
就職・転職を目指す発達障害の方のなかには、「資格を取得して採用の可能性を高めたい」「実務に役立つスキルを身に付けたい」とお考えの方も多いでしょう。
しかし、資格の種類は多く、どれが希望する業種や職種に適しているのか迷うかもしれません。ご自身の特性に合った資格を選びたい方もいるでしょう。
そこで本記事では、発達障害の方におすすめの資格を分野別に紹介し、取得のメリットや活用できる職種、資格の取得に利用できる支援制度について分かりやすく解説します。
目次
発達障害の方が資格を取得するメリット
発達障害の方が資格を取得するメリットを整理すると、大きく以下の2つが挙げられます。
- 就職や転職に役立つ
- スキルアップやキャリアアップにつながる
資格の取得は就職や転職という短期的な目的に役立つだけではなく、スキルアップやキャリアアップといった、人生を通して役立つメリットも兼ね備えています。それぞれのメリットを深掘りしてみましょう。
就職や転職に役立つ
資格が就職や転職活動において重要だといわれる大きな理由は、実務に役立つ特定のスキルや知識があることを証明できるためです。たとえば、事務職や会計職を目指す場合、MOS(Microsoft Office Specialist)や日商簿記検定などが評価される傾向にあります。
さらに、資格取得の過程で学んだ内容を実務に活かせるので、即戦力として活躍できる可能性が高まります。仕事に慣れるまでの期間を短縮するためにも、資格の取得は有効です。
スキルアップやキャリアアップにつながる
資格取得の過程で得たスキルや知識は、自分の一生涯の財産になります。さらに、積み重ねてきた経験が成長を感じさせてくれるので、自分自身に対する自信を高める効果も見込めます。
また、簿記や語学関連といった幅広い分野で活用できる資格は、専門分野でのスキルアップだけでなく、異業種への転職や昇進にも役立つため、長期的なキャリアの選択肢を広げる手助けにもなるでしょう。
発達障害の方の就職や転職に役立つ資格18選
ここからは、発達障害の方におすすめの資格を18種類ご紹介します。今回は、基礎的な業務で役立つものや、幅広い分野で活用できる資格を中心に選びました。
- 事務・パソコンスキル系
- MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)
- 日商簿記検定
- 日商PC検定
- タイピング技能検定
- 秘書検定
- ビジネス文書検定
- ビジネス実務マナー検定
- コミュニケーション検定
- IT・語学スキル系
- ITパスポート
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
- Python 3 エンジニア認定基礎試験
- Javaプログラミング能力検定
- 情報セキュリティマネジメント試験
- Webクリエイター能力認定試験
- TOEIC
- 福祉・心理系
- メンタルヘルスマネジメント検定
- ピアサポーター
それぞれ、取得するメリットや向いている職種などを見ていきましょう。
事務・パソコンスキル系
一般事務や経理、総務、人事などへの就職・転職を目指す方に特に役立つのが事務・パソコンスキル系の資格取得です。代表的な資格を紹介します。
MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)
MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)は、Microsoft Office製品に含まれるWord、Excel、PowerPointなどの実務スキルを証明する資格です。特に事務職や営業職において高く評価される傾向にあり、近年はリモートワークの普及やITリテラシーの重要度の高まりなどから、この資格の注目度が増しています。
また、試験の難易度は一般と上級(エキスパート)に分かれており、自分のレベルに合わせて挑戦可能です。目安となる学習時間はおおむね40~80時間といわれています。
日商簿記検定
日商簿記検定は、会計や経理業務に不可欠な会計の基礎や、企業の財務状況を把握する知識などを身につけることができる資格です。試験は簿記初級、3級~1級、原価計算初級まであり、就職で必要とされるのは3級または2級が一般的です。
経理職や総務職では、資格を持っていることが前提の求人も多いので、これらを目指す方は求人の傾向から目指すべき級を確認して、早めに勉強に取り掛かりましょう。近年では、IT会計の普及に伴い簿記の知識が求められる場面も増えています。
