未経験からITエンジニアの道を目指す!特性を強みに変えたアプリ開発と就活

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会話に対する苦手意識やADHD(注意欠如・多動症)の不注意特性に悩みながらも、大学からの紹介をきっかけにKaienの就労移行支援の利用を開始したWさん。 実務未経験からクリエイティブコースでITについて学び、顧客視点を徹底的に意識した「図書館アプリ」を開発しました。 ご自身の特性を深く理解し、生成AIをパートナーとして活用しながら、現在は開発エンジニアを目指して就職活動に励んでいます。 着実にスキルアップを重ねるWさんに、これまでの道のりや今後の目標についてお話を伺いました。

▼Wさんの簡単なプロフィール


  • 年齢:30代
  • 診断名:ADHD(注意欠如・多動症)、社交不安症
  • 苦手なこと:コミュニケーション(特に初対面や会話)、マルチタスク、急な変更への対応
  • 現在の状況: 就労移行支援にて就職活動中
  • 志望業界:IT業界(エンジニア職)


ノートにポケモン図鑑を模写した日々。周囲を観察する「慎重」な性格

―――本日はよろしくお願いします。まずは、Wさんが幼い頃どんなお子さんだったか教えていただけますか?

とにかく1人でノートに絵を描くのが好きな子どもでした。 ちょうどポケモンがテレビ放送され始めた頃で、当時はミュウを含めて全部で151匹だったのですが、「図鑑に載っているポケモンを全部描くんだ!」と意気込んで、ノートに1匹1匹模写していました。 図工の時間も大好きで、虫が好きだったこともあり、実物を観察しながら粘土や版画でクワガタやカブトムシを作ったりと、創作活動に没頭していましたね。

―――素晴らしい集中力ですね!現在のご自身の性格を一言で表すとしたら、どんな言葉になりますか?

「慎重」だと思います。 新しいことやリスクのあることに挑戦する前は、まずは状況を静観して、周囲の人がどう動いているか様子を伺ってから行動するタイプです。 自分はよく「後追いタイプ」だなと感じています。

形が見えない会話への不安と、アルバイトで痛感した不注意特性

―――ご自身の特性について、「周りと少し違うかもしれない」と感じたエピソードはありますか?

小学校の高学年から中学生くらい、思春期に入った頃から、とにかくコミュニケーションに苦手意識を持つようになりました。 他の人がスラスラと自分の言葉で話しているのに、私はうまく言葉を返すことができず、その結果1人になってしまうことも多く、周囲と自分を比べて落ち込むことが多かったです。 初対面の人とのやり取りなど、「形や構造が見えないイベント」に対して強い不安を感じるのだと自己分析しています。 逆に、プログラミングや活字など、目に見えるはっきりとした構造があるものに対しては強い安心感を持ち、集中力を発揮できる特徴があります。 診断はされていませんが、ASD(自閉スペクトラム症)的な部分なのかなと思っています。

―――なるほど。診断名としてはADHD(注意欠如・多動症)とお伺いしていますが、これは特性だと感じることは何かありますか?

「不注意」の特性があります。 思い込みが少し強いところがあり、お客さん対応などの急な割り込み業務が発生した際、それに合わせて柔軟に対応しなければならないのに、無意識に自身の考え(思い込み)を優先してしまってミスにつながることがありました。 以前、スーパーの青果担当で商品の陳列や値札シールを貼るアルバイトをしていたのですが、野菜は産地や値段が頻繁に変わるんですよね。 その変化に注意を向けられず、以前の金額のまま入力してシールを作ってしまい、上司によく怒られていました。

大学の支援者をきっかけにKaienへ。生活リズムとメンタルが安定

―――Kaienの就労移行支援を利用しようと思ったきっかけを教えてください。

大学の障害者支援プログラムの担当者からの紹介がきっかけでした。 面談を通じて、自身の障害理解の手助けをしていただいていたのですが、「今度新しくIT職の訓練ができる就労移行支援事業所ができる。評判も良いらしい」と勧めていただきました。 チラシやホームページを見て、自分のITへの興味とも重なり、「ここは本当に自分に合っているかもしれない」と感じて利用を決めました。

―――Kaienを利用するにあたって、どのような目標を持っていましたか?

