発達障害 正社員で就職できますか?

障害者雇用は契約社員が中心でも、一般雇用は正社員が多いのはなぜ?
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就職活動の際、安定した雇用である「正社員」を希望する方がほとんどです。ただし障害者枠に限ると正社員の求人は残念ながら少なめです。とはいえ、入社後数年以内に正社員に登用する会社が増えています。当社のデータでは約80%の方が正社員に登用されているのです。

一般雇用で入社当初からの正社員を目指すのか?障害者枠の配慮された中で数年以内の正社員を目指すのか?賢い就職活動の方法をお教えします。

発達障害の人が正社員になるのは困難ですか?

下のグラフは、過去2年間で当社の就労移行支援を通じて就職した方の勤務開始時の雇用形態の割合を集計したものです。一般枠も含まれますが、多くは障害者枠での就職です。雇用開始時から正社員として採用された方の割合は全体のわずか6%。80%以上の方が契約社員として雇用されています。

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「やはり正社員になるのは厳しいのね…」とがっかりされた方も多いでしょう。しかしこのデータは、あくまで『就職時』の雇用形態です。実は契約社員として就職された86%の方々、多くの人たちが入社後に正社員として登用されています。

正社員採用は「入社時」ではなく「入社後」が主流

具体例をひとつ挙げましょう。ある大手物流企業では6人が障害者雇用で働いています。そのうち4人が入社後に正社員登用を果たしています。入社1年も満たない段階での正社員登用でした。1年未満での登用は実は稀ですが、通常3年から5年で正社員化するところが多くあります。

では、なぜ初めから正社員として雇っていただけないのでしょうか?

それはやはり、雇用する企業側に取っても、人一人を正社員として雇用するのは大きな決断だからです。発達障害当事者の方の多くは遅刻・欠勤が少なく、安定していますが、それでもいろんなタイプの人がいます。

例えば、障害・特性を明かさず、つまり”クローズド”(一般枠)で働いている人の定着率は(あるハローワークのデータでは)約25%と言われています。自分の特徴を伝えて、つまり”オープン”にして障害者枠で働いている人の場合でも、75%程度にしかなりません。つまり1年後に四分の一の人が会社が辞めさせるのではなく自分から離職してしまっているのです。

障害者枠の多くは大企業・上場企業が行っています。はじめから正社員にすると、体調・精神面を崩し、休みがちになった時に、どうしても労働問題に発展しがちです。リスクを避けたい大企業・上場企業側としては、一定期間を経過して安定している方に正社員にしようという狙いがあるのでしょう。

賢い会社の選び方

それでは、自分の雇用を安定させるためには、どのような基準で応募企業を選べばよいのでしょうか。就労移行支援の現場で得られたいくつかのアドバイスをお伝えします。

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①会社自体の安定性もあわせて考える

会社にとって正社員として雇い入れすることは大きな決断です。簡単に正社員になれるように見えたとしたらその求人は要注意です。

特に一般枠の場合、小さな企業ではそもそも正社員の求人しかありません。契約社員では人が集められないからです。残念ながらブラック企業というものはまだまだ実際に存在しています。正社員で集めた後、上手く働けない場合は労働基準法を無視したような退職勧奨が繰り返されることも可能性としてあります。

そもそも会社が潰れてしまっては、正社員といえども雇用は安定しません。正社員という名前に惹かれ過ぎず、会社自体の強さをしっかり見極める必要があります。

②障害者枠での正社員求人は、ほとんどが身体障害者狙い

障害者枠では正社員の求人が少ないと書きました。言い換えると、ゼロではないということです。このため障害者枠であっても正社員のみの求人を受け続ける人が相当数いらっしゃいます。

障害者枠の正社員は、ほぼ全部が身体障害者狙いの企業です。当社の過去の聞き取りでは9割以上の企業ができる限り身体障害者を採用したいと考えています。体に障害があるというのは人事の担当者にとっても、受け入れの上司にとっても理解がしやすいからです。

その身体障害者というのは50歳以上の人が多く、企業が求める20・30歳代の身体障害者は実は非常に少なめです。このため、正社員の求人でアピールしないとなかなか応募してくれないのです。

精神障害、知的障害、そして発達障害の人を採用するのはまだまだ二の次の企業だらけ。正社員の求人に応募すると、身体障害者との争いになり、”撃沈”することが多いわけです。

③過去の正社員登用の実績を調べる

入社後数年で正社員にしてくれる会社が増えてきたものの、すべての企業がそうしてくれるというわけではありません。正社員登用の可能性がどの程度あるかを把握するために、応募前に正社員登用実績を確認することができるとよいでしょう

企業の人事担当者や面接担当者に正社員登用の制度のことを直接聞くことも良いでしょう。ただし書類を提出する前の段階や選考途中の面接の場では聞きづらいことかもしれません。その際は過去の正社員登用実績などの情報を持つ就労移行支援事業所の支援者などに聞きながら、応募するかを決めていきましょう

一般雇用では正社員が多め

具体的なデータでお示し出来るわけではありませんが、障害者枠ではない通常の雇用、いわゆる一般枠では正社員が多めです。もちろんパート・アルバイトなど契約社員で働く方が多いのが一般枠でもありますが、就労移行支援などを経由する方の場合は、大企業の障害者枠か、中小企業の一般枠か、の選択肢に絞られることが通常です。

中小企業の一般枠は、人不足の中で労働者の取り合いになっている印象があり、正社員で募集しないとそもそも人が集まらないという事情があります。一方で、事実上の退職勧奨が行われたり、人が足りないために様々な業務を掛け持ちせざるを得ず発達障害の苦手さが際立ったり、経営が不安定でそもそも会社が無くなってしまうというケースも少なくありません。

このように雇用に関する形態も、それを取り巻く情勢も日々変化・多様化し、以前のように正社員になれば安心という時代ではなくなってきました。目先のことやイメージにとらわれず地に足の着いたキャリアを積んでいただけるように心がけてください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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