独学でも取得は可能ですが、3級と2級では難易度が大きく変わるため、2級を目指す方はスクールを選択肢に入れてもよいでしょう。学習時間の目安は、3級が100時間前後、2級が250時間前後といわれています。
日商PC検定
日商PC検定とは、企業実務で欠かせない文書作成(Word)・データ分析(Excel)・プレゼン資料作成(PowerPoint)の力を、知識を問うテストと実技で測る民間試験です。3級は基本的なパソコンとITの活用、2級は部門運営を支える実務スキル、1級は意思決定に活かす高度なスキルが問われます。
日商PC検定ではデスクワークの必須スキルを学べるため、業種や職種を問わず役立つ資格です。出題内容が明確ですので、あいまいな指示の理解を苦手とする発達障害の方でも勉強しやすい資格といえるでしょう。
合格までの勉強時間は個人差がありますが、毎日4~5時間の勉強により短期間で合格した例があります。
タイピング技能検定
タイピング技能検定は、タイピング速度と正確性を証明する資格です。受験級は8級から特級まであり、初級者から上級者まで年齢を問わず幅広く挑戦可能です。最近では小中学生の受験が増えており、なかには小学生で1級に合格した例もあります。
タイピング技能はもはや必須の技術となっていますが、事務職やデータ入力業務などはタイピングに早さと正確性が求められるため、特級に近い級数を取得できればアピールポイントとして活かせるでしょう。学習期間の目安は個人のスキルによって差が大きいため一概には言えませんが、毎日20分程度ずつ練習して、実力が付いたタイミングで挑戦することをおすすめします。
秘書検定
秘書技能検定は、ビジネスマナーや言葉遣い、報連相など、社会で働くうえでの基本的な立ち居振る舞いを体系的に学ぶ試験です。「秘書」と名前が付いていますが、秘書だけでなく、就職を控えた学生や新人社員、転職活動中の社会人にも人気があります。
就職や転職に役立つとされるのは2級以上です。2級は電話対応や優先順位の付け方などのビジネスの対応力が問われ、準1級は面接試験を含めた実践的な試験、1級は上級者や管理職向けの試験となっています。
合格までの勉強時間は2級で20〜70時間が目安です。比較的短期間で資格を取得したい方に向いています。
ビジネス文書検定
公益財団法人 実務技能検定協会のビジネス文書検定は、社会人として必要な「正確で分かりやすい文書」を書く力を測る検定です。仕事では、報告書・案内文・メールなどの文書を書く機会が多くあります。文書の型や敬語の使い方、相手に伝わる文章構成を学べるため、新入社員や学生にも人気があります。
3級はあいさつ・敬語・メール文などの社会人文書の基本が問われます。2級は報告書・案内状などの実務的な文書、1級は文書の添削や提案書作成など応用的な内容の試験です。
ビジネス文書検定は、一般事務や経理、法務、人事などの文書作成の機会が多い部署に就きたい方に特に役立つ資格です。また、読み・書きが苦手な学習障害(LD)の方は、ビジネス文書の「型」を学ぶことで業務が円滑になる効果を期待できます。
ビジネス実務マナー検定
ビジネス実務マナー検定とは、職場で求められる判断や行動、対人関係、電話対応、技能などのビジネスマナーを体系的に学べる資格です。
ビジネスマナー検定は採用に直接有利に働くというよりは、面接での受け答えや振る舞いで好印象を与えたいときに役立つ資格です。発達障害の方は社会の「暗黙知」を理解しにくい傾向があるため、この苦手分野を減らす勉強としても取り組めるでしょう。
検定は1~3級に分かれ、いずれも独学での合格を目指せます。合格までの勉強時間は、社会人としての実務経験によって差が出ます。
コミュニケーション検定
株式会社サーティファイのコミュニケーション検定は、相手の状況を理解し、自分の意思を場面に応じて分かりやすく伝えるスキルを認定する民間資格です。
営業や接客業など、顧客や関係者との会話が多い職種への就職において有利に働きやすいといえるでしょう。また、コミュニケーションを苦手とする発達障害の方は、苦手分野の克服に役立てられます。
初級は「話す」「聞く」において円滑な対話ができるレベルに設定されています。また、上級は言語・非言語を使い分けたコミュニケーションや、自分の考えや主張を伝達できるレベルです。
合格までの勉強時間は個人差がありますが、初級はビジネス会話の基本フレーズや状況判断の反復により短期間で合格する例もあります。一方、上級では面接試験があるため実践的な訓練も必要です。
IT・語学スキル系
厳密な作業や集中力を要する業務に強みを持つ発達障害の方は、ITや翻訳など、個人作業が中心となる職種で力を発揮します。こうした分野への就職・転職に役立つ資格をご紹介します。
ITパスポート
