AIを活用した就労移行支援とは?AIを活用するメリットと実際のKaienの取り組み

公開: 2026.2.13

AIの活用が急速に広がる中、「就労移行支援の現場では、AIはどのように役立つの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

実際のところ、AIは就労移行支援と非常に相性が良いといえます。この記事では、AIと就労移行支援がなぜ相性がいいのか、そして、就労活動や訓練におけるお困りごとをAIがどのようにサポートしてくれるのか、解説します。AI活用の具体的なメリットや活用例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

AIと就労移行支援がなぜ相性がいいのか

AIと就労移行支援がなぜ相性が良いのかについて、以下で紹介します。特に、就職活動において困難を感じやすい自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の方の就労支援との相性が良いため、その点についても詳しく解説します。

就職活動に必要な4つの要素

就職では「計画」「整理」「表現」「継続」の4つの要素が求められます。

  • 計画:目標(就職)までの道筋を把握し、目標達成に必要なタスクや期限を明確にする
  • 整理:やるべきことや必要な情報を集めて整理する
  • 表現:自身の強みやスキル、志望理由を企業に対して魅力的に伝える
  • 継続:不採用や困難に面してもモチベーションを保ち、改善を重ねながら最後までやり抜く

これらの4要素は、誰にとっても簡単なものではありません。特に、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の方にとっては困難に感じやすいといえるでしょう。これは、自閉スペクトラム症(ASD)/注意欠如多動症(ADHD)では、タスクの優先順位づけや、対人コミュニケーション、集中力の維持などに、課題を抱えやすいためです。

ASD/ADHDはAIが得意な「構造化」と相性が良い

AIは、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)のある方にとって相性が良く、就労支援の有効なツールとなり得ます。

情報の整理・分解・パターン化を得意とするAIは、就活に必要な情報を意味のある形に整え、全体像や関係性をわかりやすく提示できます。やるべきことが構造化されると、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の方は強みを発揮しやすくなるのです。

たとえば、自閉スペクトラム症(ASD)の方は、パターン化された作業を得意とする特性があるため、AIによって作業プロセスがパターン化されると、取り組みやすくなるでしょう。

また、注意欠如多動症(ADHD)の方は、衝動性の影響で作業を先延ばしにしがちですが、AIによりタスクが細かく分解されると、着手へのハードルが下がり行動に移しやすくなります。

このように、AIによってやるべきことの枠組みが見えるようになると、自身の特性に合った形で就職活動や業務に取り組みやすくなるのです。

就労移行支援でAI活用が進む理由

就労移行支援におけるAI活用の目的は、支援員の業務効率化や工数削減ではありません。本質的な目的は、利用者自身が行動を起こしやすくなることです。

就労移行支援では、「利用者自身が自分なりのAI活用スタイルを身につけるため」にAIを利用します。自分の特性によって苦手と感じる行動などにおいて、AIの力をどう借りればスムーズに進められるか、自分にあったAI活用のスタイルを学び、実践を通じて習得していきます。

こうしたAIの活用は、就職活動にとどまらず、就労後の職場や日常生活においても役立つスキルとして活かされていくでしょう。

生成AIの進化が目覚ましく、日常生活においてもAI活用が当たり前になりつつある昨今では、就労移行支援の現場でAIを取り入れる意義がますます高まっています。

就労移行支援では、通所によるプログラムやカウンセリングなどの支援に加えて、時代に即したデジタルスキルを身につける機会の提供も求められているといえるでしょう。

AIが補完する①実行機能(計画・実行・遂行)

AIは、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の方が苦手としやすい「実行機能」をサポートしてくれます。

実行機能とは、目標に向けて計画を立て、実行に移し、目標を達成するための認知的な能力です。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の方は下記の点で、実行機能に困難を抱えやすい傾向があります。

  • タスク(企業研究、エントリー、書類作成など)の優先順位をつけるのが難しく、マルチタスクが苦手
  • 企業ごとに志望動機や自己PRを変える、急な面接に対応するといった臨機応変な対応が難しい
  • やることが多すぎて、実行に移せない
  • 応募書類の記載漏れや未提出が多く、面接日をうっかり忘れてしまう

こうした課題にAIを活用すると、以下の点で役立ちます。

  • タスクの細分化・整理:やるべきことを小さなステップに分け、優先順位や期日を明示し、行動に移しやすくなる
  • 書類作成の型づくり:志望動機や自己PRの骨組みを提案し、考えを整理しやすくする
  • 自己理解の整理:自己の情報をもとに、経験を言語化、強み弱みを構造化し、自己PRや志望動機を考えやすくする
  • 面接準備の流れづくり:想定質問を提示し、自己分析の情報をもとに回答を提案し、面接準備を進めやすくする

ただし、AIの回答は必ずしも最適なものとは限りません。間違う場合もあります。AIの活用は、あくまで「自分の型」を身につけるための練習として捉え、内容をよく吟味して使うように心がけましょう。

AIが補完する②コミュニケーション(理解・要約・発信)

