双極性障害とは以前は「躁うつ病(そううつびょう)」と呼ばれ、気持ちが著しく高ぶる躁状態と、憂うつで何もする気にならないうつ状態が、交互に現れる気分障害です。

目次
双極性障害とは?
双極性障害は、気分が高ぶる時期(躁/軽躁)と、強く落ち込む時期(うつ)を繰り返す精神疾患です。以前は「躁うつ病」とも呼ばれていました。
気分の浮き沈みは誰にでもあるものですが、双極性障害ではその程度が極端です。
【躁/軽躁状態の特徴】
- 根拠のない自信に満ちる
- 睡眠時間が極端に減っても活動し続ける
- 行動が大胆になる(ギャンブルに大金をつぎ込む、性的に奔放になるなど)
【うつ状態の特徴】
- 強い落ち込みや無気力が続く
- 疲れやすくなる
- 自分を責める考えが増え「生きていたくない」と感じる
これらの状態は、数か月〜数年おきにくり返されたり、躁からうつへと急に切り替わったりします。
双極性障害は躁状態の強さによって、以下の2種類に分けられています。
- 双極Ⅰ型障害:社会生活に大きな支障をきたすほど激しい躁状態が出る
- 双極Ⅱ型障害:軽い躁状態(軽躁)とうつ状態をくり返す
双極性障害の有病率は0.4〜0.7%(※)ですので、ご家族や友人、知人に発症者がいたとしても、それほど珍しくはありません。
双極性障害の方との関わりで疲れてしまうのはなぜ?
双極性障害の友人や家族に対して、疲れたと感じてしまう背景には、病気の特性である「躁とうつのギャップ」と「変化の読みにくさ」が大きく関係しています。
双極性障害の方は、あるときはテンションが異常に高く活動的で、またあるときは会話にあまり応じず自己否定的な言葉が多くなります。このギャップにその都度合わせて接し方を変えなければならないため、「振り回されている」「ついていけない」と思うのはごく自然な反応です。
さらに、症状の変化は、季節や生活リズムの乱れがきっかけになる場合もあれば、はっきりした理由がないのに急変する場合もあります。特に躁状態では、上機嫌と不機嫌がコロコロ変わったり、突如として無謀な行動に走ったりする場合が珍しくありません。そのため、周囲の方は「急に人が変わった」「何かにとりつかれているようで怖い」などと不安や恐怖を感じます。
このように、双極性障害の方との関わりで疲れる主な原因は、病気の特性です。あなたの性格が冷たいからでも、努力が足りないからでもありません。
双極性障害の友人や家族に疲れたときの対処法
双極性障害の方と関わる大変さは、多くの専門家が指摘しています。過度に悩んだりしないようにしましょう。
双極性障害の方と接する際は、自分に無理がかからないような付き合い方が重要です。ここからは友人、家族として上手に付き合うための心構えや対処法について紹介します。

双極性障害について理解を深める
双極性障害についての知識を持っていると、双極性障害の方の言動にとまどったり傷ついたりする機会を減らせます。
双極性障害を発症していると、躁状態のときは尊大になり人を見下したようなわがままな言動をとる場合が少なくありません。逆にうつ状態のときは、何を話しかけてもむっつりと黙り込んでしまうようなことも多いでしょう。こうした際に、「これがこの人の本性なのだ」「性格に問題がある」などと思ってしまえば、友人として付き合うのが嫌になってしまいます。
しかし、病気がこのような言動を起こさせていると考えれば、無用なストレスや不安などを抑えやすくなります。はじめはインターネットで基礎知識を知るだけでもかまいませんので、双極性障害について理解を深めていくとよいでしょう。
適切な距離感を保つ
双極性障害の友人との付き合いで疲れないようにするには、適切な距離感を保つことが必要です。「心配なので常にそばにいなければならない」などと無理をすると、お互いの関係が悪化する場合があります。例えば、衝動的な躁状態の友人の近くにいれば、言い争いやケンカになってしまいやすいものです。また、うつ状態の友人と一緒にいると、こちらも気持ちが落ち込んでしまうこともあります。
適度な距離感を保つには、「自分が無理せず付き合える距離感」「友人として好意を持ち続けられる距離感」が目安になるでしょう。会う時間や頻度を減らすなどして距離をとり、気持ちに余裕を持てるようになったら、また友人として付き合いはじめるのもよい方法です。
境界線の引き方としては、以下のようなものがあります。
- 連絡は「〇時~〇時の間だけ」「夜は電話に出ない」と自分で決める
- お金や高価な物の貸し借りはしないと伝えておく
- 話を聞く時間を「今日は30分まで」と区切り、疲れたら無理せず切り上げる
相手と自分の状況に合わせて、適度な距離感を探してみるとよいでしょう。
一人で対処できないときは病院などに相談する

