
「障害者手帳を取得しないと、何の支援も受けられないのではないか?」「障害認定を受けるには、どうしたらいいかわからない」などとお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、障害者手帳がなくても利用できる制度は多くありますし、相談窓口を利用すれば申請手続きもそれほど難しくありません。
本記事は障害認定の種類や申請方法などの基礎知識を解説します。また、障害者手帳がなくても利用できる支援制度について、Kaienの実際の支援プログラムや申請サポートも交えながら紹介します。
目次
障害認定を受けるには?まず押さえたい基本の流れ
障害認定の受け方は制度によって違いますが、以下のように大きな流れは基本的に同じです。
- 医療機関で診断を受ける
- 必要書類(診断書、申請書、本人確認書類など)を準備する
- お住まいの市区町村の窓口へ申請する
- 審査後、認定結果が通知される
ただし、制度によって申請先や必要書類、審査基準などが異なります。そこで、障害認定の手続きに入る前に知っておきたい基礎知識を解説します。
障害認定とは?障害認定がないと受けられないサービス
障害認定とは、障害者手帳や障害年金、障害福祉サービス、自立支援医療などの制度の対象者であるかどうかを、公的な基準で確認する手続きです。「障害認定=障害者手帳の取得」というイメージがありますが、広い意味では、支援制度の利用を認定してもらう手続き全般を指します。
各種の制度で認定を受けると、以下のようなさまざまなサービスや制度を活用できるようになります。
| 種類 | 障害認定を受けると利用できるサービスや制度の一例 |
| 障害者手帳 | ・自治体の福祉サービス・交通機関や公共施設の割引・障害福祉サービスの利用につながる支援 |
| 障害年金 | ・年金の受給・生活費の補助 |
| 障害福祉サービス | ・就労移行支援、自立訓練(生活訓練)などの利用・生活支援、介助・福祉施設の短期入所 |
| 自立支援医療 | ・医療費の自己負担の軽減 |
| 障害支援区分 | ・障害福祉サービスの利用が可能・自立支援給付の受給 |
実際には、障害の診断名や度合いなどに応じて区分や等級などがあり、利用できるサービスや制度が変わってきます。
障害支援区分について詳しく知りたい方は、下記の記事も合わせてご覧ください。
関連記事:障害支援区分とは?手続きの流れや調査項目、利用できるサービスを解説
障害認定はどんな人が受けられる?発達障害でも受けられる?

障害認定の対象者は、それぞれの制度によって異なり、「この診断名なら一律に認定される」というものはありません。
例えば、障害者手帳の一つである精神障害者保健福祉手帳では、精神の障害が主に次の7つに区分されています。
- 統合失調症
- うつ病、そううつ病などの気分障害
- てんかん
- 薬物依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害*(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害など)
- そのほかの精神疾患(ストレス関連障害など)
2010年の制度改正により、発達障害は精神障害者支援の対象に含まれました。
障害者手帳は、日常生活や社会生活を支えるための制度です。そのため、単に診断名だけでなく、「日常生活や社会生活でどのくらい困りごとがあるか」という点も基準に含まれます。同じ診断名であっても、「通院や服薬を続けられるか」「身の回りのことを無理なく行えるか」などを総合的に評価されて等級が決まるのが特徴です。
このように、障害認定は「その制度を本当に必要とする方」に支援が届くように行われています。後ほど紹介するように、障害の診断がなくても日常生活や社会生活に困りごとがあれば利用できる制度もあります。
障害者手帳の種類と申請方法
障害者手帳の種類は以下の3種類です。対象者や区分、申請方法などの違いをまとめました。
| 手帳の種類 | 主な対象 | 区分 | 申請方法(概要) |
| 身体障害者手帳 | 身体機能に一定以上の障害がある方 | 1~6級(7級のみ単独では対象外) | 1.市区町村の担当窓口で申請2.指定医の診断書・意見書などを提出3.審査後に交付 |
| 療育手帳(愛の手帳など) | 知的障害があると判定された方 | A・B(自治体で細分化あり) | 1.市区町村の担当窓口で申請2.児童相談所や知的障害者更生相談所などの判定を受ける3.審査後に交付 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 一定程度の精神障害の状態にある方 | 1~3級 | 1.市区町村の担当窓口で申請2.診断書または障害年金証書の写しなどを提出3.審査後に交付 |
