
本記事は2026年10月20日時点の情報(厚生労働省の審議会資料・議事録、報道など)をもとにしています。
計算式どおりなら3%。見直し案を当てはめると2.4%まで下がる――。Kaien代表の鈴木が、いくつかの仮定を置いて独自に試算した数字で、決まった値ではありません。それでも鈴木は、次の法定雇用率を「2.7%据え置き」と予想しています。
きっかけは、厚生労働省が2026年8月31日の労働政策審議会障害者雇用分科会で示した、法定雇用率の計算方法そのものを見直す案です。同じ日には、企業に代わって障害のある方の働く場を用意する「障害者雇用ビジネス」への規制案も示されました。鈴木は、一見別々のこの2つを「障害者雇用バブル」への対策として、セットで読み解いています。
「雇用率は下がるの?」「求人が減ってしまうのでは?」と不安に感じた方もいるかもしれません。結論から言えば、どの案が採用されるかはまだ決まっておらず、今すぐ必要な手続きもありません。この記事では、数字が動く理由と鈴木の予想の根拠、そして今から準備できることを要点に絞って解説します。
動画では、鈴木がスプレッドシートを使いながら、さらに詳しく解説しています。
この記事で分かること
- 厚労省が示した2つの新しい提案(雇用率の計算変更・ビジネス規制)
- 計算式どおりなら3%?見直し案でどう変わるかの試算
- なぜ Kaien代表・鈴木は「2.7%据え置き」と予想するのか?
- 企業と当事者が今から準備しておくべきこと
雇用ビジネス規制と雇用率見直しはなぜセット?
鈴木は、厚生労働省が2つの議題を、法定雇用率を急いで上げすぎたことで生じた歪みへの対策として捉えているのではないかと見ています。法定雇用率とは、企業が雇用する労働者のうち一定の割合以上の障害者を雇わなければならないと、障害者雇用促進法で定められた割合のことです。民間企業の法定雇用率は、2021年3月に2.3%、2024年4月に2.5%、2026年7月に2.7%と、短期間で引き上げられてきました。
鈴木によると、この急な引き上げが「障害者雇用バブル」を生み、雇用を外部に任せきりにするビジネスまで広がってしまいました。ここでいうバブルとは、障害のある人の雇用が多すぎるという意味ではなく、急な引き上げに企業の受け入れ体制が追いつかず、外部に頼る動きが膨らんだ状態を指しています。すでに起きた歪みを正すのが障害者雇用ビジネスへの規制、今後バブルを繰り返さないための対策が算定方法の見直し、という整理です。分科会でも厚生労働省の担当課長が、障害者雇用の質をめぐる課題の背景に法定雇用率の引き上げがあるという問題意識を示しています。
障害者雇用ビジネスの規制案で何が変わる?
規制案の柱は、障害者雇用ビジネスを法律で定義し、事業者に届け出を義務づけ、不適切な事業者には国が指導・勧告できるようにすることです。報道によると、厚生労働省は年内に議論をまとめ、2027年の通常国会に改正案を提出することを目指しています。

一般に、障害者雇用ビジネスとは、企業に農園やサテライトオフィスなどの就業場所を提供し、そこで働く障害者の雇用管理を支援する事業のことです。自社の事業と関係のない仕事をさせたり、実質的に仕事を与えなかったりするケースが問題視されてきました。報道によると、2025年10月末時点で46の事業者が参入し、延べ約1,800社の企業が利用しています。
規制案では、事業者にガイドラインに沿った支援(努力義務)や年1回以上の情報開示を求めるほか、利用する企業にも、毎年6月1日時点の雇用状況報告(6.1報告)で利用状況を報告するよう求める方向が示されています。
鈴木は、この規制案の狙いを「雇用代行業を雇用支援業にしていく」ことだと読み解き、外部の支援の使い方を薬にたとえています。
「お薬は処方するけれど、ずっと使い続けてもらうのではなく、だんだん減らしていく。企業が自分たちでできるようにしていく」
≪ポイント≫
規制案は外部の支援を使うこと自体を禁じるものではありません。鈴木は、支援は一時的に使い、企業が自ら雇用を担えるように移行していくことが求められると見ています。
法定雇用率はどう計算され、何が見直される?