自分一人の手に負えないと感じたら、病院や行政の福祉機関などに相談するとよいでしょう。双極性障害は重大な結果をもたらす可能性がある病気ですので、友人として支えるのは限界とリスクがあるからです。
実際、著しい躁状態になった双極性障害の方は、傷害事件や器物破損といった事件を起こしてしまうケースがあります。また、うつ状態になると自殺を試みてしまう人も決して珍しくありません。危険な兆候をみつけたら専門家に助けを求めるとよいでしょう。
気軽に相談できる窓口としては都道府県・政令指定都市が運営している「こころの健康相談統一ダイヤル」や、全国精神保健福祉会連合会が運営している「みんなねっと相談室」があります。本格的に相談したい場合の窓口については、後ほど紹介します。

双極性障害の友人や家族への接し方のポイント
双極性障害の友人やご家族への接し方は、「うつ状態」と「躁状態」で大きく変わってきます。以下の表にポイントをまとめました。
| うつ状態 | 躁状態 | |
| ご本人の状態 | ・心のエネルギーが減っている | ・心のエネルギーが過多で判断が乱れやすい |
| 基本姿勢 | ・静かに寄り添う | ・冷静に対処し、一定の距離を保つ |
| 具体的な対応例 | ・本人のペースで話を聞く・休養や受診を控えめに提案する | ・徹夜・浪費・無謀な計画などを客観的な事実として伝えて注意を喚起する・金銭や契約ごとは一緒に確認する |
| 避けたいこと | ・「頑張って」「気晴らしに行こう」などの励まし・入院・休職など大きな決断を迫る | ・感情的に言い返す、口論する・活動を助長する(お金を貸す、一緒に遊びまわるなど) |
「うつ状態」と「躁状態」は急に切り替わる場合があり、周囲の方の対応も大変です。無理のない範囲で、接し方を調整していきましょう。
双極性障害の友人や家族に疲れたときのセルフケア方法
双極性障害の方を支えていると「もう限界かも」と感じる場面が出てくるのは当然です。自分の努力が足りないなどと、過度に悩まないようにしてください。実際、日本うつ病学会の双極性障害のガイドラインでは、当事者だけでなく家族や周囲の人への支援も重要であると強調されています。
疲れたときの対策としては、相手との距離をとる、休む時間をつくるといったセルフケアがあります。また、支援制度やサービスを利用する方法も有効です。以下、これらの方法を紹介します。
相手との関係に「境界線」を持つ
親しい友人や、愛する家族であればあるほど、「助けてあげたいから、できることは全部してあげないと」と感じて、気付けば自分の生活や心の余裕がなくなってしまう場合があります。愛情深く、誠実な方であるほど、そのようになりやすいといえるでしょう。
しかし、先述したように双極性障害の方との付き合いでは、自分の心や生活を守る視点も重要です。自分の時間・体力・お金・感情を守るための限度を決めておかなければ、自分の健康を害してしまうかもしれません。また、仕事が十分にできなくなり経済的に影響が出る可能性もあるでしょう。
さらに、相手を思いやるあまりに過干渉になり、実は相手のストレスや依存関係を生みだしている場合もあるのです。医療や支援の分野でも、境界線(バウンダリー)を引いて自分の心身を守るほうが、長く良好な関係を続けやすいといわれています。
自分の気持ちを認めて休む時間をつくる
「疲れた」と感じたときは、心と体が「これ以上は負担が大きい」と言っているサインです。「もっと頑張らなきゃ」「これくらい大丈夫」などと思わず、心身の声に耳を傾けるタイミングといえます。特に、睡眠不足、食事のバランスの乱れ、運動不足などが続いているときは要注意です。
例えば、双極性障害の方がうつ状態で生きる意欲を失っているときに、本当は自分も落ち込んでいるのに気丈に振る舞っている方がいるかもしれません。躁状態のときは、トラブルになりそうだから、どこにでも一緒に付いて行く方もいるでしょう。
しかし、このような大変なときこそ、セルフケアがとても大切です。ときにはリフレッシュし、ときには相手に会わない時間を設けて、疲労を回復させるとよいでしょう。
支援制度やサービスを活用して専門家に話を聞いてもらう
双極性障害の友人を支えていて「もう限界かも」と感じるときは、一人で抱え込まず、誰かに気持ちを聞いてもらいましょう。言葉にして話すと、不安や怒りが整理され、「本当は何に疲れているのか」「どこまでなら関われそうか」が少し見えやすくなります。