以前からIT職をぼんやりと志望してはいたものの、企業にアピールできる実務寄りの「ポートフォリオ」を持っていませんでした。 自分1人で作ろうとしても、簡単なゲームなどアピール材料になりにくいものしか作れなかったため、Kaienでしっかりとした実績となるポートフォリオを作ることを大きな目標にしていました。 結果として、Webアプリケーションを作り上げることができ、強力なアピール材料を得られたので本当に嬉しかったです。

―――訓練を通じて、ご自身の生活やメンタル面での変化はありましたか?

劇的に変わりました! Kaienに通う前は生活リズムが不安定で夜型になってしまい、大学の単位が取れないと焦って昼型に戻しても、また夜型に戻ってしまうという繰り返しでした。 しかし、Kaienに通うようになり、10時半から15時半までの固定スケジュールができることで、生活リズムが劇的に改善し、今は昼型のリズムを維持できています。 また、以前は悩み事を1人で抱え込んでしまい、相談できる人がいない状態でした。しかし、日々の報告や相談の中で、自分の状況を発信することを繰り返し練習し、フィードバックをもらう機会が増えました。 そのおかげで「人に自分のことを伝えてもいいんだ」と実感できるようになり、メンタル面も非常に安定するようになりました。

IT登竜門での気づきと、実務を意識した「図書館アプリ」の開発

―――クリエイティブコースでは、どのようなステップで学習を進められましたか?

実務経験は完全未経験でしたが、大学の工学部でシミュレーションやプログラミングを学んだ経験があり、基礎は習得済みでした。 理系的な論理的思考やシステム的な思考と相性が良いと考え、ITエンジニア職を目指していました。 Kaienでは、まずVBAを使ってExcel上での業務効率化が実際の職場でどう使えるのかを確かめました。 その後、「IT登竜門*」に参加し、その後、Webフレームワークの学習へと移行して、アプリ作成として図書館アプリを作っていくという段階を踏みました。 知識を詰め込むより、参考書や動画を見ながら手を動かして成果物を作る実践的なスタイルが自分には合っていると感じています。

※IT登龍門とは…Kaienが独自で実施している、20日間で適職を見極められるIT速習プログラムのことを指します。プログラム、Webデザイナ、インフラエンジニア、DXエンジニアの4つの職種を体験することができます。

―――IT登竜門ではどのような気づきがありましたか?

Webデザイナ部門の課題で「花屋のクリスマス特設Webページ」を作成した際、「誰に向けて作っているのか」というターゲットを明確にし、ストーリーを意識して誘導する構成にしたところ、講師の方から高く評価していただきました。 この経験が、後にWebエンジニアなどを目指すきっかけの一つになりました。 一方で、DXエンジニア部門の「日常業務にDX技術を応用する」という課題は提出できず、ITスキルを日常にどう活かすかという、現状を主体的に改善していくマインドの低さに課題があることも見えました。 最初のステップとして非常に有意義な経験でした。

―――成果物である「図書館アプリ」について、特にこだわったポイントを教えてください。

3ヶ月かけて設計から開発までを行いましたが、とにかく「実務を意識した設計」にこだわりました。 本のデータをひとまとめにしてシンプルな構成にすることもできたのですが、実務により近いシステムを作りたいと思い、難易度を上げて「書誌情報」と「蔵書」のデータをしっかりと分けました。 貸出や予約が実用的に機能するようにし、最終的に20個ほどの機能を盛り込むことができたので、完成度には満足しています。

顧客視点の徹底と生成AIの活用。苦手だった「報連相」を克服

―――開発を進める中で、苦手なコミュニケーションに対して工夫されたことはありますか?

