「数学的思考」を武器にエンジニアへ。苦手と割り切る勇気がくれた、自分らしい働き方

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神奈川県内の公立高校で数学教員として教壇に立っていたNさん。しかし、多忙と環境への不適応から適応障害を患い、退職を余儀なくされます。「自分には何が向いているのか」という自問自答の末にたどり着いたのは、就労移行支援での徹底した自己分析と、自らの「凸凹(でこぼこ)」をありのままに受け入れることでした。現在は大手メディア関連企業のエンジニアとして、新たな一歩を踏み出しています。

▼Nさんの簡単なプロフィール


  • 年齢: 20代
  • 診断名: ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)
  • 苦手なこと: 集団行動、計画を立てること、細かい事務作業、環境の変化
  • 利用サービス:就労移行支援
  • 就職先: 大手マスコミ・メディア企業(エンジニア職)


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突出した数学の才能と、言葉の遅れに悩んだ幼少期

―――幼少期はどのようなお子さんでしたか。

極端な子どもだったと思います。自分でも、得意なことと苦手なことが他人の目から見て異常なほどはっきり分かれていた記憶がありますね。

得意なのは記憶力と数学。昆虫や車の図鑑を丸ごと何冊も暗記してしまったり、幼稚園の頃にはすでに漢字の読み書きができたり。特に算数に関しては、周りと比べても当時から飛び抜けていたと思います。一方で、言葉の遅れが顕著だったんです。

小学校1年生の頃は国語の授業だけ別の教室で受けていたほどでした。周りが話していることは理解できるけれど、自分から積極的に発話ができない。何か指示を出されても、その裏にある意図を汲み取れず、「どういう意味だろう」と混乱して立ち止まってしまう。多動の傾向も強くて、塾にサッカーボールを持って行ってしまうような無計画さもありました。集団行動への苦手意識は、その頃からずっと根底にありましたね。

教員生活での挫折。独力での就活に感じた「限界」

――― 学生時代を経てどのようなお仕事に就かれたのですか?

大学時代は塾講師を3年ほど経験し、物理や数学を教えていました。その延長で、大学卒業後は高校教員になりました。そこが非常に業務量が多く、責任も重い環境で、数ヶ月で適応障害になってしまったんです。結局、自分を追い詰めてしまい、退職して休養することになりました。

その後再就職に向けて活動を始めたのですが、壁にぶつかりました。教員採用試験という特殊なルートしか通ってこなかった私は、一般企業の就職活動について何も知らなかったんです。面接の作法も、履歴書の書き方も、社会人としてのマナーも。自分の特性である「集団行動の苦手さ」や「相手の感情を汲み取ることの難しさ」を抱えたまま、独力で就職先を探すことに限界を感じて、ビジネススキルを実戦形式で学べるKaienに通うことを決めました。

徹底した「自己理解」で見つけた、自分を守るためのルール

――― 就労移行を通じて、ご自身の中でどのような気づきや変化がありましたか?

事務系の訓練で、文字や数字の照合をする作業があったのですが、これがもう驚くほどできなかったんです。でも、それが逆に大きな収穫でした。「自分は事務職には絶対に向かない」と、早い段階で確信できました。

また、苦手を克服しようとするのではなく、物理的な対策でカバーすることに集中しました。例えば、光や音の感覚過敏に対しては特注のメガネやイヤーマフを使ったり。対人面でも「相手に優しく接するのは自分には難しい。ならば、嘘をつかずに真摯に、正しく向き合うことを徹底しよう」と、自分のスタイルを再定義しました。そうして「自分はこういう立ち位置の人間だ」と客観的に自分を認知できるようになってからは、周囲との距離感も少しずつ掴めるようになった気がします。

――― 仕事に向き合う上で、何か意識していることはありますか?

私の中で大切にしている、社会で生き抜くためのルールが3つあります。1つ目は「嘘をつかないこと」。解釈を歪めず、事実を切り分けて話す。2つ目は「ルールを徹底的に守ること」。ルールを守れば自分にかかる責任が最小限になり、自分を守る盾になります。3つ目は「スキルを磨く姿勢」。結果を真摯に受け止め、次の一手を変えていく。これらさえ徹底していれば、どんな環境でもやっていけると思っています。

(散歩の途中の海の写真。海を見ていると落ち着くんですとNさん。)


「思い立ったら即行動」で掴んだ、エンジニアへの道

――― 就職活動は順調に進みましたか?

私は「思い立ったら即行動」のタイプなので、就労移行支援を利用してすぐに障害者雇用のイベントに参加しました。そこで今の会社に出会ったんです。ITやデータサイエンスの適性があると言われたこともあり、メディア関連のエンジニア職を志望しました。

週に2〜3回はスタッフと面接練習を入れ、敬語の使い方から受け答えの構成まで、徹底的に修正を重ねてもらいました。一度、締め切りを忘れて会社に電話して乗り切ったというヒヤヒヤするエピソードもありましたが、優先順位の付け方を学んでからは、それも克服すべき課題として向き合えました。最終的には第一志望の企業から、利用後4ヶ月というスピードで内定をいただけたので、自分でも驚きました。

5年、10年と。同じ場所で腰を据えて働くことを目標に

――― これからの展望を教えてください。

これまで一つの場所に長く留まることがあまりなかったので、まずは「5年働くこと」を目標にしています。幸い、同期が70人もいる規模の大きな会社で、今はその仲間たちと過ごす時間がすごく楽しいです。第2新卒という枠ですが、新卒のメンバーとも意気投合してカラオケに行ったりしています。環境に慣れるまでは大変だと思いますが、持ち前の行動力で食らいついていきたいですね。

プライベートでは、大好きな数学の問題集を解くことやランニングを続けていきたいです。いつか大きなマラソン大会にも出場してみたい。仕事でしっかり成果を出して、一日の終わりに美味しいお酒を飲む。そんな当たり前で、自分らしい毎日を積み重ねていければと思っています。

(青々とした緑が綺麗な三渓園での1枚。)

【付録】~Nさんについて

――― 休日はどのように過ごされていますか?

最近は散歩やランニングが多いですね。特にKaien終わりに桜木町駅の近くで飲み物を買って、そのまま海沿いを歩くのがお気に入りです。みなとみらいエリアの夜景はゴミゴミしていなくて、一週間の疲れが吹き飛ぶんですよ。「今週も頑張ったな」って一人で打ち上げをしています。横浜は自然も夜景もあって、のびのびできるので自分に合っているなと感じます。

あとは得意な数学は今でも問題集を買って解いています。頭を使うのが好きなので、カチッとハマる感覚がたまらないんです。自分にとっては最高のリフレッシュですね。

新しい職場はオフィスカジュアルなので、着心地のいいシャツを探して、形から整えていこうと思っています。これからの新しい生活が、本当に楽しみです。

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