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HOME宮尾医師 寄稿記事【医療従事者向け】学習障害「限局性学習症」(LD)の診断基準と定義

【医療従事者向け】学習障害「限局性学習症」(LD)の診断基準と定義

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当記事は、医療従事者が発達障害の理解を深めるための専門記事です。
症例等も掲載していますので、教育従事者、障害者雇用を担当する企業担当者の方なども、ご活用ください。

Ⅰ.LDを含む発達障害の診断基準と定義

LDを含む発達障害を診断するための基準として一般的によく用いられるのは、下記の3つです。

世界保健機構(WHO)の国際疾病分類(ICD10)

アメリカ精神医学会(APA)の精神障害の診断

統計マニュアル(DSM)

 

その他に、我が国には文部科学省のLDに関する定義(※1)があり、教育の領域で用いられることが多くあります。発達性ディスレキシアについては、国際ディスレキシア協会(IDA)の定義(※2)があります。

※1 学習障害(LD)の定義 <Learning Disabilities
(平成11年7月の「学習障害児に対する指導について(報告)」より抜粋)

 学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。
学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。

出典:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm

※2 神経生物学的原因に起因する特異的学習障害である。その特徴は、正確かつ(または)流暢な単語認識の困難さであり、綴りや文字記号音声化の拙劣さである。こうした困難さは、典型的に は、言語の音韻的要素の障害によるものであり、しばしば他の認知能力からは予測できず、また、通常の授業も効果的ではない。二次的には、結果的に読解や読む機会が少なくなるという問題が生じ、それは語彙の発達や背景となる知識の増大を妨げるものとなり得る(国際ディスレクシア協会(2003)より宇野ほか(2006)訳)

Dyslexia is a specific learning disability that is neurobiological in origin. It is characterized by difficulties with accurate and/or fluent word recognition and by poor spelling and decoding abilities. These difficulties typically result from a deficit in the phonological component of language that is often unexpected in relation to other cognitive abilities and the provision of effective classroom instruction. Secondary consequences may include problems in reading comprehension and reduced reading experience that can impede growth of vocabulary and background knowledge」(IDA: International Dyslexia Association.2003)

出典:http://dyslexiaida.org/

Ⅱ.LDの定義

①ICDの疾病分類
International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems, ICD (疾病及び関連保健問題の国際統計分類) は、様々な国や地域の、死亡や疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈や比較を行うため、世界保健機関憲章に基づいて、世界保健機関(WHO)が作成した分類です医療ではICDに沿って病名を附けることが求められます。

ICD-10における学習に関する項目は、以下の通りです。

学習に関する項目
[F80-89:心理的発達の障害]
「F80会話及び言語の特異的発達障害」
「F81学力(学習能力)の特異的障害」

また、LDに直接結びつく項目は、以下の通りです。

LDに直接結びつく項目
ー[F81.0特異的読字障害]
「F81.1特異的綴り字(書字」障害」
「F81.2特異的算数能力障害(算数能力の特異的障害)」
ー[言語障害]
「F80.1表出性言語障害」
「F80。.2需要性言語障害」

 

②DSMの診断カテゴリー

Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, DSM (精神障害の診断と統計マニュアル)は、精神障害の分類のための基準を示すため、アメリカ精神医学会によって策定されました。2013年にDSM-5(第5版)に改訂されています。

この改訂によって、LDは限局性学習症/限局性学習障害にまとめられ、下位分類はなくなっています。
読字については、下記2点が挙げられています。すなわち、発達性ディスレキシアの特徴である「デコーディングの障害」(文字記号から、それに対応する音声を想起すること)と、「その後の音声化された分の内容を理解する過程」に分けられました。

 読字について
ーデコーディングの障害
ー文章読解の障害の二つの症候

また、書字の障害は、下記2種類の徴候になりました。

書字の障害
ー文法・句読点のあやまりや文章表現法のまずさなどを特徴とする書字障害
ーICDの綴字(書字)障害に対する綴り字障害

算数障害については、計算障害の他に数学的推論の障害が付け加えられ、先述(※1)の文部科学省の考え方に似た構図になりました。また、計算障害は数学的事実や計算手順の障害の概念が使われるようになっています。

6つの症例は、より具体的イメージが思い浮かべやすくなっています。6種類の症候のうち当てはまるものを診断名に付記し、異なるコード番号が割り当てられます。

言語障害の診断カテゴリーでは、需要性障害と表出性障害の考え方がなくなりました。

 6つの症候
「単語を間違ってゆっくりためらいがちに音読する」
「母音や子音を付け加えたり、入れ忘れたり、置き換えたりするかもしれない」
「一桁の足し算を行うのに、同級生がやるように数学的事実を思い浮かべるのではなく、指を折って数える」
など

 

Ⅲ.診断基準を使うにあたっての注意

①言語能力について

言語能力は、会話などのコミュニケーションに必要なだけではありません。抽象的、あるいは未知の概念を扱う学習や、文章の内容把握といった場面では、より高度な言語レベルが要求されるため、言語能力が不足することがあります。語彙数の多寡だけでなく、語や文の意味概念や、文法の成熟など、幅広い要素に注目しなければならないことも、高い言語能力を必要としている要因です。

 ②書字障害について

文字が書けない訴えで頻度が高いのは、我が国では漢字書字です。綴り字障害は文字(アルファベット)を適正な順番で配置することの困難さというものであるため、この2つは異なる障害です。

 ③算数障害について

計算障害と数学的推論の障害だけが算数障害に含まれます。具体的には、算数として扱われる図形の問題、面積や体積、重さなどの量、時間、時刻を求めるものなどです。とくに、視覚情報処理に障害を持つ子どもが、これらの領域でつまずく場合には、算数障害の診断名は附けるべきではないことに注意する必要があります。純粋に計算部分に障害が生じているわけではないからです。

監修 : 宮尾 益知 (医学博士)
東京生まれ。徳島大学医学部卒業、東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックリンクを開院。
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