就労移行支援の利用条件とは?障害者手帳の有無や対象者、料金と利用期間を解説

公開: 2025.5.12

就労移行支援とは、一般就業を希望する障害のある方に対して、幅広い形で就労をサポートする福祉サービスです。障害者総合支援法に基づいて運営される就労移行支援事業所で行われています。

就労移行支援の利用には条件があるため、サービス内容などを調べる前に利用条件を確認しておくことが大切です。利用にかかる料金や利用可能な期間なども知り、自分に合ったサービスなのかを把握するとよいでしょう。

この記事では、就労移行支援の利用条件や利用期間、利用料金、利用開始までの流れなどについて解説します。

就労移行支援の利用条件

就労移行支援を利用するためには、障害があるなどの一定の条件を満たす必要があります。また、「休職中」や「働きながらでも利用できるのか」といったポイントも押さえておくとよいでしょう。

ここからは、就労移行支援の利用条件について詳しく解説します。

対象者

就労移行支援を利用するためには、基本的に以下の条件をすべて満たしている必要があります。

  • 一般就労を希望している
  • 身体障害・知的障害・精神障害・発達障害*・難病のいずれかの診断を受けている
  • 18歳以上で満65歳未満である

ここでいう「一般就労」とは、企業と雇用関係を結び、一般的な労働者同様に働くことを指します。

上記の条件を満たしていることを前提として、就労移行支援を利用できるのは原則失業中の方です。また、トレーニングやサポートを受けることで一般就労ができると見込まれる必要があります。

失業中の利用条件に関しては、次項で紹介します。また、学生の利用に関しては以下の記事で詳しく解説しているため、併せてご参照ください。

就労移行支援は学生でも利用できる?利用条件とメリットを紹介

休職中や働きながらでも利用できる?

就労移行支援は、失業中の方が仕事を得るために行われる福祉事業です。そのため、すでに仕事やアルバイトをしている方は基本的に利用できません。

すでに働いている方が、就労移行支援の利用申請をしても断られるでしょう。また、就労移行支援の利用中に仕事をしていることが明らかになった場合、利用できなくなる可能性があります。

ただし、自治体によっては多少のアルバイト程度なら許可されるケースもあります。個別に対応が変わるため、事前に確認しておくとよいでしょう。休職に関しては、主治医が就労移行支援の利用を推奨しているなど、条件を満たす場合に利用可能です。自己判断はできないため、自治体の窓口で事前に相談してみましょう。

就労移行支援の利用に障害者手帳は必要?

就労移行支援は障害者手帳を所有していない方でも利用できます。そのため、発達障害の診断がおりていない、いわゆるグレーゾーンの方なども利用可能です。なお、障害者手帳がない場合は、主治医の意見書や定期的な通院履歴が必要になることがあります。

また、就労移行支援の利用には障害福祉サービス受給者証の取得が必要です。次で、この障害福祉サービス受給者証の概要について紹介します。

障害福祉サービス受給者証とは

障害福祉サービス受給者証は、障害福祉サービスを受ける資格があることを証明する書類です。

障害福祉サービスには、就労移行支援のほかに、就労継続支援や就労定着支援、自立訓練(生活訓練)などの種類があります。

障害福祉サービスを利用する際は、まず利用したい事業所を決め、自治体の障害福祉窓口で利用申請を行います。利用が認められると、障害支援区分が決定されたうえで受給者証が発行される流れです。

障害福祉サービス受給者証の取得方法について、詳しくは以下の記事をご参照ください。

就労移行支援の利用に必要な障害福祉サービス受給者証とは?対象者や手続きの流れを解説

就労移行支援の利用期間

就労移行支援を利用できる期間は、原則として最長2年までです。2年以内の利用で就職先を決めるのが目的であり、実際の利用期間は利用者によって異なります。数ヶ月で就職を決める人もいれば、2年間かけてスキルを磨いたり、就業先を探したりする人もいるでしょう。

なお、2年間の利用期間内であれば、別の事業所に移って就労移行支援の利用を続けることも可能です。

利用期間の中断・延長は可能?

就労移行支援は、利用期間内であれば以下のような条件を満たせば利用の中断ができます。

  • 体調が悪化した
  • 家庭の事情で通えなくなった
  • 利用している事業所が合わなかった
  • いったんは就職したが退職した

また、2年間で就職先を決められなかった場合、自治体によっては一定期間の延長が認められるケースもあります。市町村審査会の判断で、継続利用の必要性が認められた場合、最大1年まで延長することができるのです。

ただし、2027年4月以降は就労選択支援のアセスメントが必須となります。就労選択支援とは、就労を希望する障害のある方に、適切な職業選択の機会やルートを提供する福祉サービスのことです。

就労移行支援の中断・延長については、自治体の意向によって対応が異なるため、自分で判断するのではなく、事前に確認することが大切です。

就労移行支援は複数回利用できる?

