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HOME宮尾医師 寄稿記事夫か妻のどちらかに、発達障害の疑いがあるときは(前編)

夫か妻のどちらかに、発達障害の疑いがあるときは(前編)

アスペルガー症候群カサンドラ症候群家族家族療法発達障害親のADHD

アスペルガーから「カサンドラ」へ

自閉症は、1943年オーストラリア系アメリカ人の児童精神科医カナーによって、「情緒的交流の自閉症的障害」、早期発症型の統合失調症として、提唱された概念です。翌年、オーストラリアの小児科医アスペルガー(米国ではアスバーガー)により、「自閉的精神病質」として報告されました。ところが、戦時中のためその論文は戦勝国側では報告されませんでした。

カナーの自閉症は、対人相互反応の障害、意志伝達の著しい異常またはその発達の障害、活動と興味の発達の著しい限局を特徴とし、大多数が知的障害があったため、カナーの自閉症は知的障害があると考えられ、知的障害のない場合はまれであると考えられていました。 この後もアスペルガーの報告は幻の疾患であると考えられていました。ところが、1981年 イギリスの医師ローナウイングにより、アスペルガーの論文が再評価され、知的障害を伴わないが興味・コミュニケーションに特異性が認められる自閉症スペクトラムの一種として評価されるようになりました。

日本での発達障害治療の広がり

このような子供達について我が国においてはいまだ診断名はなく、診断のつかない「グレーゾーン」とされていました。このころ、ウイングの論文が我々に与えた驚きは大きく、よく分かっていなかった子供達がどこに属するのか理解できるようになり、知的障害のない自閉症(高機能自閉症)特にアスペルガー症候群についての興味が強くなっていきました。2012年国立成育医療センターが子どもの病気を大人になるまで診るという国立小児病院からの発展系として開院しました。国立小児病院の児童精神科はこころの診療部になりました。このころから、通常学級に所属しているけれど、少し「変わった」子供達についての議論が深まり、発達障害と定義されるようになりました。法律的に、定義もきまり、発達障害支援法も施行され、世間的にも理解が深まり、子どもの療育が全国で始まりました。

生活の話の中に出てこない「夫・父親」の存在

発達障害の子供達の治療をどのように行うのかはまだ手探り状態で、治療について私たちが心がけたのは、まず子どもをよくすることでした。保護者には子どもがよくなってから、アプローチするのだと決めていましたから。子どもが良くなれば、母も自分を見る余裕ができる。このようにして、母に対するサポートも軌道に乗ってきました。ここで気がついたのは父の話が全く出てこないことでした。まるでシングルマザーのように。いろいろ聞いていくととても忙しい父で、休みの日には公園に連れて行ってくれるという話でしたが、父が登場するのはこのときだけのようでした。このとき話す母の様子は、何か寂しそうでようやく生活しているかの様子でした。なぜこんなに元気がないのかと思うことがよくありました。この気づきが、カサンドラの始まりにつながっていきます。

うつを併発する母親たち

うつのお母さん達も沢山いました。子どものことを離れて夫婦のことに話を移していくと、父の話は、夫としての話は、自分のことを分かってくれていない、セクハラ、パワハラ、DV等の話と、子どもに対しても理解ができず、虐待まがいの事まで聞こえきました。こうして、母は女性医師にカウンセリングと薬物による治療をお願いし状態は改善していきました。夫との関係性をどう扱うかはこの頃はまだ見当がつきませんでした。父のカウンセリングは私が担当することし、カウンセリングからは、母に対する不満というよりも無関心が漂ってきて、なにか奇妙な感情を覚えました。カウンセリングを進めていくと、父親はだんだんと自分の対人関係での問題点に気づくことができるようになりました。しかし、社会生活に対する不安感が語られるようになり、うつ状態になり休職になるのではと思うほどでした。

夫婦カウンセリングの体制へ

こうして母親(妻)に対してのカウンセリングが臨床心理士瀧口と、薬物療法が必要な場合には、女性医師が対応するといった体制が構築されました。この頃行った夫婦カウンセリングはお互いのコミュニケーション不全から一方的な語らいだけに終わりました。このころアスペルガーの人たちから語られることで「人に対する批判と自己認識のなさ」に気づいてきました。こうして妻達から語られるアスペルガー症候群と思われる夫(父)の人たちに集まってもらい、お互いに自由に語り合う場を作り、問題点をお互いに気づきあうセミナーを行うこととしました。集まってきた夫(父)達は母親から聞いていたイメージと全く違っていて礼儀正しい、静かな人たちに思えました。社会ではそれなりの地位を得ている人たちですから当たり前かもしれません。父から出てくる母に対する不満は予想以上でした。母達から聞く内容とも違っていたために、続いて妻(母)達の会を行いました。こうして私たちは、子供、夫婦(両親)それぞれを知ることになり家庭を立体的見ていく事ができるようになりました。個々のメンバーを知り、システムとしての家族を考えるという家族療法でした。

「家族療法」からの気づき

このセミナーからは、社会と家庭内での社会性に差があることが問題の本質であることに気づきました。社会で成功する為の冷徹で即決即断である社会性と家庭人としての望ましい資質が異なっていることがが本質であることに気づかされました。この頃私たちと同じ考え方のアストンのカサンドラ症候群に出会いました。

後編につづく

監修 : 宮尾 益知 (医学博士)
東京生まれ。徳島大学医学部卒業、東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックリンクを開院。
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