
皆さんは自助会や当事者会に参加したことはあるでしょうか?聞いたことはあるけれど参加したことはない、特に興味がないという方も多いのではないでしょうか?
実は自助会・当事者会への参加には大きなメリットがあり、あなたの幸福につながるヒントが見つかるかもしれません。
2025年5月26日にKaienが開催した特別セミナーでは、横道誠先生をお招きし、自助会・当事者会の効果についてウェルビーイングの視点も踏まえお話しいただきました。
本記事では、自助会・当事者会の説明、その効果と可能性について研究や現場の知見を交えて解説します。
※本記事は、2025年5月26日に行われたKaien特別セミナーを分かりやすく編集した記事です。より詳細な内容は、ぜひ以下のウェビナー動画をご覧ください。
自助会・当事者会は効果があるの?~当事者の「生きた経験」から生まれるウェルビーイング あなたにとっての「よりよい」回復を見つけるヒント~ 講師:横道誠先生(京都府立大学文学部 准教授)
講師:横道誠先生(京都府立大学文学部 准教授)
聞き手:鈴木慶太(株式会社Kaien 代表取締役)
目次
自助会・当事者会とは?「ニューロマイノリティ」が集う場
自助会(自助グループ)・当事者会とは、共通の悩みや困難を抱える人々が自主的に集まり、経験や感情を共有し、互いに支え合うグループ活動のことです。
近年、発達障害は「ニューロダイバーシティ」(脳の多様性)という視点から捉え直され、「脳のあり方が多数派(ニューロマジョリティ)か少数派(ニューロマイノリティ)か」という数の問題として捉える考え方が提唱されています。
定型発達者は日常的に自分と似た「ロールモデル」を発見しやすいですが、発達障害者にとってはそうした機会が少ないため、自助会で得られる共感と学びは極めて大きなメリットとなります。
発達障害の自助グループは、世間では1割以下と認知度は低めですが、多くの学びが得られるため、ニューロマイノリティが集まるまさに「奇跡の場」なのです。
自助会・当事者会の主な活動とは?
今回、ご登壇いただいた横道先生が自助会で実践されている代表的な活動を2つご紹介します。
①当事者研究
同じ苦労を抱える仲間と共同で、苦労の仕組みを研究する取り組みです。ソーシャルスキルトレーニング等を活用しながら、困り事や悩みを可視化し、解決策を共同で見出していきます。当事者研究の究極のテーマは「和解の創造」であり、「対立から共生へ、議論から対話へ、治療から研究へ」を目指します。
また、当事者研究によりもたらされる効果は以下のようなことが挙げられます。
- 「諦める」ことの利点を知ることができる(精神的負担の軽減)
- 苦手なことや弱みをオープンにできる(アウトソーシングへの心理的抵抗が下がる)(福祉サービス(ホームヘルパーなど)を積極的に利用する「アウトソーシング」を実践できるようになる)
- ネガティブな状況をポジティブに捉え直す「リフレーミング」ができる
- 「脳のあり方が少数派なだけ」と本質的に捉えることによる「自己肯定感の向上」を図ることができる

②オープンダイアローグ的対話実践
フィンランドで開発された対話重視の精神療法で、もとは統合失調症のセラピーとして利用されていました。精神的な危機にある患者とその家族、そして医師をはじめとする治療チームがフラットな立場で対話を繰り返すことで、問題解決と回復を導き出していきます。
また、オープンダイアローグ的対話実践には「即時対応」「社会的ネットワークの重視」「柔軟性・機動性」「責任」「心理的連続性」「不確実性に耐える(ネガティブ・ケイパビリティ)」「対話そのものを目的とする」という7つの原則があります。
自助会・当事者会への参加でウェルビーイングを
自助会・当事者会への参加は、ウェルビーイングの向上につながります。
ウェルビーイングとは「心身ともに健康で、社会的に満たされた状態」を意味し、単に病気ではない状態にとどまらない、広範な幸福や満足感を指します。
ギャラップ社が提唱している5つのウェルビーイングの要素は以下の通りです。
①仕事を楽しんでいる
②良い人間関係を築いている
③経済的に安定している
④心身の健康を謳歌している
⑤地域社会に貢献している
これらは、自助会・当事者会の活動を通じて全て満たされる可能性があるのです。
例えば、アサーティブコミュニケーションの改善は仕事や人間関係を円滑にします。また、発達特性を持つ仲間同士との交流は良い人間関係を築き、リフレーミングや自己肯定感の向上は心身の健康に寄与します。そして、自助会・当事者会の存在そのものが「地域社会への貢献」となるのです。

自助会・当事者会 Q&A:不安を乗り越えて一歩を踏み出すヒント
Q. 自助会・当事者会に参加することで得やすいメリットは?
✅ 自助会・当事者会では「似た者同士」が集まるため、共感や理解を得やすく、効果的な話し方を学ぶことができます。
Q. 自助会・当事者会に参加することで「傷の舐め合い」のようになってしまうのでは?
✅ 「傷の舐め合い」や愚痴を言うことも、参加者が潰れないためには重要なことです。ただし、それに終始せず、適度な切り替えをしていくことが大切です。
Q. 自分に合った自助会・当事者会が見つからないときはどうすれば良い?
✅ 一つのグループが合わなかったとしても、すぐに諦めずに複数回、複数のグループを訪ねてみましょう。それでも合わなかった場合は…
「ぜひ自分で自助会・当事者会を作ってみましょう」
自分でルールを作り、居心地の良い場を創出することが最も成功しやすい方法だと言われています。
「生きづらさ」が「幸福」に変わる場所
自助会・当事者会は、共通の困難を抱える人々が、単なる悩み相談に終わらず、「生きづらさの仕組み」を共に研究し、乗り越えるための知恵を交換し合う場です。
ここでは、社会の多数派(ニューロマジョリティ)の中では見過ごされがちな少数派(ニューロマイノリティ)特有の経験が価値あるものとして共有されます。
つまり、自助会・当事者会は、それまでの「生きづらさ」の原因となっていた特性や経験を、仲間とのつながりや学びを通じて「よりよく生きるためのヒント」へと変える、幸福実現の出発点となり得るのです。
このように自助会・当事者会への参加は多くのメリットがありますが、自助会に向かない人もいるため無理はしないことが大切です。
自分が面白さを見いだせる自助会・当事者会に参加すること、それがウェルビーイングに近づく大きな一歩となるかもしれません。