以前から課題に感じていた「他者と情報共有を行うこと」を実践の場で練習することを意識しました。 担当の講師との間で進捗報告や曖昧な点の確認をしっかり行うことを目標にし、疑問点はSlackですぐに確認したり、週1回のミーティングではあらかじめ作業実績や報告内容を準備する時間を設けたりしました。 また、個人開発であっても自己満足にならないよう、講師の方を「お客さん」に見立てて、作成途中の画面をお見せして反応を伺いました。 「何かご要望はございますか?」と聞いたり、逆にこちらから思いついたアイデアを提案したりして、「お客さんと一緒に作品を作る」という姿勢を心がけて開発に取り組みました。

―――素晴らしい姿勢ですね。開発において、生成AIも積極的に活用されていたと伺いました。

はい、コーディングやバグ探し、設計の相談などでAIにはすごく助けられました。 自分で探りながらやるよりも、AIに聞いた方が圧倒的に早くバグを特定できます。 ただ、得た回答を単に丸写しするのではなく、「ちゃんと内容を読んで理解した上で使う」というマイルールを設けていました。 理解しておかないと、システムが大きくなった時にブラックボックス化してしまうと考えたからです。 また、人相手だと何度も質問すると気兼ねしてしまいますが、AI相手ならどんな初歩的な質問でも嫌な顔一つせず答えてくれます。 社交不安がある私にとって、これはすごく助かっています。

手厚い就活支援で、着実に信頼されるエンジニアを目指す

―――現在は就職活動中とのことですが、どのような職種を目指していますか?

今回のアプリ作成を通じて自身の適性を実感できたため、現在は開発エンジニアやDXエンジニアを希望しています。

―――Kaienの支援で役に立っているものはありますか?

履歴書の添削(赤ペン)や面接練習が間違いなく大きな助けになっています。 自分では「これでいいかな」と思っていても、経験豊富なプロの目から見ると不足している部分があり、フィードバックを受けることで、自己PRや志望動機といった大事な部分の充実度が少しずつ上がってきました。 また、Kaien独自の求人サイトである「マイナーリーグ」の活用は、障害を理解している企業とつながれる安心感があり、就活にポジティブに全力で臨む後押しになっていると感じます。

―――最後に、就職後の目標や、これから挑戦したいことを教えてください。

実務経験がなく、チーム開発もまだ体験していないので、これからも教材やプログラムを通してスキルの向上に努めていきたいです。 就職後は、最初から高い目標を掲げるのではなく、まずは任された仕事を継続的かつ安定的にこなし、上司から徐々に信頼されるエンジニアになっていきたいと思っています。 また、今年の11月~12月に「応用情報技術者試験」を受験する予定で、現在その勉強中です。

―――持ち前の「慎重さ」と「着実さ」を活かして、素晴らしいエンジニアになられることを応援しています。

付録~Wさんについて~

―――ここからは少しプライベートなお話もお伺いします。休日はどのように過ごされることが多いですか?

土日がお休みなのですが、土曜日は好きなところへ外出して、日曜日は家でゆっくり音楽を聴いたり本を読んだりして過ごすことが多いです。 外出する日と家で過ごす日をしっかり分けるスタイルをとっています。

―――音楽といえば、ボーカロイドや初音ミクがとてもお好きだそうですね。

はい、初音ミクというキャラクターが好きです。 少し舌足らずで人っぽくない部分もありつつ、高く透明感のある歌声が特徴で、それがスレンダーなビジュアルとよくマッチしていて魅力的です。 キャラクターとして完成しているようで、様々なクリエイターの方々が新しい歌を作り続けていく「未完成な部分」にも惹かれます。 特にお勧めしたい曲は、Eveさんの『群青讃歌』です。 メッセージ性の強い歌詞と歌声のマッチ感が素晴らしく、聴いていてとても引き込まれます。

(Wさんが初音ミクのライブ『マジカルミライ』で使われているペンライトのお写真)
(Wさんの部屋の枕元に置いているぬいぐるみのお写真)

―――最近、新しく始めた挑戦があるとお聞きしましたが?

30代になり、「Oisix(オイシックス)」という料理キットの宅配サービスを利用して自炊を始めました。 私はマルチタスクが苦手で、これまでは1品しか作れなかったのですが、丁寧なレシピの手順書通りに進めることで、3品を同時並行で作ることができたんです。 味もお店に劣らないくらい美味しく作れて、とても大きな達成感を感じました。

―――素晴らしいですね!手順が整っていればマルチタスクもこなせるという新しい発見にもなりましたね。Wさんの前向きなチャレンジ精神が伝わってきました。本日は貴重なお話をありがとうございました!

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