身近に安心して話せる人がいない場合は、第三者への相談が有効なセルフケアです。地域の保健所や精神保健福祉センターには、当事者の周囲の方への相談窓口があり、専門職が対応や距離の取り方について一緒に考えてくれます。
また、カウンセラー(医師、臨床心理士など)との面接は、「友人にこんなことを思ってしまう自分はひどいのでは」といった罪悪感も含めて、安心して話せる場です。家族会や自助グループでは、同じように心の病気を抱えた人を支えている仲間と体験を分かち合えます。
ペアトレに参加する
双極性障害の方との関わりに悩んで、「どう接すればいいのかわからない」「自分の対応が間違っているのでは」と感じる方には、ペアトレ(ペアレント・トレーニング)に参加する選択肢があります。ペアトレは、病気や特性への理解を深めながら、支援者側の関わり方や伝え方のコツを学べるプログラムで、全国の自治体や支援機関で活動が広がっています。
例えば、発達障害*や精神障害のある方への福祉サービスを提供する「Kaien」のペアトレは、ご家族、ご友人向けの勉強会として知識編と座談会・ワークの二つのパートで構成されるプログラムです。知識編では、利用できる支援制度や福祉サービス、就労支援や合理的配慮など、将来の進路や生活設計に役立つ情報を体系的に学べます。
また、座談会・ワークでは、生活リズムの整え方、対人関係の悩み、周囲の方のメンタルヘルスなどをテーマに、スタッフの進行のもとで安心して本音を話し合える時間が用意されています。
双極性障害の方の友人や家族である支援者が利用できるSOSリスト
双極性障害の友人との接し方で悩み、自分だけでは解決できないと思ったときは、専門的な知見を持ったスタッフがいる相談窓口が頼りになります。病院以外の相談窓口として自助グループ・家族の会、精神保健福祉センター、保健センターの概要と特徴を以下にまとめました。
| 相談先 | 概要 | どんなときに向くか |
| 自助グループ・家族の会 | 同じ病気や悩みをもつ本人、家族が集まり、体験共有や学び、相互支援を行う場。医師やソーシャルワーカーが関わることもある | ・似た立場の人の話を聞きたい・病気への理解を深めたい |
| 精神保健福祉センター | 各都道府県にある公的機関で、こころの悩み、社会復帰・生活・就労などを含めて幅広く相談できる | ・仕事や生活面の困りごとがある・どんな支援制度・窓口があるか知りたい |
| 保健センター(保健所含む) | 地域の健康相談の窓口で、精神障害に伴う暴言・問題行動、生活困窮などの相談や制度利用の案内を行う | ・暴言、トラブルへの対応に困っている・生活費や住まいなど生活全般の不安が大きい |
それぞれ特徴が異なるため、困りごとや目的に合わせて相談先を選んでいきましょう。
双極性障害の友人や家族に疲れた方によくある質問FAQ
双極性障害の友人や家族との関わりに疲れてしまうと、ご自身を責めてしまったり、一人で悩みを抱え込んだりしてしまいがちです。ここでは、このような方からよくある疑問や相談内容を取り上げて、FAQ形式で回答します。
疲れて「もう関わりたくない」と思うのは、友人として失格でしょうか?
決して「友人失格」ではありません。
むしろそれは、ここまでずっと無理をして付き合ってきた結果として、心と体が発している「もう限界だよ」という正直なサインです。まずはご自身の心を守ってください。
双極性障害の友人や家族と日常的に接していると、躁状態とうつ状態のギャップや、予測しづらい気分の波に合わせ続ける状況になります。戸惑いや緊張が長く続けば、どんなに思いやりのある方でも疲れを感じて当然です。
「もう関わりたくない」という思いがよぎるのは、愛情が足りないからではなく、自己犠牲を払いすぎてしまった結果の「燃え尽き」に近い状態である可能性があります。
距離を置くと、友人を孤独にさせてしまうのではないかと心配です。
大切なのは、適度な距離感を意識することです。
少し距離を置きたいと思いながらも、「一人にしてはいけない」「孤独感で病気が悪化するのではないか」などと心配になる場合もあるでしょう。しかし、別に縁を切るわけではありません。無理なく続けられる付き合い方のほうが、お互いに心身が安定しやすい場合もあります。
例えば、「連絡は週に一度にする」「会うのは月に一度にして、その代わりその日はとことん付き合う」などのルールを考えてみてはいかがでしょうか。そして距離をとる際には、できれば一言、「気にかけている」「困ったときは相談して」といったメッセージを届けると、相手の方の孤独感が出にくくなります。
友人の躁状態の時の暴言を、どうしたら気にせずいられますか?

