「システムエンジニア」から「業務効率化職」へ。1年9ヶ月の試行錯誤で掴んだ適職

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文系出身からエンジニアとして8年間勤めたものの、発達障害の特性や職場環境の影響で体調を崩してしまったAさん。1年間の療養を経て、Kaienの利用を開始しましたクリエイティブコースの参加を通して見つけた「業務効率化」という適性、そして、1年9ヶ月にわたる就職活動で掴み取った内定までの軌跡を伺いました。

▼Aさんの簡単なプロフィール


  • 年齢:30代
  • 診断名:自閉スペクトラム症(ASD)、不安神経症
  • 苦手なこと:人前での緊張(赤面・手の震え)、聴覚過敏、複雑な口頭指示、コミュニケーションの齟齬
  • 利用サービス:就労移行支援
  • 就職先:IT業界(業務効率化職)


人と馴染めなかった子ども時代。赤面や手の震えといった強い緊張感に悩み続けて

―――まず初めに、幼い頃の思い出やご自身の性格について教えていただけますか?

幼い頃は基本的にマイペースで、良くも悪くも周りの人に左右されない自由な子どもだったと思います。昔から絵を描いたり歌を歌ったりすることが好きでした。ただ、小学校に入る頃から徐々に周りの人と上手く馴染めないと感じるようになって、少しずつ内気な性格になっていきましたね。友達とも深い関係を築くのが難しかったです。

―――周囲との「違い」や、生きづらさを感じるような出来事はありましたか?

特に「人前での緊張感の強さ」には昔から悩まされていました。学校で発表する場面になると、顔が真っ赤になってしまったり、手が震えたり、言葉が上手く出てこなくなったりすることがよくあったんです。

―――人前で話すことに対する恐怖感が強かったのですね。

そうなんです。それから、感覚のズレによる「コミュニケーションの齟齬」も多かったように思います。何かを聞かれたときに正直に言いすぎてしまい、周囲との距離感の取り方に難しさを感じていました。大人になってから病院を受診し、自閉スペクトラム症(ASD)と不安神経症の診断を受けました。

文系からエンジニアの道へ。8年間の苦闘と、環境の変化による離職・療養の記憶

―――大学卒業後はIT企業へ就職されたとのことですが、エンジニアを目指したきっかけは何だったのでしょうか?

大学時代は文学部に所属していたのですが、「自分が作ったもので人に喜んでもらいたい」という思いが強かったんです。元々好きだった絵を描くことと同じように、プログラミングでの「ものづくり」にも魅力を感じてITエンジニアを選びました。それに、ITエンジニアはパソコンに向かって黙々と作業するイメージがあったので、人と関わることが苦手な自分にも向いているのではないかと考えました。

―――文系からのチャレンジだと、業務でご苦労されたことも多かったのではないでしょうか?

本当に大変でした。約8年間基幹システムの保守開発に携わりましたが、前提となるITの知識がそもそもなかったので、業務の中で初めて扱うプログラミング言語が出てくるたびに、自分で必死に調べながらどうにか対応していました。

―――8年間も現場で奮闘されたのは素晴らしいですね。そこから退職に至った経緯を教えていただけますか?

自身の特性と職場環境の問題が重なってしまったのが大きな原因です。人前や職場で緊張しやすいため、わからないことがあってもなかなか質問ができませんでした。また、職場がオープンなオフィス環境に変わったことで、周囲の音が気になってしまう聴覚過敏の症状が強く出るようになり、疲労とストレスが限界まで溜まってしまったんです。

さらに、一度にたくさんの情報や複雑な指示を口頭で伝えられると頭が混乱してしまうという課題もありました。自分なりにメモを書き出したり、ホワイトボードを使ったりして対処してはいたのですが、最終的に体調を崩して退職することになりました。その後は通院しながら、約1年間は療養生活を送っていました。

専門スキルを学べるKaienとの出会い。職業訓練を通して深まった自己理解と対策

―――1年間の療養を経て、就労移行支援を利用しようと考えたきっかけは何でしたか?

体調が少しずつ回復してきたタイミングで、主治医の先生から就労移行支援の利用を勧められたのがきっかけです。自分でも「発達障害に特化した支援機関」を探す中で、Kaienのことを知りました。

―――数ある支援機関の中で、Kaienを選ばれた決め手は何だったのでしょうか?

KaienにはITやデザインに特化した専門コース(クリエイティブコース)があったからです。当時は元々好きだった絵の経験を活かせるデザインの分野に興味があったので、未経験からでも専門的なスキルを基礎から学べる点に強く魅力を感じて通所を決めました。

―――実際に通所を始めてみて、体調やご自身の特性に何か変化はありましたか?

規則正しい通所習慣によって生活リズムが整い、心身が安定したことで、ひどかった聴覚過敏の症状がかなり緩和されました。また、極度の緊張に対しても「あらかじめ事前準備をしっかり整えておくことで、緊張を和らげられる」という自分なりの対策を見つけることができました。

―――訓練を通じて自己理解も深まっていったのですね。

はい。特に週替(しゅうがわり)業務*では、心理的安全性がある環境のおかげで、人前でも以前ほど緊張せずにしっかりと発表することができたんです。「自分は意外と人前で発表できるんだ」と実感できたことは、大きな自信につながりました。スタッフの方や講師への報告・連絡・相談を繰り返すうちに、過度な緊張も解消され、体調管理や相談がスムーズにできるようになりました。

※週替業務とは…様々な事務系プログラムを2週間のサイクルで回していくコースです。プログラムには、個人作業とグループワークがあります。

デザインの曖昧さからプログラミングの明確さへ。試行錯誤の末に行き着いた業務効率化

―――Kaienの「クリエイティブコース」では、どのような訓練に取り組まれましたか?

