理想と現実を乗り越え、掴んだ自分らしさ。自己受容から安定就労への新たな一歩

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「自分に向いている仕事は何だろう」「どう生きていけばいいのだろう」。そんな切実な問いを胸に、人生の舵を切り直すための「自分探し」の旅に出たMさん。一般企業での早期離職やアルバイトを転々とする日々を経て、30代で自身の発達障害を知り、Kaienの就労移行支援に通い始めました。

訓練を通じて他の利用者さんの姿から客観的な視点を学び、一時は希望していた事務職を諦めるという「理想と現実の葛藤」を経験。しかし、自分自身の本当の強みと実直に向き合い、自ら特性を「受容」したことで、一般枠のオープン就労* で見事、内定を勝ち取りました。これまでの歩みと、これからの目標について詳しくお話を伺いました。

*一般枠のオープン就労…自身の病気や障害について、企業側に開示した上で就労する形態のことを指します。

▼Mさんの簡単プロフィール


  • 年齢:40代
  • 性別:男性
  • 診断名:発達障害
  • 苦手なこと:想定外の事態への臨機応変な対応、複雑な事務処理
  • 利用サービス:就労移行支援
  • 就職先: 一般枠オープン就労


明るく活発だった幼少期から、次第に感じ始めた「周囲との感覚のズレ」

――― まずは幼少期や学生時代について教えてください。どのようなお子さんだったのでしょうか。

小さい頃の私は、とても明るくて活発な子どもでした。自分がやりたいと思ったことには積極的に取り組み、行動に移すタイプで、ありがたいことに周りからもかわいがってもらえるような性格でした。

――― 活発に過ごされていたのですね。その後、成長されるにつれて、ご自身の周囲と自分が「何か違うな」と感じるような時期や経験はありましたか?

そうですね。年齢が上がるにつれて、少しずつ変化がありました。友達と一緒にいても、楽しみや喜びを感じるポイント、いわゆる「感覚の違いやズレ」をどこか肌で感じるようになって。無理に周りに合わせるのがしんどくなってしまい、自然と自分から周囲と距離を取るようになっていきました。一時期はあえて友達を作らず、一人で過ごす時間がかなり多かったのを覚えています。

――― 孤独を感じることもあったかと思いますが、その後の学生生活はいかがでしたか。

高校に入ってからは、少しずつ周囲と合わせることができるようになっていきました。そのおかげで友達もまた増えていって。その後、社会福祉を専攻する専門学校に進学したのですが、そこでは自分と似たような雰囲気や志向性を持った人たちが多く、とても居心地が良くて楽しく過ごすことができました。

早期離職とアルバイト生活を経て、診断をきっかけに始めた「自分探し」

――― 専門学校を卒業された後は、どのような道に進まれたのでしょうか。Kaienを利用することになったきっかけと合わせて教えてください。

卒業後は一般企業に就職したのですが、業務の進め方や環境が合わず、わずか半年で辞めてしまいました。その後は、自分に合う仕事を模索しながらアルバイトを転々としていました。そんな日々の中で、自分に発達障害があることが分かったんです。自分にはどういう仕事が向いているのか、これからどう生きていきたいのかを明確にするために、一度腰を据えて「自分探し」をしようと決意しました。そのための環境を探す中でKaienの説明会に参加し、ここなら求めている答えが見つかるかもしれないと感じて、去年の9月からKaienを利用し始めました。

訓練で見えてきた他者の強みと、客観的な視点の獲得

――― Kaienでは、具体的にどのような訓練に取り組まれましたか?

週替わりで行われるグループワークを中心に、個人ワークにも並行して取り組みました。個人ワークでは、PCスキルなどの確認を通じて自分の得意・不得意のバランスを把握すること。そしてグループワークでは、周囲とのコミュニケーションの取り方を実践的に学ぶことを目的として取り組んでいました。

――― グループワークなどの訓練を経験する中で、特に印象に残っている学びや気づきはありましたか?

