「就労移行は意味ない」は本当?企業人事に聞いた「利用者の評価」

公開: 2026.2.13

「就労移行支援は効果がないのでは?」「かえってマイナスに評価されるのでは?」などと不安な方もいるでしょう。しかし、就労移行支援の利用者は企業から高く評価される場合が少なくありません。

本記事は、企業が就労移行支援の利用者をどのように評価しているのか、実際の事例を交えながらご紹介します。また、採用の可能性を高めるために、就労移行支援をどう活用できるのかについても解説します。

目次

就労移行支援を使うと企業評価は落ちる?

「就労移行支援を利用すると、一般の応募者と区別されて評価が下がるのではないか」などとお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、結論を先にいえば、就労移行支援を利用しても、企業からの評価が下がる可能性は低いといえます。

その理由と、悪影響が出る可能性がある条件について解説します。

企業が見ているのは「福祉経由か」より「入社後に安定して働けるか」

就労移行支援を利用したからといって、採用の可能性が下がるわけではありません。なぜなら、企業は「福祉サービスを利用した応募者かどうか」ではなく、「入社後に安定して働けそうか」という点を重視しているからです。

具体的には、以下のような点が挙げられます。

  • 一定のペース(週5日、1日8時間労働など)で働ける基礎体力はあるか?
  • 障害特性と業務とのマッチングは良さそうか?
  • 職場で必要な配慮は何か?
  • 心身が不調なときの相談先(かかりつけ医や支援機関など)があるか?

これらの点に比べると、福祉サービスを利用したかどうかは今後の就労と直結しにくいため、採用の合否に影響を与える可能性が低いといえます。

評価が下がるケースもありうる

一方、就労移行支援の利用の仕方次第では、就活に悪影響が出る場合もあります。

例えば、「とにかく早く就職しなければ」などと焦ると、以下のような状態になる場合があります。

  • 職業訓練が不十分で、職業スキルやコミュニケーション力などが身に付いていない
  • 応募書類作成や面接などの対策が不十分
  • 安定就労に必要な心身のコンディションが整っていない

また、就労移行支援で自信を得たために、かえって現実とのギャップが広がると、以下のような状態になる可能性もあります。

  • 職業訓練によって障害特性を克服したと考えてしまう(ミスマッチの求人に応募してしまう)
  • 医療機関の通院や就労移行支援のサポートを自分で打ち切ってしまう

こうした状態で求人に応募すると、企業側に不安を与えてしまうかもしれません。

しかし、上記のような状態は、支援プログラムにじっくりと取り組めば避けられます。就労移行支援は数ヶ月から数年かけて利用する中長期的なサービスですので、着実に準備を進めていくと良い結果につながりやすいでしょう。

【人事から見た】独学者と就労移行支援利用者の違い

就労移行支援の利用者は、プラスの評価を受ける場合もあります。独力で就活に取り組む方に比べると、就労移行支援の利用者は、職業訓練やアドバイスなどを通じて、企業が求める人物像に近づけている場合があるためです。

就労移行支援の利用者は、通所や医療機関との連携を通じて生活リズムが整っている場合が多く、就職後も安定的に働きやすいといえます。また、自己理解が進んでおり、どのような配慮が必要かを的確に伝えやすいといえるでしょう。さらに職業訓練を通じて、報告・連絡・相談といったソーシャルスキルや、実践的な職業スキルを身に付けています。

もちろん独力で希望の就職ができる方も多くいますが、就労移行支援を利用して就職のチャンスを広げるのも選択肢の一つです。

人事の最大の懸念は早期離職と現場への負担

採用を勝ち取るためには、企業側のニーズも知っておいたほうがよいでしょう。少子高齢化で人材不足が進み、転職も増えた現在、企業が特に懸念しているのは早期離職と、それによる現場の負担増です。

そのため、採用選考を行う人事担当者は、人材と業務のミスマッチをできるだけなくそうとしています。特に障害のある方を雇用する場合、人材のスキルや資質だけでなく、障害特性と業務のマッチングも考えなければならないため、選考はより慎重になるでしょう。

つまり、就活者側から考えると、「業務とのマッチングが良く、安定就業が見込める人材」だと思ってもらうことが、業種や職種を問わず重要です。

企業人事の「生の声」7選!就労移行支援利用者はどう評価されている?