暴言はご本人の本心や人格ではなく、「病気がそうさせている」という理解の仕方が大切です。
事実、医学的な見地からみても、躁状態の言動はあくまで病気によるもので、その本来の性格ではありません。感情的に反応しないよう努めると、ストレスをためこみにくくなるでしょう。
ただし、耐え続ける必要はありません。きつい言葉が続くときは、しばらく会わない、話さないといった対応も考えられます。また、暴力や無軌道な行動(車の運転が荒くなるなど)で危険を感じる場合は、医療機関や支援機関などに相談する方法も検討してください。
自分が専門のカウンセリングを受けることに意味はありますか?
はい、支える側がカウンセリングを受けることには、大きな意味があります。
双極性障害の友人や家族を支える方は、知らないうちに強いストレスや疲れを抱えがちです。特に、双極性障害の方を日常的に支える家族の負担は大きく、支える側がストレスで「共倒れ」になってしまうリスクも小さくありません。専門家に話を聞いてもらい感情を整理すると、共倒れのリスクを減らせます。
先に紹介したペアトレも、病気の特徴や再発のサイン、関わり方のコツを知り、「何が起きているのか」「どう対応すればよいのか」が見えやすくするうえで効果的です。上手な関わり方をみつけられれば、ストレスや疲労感などを改善できる可能性があります。
友人に医療機関への受診や入院を勧めるには、どう伝えれば良いですか?
強制せずに相手の決断を待つ伝え方が適切です。
本人が落ち着いているときを見計らって、「心配だから受診・入院してほしい」と伝えましょう。「受診・入院をするべき」ではなく、「私が心配」だからと伝えるのがポイントです。寝不足、食欲不振などの客観的な事実を挙げながら伝えると、相手も受け取りやすくなります。
また、「病院を一緒に探そうか?」「受診の日は付き添うよ」のように相手に寄り添う言い方も適しています。一方、「迷惑だから早く治してほしい」「このままだと入院させられるよ」といった非難や脅しは、反発や落ち込みを招きかねません。
しかし、「死にたい」と具体的に口にする、自傷や他害の危険が高いなどの緊急性が高い場合には、丁寧な説得よりも、救急・警察や地域の精神科救急、相談窓口に連絡し、専門家の判断を仰ぐ方法が望ましいとされています。
双極性障害の友人や家族に疲れたら無理せず支援を活用しよう

うつ状態と躁状態が交互に現れる双極性障害は、本人はもちろんのこと、その家族や友人にも大きな負担を与える場合があります。双極性障害の特徴を踏まえながら、症状が落ち着くような接し方を心がけていくとよいでしょう。双極性障害の方との付き合いに疲れてしまった場合には、適切な距離を保つ方法も効果的です。
自分の手に余ると感じたときは、医療機関のカウンセリングや支援機関の相談窓口、自助グループ・家族の会の利用も検討するとよいでしょう。双極性障害の方の暴言で傷ついたり、振り回され続けて疲れてしまったりした心身の回復につなげられます。
「Kaien」のペアトレでは、精神障害や発達障害の方のご家族、ご友人向けに、将来の進路や生活設計に役立つ情報を体系的に学べる勉強会を提供しています。また、同じような悩みを持つご家族、ご友人が集まって話し合う座談会・ワークも用意していますので、ぜひお気軽にご相談ください。
CTA「詳しく相談する」
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。
監修者コメント
双極性障害は統合失調症と並んで、その診断と治療が精神科の歴史といえる診断です。歴史がある分、様々な知見が溜まっており、治療法も薬の進歩と共に随分とかわってきました。ただ、歴史はあると言っても、治療前の患者さんそれぞれの苦しみや生活の負担は昔と同じように大変ですし、治療に導入されてもやはり波が消えるわけではありません。患者さん自身も、そして患者さんの近くで寄り添う人もその波とどう付き合うかが大事になってきます。友人の立場では、状況によっては少し距離を取ることも肝要です。やきもきして不安にもなるでしょうが、本人が或る意味病気のベテランになるまで待つ必要もあります。自分の気持ちがどうなると上がっているのか、もしくは下がっているのか、そんなモニターができるようになると友人としても付き合いやすくなると思います。

監修 : 松澤 大輔 (医師)
2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。
あなたのタイプは?Kaienの支援プログラム
お電話の方はこちらから
予約専用ダイヤル 平日10~17時
東京: 03-5823-4960 神奈川: 045-594-7079 埼玉: 050-2018-2725 千葉: 050-2018-7832 大阪: 06-6147-6189