AIは、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の方が苦手としやすい「コミュニケーション」においても役立ちます。

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の方は、面接やグループディスカッションなどのコミュニケーションにおいて、次のような困難を抱えやすい傾向があります。

  • 話すべき内容をまとめられない
  • 話しすぎてしまう
  • 相手の感情や空気を読むのが苦手
  • 相手に合わせた話し方が難しい
  • 自分の気持ちや考えを言葉にするのが難しい

こうした課題に対し、AIは次の点で役立ちます。

  • 文章作成の整理:伝える内容を簡潔化し、伝わりやすい構成を提示
  • 企業分析の要点抽出:面接前に知っておくべき事業内容や強みを短く要約して提示
  • 面接練習の補助:模擬質問を提示し、自己分析の情報をもとに回答を提案
  • 配慮事項の言語化:伝えたい内容について、ネガティブに聞こえない伝え方を提案

AIが、自己分析や企業研究の情報をもとに、面接・書類作成などの目的に応じた伝えるべき内容や伝え方を整理し提示してくれるため、企業との意思疎通において一貫性が保てます。これにより、コミュニケーションにかかる負荷の軽減が可能です。

また、AIによって伝えるべきポイントが把握できれば、「深く理解する」「軸を持って話す」といった自閉スペクトラム症(ASD)の特性も、対話の場で強みとして活かせるでしょう。

AIが補完する③メンタル面(情緒調整)

AIは、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の方のメンタル面のサポートとしても役立ちます。

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の方は、就活において、下記のような不安や悩みを感じやすい傾向があります。

  • 面接前に不安や緊張感が高まってしまう
  • 予測できない状況に過度な不安を抱く
  • 過去の失敗経験から自信が持てない
  • 就活に集中できず、継続が難しい

こうした情緒面の課題について、AIの活用で、不安や緊張の原因を整理・把握し、心の状態を整える手助けができます。不安や緊張をゼロにするのでなく、就活が進められるメンタルの状態に整えるのに役立てるイメージです。たとえば、次のような使い方があります。

  • 不安の言語化:今感じている不安をAIに書き出し、言語にして整理する
  • 緊張対策の補助:面接前の準備や心の整え方を一緒に確認する
  • 一日五分のメンタルログ:気分の変化を短時間で振り返る習慣をつくる
  • 小さな目標設定:達成しやすい行動目標をAIが提案する

AIは話を整理したり要点をまとめたりするのが得意なため、気持ちや考えがモヤモヤしたときには、AIにその気持ちを言語化してもらえます。さらに、心の整え方や面接前にどう準備をすればいいかの提案をしてもらうことも可能なため、考えを整理できます。

実際の就労移行支援でのAI活用モデル

就労移行支援におけるAI活用モデルには、利用者・支援員・AIが一体となって取り組む「三位一体モデル」があります。

このモデルにおける三者の役割は以下の通りです。

  • 利用者:意思決定と実践の主体
  • 支援員:関係づくり・判断・伴走
  • AI:構造化・反復・言語化

AIは、就職活動に関する情報を構造化したり、反復を通じて適切な提案をしたり、感情や状態を言語化したりします。利用者はそうしたサポートをもとに意思決定を行い、実践に移します。

支援員の役割は、AIと利用者との関係づくりや利用者の判断を支援し、伴走するというものです。AIは支援員の代わりではなく、あくまで「利用者が自分の型を身につけるための補助的な存在」です。

導入の成功例には、以下のようなケースがあります。

  • 自閉スペクトラム症(ASD)の方が、AIを活用して志望動機の型をつくり、書類選考の通過率が向上した
  • 注意欠如多動症(ADHD)の方、タスク管理にAIを使い、作業の抜け漏れや遅刻が減った

AIを訓練に取り入れている事例|Kaienでの取り組み

Kaienでは、すべての利用者が、自分なりの生成AI活用法を身につけられることを目指し、訓練プログラムにAIを取り入れています。以下では、その具体的な取り組みについて紹介します。

「働く」と「メンタルケア」の両面でAIを活用

Kaienが重要だと考える生成AIの活用場面は「働く」と「メンタルケア」の2つです。たとえば、仕事では資料作成などに活用でき、メンタルケアでは、考えを整理したり、自分とは異なる視点で気持ちを振り返ったりするカウンセリングの補助として役立ちます。

それぞれの場面における基本的なAI導入方針は、次のようなものです。

  • AIにすべてを任せず、自分の考えやアイデアも大切にする
  • AIの答えをそのまま信じるのではなく、本当に正しいか、よく考えて使う
  • AIに入力する情報やAIが生成したアウトプットに、どのような権利が関係するのかを意識して使う
  • AIは時には間違いや偏った意見を示す場合もあると理解し、さまざまな視点から情報を確認する
  • AIを使用する際には、個人情報や秘密を漏らさないように注意する
  • AIは常に進化しているため、継続して学ぶようにする