スムーズに認定を受けるためにも、事前に担当窓口で申請方法を教えてもらっておくとよいでしょう。
『障害者手帳』と『自立支援医療(診断書)』で受けられるサービスの違い
「障害者手帳」と「自立支援医療(精神通院医療)」は、どちらも精神障害のある方の支援に関わる制度ですが、両者の役割や支援内容は大きく異なります。
違いを以下にまとめました。
| 項目 | 障害者手帳 | 自立支援医療(精神通院医療) |
| 主な目的 | 生活支援・社会参加の後押し | 通院医療費の負担軽減 |
| 税金の控除 | 可能 | – |
| 公共交通機関などの割引 | 可能 | – |
| 医療費の負担軽減 | – | あり(原則1割負担、所得に応じ上限あり) |
| 障害者雇用枠への応募 | 認められる場合が多い | 受給者証だけでは認められない場合が多い |
| 障害福祉サービス | 利用しやすくなる | 直接的に関係なし |
このように、障害者手帳はさまざまな支援を受ける「証明書」のような役割を果たすのに対し、自立支援医療は、通院医療費の自己負担を軽くするための制度です。
「手帳がないと就労移行支援は使えない」は誤解
先述したように、障害福祉サービスを受けるためには障害者手帳が役立ちます。しかし、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)などのように、障害者手帳が必須でないサービスも多くあります。
障害福祉サービスの利用で必要なものは、障害者手帳ではなく、自治体が交付する「障害福祉サービス受給者証」です。受給者証は医師の意見書や通院状況などをもとに申請できるため、手帳未取得の方でも利用しやすい仕組みになっています。
就労移行支援は「障害者の方のための制度」ではありますが「障害者手帳がなければ利用できない」というわけではありません。
Kaienでは障害者手帳なしで利用を開始する方もいる
実際、発達障害や精神障害の方向けの就労移行支援に強みのある「Kaien」では、障害者手帳をお持ちでない方が数多く利用しています。また利用開始後に、ご自身の特性についての理解を深めたり、障害者雇用枠での就職を希望したりして、障害者手帳の取得を検討する方も珍しくありません。
例えば、発達障害のグレーゾーンの方々は、明確な診断基準を満たさないものの、発達障害の特性を持っています。こうした方でも「一般的な就労支援では就職が難しいので就労移行支援を利用したい」などの理由で申請して自治体に認められれば、障害者手帳がなくてもご利用が可能です。
Kaienでは個別相談会を随時受け付けています。障害福祉サービス受給者証の申請手続きからサポートしますので、お気軽にご相談ください。
障害認定を受けるメリット・デメリット
障害認定を受けると、日常生活や社会生活で必要な支援につながりやすくなるのがメリットです。ご本人だけでなく、ご家族の負担を軽くできる場合もあります。
【障害認定全般のメリット】
- 就労や生活支援など、公的なサポートにつながりやすくなる
- 自分の状態に合った配慮や制度を利用しやすくなる
- 医療費の助成や生活費の補助につながる場合がある
- 税金の控除や減免、各種割引を受けられる場合がある
- 家族だけで抱えず、支援機関とつながるきっかけになる
一方、申請手続きや気持ちの面で障害認定を負担に感じる方もいるでしょう。
【障害認定全般のデメリット・注意点】
- 申請に時間や手間がかかる
- 更新が必要な制度では、定期的な手続きが必要になる
- 取得しても、すべての支援や割引が自動で使えるわけではない
- 診断書代などの費用がかかることがある
障害認定を受けるかどうかはご本人の自由ですので、メリット・デメリットを比べながら選ぶとよいでしょう。
障害認定を受けなくても利用できる支援
障害者手帳を持っていなくても利用できる支援制度は多くあります。「手帳がないから何も相談できない」などと思い込まず、まずは今の悩みに合う支援制度がないか探してみるとよいでしょう。
ここでは、障害のある方が就職・復職を目指す際や、就労前の準備としてまずは生活を整えたいときに活用できる支援として、「就労移行支援」「リワーク」「自立訓練(生活訓練)」の3つを紹介します。具体的な活用イメージが浮かぶよう、Kaienが実際に提供しているプログラムも交えながら解説します。
就労移行支援
