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知能検査(WAIS)の読み方◆言語理解 ◆知覚推理 ◆ワーキングメモリー ◆処理速度

インデックス

知能検査とは

知能検査とは、個人の特性(得意なことや苦手なこと)がどのような点に現れるか、知能や発達の水準を客観的に明らかにするためのものです。知能検査には、対象の年齢や目的に応じて様々な種類があります。詳しくは「知能検査とは」の項目でご紹介しています。

今回は、発達障害のある成人の発達・知能の水準や特性の様子を把握するために用いられることの多い、「WAIS-Ⅳ」という検査について、検査結果の見方の概要をご紹介します。WAIS-Ⅳについても、「知能検査とは」の項目で詳しくご紹介していますので、そちらもチェックしてみてください。

今回ご紹介するのは、あくまでも解釈の一例です。実際の検査結果の解釈は、ご本人の状況や困りごと、その他の背景情報を含めてより詳細に分析されます。実際に検査を受けた場合、多くの方が検査結果の所見を受け取ることが多いでしょう。基本的には、所見を受け取る際に検査者(あるいは担当医)から詳しい説明があると思いますので、このページは補足のためにご一読いただくのが良いかと思います。

言語理解(VCI)

言語理解指標は、語彙やことばで説明する力などを測る指標です。また、「結晶性知能」と言われる、これまでの経験や学習が土台となる知能も測られます。

ここが強い人

ことばでまとめたり説明したりすることが得意で、語彙も豊富です。学校で習うような教科の知識が良く身についている人も多いです。つまり勉強が出来る人はここが高い人が多いでしょう。補助検査である「理解」の得点が高い場合は、明文化されていない社会的なルールを捉えることが得意な場合が多いでしょう。一方「言葉で表現することの得意さ」はそのまま「コミュニケーションをとることの得意さ」には必ずしも結びつかないので注意が必要です。厳格に定義された言語理解はできても日常のコミュニケーションで行われるあいまいな言語理解が苦手だからです・

ここが弱い人

ことばの意味を正確にとらえずに使用していることがあるかもしれず、それが原因で相手が伝えたいことと実際に伝わっていることに齟齬が生まれるかもしれません。より一般的なことばで、具体的に説明をしてもらったり、情報を伝える側と受け取る側で認識にずれがないかを確認するようにすることで、ある程度の齟齬は防げるでしょう。また、絵や図が入ったマニュアルを用意してもらうとより作業に取り組みやすくなるでしょう。

知覚推理(PRI)

知覚推理は、目で見た情報を踏まえて論理的に物事を考える力を測る指標です。また、「流動性知能」と呼ばれる新しい情報への適応に必要な能力についても測ることができます。やや抽象的な言い方をすれば、「ひらめき」のような領域も含まれるでしょう。

ここが強い人

目で見て得た情報を整理したり、推論することが得意な傾向があります。例えば、数学で言えば図形の問題が得意だったりします。ものごとを論理的に、しかも素早く考えることが得意です。常識感やいわゆる空気を読むような力が強い傾向があるでしょう。瞬時に感覚的に集団や多数派の考えを汲み取ることが得意なことが多いでしょう。

ここが弱い人

目で見て情報を捉えることが苦手な場合がありますので、図や表が入った説明では、情報を省略しすぎずに言葉での説明も補足として要求するとよいかもしれません。また、この指標の得点が低いことは「論理的な思考が苦手」とは必ずしも言い切れません。考えるのにゆっくり時間をかけるタイプの人も、この指標の得点が低くなることがあるためです。

ワーキングメモリー(WMI)

耳から入った情報を短時間記憶にとどめたり、その情報を頭の中で整理しながら考える力を測る指標です。

ここが強い人

聞いた情報を頭の中で整理して考えることが得意です(例えば、暗算などが得意です)。職場では口頭での指示が受け取りやすく、「〇〇と、△△をして、その後で~~に行ってきてもらえる?」なんていう指示も覚えていられます。会議ではほかの人の話を聞きながら自分の考えをまとめたりすることも得意でしょう。また、短期的に物事に集中できる人も多いでしょう。

ここが弱い人

耳から入った情報を覚えておくことが苦手な人が多いです。例えば、口頭での指示が覚えきれなかったり、電話の対応が苦手だったりする場合があります。指示を受けたらメモを取るようにする、もしくは初めからメールやメモなど、あとから確認できるような方法で指示を受けるようにするとよいでしょう。たくさんの情報を一度に処理するのは苦手な場合が多いので、指示は一つ一つ小出しにしてもらうとよいかもしれません。

処理速度(PSI)

単純な作業を素早く正確に行う力を測る指標です。

ここが強い人

単純な作業をスピーディに行うことが得意な場合が多いです。たとえば、決まったマニュアル通りにひたすらデータを入力したり、封筒にダイレクトメールを封入し続けたり、といった作業は得意です。器用な人も多く、細かな作業をたやすく、短時間でこなすことが出来るタイプでしょう。

ここが弱い人

単純な作業(例えば学校の勉強だとノートを書き写すようなこと)が平均よりもゆっくりになったり、速度は平均的でもケアレスミスが多かったりします。何か作業を行う場合は、余裕をもって取り組めるような時間設定を心掛けるとよいでしょう。ケアレスミスが多い場合は、ミスの出やすそうな部分を中心にダブルチェックをすることを心掛けるとよいでしょう。また「書く」作業が苦手だとこの指標の得点が低い場合があります。学生時代から、ノートをとるのに人一倍時間がかかったり、ノートの罫線から字がはみ出してしまったりということがなかったでしょうか。書字の苦手さについては、社会人になり文書作成をPCで行うようになることで解消することもあります。

以上、WAIS-Ⅳの下位検査4つの特徴と、それぞれを強み・弱みとしてとらえたときの考え方をご紹介しました。

最後に

これらの説明は、あくまでの一例にすぎません。実際の所見では、4つの指標をさらに細かな下位検査に分け、ご本人の得意なこと、苦手なことを分析します。

また、一つの指標の得点が低いことが、必ず一つの傾向と結びつくとも限りません。例えば、「ワーキングメモリー指標が低い人は誰もがみな短期的な記憶が苦手」とは言い切れません。「聴覚の過敏さがあり、周囲の音に気をとられてしまうことが記憶の妨げになっている」という場合もありますし、「覚えること平均的にできるけれど、覚えたことを頭の中で整理して考えることは苦手」という人もいます。

繰り返しになりますが、指標の得点だけではなく、ご本人や周囲からの聞き取り情報、検査中のご様子なども含めて、検査結果の分析が行われるというのがポイントです。そして、「点数が高いからいい」「低いから悪い」ということもありません。検査結果は、ご本人の明日からの生活がいかに過ごしやすくできるかを考える一つの材料です。より生きやすい明日のために、検査結果を活用していきましょう。