学習障害とは?LDとSLDの違いや特徴、診断と対処法をわかりやすく解説

公開: 2025.7.16更新: 2026.10.2

学習障害とは、読む・書く・計算するなどの情報処理が苦手と感じる特性です。

学習障害は学校の学習過程で気づく場合が多いですが、大人になってから「学習障害ではないか?」と悩む方も決して少なくありません。

本記事では、学習障害の特性や種類、原因などの基礎知識をわかりやすく解説し、続いて学習障害かもしれないと思ったときの相談先や対処法などをご紹介します。ぜひお役立てください。

学習障害とは

学習障害とは、読む・書く・計算する・推論する・聞く・話すなどの能力に著しい困難さがある障害です。LD(Learning Disabilities)と表記される場合もあります。

学習障害は発達障害*の一つであり、脳の働き方の偏りが原因とされています。知的な発達の遅れが主な理由ではなく、「文字を音にする」「音を聞き分ける」「形や順番を理解する」といった脳の働きに特徴があり、情報処理がうまくいかないのが特徴です。

そのため、知的発達の遅れ、視力・聴力の問題、学習機会の不足などの環境要因、情緒障害などの別の症状が主な原因である場合は、学習障害とは診断されません。

LDとSLDとの違い

学習障害(LD)と似た用語に、SLD(限局性学習症)があります。結論からいえば、LDとSLDはおおまかに同じものと考えてかまいません。

ただし、使われる場面が違う傾向があります。

  • LD

教育分野で広がった呼び方で、学校や支援の文脈でよく登場します。

  • SLD

医療・診断分野でよく使われます。世界標準的な診断マニュアルであるDSM-5/DSM-5-TRでもSLDが使われています。

厳密にはこのように用語の違いがありますが、現実的には学習障害で十分通じます。 

学習障害と誤解されやすい困りごと

学習障害の方は、「努力していない」「やる気がない」などとみられる傾向があります。学習障害の方は知的な遅れがない場合が多いうえに、勉強全体ができないというより読み・書きなどの一部だけが著しく苦手である場合が多いため、なおさら手抜きや不注意といった誤解を生みやすいからです。

学習障害では以下のような困りごとを抱えがちです。

  • 読む:読み間違いや読み飛ばしが多い、読む速度が遅いなど
  • 書く:文字の誤り、写すのが苦手など
  • 聞く・話す:聞き取り違い、長い説明が頭に残りにくいなど
  • 計算・推論:繰り上がりや繰り下がりが苦手、因果関係の説明が難しいなど

ご本人とその周囲の方は、これらの不得意について知っておく必要があります。

学習障害は視力・聴力の問題、知的障害、後天的な脳損傷による失読などと区別しなければなりません。目に見える部分が少ない分、障害特性への理解が大切といえるでしょう。

学習障害の診断基準と診断の流れ

先ほど学習障害は特性への理解が大切と述べましたが、障害の程度や内容をご本人やご家族だけで判断するのは難しい面があります。現実的には、医療機関を受診して診断や症状の説明を受け、必要な治療と支援を受ける流れになります。

学習障害が疑われる場合、子どもの方は児童精神科のある医療機関にかかるのが一般的です。医療機関によっては、小児科で発達障害を診ています。

また、大人の方は、主に精神科、心療内科のある医療機関を受診します。医療機関によっては発達障害外来で受診が可能です。

診断の基本的な流れは以下のとおりです。

  1. 成育歴や困りごとの問診を行い、必要に応じて心理検査などを実施します
  2. 診断の有無と説明を受けます
  3. 必要に応じて治療や支援につなげます

診断は、以下のDSM-5/DSM-5-TRの基準に基づいて行われるのが一般的です。

次の症状のうち少なくともひとつが存在し、6カ月以上継続している

(ア) 読むことが不的確または遅い

(イ) 文章を読めても意味を理解するのが難しい

(ウ) 字の綴りを間違える

(エ) 文法や句読点の間違い、段落をうまくまとめられない

(オ) 数値や計算を習得するのが難しい

(カ) 数学的な推論ができない

学業的な技能が年齢相応ではなく、学業や職遂行に差しさわりがある

学習困難が、知的発達症(知的能力障害)や視力・聴力、他の精神疾患などでは説明できない

引用:大人の発達障害ナビ|大人の発達障害を知る限局性学習症(SLD)とは

学習障害の種類と特徴

学習障害は、困難が生じる領域によって、以下の3つの種類に分けられます。

  •     読字障害(ディスレクシア)
  •     書字障害(ディスグラフィア)
  •     算数障害(ディスカリキュリア)