就労移行支援は、障害のある方が一般就職に向けた訓練や就活サポートを受けられる公的な障害福祉サービスです。利用にあたって必ずしも障害者手帳は必須ではなく、お住まいの自治体から発行された障害福祉サービス受給者証があれば利用できます。
就労移行支援は認定を受けた民間事業者が運営しており、事業所ごとに特色が異なります。Kaienの就労移行支援は、発達障害や精神障害の方、およびこれらのグレーゾーンの方の支援に強く、高い実績を持っています。
【Kaienのプログラム例】
- 医療との連携も含め、困りごとや課題を整理するカウンセリング
- 得意・不得意を整理し、適職探しにつなげる支援
- 100種類以上の職種の実践的な職業訓練
- 応募書類の添削、面接練習などの就活支援と200社以上の求人紹介
- 就職後の困りごとの相談に乗る定着支援
これらの支援によって、参加者の就職率は86%(全国平均は54%)、就職後半年の定着率は95%(全国平均は70%未満)と、高い実績を持っています。
詳しくはこちらをご覧ください。
リワーク
リワークは、休職中や離職後の方が、もう一度安心して働ける状態を目指すための復職支援です。
リワークには医療機関や一般企業が提供するものなど幾つかのタイプがありますが、Kaienの「こころのリワークセンター」は、福祉リワークの枠組みで提供しています。障害福祉サービス受給者証や医師の意見書などがあれば、障害者手帳は必要ありません。
【Kaienのプログラム例】
- 自分の強みや不調の背景を整理するための自己理解講座
- ストレス対処や感情の扱い方を学ぶセルフケア&メンタルケアプログラム
- 個人ワークやグループワークを通じて職業スキルを高める実習
- 復職・転職後に長く安心して働き続けるための定着支援
詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
自立訓練(生活訓練)
自立訓練(生活訓練)は、生活リズムや対人関係、感情の整理など、日常生活の土台を整えるための障害福祉サービスです。すぐに就職を目指すというより、まずは心身を整えたい方、生活の立て直しからはじめたい方に向いており、障害福祉サービス受給者証があれば利用可能です。
Kaienの自立訓練(生活訓練)は、科学的なアプローチに基づいて、発達障害やうつ、適応障害などの特性に合う働き方や生き方を探すプログラムを提供しているのが特徴です。
【Kaienのプログラム例】
- ストレスや不安への対処法を学ぶ講座
- 無理のない睡眠と生活リズムを整えるための支援
- 片付け・金銭管理・スケジュール管理などの生活スキルを高めるプログラム
- コミュニケーションや人間関係の構築を身に付ける練習
- 次の進路を考えるための進路相談(職場見学や体験も含む)
詳しい情報は以下のリンクからご覧になれます。
障害認定を受けるか検討している方によくあるFAQ
Kaienでは障害認定を受けるか迷っている方から、いろいろなご質問をいただきます。ここでは、その中から特によくある質問にお答えします。
障害認定を受けるには、まず何からはじめればよいですか?
まずは、かかりつけの医師に相談してみてください。障害の有無や度合いなどで、利用できる制度や支援内容が変わります。
障害認定を受ける流れは、どの制度でも基本的に以下の4ステップです。
- 医療機関で診断を受ける
- 利用したい制度を確認する
- 必要書類を準備する
- 自治体へ申請する
もしまだ通っている医療機関がない場合は、受診先を決めるところからはじめるとよいでしょう。自治体によっても異なりますが、保健福祉課(保健福祉センター)では、精神科医師・精神保健福祉相談員・保健師などが障害や心の病の相談に乗っており、医療機関の紹介を受けられる場合もあります。
「自分は発達障害・うつ病なのでは?」「現場ではどんな支援を受けられるの?」などの情報収集からはじめたい方は、以下のKaienのサービスもご活用ください。

精神障害者保健福祉手帳の申請にはどれくらい時間がかかりますか?
精神障害者保健福祉手帳は、申請してすぐに受け取れるものではなく、おおむね2〜3か月が目安です。
診断書の内容確認や自治体での審査に時間がかかるため、使いたい時期が決まっている場合は、少し早めに動いておくと安心です。更新時も同様に審査があるため、同じくらいの時間がかかることがあります。自治体によっても期間は前後するため、公式サイトなどで最新情報を確認しておきましょう。
Kaienの就労移行支援では、障害者手帳の取得スケジュールや申請について個別に支援しています。手続きの進め方に不安がある場合は、ご相談ください。
障害者手帳の取得を迷っている段階でも、就労の相談はできますか?