法定雇用率は障害者雇用促進法で定められた算定式で計算され、少なくとも5年ごとに見直されます。算定式は次のとおりです。
法定雇用率 =(雇用されている障害者の数 + 失業している障害者の数)÷(全体の常用労働者数 + 全体の失業者数)
厚生労働省が示した見直し案は2つで、鈴木はいずれも法定雇用率を下げる方向に働くと説明しています。
1つ目は、分子の「失業している障害者」を、一定期間(3か月・6か月・1年など)に実際に求職活動をしている人に絞る案です。今はハローワークに登録したまま活動していない人も含まれ、分母の失業者と定義がずれているためです。
2つ目は、現在15〜64歳に限っているデータを、65歳以上を含む全年齢に広げる案です。ただし65歳以上は分子にも加わるため、どの程度下がるかは実際に計算してみないとわかりません。
| 見直しのポイント | 現行 | 見直し案(審議中) |
|---|---|---|
| 分子の「失業している障害者」 | 求職登録者を基礎に算出(活動していない人も含む) | 一定期間内に実際に求職活動をしている人に限る |
| 算定に使う年齢の範囲 | 15〜64歳 | 全年齢 |
見直し案で何%になる?鈴木の試算
鈴木の試算では、現行の計算方法のままなら次の法定雇用率は約3.0%に上がり、見直し案を最大限に組み合わせると約2.4%まで下がる可能性があります。

| 試算のケース(鈴木の試算) | 算定式上の法定雇用率 |
|---|---|
| 現行の計算方法のまま | 約3.0% |
| 案①で失業者が約5万人減る | 約2.89% |
| 案②のみ(分母が約500万人増える) | 約2.6%台 |
| 案①で約5万人減る+案② | 約2.54% |
| 案①で約10万人減る+案② | 約2.42% |
※この表は、鈴木が一部AIも使って集めたデータに、仮の条件(失業者が約5万人・約10万人減る、全年齢化で分母だけが約500万人増える)を置いた試算で、厚生労働省の公式の試算ではありません。オレンジ色のセルは2.7%を下回るケースです。計算の過程は動画の14:34ごろから解説しています。
ただし、厚生労働省は分科会で、65歳以上は分母だけでなく分子でも増えていると説明しています。そのため、実際の引き下げ幅は鈴木の試算より小さくなる可能性があります。2026年10月20日時点で、厚生労働省による公式の試算はまだ示されていません。
動画では、鈴木がスプレッドシートの数値を動かしながら試算の過程を説明しています。
なぜ「2.7%据え置き」と予想するのか?
鈴木が2.7%据え置きを予想するのは、法定雇用率を下げれば障害者雇用の流れそのものが冷え込んでしまうため、厚生労働省は上げすぎず、下げもしない水準を選ぶと見ているからです。

鈴木はこれを、1985年のプラザ合意後に金融緩和でバブルが生まれ、急な引き締めで長い停滞を招いた日本経済にたとえています。
「バブルを起こしてはいけない。だけど、冷やしすぎてもいけない」
鈴木は、雇用率が下がれば、企業は「もう雇わなくていいのか」と考え、当事者も障害者雇用で働く動機が弱まりかねないと懸念しています。一方、障害者の雇用者数は2025年に前年から約2万7,000人増えるなど年3万人近いペースで増えており、鈴木は、このペースが続けば改定のたびに約0.3ポイントずつ上がり、再びバブルになりかねないと見ています。分科会でも、使用者側の委員から、引き上げ幅を抑える激変緩和措置を求める意見が出ています。

こうした考えから、鈴木は、2.7%で据え置いたうえで、3年後、6年後に2.9%、3.0%と徐々に上げていく道筋を描くのではないかと予想しています。途中で一度2.8%に上げる可能性もあるといいます。
≪ポイント≫
「据え置き」は「今後は上がらない」という意味ではありません。障害者手帳を持つ人が増えていることなどから、鈴木は長期的には緩やかに上がっていく可能性が高いと見ており、企業は先を見据えた準備が必要だと話しています。
鈴木は、障害者雇用制度そのものについても踏み込んだ持論を語っています。本来は一律に企業へ雇用率を課すのではなく、雇いたい企業が雇い、社会として必要な部分は国が担う仕組みが望ましい、という考えです。例として挙げたのは、障害のある人の雇用の場を提供するスウェーデンの国営企業サムハル(Samhall)のような形です。ただし、制度は急には変えられないため、まずは社会全体が障害者をきちんと雇えるだけの力をつけることが先だとしています。
当事者・企業への影響は?いつ決まる?