種類ごとの特徴について解説します。

読字障害(ディスレクシア)

ディスレクシア(dyslexia)は、字を読むことが困難な状態を指し、読字障害や難読症などと呼ばれることもあります。文章をすらすら読めない、正確な読み方がわからない、読めても内容を理解できないといった困難さがあります。

SLDの中でも特によく見られる特徴であり、欧米では約10〜20%の人がディスレクシアに該当するといわれています。

ディスレクシアの特徴的な症状は以下のとおりです。

  • 文字を一字ずつ拾って読む(逐次読み)
  • 変なところで区切ってしまう
  • 読み飛ばしや文末を変えて読むなど、不正確な読み方をすることが多い
  • 本などで文章を読むとすぐに疲弊する(易疲労性)

書字障害(ディスグラフィア)

ディスグラフィア(dysgraphia)は文字を書くことが困難な状態です。ディスグラフィアはディスレクシアが影響していることも多く、文字を読むこと自体難しい、読めるのに書けないといったパターンがあり、症状の出方は人それぞれです。

ディスグラフィアの特徴的な症状は以下のとおりです。

  • 鏡文字などの不正確な文字を書く
  • 「ぬ」と「ね」など似ている文字を間違えて書きやすい
  • 「っ」「ゃ」「ょ」などの小さな文字を間違えることが多い
  • 「お」と「を」など似た発音の文字を間違えやすい

算数障害(ディスカリキュリア)

ディスカリキュリア(dyscalculia)は算数障害などとも呼ばれ、数の感覚や計算など算数・数学の学習に困難がある状態を指します。ディスカリキュリアの方は一般的に、数の概念や数式の規則性などを理解するのが難しく、文章問題などの推論も苦手としています。

ディスカリキュリアの特徴的な症状は以下のとおりです。

  • 簡単な数字や計算式で使う記号を理解できない
  • 繰り上げや繰り下げ、数の大小などがわからない
  • 筆算をすると桁がそろわない
  • 文章問題や図形、グラフなどが苦手

学習障害と併存しやすい特性

学習障害は単独で起こるとは限らず、ほかの発達特性と一緒にみられる場合があります。特に併存しやすいとされているのは、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)です。

ある研究では、ASDのある子どもの約26%はLDを併存し、ADHDのある子どもの約30~40%がLDが併存すると報告されています。

参考:J-STAGE|LDと自閉スペクトラム症,注意欠如・多動症(併存障害)

また、発達性協調運動障害(DCD)の併存も多いとされています。これらの症状が併存すると、より困りごとが増えたり、大きくなったりする可能性があります。

ASD、ADHD、発達性協調運動障害について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

大人のASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群・広汎性発達障害など)

大人のADHDとは?向いている仕事や特性ごとの対策・対処方法、働き方のコツ

発達障害と運動音痴との関係とは?発達性協調運動障害(DCD)の特徴を解説

学習障害の原因

学習障害はいくつかの要因が関係し合って生じると考えられています。しかし、その中心にあるのは、生まれつきの脳の働きの特性です。

ここでいう脳の働きとは、知能の高さではなく、以下のような情報処理の過程です。

  • 見た情報や聞いた音をどう受け取るか
  • 情報をどう整理し、結びつけるか
  • 必要なときに情報思い出して使う

学習障害の方は、こうした処理の一部に偏りがあるため、

  • 文字と音を結びつける
  • 形や順序を正確に捉える
  • 複数の情報を同時に扱う

などの働きが、うまくいかない場合があります。

この特性は生まれつきの脳の発達の違いによるものですので、本人の努力ややる気、家庭環境、教育などのせいで起こるものではありません。だからこそ、ご本人が無理に頑張ったり、周りが叱ったりするのではなく、学び方の工夫や環境調整が大切になります。

学習障害かもしれないと思ったときの相談先

「もしかしたら学習障害ではないか」と思ったときは、一人で悩まず、専門家に相談してみるとよいでしょう。生活や学びの困りごとを整理し、必要な支援につなげてもらえます。