AIは便利なツールですが、すべてを任せず「自分の考えを持つ」ことが大切です。

リワークセンターでのAI講座

Kaienのリワークセンターでは、「生成AI講座」を提供しています。リワークとは、メンタルヘルスの不調により休職中の方が復職を目指す際に利用できる支援プログラムです。

生成AI講座では、「AIに悩みを相談してみよう」「AIと意見を伝える練習をしよう」といったテーマのもと、気持ちや考えを整理する“壁打ち相手”としてAIを活用する方法を学びます。

当講座では、生成AIの基礎知識や主要ツールの操作方法に加え、回答精度を高めるプロンプト作成演習も行います。さらに、ChatGPT-5、Gemini、Canvasなど、最新の機能やツールの活用法についても習得可能です。

職業訓練でAIを実践的に活用

Kaienの就労移行支援では、職業訓練においてもAIを実践的に活用しています。

たとえば、下記のような内容においてAIを補助ツールとして利用しています。

  • 人事企画:新人研修で使用するシナリオの作成
  • 事務業務:社宅手配のための不動産物件リストの作成
  • 採用選考:応募履歴書の比較・検討を行い、仮評価を実施
  • 総務:社員向けランチマップの作成

AIが作成した情報はあくまで参考として扱い、最終的な判断や決定は参加者自身が行います。プロンプト(指示文)の工夫を学び、業務の効率化や発想の広がりが体感できる内容です。

AIによる訓練や就職活動の記録

日々の訓練や就職活動の記録を日報としてGmailで作成している利用者に対し、KaienではGeminiの活用により自己成長を加速させる指導を行なっています。

具体的には、評価してほしい期間の日報(Gmailの送信済みメール)をもとに、Geminiに評価してポイントを依頼することで、成長や改善のポイントに関するアドバイスが得られます。

たとえば、「過去の選考体験から、〇〇という点が課題になっているようです。〇〇に関する対策を強化しましょう」などといったフィードバックが得られるでしょう。

AIによる分析を通じて、目標達成に向けた客観的な進捗状況や、努力の量・質を可視化・評価できます。これにより、効果的な改善が図れます。

AI×就労移行支援に関するよくある質問FAQ

就労移行支援におけるAI活用について、よくある質問とその回答を解説します。

AI依存になってしまうのではないでしょうか?

AIに依存しないように注意する必要があります。AIは、必ずしも正しい情報を提供するとは限らないため、あくまで補助ツールとして活用しましょう。AIに限らず、特定の支援ツールに頼りすぎると、得られる情報や提案が偏り、結果的に思考や行動の幅が狭まってしまう可能性があります。

より適切な判断を下すためには、ひとつのツールに頼りきるのではなく、いろいろな情報や手段を取り入れて、さまざまな角度から考えることが大切です。AIなどの技術を上手に使いながらも、それだけに頼らない姿勢が、自立した意思決定や判断力の育成につながるでしょう。

AIには悩みを理解できますか?

AIは、一見すると悩みに寄り添ってくれているように感じられますが、実際には人間のように悩みを深く理解しているわけではありません。

考えや気持ちを整理したり、振り返ったりするためのサポートにはなりますが、本当の意味で感情に寄り添い、理解を得たいときは、信頼できる支援員や専門家に相談するのが適切です。

AIの利用による情報漏洩のリスクは?

AIの利用には情報漏洩のリスクが伴う可能性があります。特に、個人情報をAIに入力する場合には、注意が必要です。入力したデータがどのように扱われるのかを、事前に理解しておくようにしましょう。

AIの提供元によっては、入力内容がサービスの改善に利用されるケースもあります。利用規約やプライバシーポリシーを確認し、必要に応じて匿名での利用や、オフライン環境での仕様など、安全性を確保した使い方を心がけましょう。

AIを活用してKaienの就労移行支援で復職・就職を目指そう

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の方は、AIで情報を整理、分解、パターン化、言語化すると、意思決定や実行をしやすくなるといえるでしょう。

より適切な意思決定のためにも、AIの回答を鵜呑みにしたり、過度に依存したりするのではなく、さまざまな情報や意見と照らし合わせて判断するようにしましょう。

Kaienの就労移行支援やリワークでは、生成AIの基礎知識や主要ツールの操作方法を学びながら、自分に合ったAI活用のスタイルを習得できます。習得したスキルは、就職活動だけでなく就労後や日常生活においても役立つでしょう。AI活用でお悩みの場合には、どうぞお気軽にご相談ください。

就労移行支援や障害福祉サービスについては、以下の記事も参考にしてください。

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監修 : 鈴木 慶太(株式会社Kaien 代表取締役)

元NHKアナウンサー。自身の長男が発達障害の診断を受けたことをきっかけに、米国留学(MBA取得)を経て株式会社Kaienを設立。 「数的な凸凹があっても、強みを活かして働ける社会」を目指し、大人向けの就労支援から子ども向けの学習支援(TEENS)まで幅広く事業を展開している。 経営者として、また一人の親としての視点を交えた発信は、多くの当事者・家族から支持を得ている。

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