女性の発達障害を読み解くカギは、「男女の脳の違い」

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1.男性と女性の差とは

私が社会に出た頃は「ウーマンリブ」という言葉が世間を席巻していた時代であり、「男女が異なる」という言葉はむしろ禁句ですらありました。国際的には、女子差別撤廃条約が国連で批准され、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約が批准されていきました。

数年して、邦題「話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く」などにより、「男脳と女脳が異なる」という考えが、世の中でも認められるようになりました。これは、「男女同権」すなわち「男女は能力的に異ならない」と考えていた私たちの世代には、いささか驚きでした。よく考えてみれば、「男性と女性では能力も異なるが、権利は平等である」と考えればよいのだと気づくまでには、少々時間がかかりました。

2.脳の構造からみる男女差

能力の源である脳の構造について考えてみます。日本人の研究では、男性の脳重量は、女性より150gm程度重いと言われていますが、表面構造である脳溝については違いがないとされています。内部構造に目を向けてみると、女性は、脳の中心に位置する脳梁後部の膨大部が大きいため、多くの神経線維が左右の半球を結んでいることになります。したがって、女性は左右の大脳半球間で頻繁に情報交換が行われているのです。この大脳半球間の情報交換は、男性でははあまり行われていないと考えられます。

脳は、右脳と左脳で役割が異なることは、よく知られています。
左脳は、右手の動きをつかさどり、主たる言語野が存在します。一方、右脳は、左手の動きを司り、更には補完的言語野が存在しています。言語活動を行っている最中の男女の脳をMRIで観察すると、男性の脳活動は、理論をつかさどる左脳に局在するに留まりますが、女性の場合は、右脳にも活性が認められます。男性が、理論的な話の構築に集中して言語活動を行っているのに対して、女性の場合は、右脳と左脳の両方を使って、言語活動を行っています。よく、「女性の方がおしゃべりが得意」といわれますが、これは、左脳で言葉の意味を聞き取りながら、右脳でしぐさや表情などの非言語のサインを読み取ることも可能であるという脳の構造に起因したものでしょう。

また、間脳の視床下部に存在する分界条床核は、性行動にかかわる機能を果たしていると考えられる部分です。男性の分界条床核は、女性の約2.5倍の体積を占めていることなどから、男女の性行動、闘争本能の差が生じていると考えられています。感情をつかさどる大脳辺縁系の皮質は、女性のほうが大きく、ストレスや不安を感じる部分である偏桃体は、男性のほうが大きいのも特徴です。

3.男女の行動の差は、脳の差にある

神経系の構造的な性差は、男女それぞれの行動に反映されると考えられています。鳥類の一部では、オスのみが極めて特徴的な求愛行動を行いますが、これは遺伝的に組み込まれた脳の構造的な左右差によるものであることが知られています。人間においては、幼児期から存在する遊びや好みの違いはありますが、これは思春期以前の事象であるため、性ホルモンの影響ではなく、胎児期に確立する脳の性差に由来すると考えられます。

「話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く」から、女性は言語野の容積が男性よりも大きく、言語能力が高いとされています。別の研究では、男性が一日あたり7千の単語を話すのに対して、女性は2万を超えるという結果もあります。

一方、男性は脳の頭頂連合野が、女性より発達していて、空間認知能力が高いので、地形を把握するのが得意であるといわれています。もちろん、男性が必ずしも男性脳の持ち主であるとは言えませんが…。

4.発達障害と男脳・女脳

自閉症の研究で知られる、イギリスのケンブリッジ大学発達精神病理学科教授であり、発達心理学者であるサイモン・バロン=コーエンによる理論では、自閉症のマインドブラインドネス理論、心の理論、自閉症は、「極端に発達した男脳」だとしています。

彼は脳の機能を「共感」と「システム化」という2軸で捉える、という考え方を持ち込みました。そして、女性の脳は、他者の気持ちを我がことのように感じ、男性脳はシステムを理解し構築するように作られているのではないかと、さらに「心の理論」を発展させていきます。「システム脳の極型」が自閉症であり、「共感脳の極型」については、理論上は存在しうるけれど、現状では「未知なる領域」と述べています。このような考え方を用いると、なぜ女性の発達障害が男性の発達障害と異なるかが理解しやすくなっていきます。

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監修:宮尾益知(医学博士)
監修 : 宮尾 益知 (医学博士)

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