ITパスポート試験は、情報技術の基礎知識を幅広く学び、その理解度を証明する国家資格です。ITの基礎知識があることをアピールできるのはもちろん、ITツールの活用が進む昨今においては、取得によりキャリアアップやポジションの獲得にも効果が期待できます。
試験範囲は、情報セキュリティやネットワーク、システム開発などのIT分野に加え、経営戦略や法律関連といった企業活動に必要な知識まで、網羅的に含まれています。
難易度は初心者や非IT技術者向けに設定されており、これからIT分野に携わりたい方や、職場でのデジタルスキルを向上させたい方に最適です。学習時間の目安は100時間程度といわれています。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、情報技術の基礎知識を幅広く学べる試験で、ITエンジニアの登竜門ともいわれています。企業活動やマネジメントの基本知識も問われるため、業務効率化やプロジェクト管理に役立つスキルも身につけられます。
試験範囲は、コンピュータシステムやネットワーク、データベース、情報セキュリティ、アルゴリズム、プログラミングなど、IT業界で必要とされるスキルを網羅しています。受験資格は特に制限がなく、学習時間の目安は200時間前後といわれています。
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験はITの設計・運用だけでなく、マネジメントや経営戦略まで含めた応用力を認定する国家試験です。基本情報技術者試験の上位の資格に位置づけられています。
応用情報技術者試験は、実務で主体的に課題解決を進める中堅エンジニアや、要件定義・設計を担いたいエンジニアなどが受験しています。資格を取得できれば、採用が有利になる効果を期待できるでしょう。
その分、難易度は高く、初学者は500時間程度、実務経験者でも200時間程度の勉強が必要とされています。
Python 3 エンジニア認定基礎試験
PythonはWebアプリケーション、組み込みアプリケーション、AI、データサイエンスなど幅広い分野に使われているプログラミング言語です。Python 3 エンジニア認定基礎試験は、Pythonの文法基礎を中心に問う入門的な民間試験です。
たとえば、IT業界に興味がある方や、未経験でIT業界に転職したい方などがPython 3 エンジニア認定基礎試験を受験しています。合格までの勉強時間は20~40時間という声が多いですが、プログラミング経験や数学の知識などで大きく変わると考えておきましょう。
Javaプログラミング能力検定
Javaプログラミング能力検定はJava言語を用いたプログラム作成力を認定する民間試験です。3級は基礎知識と簡単なプログラム、2級は小規模システム開発、1級は設計・保守の実技を中心に出題されます。
合格までの勉強時間は、初学者が3級を受ける場合、約100〜150時間が目安です。過去問題やサンプルプログラムを繰り返すと合格点に近づきやすくなるでしょう。
自閉スペクトラム症(ASD)の方のなかには、論理的思考が求められるプログラミングが得意な方が多いといわれています。こうした方は、より短時間での合格も目指せるでしょう。
情報セキュリティマネジメント試験
情報セキュリティマネジメント試験は、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験の一つです。情報セキュリティを運用・評価・改善して組織の情報セキュリティ確保に貢献できるスキルを認定します。
資格を取得すると、IT業界への就職のほか、情報システム部門や個人情報や社内データの扱いが多い部署への就職で有利になります。専門的な内容が出題されるため、合格には200時間程度の勉強時間が必要です。
一般的には、ITパスポートや基本情報技術者試験に合格した後に、情報セキュリティマネジメント試験に挑戦する流れとなります。
Webクリエイター能力認定試験
Webクリエイター能力認定試験はWebサイト制作に必要なデザイン力・コーディング力を総合的に評価する民間試験です。HTMLやCSSの知識を活用し、Webページを正確に見やすく、使いやすくする人材を認定しています。
「スタンダード」では、HTMLとCSSの基礎構文、レイアウト作成、画像・リンク設定など、Webページを正しく作る力が問われます。「エキスパート」は、構造設計、アクセシビリティ(利用しやすさ)、JavaScriptやSEOの基礎など、より実践的なWeb制作スキルが問われる試験です。
TOEIC
TOEICは、リスニングとリーディングを中心に、英語コミュニケーション能力を評価する国際資格です。スコアに応じて語学力を可視化できるため、英語を活用する職場での採用や昇進に役立ちます。
