本記事は、Kaien公式YouTubeにて、Kaien代表取締役:鈴木慶太が毎週配信しているライブ配信番組「お悩み解決ルーム」2026年1月8日配信分より再構成したニュース記事です。

元NHKアナウンサー。自身の長男が発達障害の診断を受けたことをきっかけに、米国留学(MBA取得)を経て株式会社Kaienを設立。 「数的な凸凹があっても、強みを活かして働ける社会」を目指し、大人向けの就労支援から子ども向けの学習支援(TEENS)まで幅広く事業を展開している。 経営者として、また一人の親としての視点を交えた発信は、多くの当事者・家族から支持を得ている。
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目次
記事の概要
2025年末から2026年にかけて、障害のある人に関わる2つの「数字の問題」が相次いで報じられました。一つは文部科学省の大学進学率の集計から特別支援学校の卒業生が長年除外されていたこと。もう一つは日本年金機構で障害年金の医師判定が適切なプロセスを経ずに破棄されていた疑いが浮上したことです。どちらも「制度の見えないところで何が起きているか」を問い直す出来事です。
文部科学省が大学進学率の分母に特別支援学校卒業生を含めていなかった問題
何が起きたか
文部科学省は毎年「学校基本調査」として大学進学率を発表しています。ところが長年にわたり、特別支援学校の卒業生が分母に含まれていなかったことが判明し、修正されました。
修正の影響が最も大きかった2024年度では、大学進学率が 59.1% → 58.6% へと0.5ポイント下がりました。
なぜ下がるのか
この仕組みはシンプルです。
- 大学進学率 = 大学進学者数 ÷ 18歳人口(分母)
- 特別支援学校の卒業生の大学進学率は約1〜2%と非常に低い
- そのため、この人たちを分母に加えると、全体の進学率が下がる
つまり逆説的ですが、「特別支援学校卒業生の大学進学が少ない」という現実が数字に現れたということです。
もし特別支援学校卒業生も一般高校生と同じ割合で大学に進学していれば、分母に加えても進学率は変わりません。修正後に数字が下がったという事実は、特別支援学校卒業生の高等教育への進学機会が非常に限られているという現状を示しています。
「除外」は意図的な差別だったのか
この問題はSNSで激しい批判を呼びました。「特別支援学校の人は高等教育を受けないという前提があったのでは」という指摘です。
ただ現実の行政実務の観点から見ると、前任者から引き継いだ計算式をそのまま使い続けた可能性が高く、担当者レベルで意図的な排除が行われたとは考えにくい面もあります。それでも、「特別支援学校の生徒は大学進学の対象外」という暗黙の前提がいつの間にか制度に埋め込まれていたという批判は、正当な問いだといえます。
問題の本質:学ぶ権利は誰にでもある
特別支援学校には知的障害のある方が7〜8割を占めており、高等教育の性質上、進学率が低いことには一定の背景があります。一方で「学ぶ権利は誰にでもある」という原則から考えれば、1〜2%という数字は改めて議論の出発点になるべきです。
正しい数字で現状を把握することが、制度設計の第一歩です。「なかったことにしていた数字」を直視することの意味は小さくありません。
障害年金の医師判定が密かに「破棄」されていた疑い
共同通信が報じた内容(2025年12月28日速報)
日本年金機構において、障害年金の支給・不支給を審査した医師の判定結果に問題があると職員が独自に判断し、その判定を破棄していた疑いが報じられました。
本来の流れは次のとおりです。
- 申請者の診断書・資料をもとに医師が判定を行う
- その判定を踏まえて機構が支給・不支給を決定する
報道によれば、職員が医師の判定に独自の問題ありと判断した場合に、別の医師に再判定を依頼していたとされています。このプロセス自体は制度上ありうるとしても、破棄・差し替えが職員の裁量で行われていたとすれば、透明性と公正性の観点から大きな問題があります。
「悪の意図」より「構造の問題」
この種の問題が起きる背景には、個々の職員の悪意というよりも、業務量・制度設計の問題がある可能性が高いです。
行政実務では、申請のたびに膨大な書類が発生します。障害年金の申請、障害者手帳の申請、自立支援医療、福祉サービスの受給者証——それぞれ別々の手続きが必要で、多くの場合、同じ医師に同じような文書を何度も書いてもらわなければなりません。
本来であれば、1人の人を包括的にアセスメントし、その結果をさまざまな申請や支援計画に活用できる仕組みがあれば、こうした非効率と矛盾は減るはずです。しかし現行制度は「申請主義」をとっており、申請のたびに新たな書類と審査が必要です。現場の職員が「どうにかこなそう」とするうちに、ルール外の処理が生まれやすい土壌があるといえます。
「水際対策」への懸念
一部では、支給率を一定以下に抑えるような内部ルールが存在するのではないかという懸念も出ています。現時点でそれを示す証拠はなく、そうした組織的な意図があったとは考えにくい面もあります。しかしいずれにせよ、不透明なプロセスが障害のある人の生活に直接影響するという問題は深刻です。共同通信はその後も追報を続けており、今後さらに詳細が明らかになることが予想されます。
共通する問題:制度の「見えないところ」で何が起きているか
この2つの問題には共通するテーマがあります。
ポイントをまとめると下記。
| 特別支援学校・進学率問題 | 障害年金・判定破棄問題 | |
| 何が見えていなかったか | 統計の分母から特定の人が除外されていた | 年金機構内部の判定プロセス |
| 背景にある構造 | 行政の引き継ぎと前提の固定化 | 業務過多と申請主義の複雑さ |
| 影響を受ける人 | 特別支援学校卒業生と家族 | 障害年金を必要とする当事者 |
| 必要な対応 | 正確な実態把握と進学支援の拡充 | プロセスの透明化と制度設計の簡素化 |
共通する問題として、制度は「誰かが守る」と思って油断していると、いつの間にか「守られていない」状態が常態化します。情報を継続的に確認し、おかしいと感じたら声に出していくことが、当事者・支援者・関係者それぞれに求められています。
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参考資料

