大人のADHDの女性の特徴とは?シーン別の特徴や相談先を紹介

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2000年に日本でも出版された「片付けられない女たち」は女性のADHD(注意欠如多動症)に対する認知が広がるきっかけになりました。

女性のADHDは、男性に比べ子どもの頃に気づかれにくく、大人になってから診断されるケースも珍しくありません。女性の場合、ライフステージや体調の変化に伴い、女性特有の困りごとが増える場合もあります。

本記事では、女性のADHDが気づかれにくい理由やシーン別の困りごと、相談できる支援機関などについて解説します。ADHDが疑われる場合に、どのように判断、対処することができるのか知るためにぜひご覧ください。

女性のADHDが気づかれにくい理由

すべての男女に当てはまっているわけではありませんが、同じADHD(注意欠如多動症)でも、男性と女性とでは比率や表れる特徴に違いが見られます。ADHDの男女比は2.5:1 から 1.5:1 程度と言われており、男性のほうが多い傾向にあります。

幼少期は男性の方が診断されることが多く、男性の比率が大きくなりますが、大人になるにつれて男女の差は狭まっていくようです。これは、男性のADHDの人には「多動」や「衝動性」といった特徴が強く表れやすいのに対し、女性のADHDの人には「不注意」の特徴が強く表れやすい傾向があることが指摘されています。

不注意は幼少期には気づかれにくい特徴であることが、女性のADHDが幼少期に診断されることが少ない理由の一つとされています。

【シーン別】大人のADHDの女性に見られやすい特徴

ADHDが原因となって起こる問題や困りごとは個人差もありますが、環境や状況などの条件でも変わる場合があります。ここでは、シーン別にADHDのある大人の女性に見られやすい特徴を解説します。

仕事上の特徴や職場での人間関係における特徴

仕事の場面で起こりやすい傾向や、職場での人間関係における、大人のADHDの女性に見られやすい特徴としては以下が挙げられます。

  • 遅刻が多い
  • 予定を詰め込みすぎてスケジュール通り進行できない
  • 人の話を遮って自分の話をしてしまう
  • 忘れ物やケアレスミスが多い
  • 書類の記入漏れ、書き損じが多い
  • 落ち着かない
  • 職場の女性同士の輪に入りにくい
  • 思ったことがすぐ口から出てしまい、うっかり失言する

職場では、雰囲気を察して行動することや周囲への気配り、休憩時間など仕事に直接関係しないコミュニケーションを求められることもあります。そうしたことへ苦手意識を持つ場合、職場の女性同士の輪に入りにくいと悩む人も少なくありません。

家事など日常生活における特徴

家事や日常生活における大人のADHDの女性に見られる特徴としては、以下があります。

  • 片付けられない
  • 料理や掃除、洗濯など家事の段取りが苦手
  • 衝動買いが多い
  • 睡眠が浅い
  • 周囲の音にストレスを感じやすい

ADHDがある場合、手順に沿って物事を実行することが難しくなる場合があります。そのため、料理で段取りよく進めることや、掃除や洗濯などの作業を計画的に進めることを苦手とし、家事に時間がかかることも少なくありません。

また、感覚の過敏さにより、睡眠が浅くなってしまい、寝ても疲れが取れないといった悩みを抱えている場合もあります。聴覚が過敏な場合、車の音や人の話し声など、周囲の音がストレスとなって疲れやすい場合もあるでしょう。

恋愛や結婚における特徴

恋愛や結婚に関して、大人のADHDの女性が持つ主な特徴には以下があります。

  • パートナーとの約束を忘れてしまう
  • 衝動的に自分の気持ちを相手に伝えてしまう(結婚などの重要な決定も含む)
  • 些細なことでイライラする、カッとなってしまう

夫婦になると、より多くの時間を共有することになるため、問題や困りごとが増える可能性もあります。例えば、相手が言われたらどう思うかを考える前に、衝動的に発言してしまってパートナーと喧嘩になってしまうなどです。

なお、女性は妊娠・出産に伴う体調やメンタルの変化が、パートナーとの関係性に影響する可能性もあります。特に妊娠中は体調が優れないことも多く、心の状態も不安定になりがちなため、ADHDの特徴が強く表れることも考えられるでしょう。

大人のADHDはどこに相談したら良い?

大人のADHDの女性による問題や困りごとを少しでも早く解消するためには、適切な対処が支援を受けると効果的です。ここでは、大人のADHDの女性が、仕事や日常生活に関する悩みごとについて相談できる場所を紹介します。公的機関も設置されているので、利用を検討してみましょう。

医療機関に相談する

大人のADHDに関する相談先として、まず医療機関が挙げられます。医療機関でADHDの診断を受け、治療などを行うことにより、症状が抑えられる可能性があります。基本的に、治療では服薬と自己理解に基づく行動改善が主軸とされます。

正しい知識を身につけ自己理解が深まれば、自己肯定感の向上につながります。また、実生活での具体的なシーンにおける対処法を身につけ、徐々に習慣化できれば、冷静に対応できる部分も増えていくでしょう。

医療機関の中には、同じような悩みごとを抱えた人が集まって行うグループプログラムを提供しているところもあります。悩みの共有や共感を通して、効果的な対処法を見つけるきっかけになる可能性もあります。