試験は、リスニングセクション(約45分間・100問)とリーディングセクション(75分間・100問)の全200問で構成され、スコアは10点から990点の範囲で表示されます。学習時間の目安は、おおむね100点上昇させるために200~300時間が必要といわれています。
福祉・心理系
福祉・心理系の資格取得では、発達障害を抱えて生きてきた経験や知識が役に立つ場合があります。また、似たような経験を持つ方をサポートしたいという理由で資格取得を目指す方もいます。
メンタルヘルスマネジメント検定
メンタルヘルスマネジメント検定は、大阪商工会議所が実施する産業保健系の民間検定です。働く人の心の健康や活力ある職場づくりを中心に学べます。
Ⅲ種は一般社員のセルフケアを中心に出題される検定です。Ⅱ種は管理職向けの検定でラインケア(事業所内のケア)を中心に出題されます。Ⅰ種は組織全体の対策を担う層向けの検定で、論述問題もある最難関の検定です。
合格までの勉強時間の目安は、Ⅲ種が10〜20時間程度、Ⅱ種が30〜50時間程度といわれています。発達障害に関連してセルフケアを学ぶ機会があった方は、特にⅢ種を取得しやすいでしょう。
ピアサポーター
ピアサポーターとは、自身の障害や病気の経験を活かし、同じ立場の人を対等に支える当事者支援者です。ピアは「仲間」という意味で、伴走サポートが基本となります。
ピアサポーターになるには特に資格は必要なく、統一された資格もありません。自治体や団体が養成講座・研修を実施し、修了や登録で認定されるのが一般的です。
たとえば、東京都障害者ピアサポート研修事業では、障害や疾病をお持ちの方が、その経験を活かしながら障害者をサポートする活動を支援しています。また、京都府のがんピアサポーター養成では、がんに特化したピアサポーターを育成しています。

発達障害の方が資格を取得するときの注意点
まず最初に気を付ける点が、特定の条件に当てはまる場合に資格を取得できない「欠格条項」です。これは、資格保有者に求められる社会的責任や業務遂行能力を考慮したもので、薬剤師や医師などの資格は、一定の精神的な障害や身体的な制約がある場合、欠格条項に当てはまる場合があります。
そのため、資格取得を目指す際には、あらかじめ受験資格や欠格条項の確認が必要です。
また、働きながら資格の取得をする場合は、資格取得に気持ちが向きすぎることで仕事に影響が出ないように気を付けましょう。あくまで勤怠の安定を最優先に、可能な範囲で資格取得に取り組む姿勢が大切です。
発達障害の方の資格選びのポイント
発達障害の方が資格取得を目指す場合、まず以下の3点を前提に資格を選びましょう。
- 自分の特性に合うものを選ぶ
- 目的や将来像を意識する
- 需要のある資格か見極める
資格の取得は「できること」「やりたいこと」「求められること」の3つのバランスが大切です。どれか1つに偏っていると、どこかで無理が出る可能性があります。それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
自分の特性に合うものを選ぶ
まずは「できること」から考えましょう。発達障害の方の場合、特性によって得意・不得意があるため資格内容が特性と合わない場合、難易度が大きく上がる可能性があります。逆に、特性との相性が良ければ、取得がスムーズに進むでしょう。
たとえばASD(自閉スペクトラム症)の方は、論理的思考や集中力を活かせる分野が適性に合う場合が多いなど、自分に合う資格選びが重要です。
大人の発達障害の種類や特徴については、以下の記事で詳細をまとめています。資格を選ぶ参考に、一度チェックしてみてください。
目的や将来像を意識する
次に「やりたいこと」です。自分が理想とする働き方を具体的にイメージすることで、必要な資格が自然と見えてきます。また、「自分が目指す自分」をイメージすることも、行動の原動力になってくれるでしょう。
たとえば「事務職で安定的に働きたい」という目標がある場合は、MOSや日商簿記が選択肢となり、「国際的なキャリアを築きたい」という場合には、TOEICやITパスポートが選択肢になります。
需要のある資格か見極める
最後に「求められること」です。市場のニーズが高い資格を取得すれば、それだけチャンスが広がります。特に、転職やキャリアアップを考えている場合、企業が求めるスキルや資格をリサーチしてから資格を選びましょう。
たとえば、IT分野ではITパスポートや基本情報技術者試験の需要が高く、事務系では簿記やMOSが継続して求められる傾向にあります。ただ、資格の需要は時代や業界の変化によって変わるため、最新のトレンドや雇用市場の情報を定期的にチェックすることも大切です。
