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HOME宮尾医師 寄稿記事知っていますか?発達障害とサプリメントによる治療(2)

6.発達障害の治療とサプリメント

薬物療法は、臨床現場にて使われるようになるためには、

  • 効果が明らかであること(75%以上の有効率)
  • 重篤な副作用がなく、有効性が明らかに副作用を上回っている場合

の2点が確認できた場合に、各国ごとの基準により承認されます。また、市販後の調査も義務づけられています。

そのため、医療現場においては、エビデンスが明らかでないサプリメントを使用することには抵抗がありました。特に、我が国で許可されていたサプリメントは、ビタミンB6欠乏症などに対しての使用など、あくまで必要量としての基準で設定されており、量を多く使う治療的使い方については、明らかな診断が得られなければ許可されていませんでした。一方、欧米諸国においては、有効性の報告があったり、欠乏が想定される場合には、積極的にサプリメントの投与を行い、予防的治療を行うことが推奨されています。とくに、発達障害においては、症状を緩和する薬物しかなく、治癒させる薬物があるわけではありません。そのため、海外にて有効であることが報告されているサプリメントについて文献を渉猟(しょうりょう)し、量を同定して、どんぐり発達クリニックではサプリメントも積極的に治療に加えています。

 

7.発達障害の治療に用いるサプリメント

発達障害にどのようなサプリメントを使用しているかについて述べていきます。

 ①自閉症の子は、腸内環境が悪い

我々は以前より、自閉症の子供達が視線の合わない時期から、マグネシウムとビタミンB6、乳酸菌製剤を用いており、有効な結果が得られてきました。

発達障害(自閉症、ADHD等)を有する子供達は、健全な子供達に比べ、腸内環境が悪く、善玉のバクテリアが少なく、悪玉のバクテリアとイーストの多い子供がいるといわれています。腸の表面には、網タイツのように神経が張り巡らされており、消化器の状態をモニターする役割を担っています。生物学においては、この神経網が発達進化して、中枢神経が形成されたと考えられています。このことから「腸は第二の脳」と言われるようになりました。腸内細菌は、神経伝達物質のセロトニンを合成するトリプトファンを、ビタミンB6を媒介として脳へ送り込みます。乳幼児期で、乳酸菌を投与し、腸内環境を改善すると、学童期における神経精神障害の発症のリスクを減らすことが研究で明らかにされています。また、自閉症では、慢性的な下痢や便秘を経験する可能性は、健常児より3.5倍以上高いことがわかっています。自閉症児の腸内細菌の種類は極めて乏しく、腸が病原体による攻撃の影響を受けやすくなっている可能性が明らかとなりました。

 ②ADHDを改善するオメガ3

ADHDと、EPA、DHAを初めとする必須脂肪酸の関係は、アメリカではよく研究されているようで、それなりの数の論文があるようです。EPAとDHAによって確実にADHDの症状を改善するとまで言えます。よく計画された実験による研究結果には乏しいものの、一定の効果はありそうです。特に、ADHDだけでなく学習障害や運動発達上の障害を合わせて持っているお子さんや、症状の強いお子さんは、EPAとDHAを試してみてもよさそうです。EPA、DHAなどのオメガ3系脂肪酸は、コンサータ(メチルフェニデート)よりも忍容性(投薬した際にあらわれる副作用の安全性)が高いという結果なので、コンサータを服用するよりも副作用(匂いや飲みにくさなどを含めて)を我慢しやすいようですが、効果はコンサータにわずかに劣るようです。

オメガ3系脂肪酸の効果がコンサータにわずかに劣るだけなら、EPAとDHAでいいじゃないかという気もしますが、他の論文などを見ると全般的な論調としてはコンサータの方がよく効くとされている印象です。コンサータは薬ですし、直接脳に作用しているので、当然ですが。

また、EPA、DHAなどのオメガ3系脂肪酸をコンサータと併用したからと言って、よりADHDの症状が改善することはないようですが、コンサータの服用量を減らすことができるようです。コンサータの服用量を上げると副作用が強くなってしまうお子さんには、オメガ3系脂肪酸を併用させてみるといいかもしれません。

③トラウマ、うつ病を予防するオメガ3

近年、うつ病などで、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などのオメガ3系脂肪酸の有効性が示されています。オメガ3系脂肪酸により、海馬の神経新生(脳内で新たな神経細胞が生まれること)が亢進し、BDNF(脳由来の神経栄養因子)の増加が確認されています。

2012年、国立精神・神経医療研究センターの松岡豊らの研究者は、オメガ3系脂肪酸によるPTSD(Clinician-Administered PTSD Scale)発症予防に関するオープン試験を実施しています。この実験は、交通事故などの不慮の事故で救急救命センターに搬送された15人を対象に、12週間オメガ3系脂肪酸約1.6 g/日(サンマ140gに含まれるオメガ3系脂肪酸に相当)を投与するというものです。その結果,オメガ3系脂肪酸を摂取した重傷者の PTSD 症状は、見積もった値よりも有意に低値であるという結果が出ました。これは、オメガ3系脂肪酸が事故後の PTSD 症状を低く抑える可能性、そして BDNFの増加が、PTSDの予防に何らかの役割を果たしているということを示しています。

つまり、オメガ3系脂肪酸を摂取することが、逆境を跳ね返す、またはうまく対処する能力の向上に影響を及ぼす可能性がある、ということです。

 ④ADHDを制御するホスファチジルセリン(PS)

水溶性、脂溶性の両性質を持つリン脂質の一種で、一般的には、大豆や卵黄から抽出・分離される「レシチン」として知られているものです。リン脂質は、ヒトを含む生物の細胞膜を構成する重要な成分であり、PSは特に、脳の細胞膜に多く含まれていることが知られています。脳神経の細胞膜は、細胞内へ栄養素の取り込み、細胞外への老廃物の排出、細胞内外への信号の伝達、神経伝達物質の放出等、脳機能に大きく関わっています。

PSは、高齢者の認識力・記憶力を改善させることが知られています。また、最近では、若年者や、スポーツ選手の集中力の向上など、幅広い世代に向けての研究も進んでいます。大豆レシチンから製造されるホスファチジルセリン(PS)は、高齢者の認知力改善、ストレスマネージメント、スポーツニュートリションなど、幅広い範囲に向けての有効性が証明されてきました。それだけでなく、子どもの落ち着き、集中力、衝動性の制御に有用であることも立証されています。

発達障害とサプリメントによる治療(3)」へ続きます。

監修 : 宮尾 益知 (医学博士)
東京生まれ。徳島大学医学部卒業、東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックリンクを開院。
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