ここでは、学習障害について相談できる医療機関、地域の相談窓口、福祉サービスについてご紹介します。

まずは医療機関で相談

学習障害は自分ではなかなか判断できず、適切な対処の仕方もわかりません。診断の有無に関わらず相談ですので、まずは医師による診察を受けてみるとよいでしょう。

医療機関に相談すると、以下のようなメリットを期待できます。

  • 困りごとの背景を専門的に整理してもらえる
  • 問診や心理検査などで特性の理解が進む
  • 診断書や意見書をもらい、学校や職場で合理的配慮を受けやすくなる

とはいえ、近くに適切な受診先がない場合や、「診察を受けるほど確信がない」といった場合もあるかもしれません。こうした場合は、次項で紹介する地域の相談窓口に行く方法もあります。

発達障害者支援センターなど地域の相談窓口

学習障害の方やそのご家族が利用しやすい地域の相談窓口としては、発達障害者支援センターと精神保健福祉センターが挙げられます。

発達障害者支援センターは、発達特性のある人が地域で暮らしやすくなるよう、相談・助言を行い、必要に応じて関係機関につなぐ役割を持つ専門機関です。困りごとについて専門的な観点から整理し、支援につないでもらえます。

精神保健福祉センターは、学習障害を含む心の健康や精神疾患に関して、ご本人・ご家族の相談に応じる公的機関です。心の不調やストレスを抱えており、治療や支援の相談をしたい場合に利用できます。

また、医療機関の紹介だけでなく、次項で説明する就労支援機関や自立訓練(生活訓練)などの福祉サービスなどにつなげてもらえるのが特徴です。

就労移行支援や自立訓練(生活訓練)などの福祉サービス

学習障害の特性に合った職探しや働き方、日常生活の困難さなどについての相談先としては、就労移行支援と自立訓練(生活訓練)が挙げられます。

就労移行支援は、一般就労や復職を目指す障害のある方が支援を受けられる福祉サービスです。例えば、発達障害の方への支援に強みのある「Kaien」では、障害特性を理解するカウンセリングから、実践的な職業訓練、就活サポート、就職後の定着支援まで、手厚く一貫した支援を行っています。

また、自立訓練(生活訓練)は、自立した日常生活を送るために必要な訓練や、生活に関する相談・助言などを行う福祉サービスです。Kaienでは、「報告・連絡がスムーズにできない」「金銭管理(計算)が難しい」などの困りごとを減らすためのプログラムを提供しています。

Kaienでは見学や相談から始められます。ご興味のある方は、ぜひ以下もご覧ください。

みらいの仕事を“試着”できる Kaienの就労移行支援プログラム

新しい復職支援をあなたに!こころのリワークセンター

自分を見つける、視野を広げる、未来に出会える 自立訓練(生活訓練)プログラム

学習障害の治療と対処法

学習障害は本人の努力不足などではなく、生まれつきの脳の特性が原因とされています。ですので、学習障害を「治す」というより、困りごとの背景を理解しながら、環境を整えたり、道具を使って負担を減らしたりするアプローチのほうが効果的です。

次項からは、医療機関においても、負担を減らすアプローチにつなげるための特性把握が中心であることを解説します。併せて、自分でできる日常生活の工夫も紹介しますので、気軽に試してみてください。

医療機関で受けられる治療や支援

学習障害の治療は、薬や心理療法などで直接治すというよりも、本人の特性に合わせた支援や環境調整が中心になります。

医療機関でまず行われるのは、「何が」「どの場面で」「どの程度」困っているのかを整理するための問診や検査です。そのうえで、学習障害の可能性だけでなく、ADHDやASDといった併存しやすい発達特性、不安や抑うつなどの二次的な不調が関係していないかも含めて評価します。

この評価結果をもとに、本人や家族が特性を理解するための心理教育や、家庭での関わり方についての助言が行われます。また、学校や職場への合理的配慮に向けた診断書や意見書を書いてもらうことも可能です。

不安や抑うつ、睡眠の乱れなどの二次的な症状に対して薬物療法が行われる場合もありますが、これは学習障害そのものを治すためではありません。心身の状態を整え、日常生活を安定させるのが目的です。

日常生活でできる対処法

学習障害による困りごとを減らすには、「読む」「書く」「計算する」などの負担を減らすちょっとした工夫が効果的です。

一例を以下に紹介します。

工夫のポイント具体例
読む文字情報を音や見やすい形に変える・スマホやパソコンの読み上げ機能を使う・文章を追いやすくするために定規をあてる
書くなるべく手書きを減らす・キーボード入力でメモ、書類作成を増やす・音声入力で下書きを作ってから整える
計算する計算過程を見える化して負担を減らす・筆算・途中式を必ず書く(暗算が苦手な場合)・マス目のある用紙を使い、書き方をルール化する(桁がずれやすい場合)

自分に合う方法はそれぞれ違いますので、使えそうな方法を試していくとよいでしょう。

学習障害に関するよくあるFAQ

ここでは、学習障害についてよくある質問について回答いたします。

学習障害は大人になってから気づくこともありますか?