発達障害の方が利用できる資格取得支援制度
最後に、発達障害の方が資格を取得する際に利用できる支援制度を紹介します。
- 就労移行支援
- 障害者職業能力開発校
- 教育訓練給付金制度
これらは資格の取得をサポートしてくれるだけでなく、経済的な負担を軽減する効果も期待できます。それぞれの概要やメリット、有効な場面などを解説します。
就労移行支援
就労移行支援は、障害がある方が一般就労を目指すための障害福祉サービスです。全国の就労移行支援事業所に通所し、職業訓練や就活に関するアドバイスを受けることで、就労に必要なスキルや知識を習得していきます。
利用対象者は、18歳から65歳までの障害がある方で、サービス内容は、大きく職業訓練、就職活動支援、就職後の定着支援の3つから構成されています。
Kaienでも発達障害の方に特化した就労移行支援を行っており、資格取得のためのサポートも実施しています。カリキュラムにはパソコンの基礎的スキルの習得も含まれており、タイピングやMOS、ITパスポートなど、資格取得に向けた勉強もアシストしています。資格取得と就職支援を一体で受けられる、手厚い支援が特徴です。
障害者職業能力開発校
障害者職業能力開発校は、国や都道府県が設置・運営する、障害のある方が就職に必要な知識や技術を習得するための職業訓練施設です。情報処理や製造業、サービス業など多様な分野の訓練コースがあり、個々の障害特性に応じた指導や就職支援、職場定着サポートなどが受けられます。
入校の基本的な条件は、身体または精神に障害があることですが、詳細な要件や提供されるコース内容は各校で異なります。なお、訓練期間は通常1年間ですが、1年未満の短期コースが用意されている場合もあります。授業料は無料ですが、教材費や生活費は基本的に自己負担です。
教育訓練給付制度
教育訓練給付制度は、能力開発やキャリア形成の支援のために、資格取得の学習費用を一部補助する制度です。雇用保険に加入している方が対象で、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されます。対象となる講座は、簿記やIT系資格、語学資格など幅広く用意されています。
給付の対象となる教育訓練は、専門実践教育訓練、特定一般教育訓練、一般教育訓練の3種類に分類され、それぞれ支給率や上限額が異なります。
【事例紹介】就労移行支援でMOSを取得し事務職へ就職
当時20代半ばのTさんは、自閉スペクトラム症(ASD)の特性をお持ちでした。突発的な状況への対応やマルチタスクが苦手で専門学校を中退。その後、スーパーで4年アルバイトとして働き、職場環境は良好でしたが、昇給や正社員登用の道が見えずに悩んでいました。
転機となったのはKaienの就労移行支援への通所です。週替わりコースでデータ入力やグループワーク、営業ゲームのロールプレイなどを経験し、職業スキルを着実に身に付けていきました。さらに、表計算や実務スキルを学びMOS(エキスパート資格)に合格しました。
その結果、Kaienの面接対策や就活アドバイスなどもあって、障害者雇用の事務職に内定。職業訓練と資格取得は実務的なスキルを得るだけでなく、自信を取り戻すうえでも良い影響があったということです。
訓練で身につけた自己分析や、取得した資格が自信に!仕事を続けて、フルタイムを目指す
発達障害の方の資格取得は支援制度の活用を
資格取得は、スキルの取得やキャリアアップのチャンスを広げる大きな一歩です。しかし、発達障害がある場合は難易度が高いものも多いため、専門機関や支援制度を頼ることをおすすめします。
あなたの可能性をいち早く広げるためにも、効果的、効率的な資格取得方法を選択しましょう。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。
監修者コメント
資格を取ること、というのは幾つも良い点があるので、余裕があれば是非やってみることをお勧めします。良い点として、本記事に書いてあるとおり、色んな資格それぞれの良さもあるのですが、何より目標を持てることは大きいでしょう。多くの資格試験は「やるべきこと(出題範囲や対策)」が具体的で明確です。これは曖昧な指示が苦手な方にとって、取り組みやすいといえるでしょう。学習のプロセス自体が、毎日の生活にリズムや達成感をもたらし、結果として自己肯定感の向上にもつながります。もちろん無理のない範囲で構いませんが、興味のある分野であれば、ぜひ資格取得に挑戦してみることをおすすめします。

監修 : 松澤 大輔 (医師)
2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。



