在宅利用の厳格化という「揺り戻し」:就労支援のオンライン活用に厚労省のメス(YouTubeライブ配信「お悩み解決ルーム」2026年3月19日配信より)

本記事は、Kaien公式YouTubeにて、Kaien代表取締役:鈴木慶太が毎週配信しているライブ配信番組「お悩み解決ルーム」2026年3月19日配信分より再構成したニュース記事です。

元NHKアナウンサー。自身の長男が発達障害の診断を受けたことをきっかけに、米国留学(MBA取得)を経て株式会社Kaienを設立。 「数的な凸凹があっても、強みを活かして働ける社会」を目指し、大人向けの就労支援から子ども向けの学習支援(TEENS)まで幅広く事業を展開している。 経営者として、また一人の親としての視点を交えた発信は、多くの当事者・家族から支持を得ている。

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記事の概要

厚生労働省は、2026年度の報酬改定に向けた検討の中で、就労移行支援や就労継続支援における「在宅支援(オンライン利用)」の要件を厳格化する方針を打ち出しました。新型コロナウイルス禍で一気に普及した「福祉のオンライン化」ですが、今、そのあり方が大きな転換点を迎えています。

今回の改定案では、単にパソコンの前に座っているだけの活動や、安易な内容(eスポーツや植物の水やり報告のみなど)を「不適切」と断じ、算定要件をより厳しく設定することが示唆されています。


【制度の背景】なぜ今、メスが入るのか

現在、国が進めているのは「適切かつ効果的な支援の徹底」です。厚労省の資料(第54回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)によれば、在宅支援において「実態の伴わない運営」が散見されることが問題視されています。

具体的には、以下の要件をすべて満たさなければ報酬を認めないという、極めて厳格な運用が求められる見通しです。

  • 市町村による個別の必要性の確認
  • 本人の同意と利用内容の明記
  • 緊急時に職員が速やかに利用者のもとへ駆けつけられる体制の整備

特に注目すべきは、この「緊急時の駆けつけ体制」です。これは、オンライン支援を「遠隔地から安価に提供するツール」としてではなく、あくまで「地域に根ざした支援の補完」として位置づけ直そうとする国の強い意志の表れと言えます。

【現場のリアルと懸念】「とばっちり」を受ける地方の当事者

現場を預かる身として、不適切な運営を正す方向性自体には異論ありません。しかし、今回の「駆けつけ要件」の厳格化は、真面目に支援を行っている事業所や、オンラインだからこそ救われていた当事者に「とばっちり」を与えるリスクを孕んでいます。

例えば、近隣に専門的な支援機関がない離島や地方の居住者が、都市部の質の高いオンライン支援を受けようとした場合、この「物理的な距離」が壁となり、サービスの利用を拒まれる可能性があります。 「何かあったらすぐ行ける距離にいろ」というルールは、一見すると安全配慮のように見えますが、実態としては「住んでいる場所による選択肢の格差」を固定化してしまう矛盾を抱えているのです。

【代表の視点・哲学】「管理」の論理が「可能性」を狭めていないか

私は、障害者雇用の本質は「特性を活かして社会を前進させること」にあると考えています。企業側でもフルリモート求人のニーズは高まっていますが、一方で「顔が見えないと不安」「管理が難しい」という懸念も根強く残っています。

今回の国の動きは、そうした企業の「不安」や「管理の論理」に寄り添いすぎているようにも見えます。もちろん、生存確認を含めた福祉的責任は重いものです。しかし、「不適切な一部の例」を排除するために、ICTが持つ「物理的な制約を超える力」を去勢してしまうのは、あまりにも勿体ない。 私たちは、単にルールを守るだけでなく、オンラインであっても「我々(We)」という一体感をどう醸成し、いかにして仕事の成果に結びつけるかという、より高度な支援技術を磨くべき局面に来ています。


おわりに

制度が変わる時期は、当事者の皆様にとって不安が多いものです。しかし、制度に翻弄されないために最も重要なのは、「自分にとって何が最適な環境か」を言語化し、準備しておくことです。

在宅利用を希望する方は、以下のアクションを検討してください。

  1. 現在の利用事業所に確認する: 4月以降、今の利用形態が維持できるのか、駆けつけ体制などの新ルールにどう対応するのかを早めに相談してください。
  2. 「なぜ在宅なのか」を整理する: 単に「楽だから」ではなく、「在宅であればこれだけのパフォーマンスが出せる」「このスキルを習得するためにこのオンライン支援が必要だ」という根拠を、自治体や事業所に伝えられるようにしておきましょう。
  3. ハイブリッドな選択肢を持つ: 完全在宅に固執せず、週に数日は通所するなど、制度の波を吸収できる柔軟なプランを支援員と一緒に組み立ててみてください。

社会のルールが変わっても、あなたの「働きたい」という意欲とスキルは裏切りません。現実を直視しつつ、前向きに次のステップを準備していきましょう。

参考リンク

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