発達障害とマインドフルネス:特性を「強み」に変える心のトレーニング

公開: 2026.1.13

皆さんはマインドフルネスというものを知っているでしょうか?なんとなくのイメージは知っているけれど詳しくはよく分からない…。そんな方も多いのではないでしょうか?

マインドフルネスは発達障害の特性を持つ方々や、その支援に関わる方々にとって、有効な手段として注目されています。しかし、「特性に合わせた実践法」や「注意点」についての情報はまだ十分ではありません。

2023年8月23日にKaienが開催した特別セミナーでは禅僧であり精神科医である川野泰周先生をお招きし、マインドフルネスの定義や発達の偏り、睡眠の課題、イライラといった心のコントロールの悩みにマインドフルネスがどのように役立つのかをお話しいただきました。

本記事では、発達特性を踏まえたマインドフルネスについて禅僧としての実体験や医師としての現場の知見を交えて解説します。

※本記事は、2023年8月23日に行われたKaien特別セミナーを分かりやすく編集した記事です。より詳細な内容は、ぜひ以下のウェビナー動画をご覧ください。

実践法を解説!発達障害の特性にあうマイ・マインドフルネスを探そう 講師:川野泰周先生(臨済宗建長寺派 林香寺 住職/RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長)

講師:川野泰周先生(臨済宗建長寺派 林香寺 住職/RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長)

聞き手:鈴木慶太(Kaien代表取締役)


脳疲労を解消!マインドフルネスの力とは?

マインドフルネスの定義とは、

今この瞬間の体験に注意を向け、評価をせず、とらわれのない状態でいること

です。マインドフルネスにあたっては以下の二つの要素が大切です。

①注意を向ける:今この瞬間の体験に意識を集中する

②評価や価値判断をしない:体験に対する「二次的な反応」(否定、執着など)を手放し、あるがままに受け入れる

マインドフルネスを続けることによって、物事を細かく見ていく気付きの能力と受け入れる能力の2つが上がっていきます。そして、この2つの能力が上がっていくことによって、レジリエンスというストレスに対する抵抗力、受け流す力も強くなっていくのです。

ハーバード大学の研究では、私たちが活動している時間の46.9%もの間、「マインド・ワンダリング」(心が他所にさまよう状態にあることが判明しています。そして、この状態こそ、脳内のネットワークを過剰に働かせ、脳疲労を引き起こす最大の原因となっているのです。脳疲労が起こることで自律神経のバランスが乱れ、原因不明の不定愁訴にもつながってしまう可能性があるのです。

マインドフルネスは、この悩みや苦しみの根源である脳内の過活動を抑え、脳の疲労を取り除くことで、メンタルのコンディションを改善することを目指すのです。

実際に、我々が最も幸せを感じやすい心の状態とは、心がさまよっていない状態、つまり目の前の対象に意識を集中させている時間だというデータもあるのです。


発達障害の悩みにも効果が!エビデンスが示す効果

マインドフルネスの一つの実践法である瞑想を続けることによって、不安に対して「ぶれない心」が育まれていくというデータがあります。

通常の人がネガティブな感情を抑えようとすると、理性の中心である部分が強く働き、感情の中枢を抑え込もうとします。これは脳のエネルギーを大量に使い、燃え尽き(バーンアウト)につながりやすくなってしまいます。

一方、マインドフルネスを練習している人は、ネガティブな感情が起きても、客観的に観察出来るようになります。「今、嫌な気持ちになっている自分」を受け入れることで、感情のピークは収まり、ストレスにぶれにくく、燃え尽きにくい心の状態を作り出すことができるのです。

うつの再発にもマインドフルネスは効果を示しています。マインドフルネスと認知行動療法を組み合わせたマインドフルネス認知療法を使って、薬物療法を続けたうつ病の患者さんと比較して再発率に大きな差はなく、むしろ再発率が少ないという結果が出たのです。もちろん薬物療法も必要となるのですが、マインドフルネスと併用していくことでより良い作用が見込めるのです。

また、発達障害と診断されている方々に対しても、マインドフルネスは具体的な効果がエビデンスとして示されています。

診断名効果
ADHD(注意欠如多動症)注意を制御する能力が向上し、衝動性が低下することが示されています。業務効率や学習効率の向上につながるだけでなく、うつや不安といった二次障害の症状の改善が見られます。また、ADHDのお子さんを持つ親がマインドフルネスのプログラムに参加することで子どもの症状軽減、親自身の子どもに対して受けるストレス改善にも寄与します。
ASD(自閉症スペクトラム)感情を調整する能力の向上が確認されています。マインドフルネスを活用した子育ては、ASDの子を持つ親のストレスを軽減し、結果として子どもの問題行動の減少や、社会的な行動の増加につながります。

「座禅」だけじゃない!様々なマインドフルネスを紹介

マインドフルネスと言えば座って行う瞑想を思い浮かべる方が多いと思います。座って行う瞑想としては呼吸瞑想ボディスキャン瞑想があります。下記にそれぞれに実践の際のポイントを紹介します。