就労移行支援を活用すると、企業からどのように評価してもらいやすくなるのでしょうか。ここでは、企業の生の声を紹介しながら、求められる能力や人物像を解説します。

企業ニーズを知っておくと、就労移行支援のメリットを具体的にイメージしやすくなります。

【生活協同組合ユーコープ様】高い自己理解と安定感

生活協同組合ユーコープ様は、宅配サービス「おうちCO-OP」や店舗運営などを展開する組織で、多様性を認め合う文化を大切にしています。

障害者雇用で課題となっていたのは、「どう接すれば良いのかわからない」「本人の体調の変化で勤怠が不安定」などでした。こうした悩みはユーコープ様に限らず、受け入れを進める企業の現場で起こりやすいものです。

就労移行支援を利用した方は、自分の得意・不得意を客観的に把握し、それを自ら説明できることが多く、配属後の業務のミスマッチを防ぐ助けになります。また、職業訓練を通じて働くための生活リズムが整いやすく、入社後の勤怠が安定しやすい傾向も期待できます。

就労移行支援での活動は、障害のある方との協働を大切にする企業に対して、就労準備が整っているアピールとなるでしょう。

【三井住友信託銀行株式会社様】自身の「特性」と「対策」の言語化能力

三井住友信託銀行株式会社様では、120以上の部署で270人を超える障害者の方が働いており、本店エリアでは、発達障害*・精神障害のある方を中心に事務に採用しています。

同社は「配属部門が決められない」「どのような業務を任せればよいかわからない」という多くの企業が抱える課題に採用段階から対処しています。実務スキルではなく、自己理解できており、ストレスの対処法などをよく知っている方を重視して採用しているのです。さらに、入社後も定期面談を行いながら悩みや要望などを確認し、働き方を調整しています。

この事例でもわかるように、障害特性や必要な配慮について説明できる方は、自分に合ったポジションを得やすくなります。就労移行支援の自己理解プログラムは、強みを活かした働き方につながるといえるでしょう。

【株式会社SmartHR様】実務に近い訓練による即戦力性

株式会社SmartHR様は、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を開発・提供する企業で「Well-Working(誰もがその人らしく働ける社会)」を掲げています。

同社で活躍するメンバーは精神・発達障害のある方が中心で、特性の得意・不得意を踏まえたチーム運営と情報共有の工夫が欠かせないということです。また、リモートワークが多いため、自己管理と自己発信も求められるといいます。

一般的に精神・発達障害のある方は、コミュニケーションで困りごとを抱える場面が珍しくありません。しかし、就労移行支援のSST(ソーシャルスキルトレーニング)に取り組んでおけば、同社が求めるような相談力・発信力などを示しやすくなり、採用選考での評価にもつながりやすくなるでしょう。

【Uber Japan株式会社様】職場定着に向けた伴走体制と本人の適応力

Uber Japan株式会社様は配車やデリバリーを展開する企業です。2023年から障害者雇用を本格的に進めています。

同社が重視しているのは、採用準備から雇用後のサポートまでを一貫して考えることです。そこで同社はノウハウを持つKaienに依頼し、受け入れ準備から面接・職場実習、入社後の定着支援面談まで幅広く支援を受けています。

就労移行支援を利用した方は、就労準備の中で自己理解や相談の仕方を整理している場合も多いため、マッチングの精度が高まりやすいといえるでしょう。加えてKaienのような定着支援の連携があれば、スピード感のある環境でも自分のペースを守りながら企業に貢献できます。困りごとがあった際も、トラブルに至る前に共有・調整しやすくなるでしょう。

【キンドリルジャパン株式会社様】高い専門性とセルフマネジメント能力

キンドリルジャパングループ様は、テクノロジーやシステムを設計・構築・運用している企業です。2022年には障害のある社員が所属する「ビズサポ」を立ち上げ、20名近くのメンバーが活躍しています。

同社が採用で重視するのは、チームで働くための協調性と、勤務の安定性です。そこで、適性を見極めるために、インターンに数名で一つの成果物を完成させるグループワークを取り入れています。