支援機関に相談する

ADHDの診断を受けた人やADHDが疑われる場合には、医療機関以外にも、さまざまな支援機関で相談ができます。ここでは、代表的な支援機関を紹介します。全国の都道府県に設置されているものも多いため、困りごとや相談内容に応じて利用を検討してみてください。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、ADHDなどの発達障害*がある人の総合的な支援を目的とした専門的機関です。都道府県・指定都市または都道府県知事等が指定した社会福祉法人などによって運営されており、全国に設置されています。

発達障害がある人とその家族が快適な地域生活を送るために、保健・医療・福祉、教育、労働などの関係機関と連携して、さまざまな指導や助言などの対応を行っています。公共職業安定所や地域障害者職業センターとの連携により、就労に関する相談や求人情報の提供などを受けることも可能です。

精神保健福祉センター

精神保健福祉センターは、精神保健や精神障害のある人の福祉に関する相談・指導を行っている機関です。精神保健福祉法により、各都道府県での設置が定められており、政令指定都市を中心に開設されています。

精神保健福祉士や臨床心理士、保健師、看護師などの専門家にさまざまな悩みを相談できます。また、本人だけでなく家族の相談にも対応しています。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、障害のある人を対象とした就労サポート機関です。一般企業への就職・定着を目指し、仕事に必要な知識や自己管理を学べる場所の提供、適性に合った職場探し、仕事やメンタル面の相談などが受けられます。

事業所によって具体的な支援内容は異なります。また、世帯の収入や納税額などの条件で利用料金も変わるため、事業所に確認してみましょう。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害のある人向けの職業リハビリテーションや就職継続支援などを提供する機関です。職業の評価・指導・訓練など、仕事に就くための専門的な支援が受けられます。

主治医等の医療関係者と連携を行いつつ、障害のある人の新規雇入れや職場復帰、雇用継続のために、専門的・総合的な支援を実施しています。公共職業安定所との連携の元、各都道府県に設置されています。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害がある人の職業生活における自立を目的とし、就労面や生活面に関する相談・支援を行う機関です。2023年4月1日時点で全国に337の拠点があり、窓口での相談や職場・家庭訪問などさまざまな活動を実施しています。

身近な地域における就業面と生活面の一体的な支援を目指し、雇用や福祉、教育等の関係機関と連携して幅広いサポートを提供しています。

ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)は、就労全般を支援する総合的雇用サービス機関です。発達障害の理解がある専門職員や相談員が在籍する障害者専用窓口のあるところでは、障害者向けの求人情報の提供や就職相談も行っています。

障害のある人向けの求人だけでなく、一般の求人への応募も可能です。また、仕事だけでなく生活面を含めた幅広い支援を希望する場合は、障害者就業・生活支援センターへの案内も受けられます。

地域若者サポートステーション

地域若者サポートステーション(サポステ)は、働くことに悩みを抱えている15~49歳までの人を対象にさまざまな支援を行う施設です。厚生労働省が委託した民間団体などが運営しており、各都道府県に設置されています。

専門スタッフとの個別面談を経て、コミュニケーション講座や就活セミナーなど希望する講座に参加できます。

女性のADHDの方の就職事例

近年は、障害のある人を積極的に受け入れる企業も増加傾向にあります。ここでは、実際に女性のADHDの人が勤務している企業の事例を紹介します。

株式会社メルカリでは、ADHDの診断を受けた20代の女性が障害者雇用で勤務しています。作業に時間がかかり効率的に働けない、どうしても遅刻が多くシフト制の現場で迷惑をかけていた、などのお悩みを持っていたところ、心療内科でADHDの診断を受けました。

お互いを褒め合う文化が確立されている社内では、やりがいを感じながら業務ができ、自己肯定感も上がったと言います。また、パートナーや主治医からも良い変化に気づいてもらえています。

また、メルカリでは特別休暇制度「Sick Leave」を採用しており、突発的な体調不良でも診断書不要で休みを取ることが可能です。有給休暇とは別に、必要な休みをスムーズに取れる制度が整っていることも、安心して働ける要素となっているようです。

その他にも、多様な人材を雇用している企業の事例を多数掲載していますので、下記よりご覧ください。

特性を強みに変える多様な人材が活躍できる企業特集

ADHDの特性・特徴を理解すれば対策も講じやすい

同じADHDのある人でも、女性の場合は不注意の特徴が強く見られやすいと言われます。大人の女性がADHDがあることで抱える悩みや困りごとは、仕事や日常生活、恋愛・結婚などのシーンで異なる上、ライフステージや生活環境などの影響により変わる場合もあります。

ADHDが疑われる場合には、医療機関にて医師の診断や治療を利用することで、改善に向かう可能性があります。また、就労や日常生活における相談や支援を受けられる機関も多数提供されているので、利用を検討してみましょう。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


監修者コメント

女性のADHDは世界的にも注目されています。確かに、男性は女性に比べると年少期に診断される傾向にあります。理由としてはやはり多動・衝動性が女性に比べて目立つ子が多いこと、それに、教師や支援者側が、ADHDはどちらかというと男の子の問題と考えて、女の子をADHDと感じづらい傾向が指摘されています。米では、女児は”fly under the radar”の状態にある、つまり、「(ADHDだと検出する)レーダーをかい潜っている」とも言われています。私の外来でも、30-40代の女性で初診のADHDの方が多いのですが、実はよく聞けば幼少期にADHD特性があったのにスルーされていたという方が大半です。支援者は、従来の教科書記述とは違い、実際にはADHDの男女比はそうそう男性に偏ったものではないはずだと考えてしっかり子どもの特性を見ることが必要だと感じますね。


監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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