現時点では見直し案の段階で、2026年7月からの2.7%を前提にした雇用の義務や求職のしくみがすぐに変わるわけではありません。企業は2.7%への対応を続けつつ、障害者雇用ビジネスを利用している場合は法改正後の報告に備える必要があります。当事者やご家族にとっては、規制が進めば、実質的に仕事がない状態で雇用されるケースの是正が期待されます。
次回の法定雇用率は、2028年4月から5年間適用される予定です。厚生労働省の担当課長も、8月31日の分科会でそう説明しています。
| 時期 | 内容 | 確定度 |
|---|---|---|
| 2026年7月 | 民間企業の法定雇用率が2.7%に | 決定済み |
| 2026年8月31日 | 算定方法の見直し案、障害者雇用ビジネスの規制案を提示 | 案(審議中) |
| 2026年内 | 分科会の議論のとりまとめ | 報道ベース |
| 2027年通常国会 | 障害者雇用促進法の改正案の提出を目指す | 報道ベース |
| 2028年4月 | 次期法定雇用率の適用開始 | 時期は厚労省の説明による。水準は未定 |
確定度の色分け:緑=決定済み、黄=審議中、オレンジ=報道ベース、紫=未定
企業と当事者が今からできること
企業の人事・採用担当者の方は、次の点を確認しておくと安心です。
- 2.7%に対する自社の雇用状況と不足人数を確認する
- 障害者雇用ビジネスを利用している場合は、利用先・就業場所・人数・業務内容を整理しておく
- 社内で採用・定着を担える体制を段階的に整える
当事者やご家族の方は、次の点から始めてみてください。
- 制度の動きに不安を感じたら、ハローワークや就労支援機関に相談する
- 自分の得意・苦手や必要な配慮を言葉にし、長く働ける職場選びに役立てる
Kaienの就労移行支援では、発達障害のある方が自分に合った仕事を見つけ、長く働き続けられるよう、職業訓練から就職後の定着までを支援しています。在学中の方はガクプロ(大学・専門学校生支援)、休職中の方は復職支援(リワーク)もご利用いただけます。企業の方からのご相談もお問い合わせで受け付けています。
法定雇用率の見直しに関するよくある質問(FAQ)
Q1. 2026年7月からの法定雇用率2.7%は変わりますか?
変わりません。2.7%は決定済みで、今回の見直し案は2028年4月からの次期改定に向けた検討です。従業員37.5人以上の企業には、引き続き障害者を1人以上雇用する義務があります。
Q2. 法定雇用率を達成できないと、どうなりますか?
常用労働者が100人を超える企業は、不足する人数1人につき月額5万円の障害者雇用納付金を納める必要があります。達成状況が著しく低い場合は、ハローワークから雇入れ計画の作成命令や指導を受け、改善が見られないと企業名が公表されることがあります。
Q3. 障害者手帳を持っていない発達障害のある人は、雇用率に含まれますか?
現行制度では、原則として障害者手帳を持っている人が算定の対象です。精神・発達障害者の雇用率算定の在り方は、2026年6月以降の分科会で議題となっており、手帳を持たない人の扱いも含めて検討が続いています(検討段階)。
まとめ:注目は「数字」より「上がり方」
計算式どおりなら3%、見直し案を当てはめれば2.4%まで下がりうる。それでも鈴木が「2.7%据え置き」と予想するのは、計算式の数字そのものよりも、障害者雇用の流れを冷え込ませないことを厚生労働省が優先すると見ているからです。急な引き上げで生じた歪みは規制で正し、これからはバブルにしない緩やかな上げ方を探る。鈴木は、今回の2つの見直しをそう読み解いています。今後は、厚生労働省が示す具体的な試算、年内のとりまとめ、2027年の法改正の動きが焦点です。
制度が変わっていく時期だからこそ、一人で悩まずに相談できる場所があると心強いものです。Kaienでは、100職種以上の職業体験プログラムで自分に合った仕事を見つけるところから、就職後半年の定着率95%を支える伴走支援まで、発達障害のある方が安心して働き続けられるようサポートしています。企業の障害者雇用に関するご相談も受け付けています。まずは無料相談・見学で、気軽にお話を聞かせてください。
最新情報が入り次第、本記事を更新します。