就労移行支援では、報連相などのコミュニケーション、体調管理、ストレス対処などの基礎的な訓練に加えて、チーム作業を学ぶグループワークも受けられます。こうした活動実績は、採用側の安心材料になりやすいでしょう。

【株式会社KDDIチャレンジド様】客観的な評価(アセスメント)の信頼性

株式会社KDDIチャレンジド様は、KDDIの特例子会社(障害者雇用の促進と安定を目的とした会社)として2008年に設立されました。2023年時点では約110名の障害のある社員が活躍しています。

同社は各社員の強み・弱みを共有・体系化できていませんでした。そこで、障害のある方のアセスメントシート(特性や得意・不得意を数値化するための評価シート)の作成に実績のあるKaienに支援を依頼しました。その結果、管理側と本人の自己認識とのギャップが明確になり、業務を調整できたといいます。

このように本人と企業のギャップを埋める情報共有は重要です。就労移行支援を利用すると、自己申告だけでなく、事業所が数ヶ月〜数年かけて観察した客観的な評価を提出できる場合があります。面接では伝わらない強みや課題を共有しておくと、採用後のミスマッチを減らせるでしょう。

【EY Japan様】プロ意識と長期的なキャリア形成への意欲

EY Japan株式会社様は、会計監査・税務・コンサルティングなどのサービスを展開する企業です。2022年に翻訳・デザイン・リサーチなどの専門業務を担う障害者チームを立ち上げて注目を集めました。障害者を別組織に切り分けるような考えではなく、他の社員と関わりながらスキルを磨き、評価され、キャリアアップしていく設計を意識している点が特徴です。

同社が障害者を採用して驚いたのは、「TOEIC900点以上」「RPAでデータベース照合できる」などの実務能力の高さでした。これまで外注していた業務を、外注以上の品質で対応できるようになったといいます。

就労移行支援では、職業訓練を通じてプロフェッショナルなスキルとマインドを養えます。同社の職場のように障害者という区別なく働く土台を築きやすくなるでしょう。

就労移行利用者は評価されやすいのか企業の本音

先述した企業の事例を通じて、就労移行支援での活動が就職に有利に働き、また就職後の働きやすさにもつながるケースが多いと理解していただけたのではないでしょうか。

ここでは改めて、就労移行支援を利用するメリットを以下の3つに分けて解説します。

  • 特性や得意・不得意などの自己理解が進む
  • 職場定着支援で安定した就労につなげられる
  • 通所や職業訓練などの活動実績がアピール材料になる

企業から評価されやすいポイントを知っておくと、就活にも応用しやすくなるでしょう。

自己理解が武器になる|できることと苦手なことを説明できる

就活で評価されやすい自己理解とは、「自分の性格をよく知っている」「なぜその企業に就職したいのか」といった話に留まりません。障害者の方の場合、以下のような内容の自己理解が進んでいると、自分らしく安定して働ける人材として評価されやすい傾向にあります。

  • どんな作業で力を発揮できるか/つまずきやすいか
  • 疲れやストレスが溜まってきたときの変化や前兆を知っている
  • 負荷を感じたときの工夫や立て直し方
  • 成果を出すために職場であると助かる環境、関わり方

就労移行支援では、特性に合った適職探しや、ストレス管理などのプログラムがあります。このため、独力で就活を行う方より自己理解を深めやすい面があります。

支援があることで離職リスクを下げられ定着率が高まる

就労移行支援では、就職後の定着支援サービスも行っています。職場が気づけなかったり、カバーできなかったりするサポートを就労移行支援に補ってもらえるため、企業も安心して雇用しやすい側面があります。

例えば、就労移行支援では、職場での困りごとや日々のストレスについて専門的な知見を持ったスタッフに相談できます。また、職場に合理的配慮を求める仲介役になる場合もあります。

結果として定着率が高くなるため、就労移行支援の利用がプラスに働く場合があるのです。

第三者評価が付加価値になる

就労移行支援での活動実績がプラスに働く場合もあります。

就労移行支援の職業訓練は就労に近い部分があり、体力的にも能力的にも安定して業務を継続できると判断される材料になるからです。実際、面接や自己PR文で、訓練実績をアピールする方もいます。

また、就労移行支援の利用者は、適職診断や特性とマッチした求人紹介を受けたうえで、応募しているケースが多いといえます。この場合、専門的な知見を持つ第三者によってマッチングがある程度認められているといえるでしょう。

そのため、履歴書や面接だけで判断しなければならない応募者に比べると、安心して採用しやすい部分があります。

就労移行支援と企業評価でよくある質問FAQ

ここでは、就労移行支援と企業評価についてよくある質問について回答します。

企業が就労移行支援の利用者に対して不安に思うのはどんな点ですか?

