親亡き後の生活や仕事が不安|障害者の「自立」に向けた就労準備

公開: 2026.2.13

何らかの障害があり、親亡き後の将来や仕事を考えて不安を感じる方も多いでしょう。「お金が足りなくなったらどうしよう」「定年まで働ける仕事が見つかるだろうか」といった悩みは、誰しも経験するものです。

そこで今回は、親亡き後の不安を少しでも軽減するための「自立」の考え方や、活用できる支援について解説します。

障害者が親亡き後の生活・仕事に不安を感じる背景

現在は親のサポートで生活が成り立っていても、「いつか親はいなくなる」と思うと不安に感じる場合もあるでしょう。親亡き後への不安の種類は、漠然としたものから具体的な生活スキルへの懸念までさまざまです。

ここでは、なぜ不安が強くなるのか、不安にはどのような背景があるのかを整理します。

親が元気な今こそ不安が強くなる理由

親が元気で生活が回っているときは、将来の課題をつい先送りにしてしまいがちです。親との別れを考えたくない気持ちは、多くの人が持つ自然な感情でしょう。

しかし、心のどこかでは「この生活がいつまでも続くわけではない」と理解しているからこそ、ふとした瞬間に不安が大きくなります。それは現実を真剣に考えているからこその不安であり、決して恥ずかしいものではありません。

親亡き後の生活の準備が早いほど将来の見通しが立ちやすくなり、安心につながります。不安を感じたときが備えを始めるタイミングと捉え、少しずつ情報を集める、現状を整理するといった小さな行動から始めてみましょう。

家族の支えが前提になり生活が固定化している

長年にわたり親と同居していると家族間での役割分担が自然と偏り、親が担ってくれている作業や手続きの経験を積む機会が減る場合もあります。家事や買い物、役所の手続き、お金の管理などをした経験が乏しいと「自分一人になったら生活できるだろうか」と不安が大きくなっていくでしょう。

たとえば、自分自身が仕事に行っている間に親が役所の手続きをしてくれている場合、どのような場合にどの窓口に行けばよいのか、準備するものは何かなど、戸惑ってしまう可能性も考えられます。

役割の固定化は家族間での協力の結果であり、必ずしも悪いわけではありません。「次の手続きは自分でやる」「週に1回は家事を代わる」など、将来に備えて少しずつできる範囲を増やしていくとよいでしょう。必要に応じて付き添ってもらえば、初めての作業でも無理なく慣れていけます。

家族以外の周囲に相談できず孤立化している

家族だけで生活が完結していると、親戚や近所の人など周囲と関わる機会が減っていきます。

「家庭の事情を話すのは恥ずかしい」「否定されたらどうしよう」という不安や、そもそもどこに相談すればよいか分からないといった理由から、問題を抱え込んでしまうケースも珍しくありません。しかし、家族だけで解決しようとすると課題はより複雑になりがちで、親がいなくなった場合に孤立するリスクも高くなります。

誰かに相談したら、必ず解決策を見つけなければならないわけではありません。まずは課題を整理するための相手として、さまざまな相談先を探してみるのもよいでしょう。

引きこもりが長引くほど外に出るハードルが上がる

引きこもりの状態が続いて自宅でほとんどの時間を過ごすようになると、外出のハードルが上がってしまいます。これは単なる甘えや意思の弱さではなく、体力の低下や昼夜逆転による生活リズムの乱れ、人との距離感が掴めない恐怖、過去の失敗体験などが積み重なり、外に出る負荷が大きすぎる状態です。

このようなケースで無理に「働かなければ」と焦っても、かえって心身のバランスを崩しかねません。長期間にわたって自宅から出ていない場合はいきなり就労を目指すのではなく、まずは近所の散歩やコンビニへの買い物など、小さな外出から始めるとよいでしょう。

仕事経験が少ない場合将来像が描きにくい

これまでに働いた経験が少ない、あるいは全くない場合、「自分に何ができるのか」「どのような仕事なら続けられそうか」といった判断材料が乏しくなります。将来像を具体化させるのが難しく、漠然とした不安に襲われる場合もあるでしょう。

しかし、仕事経験のなさは決定的な不利な要素ではありません。適切な順番を踏んで、一つひとつ準備を進めるのが重要です。まずは自己理解を深め、模擬的な業務で練習を重ね、実習で実際の環境を試すといったステップを踏んでいけば、自分に合った働き方が見えてくるでしょう。