本当にすべての訓練が自分の身になったと感じているのですが、特に印象的だったのは「他の利用者さんができること」を客観的に知る機会が多かったことです。例えば、「この人はコミュニケーションに対して少し苦手意識があるかもしれないけれど、資料のまとめ方が驚くほど上手だな」といったように、他の方の強みがよく見えました。

――― 他の方の強みが見えることで、何かご自身にも変化があったのでしょうか。

はい。それぞれの得意なことが見えているので、グループワークの中で「役割分担」が非常にスムーズにできるようになりました。得意な人が得意な作業を担当するという、いわゆる『適材適所』の心地よさを実感したんです。「こういう風に、自分が無理なくできることに時間を費やせるような会社であれば、自分もすごく働きやすいだろうな」と、理想の職場環境のイメージが湧くようになりました。

事務職へのこだわりを諦め、理想と現実に向き合った「自己受容」

――― 他者を見る客観的な視点が、ご自身の自己理解にはどう活かされたのでしょうか。

実は「事務職がいいな」と思って、そこを目指していた時期がありました。でも、グループワークなどを通して他の利用者さんのスキルや知識の高さを目の当たりにした時、自分を客観的に見つめ直さざるを得なくなりました。彼らと比べた時に「あ、自分はここで勝負するのは難しいな。事務職は諦めよう」と、途中で舵を切る決断をしたんです。

――― 事務職を諦めるというのは、心理的にも大きな葛藤があったのではないでしょうか。

おっしゃる通りで、自分の「理想」と「現実」のギャップを受け入れるのは、本当に難しかったです。でも、誰かの言葉に流されるのではなく、訓練を通じて自分自身の目で見て、自分の力でしっかりと現実と向き合いました。その結果、自分の特性を本当の意味で「受容」することができたんだと思います。

――― 素晴らしい向き合い方ですね。そこから、ご自身の新しい「強み」や「適性」はどのように見つけていかれたのですか?

これまでの人生を振り返ってみた時に、座りっぱなしのデスクワークよりも、適度に身体を動かしている仕事の方が、自分に合っていたし成果も出ていたなと気づいたんです。これからは無理に背伸びをした事務職ではなく、自分の身体の動かしやすさや、実直さを活かせるところに進もうと切り替えることができました。同時に、仕事を進める上での「確実な報告や確認の徹底」といった基本の大切さも、訓練の中でしっかりと身につけることができました。

一般枠オープンでの就活。不安を乗り越えた「自己対処」の開示

――― 就職活動では、どのような軸を持って進められたのですか?

軸として掲げたのは「正社員」であること、そして「一般枠のオープン就労」という点です。何より、やりたいことやできることのバランス、そしてライフワークバランスをしっかりと考え、長く健康に働き続けられることを最優先にしました。今の自分にとって明らかに難しそうな条件の求人はあえて選びませんでした。その上で、自分が興味を持てる分野、働く姿を想像して「ワクワクする分野」に少しずつ選択肢を絞っていきました。

――― 一般枠オープンでの就活を進める中で、苦労されたことや不安に思ったことはありましたか?

「自分の障害を積極的に企業へ伝えることが、選考においてどう影響するのだろう」という不安は常にありました。どうしてもマイナスに捉えられてしまうのではないかと。そこで、単に障害名を伝えるだけでなく、「自分の特性に対して、普段このように自己対処しています」「こういう配慮があれば、これだけのことができます」と、具体的な対処法とできることを詳しく伝えるように意識しました。そのためにも、応募する企業の仕事内容の分析を徹底的に行いました。「この業務内容であれば、自分のこの特性がこう影響する可能性があるけれど、こう対応すればクリアできます」と面接でも説明できたことが、企業側への安心感に繋がり、乗り越えるきっかけになったと思います。

内定へ。自分探しを実現し、長く勤めるためのスタートライン

――― 就職先を選んだ、一番の決め手は何だったのでしょうか。

一番の決め手は、 私の障害や特性に対して、本当に深い理解を示してくれたことです。面接や選考のプロセスを通じて、私の得意なことや苦手なことをしっかりと「分かってくれているな」という安心感がすごくありました。ここなら、無理な背伸びをせず、自分らしく力を発揮できると確信できました。

――― 最初にKaienを利用された目的である「自分探し」や「どう生きていきたいかを知る」ということは、達成できましたか?

はい、実現できたと感じています。一時は事務職を諦める悔しさもありましたが、結果として自分に最も合った、長く働ける道を見つけることができました。

――― 素晴らしいですね。それでは、これから新しい職場で達成したいことや、今後の目標を教えてください。

まずは、何よりも「長く勤めること」が第一の目標です。しっかりと環境に慣れ、体調を崩さずに安定して働き続けたいと思います。そしてその先に、自分が経験を積んで仕事ができるようになっていったら、今度は自分が職場の仲間を働きやすくサポートできるような、そんな存在に成長していきたいです。

――― 新しい職場での末永いご活躍を、スタッフ一同心より応援しております。本日は貴重なお話をありがとうございました!

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