呼吸瞑想

①背筋を伸ばして軽くあごを引く

②目を閉じて、呼吸に注意を向ける

③ありのままの呼吸にまかせ、鼻からの空気の出入りや、お腹が膨らみ、しぼむのを感じる

④その時に雑念が浮かんでもOK。そっと呼吸に注意を戻す

⑤最初は30秒でも問題なし。慣れれば5分10分と続ける。(時計を計らなくてもOK)

ボディスキャン瞑想

①身体の特定の部位で感じる感覚に注意を向ける

②いかなる感覚も良し悪しの評価をせず感じる

③十分に注意を向けた後、全ての感覚を解き放つ

④優しく、次の部位へと注意を移動する

これらの瞑想はじっとしたまま行うため苦手という方もいらっしゃるかと思います。そこで特にADHDなどで集中力の維持が難しいと感じる方には、動く瞑想から入ることが推奨されています。

動く瞑想の例

①歩く瞑想:足の裏の感覚(かかとが上がる、着地する)に意識を向ける。

②手動瞑想:手の動きに集中する。

②味わう瞑想:食べる一口に意識を集中する。

呼吸瞑想が苦手でも、「雑念が出たら何度でも呼吸に戻す練習」こそがトレーニングだと捉えることで、着実に効果を積み上げることができます。

また、日々の瞑想とは別に、突発的に苦しくなった時に使える方法が3段階分析法です。

①思考:考えている内容を具体的な文章で表す。

②感情:感情の内容を単語(焦り、嫌悪感など)で表す。

③身体の感覚:体の違和感(胸の締め付けなど)を観察する。

このように自分を客観的に観察した後、深呼吸をして終えることで、感情に飲み込まれることを防ぐことができるのです。

マインドフルネスにおいて、自分に優しさを向ける「慈悲」(コンパッション)の精神は非常に重要です。セルフ・コンパッションは、人から褒められる自尊感情とは異なり、自分で自分を大切にし、褒めてあげる感情です。

集中系の瞑想が苦手な方は、慈悲の瞑想から始めることが有効です。この瞑想では、「あなたが幸せでありますように」「あなたが健康でありますように」といった言葉を、大切な人、そして自分自身に向けて心の中で念じます。

この訓練を続けることで、否定的な気持ちが軽減し、結果として集中系の瞑想もできるようになるパターンも多く見られます。


マインドフルネスについてのQ&A

Q. コーピングとマインドフルネスの違いは?

✅ コーピングとマインドフルネスは性質が異なります。コーピングは起きた感情に対してどう対応するかという方法であり、マインドフルネスは体験に対しての反応を変えていく方法です。

マインドフルネスを日々続けることで、コーピングで対応していた体験に関してもストレスを感じにくくなり、コーピングをする必要がなくなってくる場合があります。とはいえ、余裕がなくなってくる時はまたコーピングに頼ることもあるため、コーピングもマインドフルネスも両方続けていくことがおススメです。

Q. 無理やりでもマインドフルネスを続けた方が良いのか?

✅ 無理やり続けてしまうと嫌な感情とマインドフルネスの練習とが紐づいてしまう恐れがあります。切り替えとして良い形で紐づくのであれば良いですが、そうでないのであれば別の瞑想の種類に変え、自分が無理なく続けられそうなマインドフルネスを探してみましょう。

Q. 感情が高ぶってしまった時にはどうすれば良い?

✅ 感情が高ぶっている時にマインドフルネスを行うと、かえって感情の渦に飲み込まれ、苦しくなってしまうことがあるため、基本的にはおすすめできません。

その際には、自分の感情や感覚を言葉に表すなどして、自分を客観的に見る練習を続けていくことが効果的です。また、氷を握るなど別の知覚刺激を使って一旦切り替えるという方法もマインドフルネスの練習とクールダウンを兼ねたものとなっています。


継続が未来を変える!自分に合ったマインドフルネスを見つけよう

マインドフルネスの効果を実感するには継続が欠かせません。海外のエビデンスでは、1日40分の瞑想を2ヶ月継続することで効果が証明されています。1日5分の実践であれば、焦らずまずは8週間、あるいは3ヶ月は効果がなくても心地よく続けられる範囲で取り組むことが推奨されます。

「マイ・マインドフルネス」は人それぞれです。呼吸瞑想などの定型的な方法にこだわらず、動く瞑想、味わう瞑想、慈悲の瞑想など、ご自分にやりやすい「フレーバー」から入っていくことが大切です。

また、マインドフルネスは、苦しい環境に耐え忍ぶための手法ではありません。瞑想を続けることで、自分が本当はどんな環境を求めているかという気づきにつながり、「私はこの環境から離れよう」と自信を持って意思決定できる効果もあるのです。

自分自身の特性と向き合い、得意な能力を引き出すツールとして、ご自分にとって心地よく続けられる「マイ・マインドフルネス」を見つけることを今日から始めてみませんか?

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