「ずっとこのままではいけない」——。約10年という長い引きこもり生活を経て、自力で始めた就職活動。しかし、現実は厳しく6社連続不採用という壁に突き当たりました。途方に暮れていた中で出会ったのが、Kaienの自立訓練(生活訓練)でした。
ADHDの特性やコミュニケーションへの苦手意識と向き合い、AIという最新の武器を味方につけることで、ついにインフラ企業の事務職として内定を掴み取った30代男性の、変化と挑戦の軌跡を伺いました。

▼Tさんの簡単なプロフィール
- 年齢:30代
- 診断名:ADHD
- 苦手なこと:臨機応変な対応、耳からの情報の記憶、マルチタスク、スピーチやプレゼン
- 就職先:インフラ系 事務職(障害枠)
- 利用サービス:自立訓練(生活訓練)→ 就労移行支援
目次
薬の副作用と「落ち着きのなさ」に向き合った日々
――― まずは、ご自身の幼少期について伺わせてください。当時はどのようなお子さんだったのでしょうか?
昔はとにかく落ち着きがない子どもでしたね。実は持病でてんかんを持っていて、その治療のために飲んでいた薬の副作用で、ADHD特有の「落ち着きのなさ」のようなものが強く出てしまっていたんです。多動というか、じっとしていられないことが多くて、自分でも苦労した記憶があります。
――― 幼い頃から、病気やその症状と向き合ってこられたのですね。
そうですね。幸い、てんかん自体は20歳の頃に完治しました。ただ、現在の性格を自分なりに分析すると、昔と今ではかなり違うと感じています。今は落ち着きの無さがなくなり、周りから「真面目だね」と言われますし、自分でも「一度決めたことは目標に向かって一心不乱に取り組める」タイプだと思っています。
――― 「周囲とどこか違う」と感じる場面はありましたか?
以前はあまり自覚がなかったのですが、プログラムを受ける中で気づいたことがあります。周りの皆さんはスピーチがとても上手だったのですが、私はどうしても苦手で……。頭の中で話をうまくまとめて喋ることに難しさを感じたとき、「自分には特有の苦手さがあるんだな」と実感しました。
10年の引きこもりと、6社連続の不採用
――― その後、サービスを利用される前まではどのような状況だったのでしょうか。
実は、約10年ほど引きこもりの生活を送っていました。うつ傾向もあり、なかなか外に出ることができない時期が長く続いていたんです。
――― そこから一歩踏み出そうと思ったきっかけは何だったのですか?
ずっとこのままではいけないという思いがあり、利用を開始する半年ほど前から、自力でアルバイトを探し始めました。でも、いざ面接を受けてみると、6社連続で不採用になってしまって。「これからどうしたらいいんだろう」と途方に暮れました。そこで、以前からお世話になっていたNPO法人の理事長に相談したところ、Kaienを紹介していただいたという流れになります。
まずは「生活の土台」を整えることから
――― 最初から就労移行支援ではなく、生活訓練からスタートされたのはなぜですか?
最初は私も、すぐに就労支援に行こうと考えていたんです。でも、スタッフの方と面談をした際に、「まずは生活訓練を経てから就労移行に移ったほうが、最終的に就職がうまくいきやすいですよ」とアドバイスをいただきました。長く引きこもっていたこともあり、まずは生活リズムや体調を整えることが先決だと思い、生活訓練から始めてみることにしました。
――― 実際に生活訓練ではどのようなことに取り組まれましたか?
主に睡眠のリズムを整えたり、「将来どうなっていたいか」という未来像を描く資料作りをしたりしました。あとは、ITの道にも興味があったので、Excelの勉強も並行して進めていましたね。朝の15分で取り組めるデータ入力プログラムを通じて、毎日決まった時間に通う「勤怠の安定性」を養うことができたのは大きな収穫でした。
グループワークの壁と、AIという強力な味方

――― 生活訓練を2年間利用された後、満を持して就労移行支援(新宿拠点)へ移籍されたと伺っています。そこでの経験はいかがでしたか?
新宿拠点では、軽作業やオンライン店舗*の運営に取り組むコースを選びました。特に印象に残っているのは「プレゼントギフト」というグループワークです。依頼者が誰に何を贈りたいかという設定に合わせて、チームで内容を固めていくのですが、これが本当に難関で(笑)。細かい条件を整理しながら周りと相談して進める作業には、自分の苦手が詰まっていました。
*オンライン店舗とは…Kaienでは、訓練の中で楽天オークションやAmazonでオンライン店舗の運営を行っており、仕入れから商品管理、販売にいたるまでの実作業を経験できるプログラムを指します。
――― 実習にも参加されたと聞きました。特性である「臨機応変な対応」の難しさを感じる場面もあったそうですね。
はい。実習先で急な梱包依頼が入ったとき、マニュアルもない、最低限しか教えてくれず自分で考えさせる実習先だったため、パニックになり、どう動けばいいか瞬時に判断できませんでした。でも、プログラムの中では「分からないことは積極的に聞く」という姿勢や、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)を徹底することを学んでいたので、現場でもKaienで培ったチームワークを意識して取り組もうと努めました。
――― Kaienでの経験を通じて、ご自身の中に変化はありましたか?
「自分は何が得意で、何が苦手なのか」を客観的に理解できたことで、通い始めた頃よりも自信がつきました。特に、実習先で自分の作業を評価していただけたことは、大きな自信に繋がりました。
AIを駆使した面接対策
――― 就職活動はどのように進められましたか?
就労移行に入所してから2ヶ月後くらいには、実習などを含めた就職活動を始めていました。ただ、面接で話が長くなってしまったり、質問の意図からズレてしまったりすることが課題でした。
――― その課題に対して、どのような対策をされたのでしょうか。
スタッフさんとの面接練習はもちろんですが、自宅でもAIを活用した面接練習と就職支援機関を利用して何度も行い慣れていきました。何度も場数を踏むことで、徐々に受け答えに慣れていきましたね。AIでも面接練習ができると知って、とにかくたくさん練習しました。
短時間から、フルタイムへのステップアップ
――― その結果、内定をつかみ取れたということなのですね!今後の目標を教えてください。
まずは短時間の勤務からスタートする予定です。これまで7〜8時間のフルタイムで働いた経験がないので、まずは今の自分にできる範囲から着実に進めていきたいと思っています。
――― 焦らず、自分のペースでということですね。
はい。慣れてきたら徐々に時間を延ばしていき、将来的にはフルタイムで、どこへ行っても通用するような働き方ができるよう、ステップアップしていきたいです。
付録~Tさんについて~

――― 休日はどのように過ごされていますか?
主に2つのことをしてますね。1つは生成AIで、gensparkやstablediffusionなど色々なツールを触って試すのが好きなんです。もう1つはSteamでのゲームで、気になったタイトルを見つけては遊んでます。テクノロジーとゲーム、どちらも没頭できるので休日はあっという間ですね。
――― プログラムの中でもAIを積極的に活用されていたそうですね。
オンライン店舗のプログラムで、マニュアルが少し分かりにくいと感じたことがあったんです。そこで、自分で下書きした改訂案をAIに整理してもらい、より分かりやすいマニュアルを作成しました。他の利用者さんからも「分かりやすくなった」と喜んでもらえたのが、最近でい番嬉しかった出来事です。
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