「やりたくないことはやらない」マイペースな僕が、安定した就職を目指すまで

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▪年齢:20代
▪診断名:パニック障害、自閉スペクトラム症
▪苦手なこと:スケジュールを事前に知らされること、環境の変化(改善傾向あり)
▪利用サービス:生活訓練から現在は就労移行支援


マイペースだった子供時代

――― 幼い頃どのようなお子さんだったか教えていただけますか。

母から聞いた話だと、他の子どもたちよりも早く話し始めたらしく、幼少期からよく喋る、明るい子どもでした。トミカのミニカーが好きで、机の縁に精密に並べて眺めたりしていました。働く車や電車なども好きでしたね。

――― お友達との関わりはいかがでしたか?

幼稚園の頃、分け隔てなく誰とでも仲良くしていました。ただ、小学校に入ってクラス替えでメンバー自体がガラッと変わったとき、すごく違和感があったのを覚えています。とはいえ、すぐに新しい友達を作って楽しく過ごしてはいました。

その後も、環境が変わったらそれに応じて新しい友達を作り、交流することはできていました。ただ、それまで築いていた関係は途切れてしまうという傾向がありました。

――― 今これまでを振り返って、ご自身の性格をどのように感じていますか?

幼少期は、良く言えばマイペースだったと思います。それが大人になるにつれて「やりたくないことはやらない」という性格になりました。受験勉強も、得意な科目だけを伸ばすスタイルで乗り越えてきました。

(家族旅行で富士山の奥庭に行った時の写真です、とKさん)


ハプニングには対応できるが、予定に縛られるのが苦手

――― 診断名と診断を受けた経緯を教えてください。

診断名は、パニック障害と自閉スペクトラム症です。高校へ行く途中、電車の中で発作を起こしてしまったのが最初でした。その時に医師からパニック障害の可能性があると言われ、精神科を受診することになりました。それ以来、今もずっと病院に通っています。

――― 苦手なことや特性はありますか?

僕はハプニングや予期せぬ出来事には案外対応できてしまうのですが、逆に事前に決まっている予定に対応するのが苦手です。大学では、実習を行う際には事前に予習が必要でした。僕は緊急性がない中で事前に準備することが得意ではないため、それに慣れることができず、再び体調を崩してしまいました。

――― 大学時代、アルバイトはされていたのですか。

スーパーとアパレル店でアルバイトをしていました。アパレル店はノルマや売り込みのプレッシャーが強く、それが原因でパフォーマンスが落ちて怒られるという悪循環に陥ってしまい、2ヶ月ほどで辞めてしまいました。

スーパーはノルマはなく、楽しく働くことができました。そのまま正社員になる道も考えていましたが、それは実現しませんでした。

サービス利用のきっかけとなった「自立」への危機感

――― 卒業後の進路を考えていく中で、生活訓練を利用するに至ったきっかけは何でしたか。

スーパーの正社員を諦めることになったため、就職活動を行う必要性に迫られました。そんな中で、かかりつけの精神科医の先生の勧めがあり、Kaienを知って通うことを決めました。

就労移行ではなく、生活訓練を選んだ理由としては、仕事はできても、家事を全くできなかったことがあります。また、いわゆる「風呂キャン」もしていました。

ーーー生活訓練で達成したかったことはありますか?

日常生活を整えることです。母がいなくなった後は、自分の力で生きていく必要があるため、自立する力を身に付けることを目指しました。そう思うようになったのは、弟の存在も大きかったです。弟は大学時代に一人暮らしを始め、そのまま会社に就職したのですが、社会人1年目で体調を崩して休職してしまったんです。弟の状況を見て、「自分はこのままじゃいけない」と強く感じました。

生活習慣の確立から計画を立てることの重要性を学んだ

――― 7ヶ月間の生活訓練では、どのようなことに取り組みましたか?

主に、歯磨き、入浴、洗濯といった生活の基盤となることのスケジュールを立て、行動を振り返ることに取り組みました。通所し始めたばかりの頃は、自分でスケジュールを立てるのが苦手だったので、支援員の方に決めてもらう形式で進めていました。

――― どのような変化がありましたか?

まず、歯磨きや洗濯、入浴など生活に必要な基盤を整えることができました。今もお風呂掃除と洗濯物を朝に済ませるようにしています。そして、生活訓練を利用している間もアルバイトを継続し、休まず通えたことが大きな自信につながりました。計画を立てて進めることや目的を持って行動することの大切さが学べました。

――― 生活訓練の中で特に印象に残っているエピソードはありますか。

利用者の一人が持ち込んだ「ワンナイト人狼」のカードゲームがあったのですが、その利用者が卒業してもみんなで遊べるように、カードとルールブックを作るプロジェクトに参加したことです。みんなで協力して作り上げたことが良い思い出です。

(お散歩の途中で見つけた綺麗な紅葉と奥に見える観覧車。夜景も良かったですとKさん)


得意な「話すこと」を活かす仕事選び

――― 生活訓練を修了後、現在は就労移行を利用されていますが、何に取り組まれていますか?

就労移行では、Excelの動画学習や就活シートの作成を行っています。また、仕事を選ぶ上では、これまでに接客のアルバイトの経験があるため、自身の得意な「話すこと」を活かせるものがよいと考えています。本心ではあまり人と関わりたくはないのですが(笑)、コミュニケーション力をさらに磨くため、グループワークも行えるプログラムも行っています。

――― 今後の具体的な目標を教えてください。

まずは長く安定して働けるように、生活訓練で身に付けた生活習慣は継続していきたいと考えています。そして、MOSスペシャリストに合格したいという目標があります。働きたい企業についてはまだ定まっていないので、これから見学などを通じて見極めていきたいです。

付録~Kさんのこと

――― プライベートの過ごし方や趣味について教えてください。

休日は、基本的に家でYouTubeを見たりゲームをしたりして過ごしています。YouTubeではお笑い芸人や服が好きなのでファッション関連の動画を視聴しています。

――― 服がお好きなのですね。お買い物はどのようにされていますか。

普段は店舗に出向いて購入することが多くて、特定の場所に限らず、様々なブランドやジャンルを幅広く見に行っています。Kaienでの訓練の帰りに週に2回ほど、渋谷や銀座、下北沢などへ見に行くことが多いですね。

(洋服が好きなKさん、お気に入りのデニムを見せてくれました)
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