ADHDに限らず多くの人が有効な仕事術として取り入れている「ポモドーロ・テクニック」では、25分間作業を行い、5分間休憩をとるというリズムを繰り返します。人によって集中できる時間の長さは異なりますので、ぜひその方に合ったリズムを見つけていただけるとよいでしょう。

1日のスケジュールにいくつかの仕事の種類を組み込む

ASDタイプの方のなかには、一日中、同じ仕事をずっと繰り返すことが苦にならない方が多くいますが、総じてADHDタイプの方は、同じ作業をずっと繰り返すことに困難を感じます。一つの作業を行う作業時間を1時間から2時間程度を1セットとして、異なる作業を3種類か4種類程度を組み合わせることで1日の業務スケジュールを組み立てることができるのが理想的です。

人によるとは思いますが、ADHDの方のなかには手先が器用だったり、身体を使った多少ハードな作業もいとわずやれるタイプの方も多くいらっしゃいます。ASD傾向の強い方と比較して「小回りが利きやすい」という強みを職場で有効活用できるとよいでしょう。

まとめ:独り立ちを長い目で見ることで信頼関係を構築する

ADHDのポジティブな面に目を向けると、「発想力が豊かである」という強みがあります。自由な発想から思わぬ改善提案をしてくれてチームに大きく貢献してくれた、ということもしばしば耳にします。障害特性上、他の方と比較して、どうしてもはじめのうちはミスが目立ちがちではありますが、その都度上司や先輩がミスに目くじらをたててしまっていては、委縮してしまい、提案どころではなくなってしまうでしょう。

その方のよい面や強みを摘まないためにも、はじめの小さな失敗は所与のものとして、ミスが見つかった際には「業務を改善するヒントが見つかったね」というポジティブな受け止めを上司・先輩社員がすることで、心理的な安全性とともに、ご本人との信頼関係の構築が進んでいくでしょう。ぜひご本人の特性を理解・受容したうえで、強みを活かすマネジメントを実践いただけると幸いです。

参考リンク

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監修 : 宮尾 益知 (医学博士)
東京生まれ。徳島大学医学部卒業、東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックリンクを開院。
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