在宅ワークや週数回のアルバイトなど、働き方にはさまざまな選択肢があります。まずはボランティア活動などで、誰かに感謝される経験をしてみるのもよいでしょう。

障害者が親亡き後に困らないための自立の考え方

親亡き後の生活を支えるためには、「自立」について適切な捉え方をする必要があります。ここでは、安心して暮らすための自立の考え方について解説します。

自立の3層構造図

自立には「経済的自立」「生活の自立」「精神の自立」の3ステップがあり、順番に構築していくのが重要です。

一番下の土台となるのは、給与と年金を合わせた経済的自立です。どのくらいの収入があるかだけでなく、障害年金受給の手続きが自分でできるか、親から受け継ぐ財産の管理ができるかといったポイントもあります。

次に構築するのは、生活・居住の自立です。現在の生活を自分で回すため、食事や洗濯といった家事や金銭管理をしていきましょう。また、いざというときに備えて医療機関への受診方法を確認しておくのも重要です。将来の居住についても、少しずつ考えるとよいでしょう。

経済・生活の自立ができたら、最後に精神(居場所)の自立を目指しましょう。職場や地域コミュニティなど、家族以外との関わりを持ち、親亡き後の孤立を防げるようにします。焦って就職を目指すのではなく、長期的な居場所になり得るような職場への就労を目指すのが重要です。

自立は孤立ではなく支援を利用するもの

「自立」とは、誰にも頼らず一人で生きていくという意味だと考える方もいるかもれませんが、必ずしもそうとは限りません。

真の自立とは、困ったときに「助けて」と言える力を持ち、適切な支援やサービスを利用しながら生活を維持できる状態です。親亡き後も安定した生活を送るには、完全に孤立して一人で頑張るのではなく、家族以外の信頼できる人を増やすのが重要です。

助けを求める力は「受援力」と呼ばれる場合もあります。一人ですべてを解決しようとするのではなく、困ったときに適切な人に頼れる力は、社会で生きていくためのスキルであると考えられているのです。

公的な支援制度や福祉サービスもうまく活用し、サポートを得ながら自分に合った自立の形を作っていきましょう。

生活困窮や孤立が生じる「8050問題」とは

「8050問題」は、80代の親が50代の子どもの生活を支え続け、経済的な苦しさや社会からの孤立を抱えている家庭が多く存在するという社会問題です。

このような家庭では、多くの場合子どもは無職で、親の年金で生活しています。親の介護が必要になったり亡くなったりした際に、子どもが支えを失って生活困窮に陥るリスクが高いのです。

中高年層の無職の方、引きこもりの方の中には、リストラされたり、ハラスメントや介護などの事情で退職を余儀なくされた方も少なくありません。さまざまな要因によって家族だけで課題を抱え込み、外部の支援につながれないと、引きこもりが長期化しやすくなります。

親が存命のうちに少しずつ自立を進め、社会との接点を持つのが重要です。

8050問題について詳しくは、以下の記事でも解説しています。

8050問題とは?発達障害との関連性や相談先を解説

親亡き後の生活・仕事が不安な障害者が「自立」に向けてできること

不安を解消するためには、経済、生活、精神の自立の積み重ねが重要です。まずは生活リズムの構築から始め、徐々に居場所づくりや引きこもりからの脱却、就労準備へと進めていくとよいでしょう。

生活の基盤を安定させる

自立を目指すための土台となるのが、生活リズムの構築です。毎日決まった時間に起床・就寝する、栄養バランスの取れた食事を摂る、服薬を自分で管理する、少しでも外出して日光を浴びるなど、基本的な習慣を整えましょう。

生活リズムが整ってくると、徐々に心身が安定して次のステップに進む気力が出てきます。いきなり完璧を目指す必要はありません。まずは「週に1回だけ昼間に外に出る」「午前中だけ活動してみる」など、無理のない範囲から始めてみましょう。

家庭内でも「自分の食べた食器は洗う」「お風呂掃除を担当する」といった小さな役割を持ってみるのもよい方法です。もし失敗しても家族ならフォローしてくれるため、安心できる環境で経験を積んでいけるでしょう。

