あなたの「生きづらさ」、その正体は?

公開: 2025.9.19

「トラウマは一生治らない」「命にかかわるような大きな出来事だけがトラウマになる」――そのように考えてはいませんか?
しかし、実際にはそれは誤解であり、トラウマは誰にでも起こり得る「心の体験」です。

2025年7月30日(水)にKaienが開催した特別セミナーでは、米国心理療法士の服部信子先生をお招きし、トラウマに対する上記のような”誤解”の解明と「トラウマがあっても自分らしく働く」というテーマにお話しいただきました。

本記事では、特別セミナーの動画を基に、トラウマとは何か、発達障害との意外な関連性、回復への現実的な道筋について、研究や現場の知見を交えて解説します。

※本記事は、2025年7月30日(水)に行われたKaien特別セミナーを分かりやすく編集した記事です。より詳細な内容は、ぜひ以下のウェビナー動画をご覧ください。 [米国心理療法士 服部信子先生に学ぶ「トラウマがあっても 自分らしく働くには」 〜​安心できること、好きなことを日常に散りばめよう!〜]

司会:鈴木慶太(株式会社Kaien代表取締役)

ゲストスピーカー:服部信子先生(米国心理療法士)

トラウマは「無力感」の記憶

トラウマとは、単なる過去の辛い出来事ではありません。心理療法士の服部信子先生によると、トラウマは「脳が処理できる量を超える衝撃」と「望まない結果になったときの無力感」が重なることで生じます。

例えば、震災のような状況で瞬時に大量の情報を処理できず対応できなかった経験は、まさにトラウマになり得ます。ポイントは次の通りです。

  • トラウマ ≠ PTSD
    PTSDは医学的な診断名で、特定の症状が揃った場合のみ診断されます。トラウマを経験してもPTSDになるとは限りません。
  • トラウマは治せる
    生活習慣の改善や心理療法で回復が可能です。「過去に戻る」のではなく、「新しい今を始める」ことが回復です。

トラウマは一生残るものではなく、向き合い方や環境次第で少しずつ変化していきます。

発達障害とトラウマの関係

トラウマになりやすいかどうかは、脳が処理できる情報量や対応力に影響されます。特に、同時並行が苦手な方や、対応レパートリーが少ない方の場合、トラウマになりやすい傾向があります。

一方で、発達障害の方は論理的に理解することで、定型発達の方よりもトラウマから解放されやすいというケースもあるようです。

また、トラウマの症状と発達障害の特性には以下共通点があります。

  • フラッシュバック
  • 過敏性
  • 集中力の欠如
  • 感情の揺れ

見た目だけでは原因の判断が難しいため、診断名に固執せず、具体的な困りごとや背景を理解することが大切です。

働きながらできる! トラウマ回復の4ステップ

回復を始めるには、まず自分の状態や二次的な影響を理解することが大切です。服部先生は、トラウマ回復に向けた4つのステップを提案しています。

  1. 生活習慣・環境の調整
    安心できる環境を整え、過剰な情報やストレスを避けます。睡眠、運動、食事などの基本的生活習慣も整えましょう。
  2. セルフケア
    深呼吸や軽い運動など、自分で対処できるスキルを身につけます。気分や行動を記録することで、効果を確認できます。
  3. 疾患の治療
    トラウマ以外の精神疾患や身体疾患がある場合は、医療機関で適切な治療を受けることが回復を助けます。
  4. 心理療法
    専門家と共にトラウマに向き合います。回復は直線的ではなく、少しずつ「楽になる」経験を積み重ねるプロセスです。

自分に合った方法を見つけるためには、支援者と相談しながら、セルフケアを試行錯誤してみることが大切です。

性格の問題ではない! 科学が示すトラウマの真実

トラウマは本人の性格や根性の問題ではありません。脳の反応によるもので、本人の意思ではコントロールできないことが多いのです。

働きながら回復を進める場合は、自分のストレス対応能力や職場環境を見極めることが重要です。

  • ブラックな環境では業務量の調整を検討
  • 現状維持が可能なら継続
  • 気分や行動を記録して客観的に把握

さらに、トラウマ・インフォームド・ケア(TIC)の考え方も重要です。これは、支援者と当事者が互いを尊重し、協力して意思決定を行うアプローチです。

TICの3つの原則:

  1. 安全の確保:物理的・心理的に安心できる環境を作る
  2. 本人の意思尊重と選択肢の提供:選択肢を奪われた無力感に対応
  3. 共同・協力関係の構築:上からの指示ではなく、共に決定する


回復の第一歩は「無力感」に気づくこと

トラウマの核心は「無力感」です。多くの場合、本人は自覚していません。周囲の家族や支援者が、「それはおかしい」「君は認められるべきだ」と伝えることで、無力感に気づき、回復の一歩を踏み出すことができます。

まずは、日常生活の中で「安心できること」「嬉しいこと」を増やすことから始めましょう。小さな変化が、回復への大きな力になります。

まとめ

トラウマや発達障害による生きづらさは、決して「性格の問題」ではありません。理解し、環境を整え、支援やセルフケアを取り入れることで、自分らしく働くことは十分可能です。

この記事をきっかけに、少しずつ自分の状態と向き合い、安心できる日常を積み重ねていきましょう。

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