就労移行支援は、原則として障害や体調面に何らかの課題がある方が利用するサービスです。そのため企業の採用担当者は、以下のような点を確認して安定して働いてもらえる見通しを立てたいと考えています。

  • 心身の不調による欠勤・遅刻・早退が増えないか?
  • 配慮がどれくらい必要か?
  • 報連相や困ったときの質問、相談ができるか?
  • 障害特性とのミスマッチで早期離職につながらないか?

だからこそ、応募者が自分の特性や得意・不得意、負荷のサイン、対処法、必要な配慮を具体的に伝えられると、企業側の不安が和らぐ場合があります。加えて、医療機関や就労移行支援などと情報共有できる体制があると、企業側は心強く感じる傾向があります。

障害者雇用と一般雇用、どちらで就職する人が多いですか?

どちらが多いかは、就労移行支援事業所の支援方針・得意領域・利用者層によって変わるため、一概にはいえません。事業所の実績を確認しておくと安心です。

Kaienの就労移行支援では、障害者雇用で就職する方の割合が多い一方で、一般雇用での就職実績も豊富です。事務(総務、経理、人事労務など)、IT職(エンジニア、プログラマーなど)、品質管理、軽作業など、幅広い分野に就職しています。

Kaienの就労移行支援を受けるメリットは何ですか?

就職活動への手厚いサポートを一貫して受けられることです。

Kaienの就労移行支援では以下のような支援を提供しています。

  • 医療機関と連携したカウンセリング:服薬管理・通院同行を含めて就活を支援
  • 自己理解の支援:特性の強み・弱みの理解や、適職探しなどをサポート
  • 職業訓練:事務やプログラミングなど100種類以上の実践的な職業訓練
  • SST(ソーシャルスキルトレーニング):報連相や共同作業などのトレーニング
  • 求人紹介:一般の求人に加えて独自求人も紹介
  • 就活サポート:面接練習、書類作成支援、面接の同行など
  • 定着支援:就労後の困りごとの相談、企業訪問など

これらの支援により、Kaienの利用者の就職率は86%で、就職後半年の定着率も95%と高い水準です。

就労移行支援を利用して企業の評価が高まるケースも!Kaienの利用を検討してみて

就労移行支援を利用すると、自己理解を深めながら職業スキルを高め、自分に合った企業、業務を選びやすくなります。また、就労移行支援のスタッフから職場定着のための支援も受けられます。

これらは就活をする方のメリットですが、同時に企業側にとっても大きなメリットです。ミスマッチを防ぎ、長期安定して働いてもらいやすい人材を雇用しやすい面があるため、就労移行支援の利用がプラスに評価される場合があります。

Kaienでは精神・発達障害の方の支援に特に強みを持つ就労移行支援の事業所です。自己理解や職業訓練、定着支援などのプログラムがあるため、自分らしい働き方をみつけていただけます。

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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

監修 : 鈴木 慶太(株式会社Kaien 代表取締役)

元NHKアナウンサー。自身の長男が発達障害の診断を受けたことをきっかけに、米国留学(MBA取得)を経て株式会社Kaienを設立。 「数的な凸凹があっても、強みを活かして働ける社会」を目指し、大人向けの就労支援から子ども向けの学習支援(TEENS)まで幅広く事業を展開している。 経営者として、また一人の親としての視点を交えた発信は、多くの当事者・家族から支持を得ている。

▼ 代表・鈴木に直接質問できるライブ配信も開催中。毎週開催の「Kaienお悩み解決ルーム」ほか、就職や生活に役立つ情報を配信しています。

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