はい、大人になってから気づくことがあります。

学習障害の特性自体は、多くの場合、子どものころから現れます。しかし、子どもや学生のうちは、ご自身の努力や周りの助けでカバーできていたり、求められる水準がそれほど高くなかったりして、困りごとが目立たない場合も珍しくありません。

こうした方は、診断を受けないまま大人になる可能性があります。そして、社会に出てから書類の読み書きの機会が増えたり、数字を扱わなければならない仕事に就いたりすると、困りごとが目立つようになる場合があります。

つまり、ご本人の特性は変わっていませんが、要求される水準の変化によって問題が顕在化するわけです。学習障害は学校の学習段階でみつかりやすいものの、大人になるまで気づかない可能性もあるため、気になる場合は医療機関の受診をおすすめします。

学習障害は治りますか?

特性そのものをなくす治療は今のところ難しいとされています。

学習障害は病気というより脳の働き方の特性です。そのため、薬物療法や心理療法といった方法で直接的に治療できないからです。

しかし、工夫と支援によって困りごとは減らせます。例えば、できない所を無理に矯正するのではなく、本人が落ち着いて集中できる環境を作れば、学習のパフォーマンスが向上します。また、読み書きが少ない仕事に就けば、学習障害による苦手分野が目立たなくなり、力を発揮しやすくなる場合もあるでしょう。

さらに、「手書きを減らすためにパソコンを使う」「推論の苦手さを補うためにAIを活用する」など、苦手な作業を置き換える方法を身に付ければ、困りごとを減らせます。学習障害の方の場合、苦手分野が出にくくする環境調整やスキル習得が、治療と同じような意味を持ちます。

家族としてできる関わり方はありますか?

ご本人がどのような事柄にどれだけ困っているかに目を向けることが、一番の支えになるでしょう。

学習障害の方は周囲から「努力していない」「やる気がない」などと誤解されやすい面があります。そのため、最も身近なご家族が特性をよく理解し、ご本人に合うやり方を一緒に探していく姿勢が望ましいとされています。

出来ない事柄を責めて努力するよう促したり、他人と同じ方法を強いても、上手くできないことで自己肯定感が下がるばかりです。何が困難かを把握し、学校や職場での協力を得ながら、本人が自信を持てるやり方を見つけていくことが必要です。 

学習障害の特性で悩みがある方は支援サービスの活用を検討してみて

学習障害の方は、読み・書き・計算などの特定分野が著しく苦手であり、学業や仕事、日常生活で困りごとを抱える場合があります。これらの困りごとを減らすには、苦手が目立ちづらい方法の工夫と環境調整が重要です。

そのためには、障害特性の理解と、専門家による支援が欠かせません。ご本人やご家族だけで悩まず、医療機関や地域の相談窓口、福祉サービスなどを活用していきましょう。

「Kaien」は発達障害の方への支援で豊富な実績があり、就職・復職を支援する就労移行支援と、自立的な生活を支援する自立訓練(生活訓練)を提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

監修者コメント

学習障害(LD)は、ASDやADHDと並んで三大発達障害として紹介されることが多い割に、余り関心が払われていません。学習障害だと診断されることは滅多に無いのです。薬が効くわけでもない、ということが十分に啓発されてこなかった理由の1つでもあると感じます。

LDを持った方の生活に、LD特性は本当に大きな影響をもたらします。以前の経験ですが、ある会社員の方は算数障害のために本当は進学したかった大学院を諦め、会社でも計算を要する業務が回ってきた際に上司の理解を得るのに大変苦労されました。「勉強ができない」「仕事ができない」には理由があり、単純に知的問題や努力不足に帰結させないことが肝要です。幼少期、学齢期に肯定的評価が少ないと将来の無力感に繋がりやすく、それが最大の二次障害と言えるかもしれません。

大人になってからのLDに関しては、苦手を避けて得意を活かす環境を探すことと、記事にあるようなデバイスやAIで苦手を置き換えていくことが重要です。配慮を求めるのに診断書が必要な場面もありますので、一人で抱え込まず医療機関や支援機関に相談してみてください。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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