就労移行支援で就職が実現したものの、その仕事を事情により退職してしまうケースもあります。このような場合、利用期間内であれば就労移行支援を再度利用できる自治体は多数存在します。

就労移行支援を再び利用できるような自治体は23区や政令都市に多いといわれていますが、実際にはそんなことはありません。特別に財政が豊かな自治体に限らず、就労移行支援は全国的に「2度(複数回)使える」ケースが多いです。

ただし、再利用できるかどうかは中断や延長の判断と同様に自治体ごとに対応が異なります。就労移行支援の再利用を一切認めていない自治体も存在するため、在住の自治体における利用条件のルールを確認しておくとよいでしょう。

就労移行支援の利用にかかる費用

就労移行支援の利用には、料金がかかる場合があります。世帯収入などの条件によって決まるため、自分の場合は料金が発生するのか確かめておくと安心です。

ここでは、就労移行支援の利用料金や、そのほかにかかる交通費・昼食代などについて解説します。

サービスの利用料金

就労移行支援の利用料金は、前年度の世帯収入に応じて決まる仕組みになっています。収入区分ごとの就労移行支援の利用料金は以下のとおりです。

区分世帯の収入状況収入のおおよその目安月額利用料の上限
生活保護生活保護を受けている世帯年収100万円以下0円
低所得住民税を支払っていない世帯年収300万円以下0円
一般1住民税を支払っている世帯年収670万円未満9,300円
一般2上記以外の世帯年収670万円以上3万7,200円

上の表で一般1や一般2に該当する場合でも、月額上限以上の料金を請求されることはありません。また、実際に就労移行支援を利用している方のうち、約9割は無料で通っているといわれています。

交通費・昼食代

就労移行支援では、交通費は原則自己負担ですが、自治体によっては補助が出ることもあります。また、原則として昼食の提供はないため、昼食代も自己負担です。

ただし、事業所によっては昼食を提供しているところもあります。Kaienでは、2025年1月から利用者に無料でランチを提供しています。

Kaienで無料ランチを導入した目的は、栄養バランスに優れた食事で心身の健康状態や生活リズムを整えてもらうことです。また、食事の時間を通して利用者同士のコミュニケーションが促進される効果も期待しています。

Kaienの無料ランチの提供は神奈川の拠点から始まっており、2025年中に全事業所に導入する予定です。

就労移行支援は給料や工賃をもらえる?

就労移行支援の目的は、一般就労に向けて訓練し、必要なソーシャルスキルや知識を習得してもらうことです。利用者が実際に働くわけではないため、給料や工賃は発生しません。福祉サービスで給料や工賃が発生するのは、障害のある方に働く場を提供する「就労継続支援」です。

ただし、一部の事業所では通所助成や更生訓練費などの名目で賃金が支払われる場合があります。基本的に給料は支払われないのが前提となりますが、気になる方は利用予定の事業所などに問い合わせてみるとよいでしょう。

就労移行支援の利用までの流れ

就労移行支援を利用する際は、まずクリニックを受診して医師に意見書や診断書を発行してもらいます。続いて、自治体の窓口で相談するなどし、利用する事業所を決めましょう。

事業所および開始時期が決まったら、自治体の窓口で障害福祉サービス受給者証の申請を行いますが、このとき、就労移行支援をどのように利用するのか記した計画書も一緒に提出します。

自治体が承認すると、自宅に障害福祉サービス受給者証が届きます。届いたら、利用する就労移行支援事業所と契約するのが一般的な流れです。

就労移行支援を利用するまでの流れについて、詳しくは以下の記事をご参照ください。

就労移行支援とは?受けられる支援や利用方法をわかりやすく解説

Kaienの支援サービス

Kaienでは、発達障害の方に特化した就労移行支援や自立訓練(生活訓練)などの福祉サービスを提供しています。

Kaienの就労移行支援では、適職アセスメントや求人紹介、就活支援、カウンセリングといった幅広いサポートを展開しています。2,000人超の就職者を輩出するなど、豊富な実績がKaienの強みです。また、定着サポートも充実しており、就職後半年の定着率は95%と全国平均を大きく上回っています。

自立訓練(生活訓練)では、障害理解を深めて自分に合った進路を見つけるためのプログラムを提供しています。100以上のプログラムを用意しており、参加すれば生活や就職に役立つ知識・経験を身につけることが可能です。

Kaienの支援サービスを活用し、将来の可能性を広げてみてはいかがでしょうか。

就労移行支援の利用は条件や期間の確認を

就労移行支援を利用できるのは、一般就労を希望する障害のある方です。利用の際は障害福祉サービス受給者証の申請が必要で、利用できる期間は原則2年までと決まっています。利用料金については世帯収入に応じて決まりますが、約9割の方は無料で利用している状況です。

Kaienでは、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)などの福祉サービスで、障害のある方の社会進出をサポートしています。将来的に一般企業へ就職することを目指している方は、Kaienの見学・個別相談会にぜひご参加ください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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