相談先と居場所を作り孤立・ひきこもりを脱却する

家族だけで悩みを抱え込んでいると、孤立が深まりやすくなってしまいます。家族以外とのつながりを持ち、相談先をつくるのが自立の準備と考えましょう。

また、家族には関係性が近すぎて話しにくいことでも、第三者になら話せる場合があります。同じ悩みを持つ仲間や、支援機関などのプロに相談してみると、解決の助けになるでしょう。いきなり対面で話すのはハードルが高い場合、まずはメールやチャット、オンライン通話などでコンタクトを取る方法もあります。

相談先としては、自治体の福祉窓口やひきこもり支援センター、障害者就業・生活支援センターなどが挙げられます。地域活動支援センターなどで、似た悩みを持つ仲間と過ごすのもよいでしょう。

趣味の集まりに参加して仲間を作るのもよい方法です。共通の話題があれば話しやすく、徐々に信頼関係を築いていけます。

早く解決しようと焦らず、最初は小さな接点からつながりを形成していくのが重要です。

支援を使って就労準備をする

生活リズムが整い、社会との接点ができたら、次は就労に向けた準備を進めましょう。これはすぐに働くというよりも、働ける状態に整える段階です。

まずは自己理解を深め、自分の得意・不得意や職場で必要な配慮を整理します。次に、支援機関への通所で基礎的なスキル・対人マナーを練習し、自信がついたら企業実習などで実際の仕事を体験してみます。

段階的に準備を進めていけば、無理なく自分に合った働き方を見つけられるでしょう。就労移行支援や自立訓練(生活訓練)などの機関を活用すれば、スタッフのサポートを受けながら無理なく就労準備を進められます。

親亡き後の生活・仕事が不安な障害者の方が利用できる支援サービス

一人で就労準備を進めるのは難しいものです。障害のある方の就労や生活をサポートする支援サービスにはさまざまな種類があるため、それぞれの特徴を知り、状況に合った支援先を見つけるとよいでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害がある方の身近な地域で就業面と生活面の両方を一体的にサポートする機関です。「なかぽつ」や「就ぽつ」とも呼ばれます。

仕事に関する相談はもちろん、生活習慣の形成や健康管理、金銭管理など、日常生活の悩みについても幅広く相談に応じてもらえるのが特徴です。ハローワークや就労移行支援などの福祉サービスや医療機関とも連携しており、地域の支援ネットワークの中継役のような役割も果たしています。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、より専門的な職業リハビリテーションを提供する公的機関で、各都道府県に設置されています。職業の適性を見極めたり、センター内での作業体験や講習を行ったりします。

また、精神疾患からの復帰を目指す人などを対象とした「リワーク」や、企業に対する雇用管理のアドバイスを行っているのも特徴です。障害者職業カウンセラーが配置されており、ハローワークと連携しながら、就職に向けたプランづくりやスキルアップを支援してもらえるため、自分に向いている仕事が分からない場合などに活用するとよいでしょう。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、障害のある方が自立した日常生活や社会生活を営めるよう、生活能力の維持・向上のための訓練を行うサービスです。いきなり就労準備を始めるのは不安がある方も、無理のない範囲から生活基盤の形成を目指せます。

Kaienの自立訓練では「まだ働く自信がない」という方を対象に、生活基盤づくりから丁寧にサポートします。最初は週に1回など、できる範囲から通所して生活リズムを整え、健康管理やコミュニケーション、感情コントロール、自己分析など、さまざまなプログラムに参加できるのが特徴です。

カリキュラムには進路の設計もあるため、今は将来についての希望がわからない方も、講師やほかの受講者と話しながら自分の道を見つけていけるでしょう。

Kaienの自立訓練(生活訓練)について詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。

自立訓練(生活訓練)プログラム

就労移行支援

就労移行支援は、企業への就職を目指す障害者を対象に、必要な知識やスキルの習得、就職活動のサポート、職場定着支援などを行うサービスです。

Kaienの就労移行支援では、発達障害をはじめとした障害のある方や、グレーゾーンの方も、一人ひとりの特性に合わせたプログラムを提供しています。常時100種類以上の職業体験が可能で、PCスキルやビジネスマナーはもちろん、プログラミングやデザインといった専門的なスキルを身につける講座があるのも特徴です。

また、訓練中はキャリアカウンセラーが伴走し、相談しながら訓練を進められます。訓練や将来に関する不安を面談で解消し、ときには軌道修正しながら就労を目指せるでしょう。

応募書類の添削や面接練習、就職後の定着支援まで、「長く働き続けたい」という希望を持つ方のために一貫した支援を行います。

Kaienの就労移行支援について詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。

Kaienの 就労移行支援プログラム

親亡き後の生活や仕事が不安な障害のある方からよくあるFAQ

親亡き後の生活について、手続きや緊急時の対応といった疑問や不安が尽きない場合もあるでしょう。ここでは、当事者の方からよく寄せられる質問に回答します。

親が元気なうちに「やっておくべき手続き」は何ですか?