障害福祉サービスは、障害者手帳がなくても、障害福祉サービス受給者証があれば就労支援や進路相談などのサービスを受けられます。
Kaienの就労移行支援やリワーク、自立訓練(生活訓練)も、手帳の有無にかかわらずご利用できます。なお、Kaienでは障害福祉サービス受給者証の申請手続きについてもサポートしていますので、ご相談ください。
ハローワークの障害者専門窓口や地域障害者職業センターも、相談そのものに手帳は必須ではありません。ただし、障害者雇用枠での応募や制度利用では、手帳などの確認書類が必要になることがあり、利用できる制度や応募できる求人に違いが出る場合があります。
障害認定を受けると、職場や周囲に知られてしまいますか?
障害者手帳や障害福祉サービス受給者証などを取得しても、ご本人が伝えない限り、職場や周囲に知られることは通常ありません。
医療情報や申請情報は慎重に取り扱うべき個人情報にあたるため、本人の同意なく第三者に提供してはいけない決まりになっているからです。
ただし、障害者雇用枠で応募するときは、手帳の確認を求められる場合があります。また、年末調整で障害者控除を受ける場合は、会社に申告する過程で知られる可能性に注意が必要です。
そのほか、障害に対する合理的配慮を職場や学校などに求める際は、障害者手帳や医師の診断書などを任意で提出したほうが、状況を理解してもらいやすい場合があります。
障害認定の申請は自分一人でも進められますか?
ご自身で進めることは可能です。ただし、以下の点で手間や負担を感じる方もいます。
- 制度の選択:どの制度が今の困りごとに合うかを見極めるのが難しい
- 必要書類の準備:申請書類やサービス利用計画書などの書き方がよくわからない
- 医師との連携:診断書や意見書を作成してもらうように依頼する
- 申請手続き:どの窓口にいつまでに行けばよいかわからない
このため、迷った場合は専門機関へ相談するのもよい方法です。
Kaienでは、行政手続きの相談支援も行っています。準備段階の負担や不安を減らしながら、スムーズに就労移行支援や自立訓練(生活訓練)などの利用を開始できます。
障害認定を受けるか検討している方はKaienに相談を

「障害認定=障害者手帳の取得」というイメージがありますが、手帳がなくても利用できる制度は多くあります。ご自身の障害や受けたい支援などに応じて、申請手続きをしていきましょう。
Kaienでは障害福祉サービスとして、一般就労を目指すための「就労移行支援」、復職や自分らしい働き方を見つけるための「リワーク」、就労前に生活を整える「自立訓練(生活訓練)」を提供しています。いずれも障害者手帳は不要で、お住まいの地域の自治体から障害福祉サービス受給者証を受ければご活用いただけます。
Kaienは、2009年の創業以来、ニューロダイバーシティ社会の実現を目指して事業を行ってきた会社です。科学的なアプローチを重視し、当事者の視点で丁寧に向き合っています。「障害を治さないと働けない」と不安をあおることも、「発達障害なら誰でも天才」といった無責任な楽観に寄りかかることもありません。現実を見つめつつ、その方に合った方法を一緒に考え、前向きな一歩を踏み出すサポートをいたします。
申請手続きからサポートしていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。
監修者コメント
精神障害者保健福祉手帳(以下「手帳」)は、就労継続支援(A型、B型)や就労移行支援の利用、および障害者枠での就労に利用できます。厳密には障害者枠での就労以外は、「障害福祉サービス受給者証」があれば利用できるのですが、コラム本文にあったように手帳には所得税・住民税の控除や、併せて申請すれば自立支援医療を受給できるなど、多くのメリットがあります。実際、私のクリニックで拝見している患者さんの多くは、長期の受診になると手帳の発行を希望されます。
手帳を作ると2年ごとに更新が必要な点や、精神病圏(統合失調症、(躁)うつ病、発達障害)でない疾患については、「重度かつ継続に関する意見書」(東京都では別紙になっています)が必要になるなど、やや複雑なシステムですので最初は分かりにくいと思います。ご不明な点はスタッフ、主治医、あるいは自治体職員にお聞きになると良いでしょう。

監修:中川 潤(医師)
東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。