以下のような管理・手続きの有無を整理しておくとよいでしょう。

  • 障害者手帳の取得・更新
  • 障害年金の申請・期限の管理
  • 受給者証の管理
  • 通院先の情報管理
  • 緊急連絡先の管理
  • 支援者(相談支援専門員)の設定

家族だけで抱え込まず、必要に応じて自治体窓口や支援サービスに相談するのも重要です。

親に何かあったときのために、親子で「エンディングノート」を作成してみるのもよいでしょう。財産や医療・介護の希望、緊急時の連絡先などを書き出す中で、何を準備すればよいか見えてくる場合もあります。

共同作業として取り組めば、家族間での認識のずれも防げます。

もし親が急に倒れたら、当面の生活はどうすればいいですか?

親が急に倒れるなどの緊急事態に備えて、事前に緊急連絡先と頼れる避難場所を確認しておきましょう。

市区町村の障害福祉窓口や相談支援事業所、地域生活支援拠点などが緊急時の相談や受け入れを行っています。また、介護者の急病などで一時的に利用できる緊急ショートステイや、グループホームの短期入所も可能です。わからなければ、まずは市区町村の障害福祉窓口などに事情を説明するのもよいでしょう。

また、緊急連絡先やかかりつけの医療機関、利用している福祉サービスなどの情報をカードなどの形で携帯しておくと安心です。もし自分がうまく説明できない状況でも、そのカードを提示すれば周囲の人が必要な連絡先にアクセスし、適切なサポートを受けられる仕組みをつくっておくとよいでしょう。

親亡き後に向けて、仕事はどう選べばいいですか?一人で働き続ける自信がありません。

仕事を選ぶ際は、今の時点でできるかできないかだけでなく、長く安定して続けられる環境かどうかを重視しましょう。

たとえば、一般雇用ではなく障害者雇用で就職すれば、特性に応じた配慮や業務量の調整を受けやすくなります。配慮してほしい事項を伝えるときは、「このような工夫があればもっと成果を出せる」など、ポジティブな言い方をすると気持ちよく受け入れてもらいやすいでしょう。

職業の適性については、就労移行支援事業所などで実習や訓練を行い、客観的なアドバイスを受けながら判断するのも一つの方法です。

ただし、一度決めた職場で定年までずっと働かなければならないわけではありません。長期的な就労は重要ですが、状況の変化や自分の状態に合わせて、柔軟に働き方を変えていく選択肢もあります。就労後のフォローをしてくれる支援機関を利用すれば、職場で困ったことがあってもすぐに相談できるでしょう。

Kaienの支援を活用して生活リズムの構築から取り組もう

親亡き後の仕事や生活に対する不安を解消するためには、焦らず段階的に準備を進めるのが重要です。まずは生活リズムを整えるなど小さなステップから始め、少しずつ社会との接点を作っていくとよいでしょう。

Kaienでは、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)などで障害者の自立・就職支援を行っています。生活基盤の構築から就職、職場定着まで一貫してサポートしますので、ぜひ気軽にご相談ください。

監修 : 鈴木 慶太(株式会社Kaien 代表取締役)

元NHKアナウンサー。自身の長男が発達障害の診断を受けたことをきっかけに、米国留学(MBA取得)を経て株式会社Kaienを設立。 「数的な凸凹があっても、強みを活かして働ける社会」を目指し、大人向けの就労支援から子ども向けの学習支援(TEENS)まで幅広く事業を展開している。 経営者として、また一人の親としての視点を交えた発信は、多くの当事者・家族から支持を得ている。

▼ 代表・鈴木に直接質問できるライブ配信も開催中。毎週開催の「Kaienお悩み解決ルーム」ほか、就職や生活に役立つ情報を配信しています。

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