通所を開始した当初は前職のトラウマがあり、プログラミングなどのIT系分野に取り組むのは心理的にしんどい時期でした。そのため、まずは心を慣らす目的も兼ねて、デザインの訓練からスタートしました。「デザイン登竜門」(デザイン業務を講座と実践を通じて体験できる訓練)にも参加しました。

―――実際にデザインを学ばれてみて、いかがでしたか?

デザインの制作過程自体はとても面白かったですし、課題の成果物としても良い評価をいただけました。ただ、課題に取り組む中で「何をもって完成とするか」「どう仕上げれば正解なのか」という評価基準の曖昧さが、自分にとってはすごく疲れる要素なんだと気づいたんです。

―――なるほど、「正解の曖昧さに負担を感じる」ことに気づかれたのですね。

そうなんです。デザイン職に対する気持ちの整理がついたこともあり、次に「IT登竜門*」に参加し、プログラミングに再挑戦しました。そこで改めて「自分にはコードを書いて明確な答えが出るプログラミングの方が圧倒的にしっくりくる」と実感できました。前職で体調を崩したのは職場の環境や緊張が原因であって、プログラミングそのものが嫌いになったわけではないと気づけたことは、大きな収穫でした。

※IT登竜門とは…Kaienが独自で実施している、20日間で適職を見極められるIT速習プログラムのことを指します。プログラム、Webデザイナ、インフラエンジニア、DXエンジニアの4つの職種を体験することができます。 

―――プログラミングへの適性を再確認できたのは素晴らしい収穫ですね! その後はどのようなステップに進まれたのですか?

その後はPythonのフレームワーク「Django」を用いたWebアプリケーション開発にチャレンジしました。ところが、Webアプリ開発はデータベースや複数の言語が絡み合い、要素が非常に多くて複雑さを感じてしまったんです。そこで講師の方と相談し、より構造がシンプルで前職の経験も活かせる「業務効率化分野」へ方向転換することにしました。

―――ご自身の特性に合わせ、段階的に絞り込んでいったのですね。

はい。業務効率化の分野に定めてからは、VBAの学び直しやRPAの学習に集中して取り組みました。動画学習プラットフォームの「Udemy」で講座を受講したり、VBAの問題をAIに作成してもらって解いたりするなど、AIも活用しながらスキルアップを図りました。

泣いてしまうほどの面接練習からAI活用で克服。事前実習で評価を勝ち取った就職活動

―――就職活動の中で、特にご苦労されたポイントはどのような点でしたか?

特に面接対策に一番苦労しました。極度の緊張から、最初の面接練習では言葉が出ず、泣き出してしまうほどだったんです。

―――とてもプレッシャーを感じておられたのですね。どのように乗り越えられたのでしょうか?

いきなり対人で練習するのはハードルが高かったため、まずは「生成AIを活用した個人での面接練習」から段階的に始めました。AIに面接官役をやってもらい、一人で何度も回答する練習をして対話に慣れていったんです。

―――生成AIを対人練習の前段階として活用されたのですね!

そうなんです。AIでの個人練習で少しずつ慣れてから、次にKaienの講師との実践的な面接練習へとステップアップしていきました。反復練習を通じて想定問答集を充実させていった結果、少しずつ面接の場に慣れ、最終的には講師からも「すごく良くなったね」と褒めていただけるようになり、大きな自信に変わりました。

―――内定先企業の選考はどのように進んでいったのでしょうか?

内定をいただいた企業では、選考過程で事前実習がありました。実習内容がVBA課題だと事前にわかっていたため、Kaienで取り組んでいたVBAの再学習やAIを用いた問題演習の成果を存分に活かすことができました。また、実習の最後には成果発表の場があったのですが、Kaienのグループワークで積み重ねてきた発表経験のおかげで、緊張せずに堂々とプレゼンすることができたんです。企業側からも高い評価をいただくことができました。

安定した就労を第一の目標に。新しい技術を学び続け、職場から信頼される存在へ

―――見事、業務効率化職での内定を獲得されましたが、入社後の目標や意気込みを教えてください。

第一の目標は、とにかく「安定して働き続けること」です。私は新しい環境や変化に対してどうしても緊張しやすい部分があるので、まずは体調管理を徹底し、無理のないペースで職場環境に慣れていきたいと考えています。

―――安定就労のために、Kaienでの経験をどのように活かしていきたいですか?

Kaienの訓練で身につけた「報告・連絡・相談(報連相)」の徹底と、前職でのエンジニア経験やクリエイティブコースで培った技術力を活かし、周囲から「安心して仕事を任せられる」と信頼される存在を目指したいです。

―――入社後に挑戦してみたい技術やスキルなどはありますか?

入社先では、これまで扱っていなかった「ローコードツール」などの新しい技術を使用すると聞いています。新しいツールや技術にも素早く慣れていきたいと思っています。

―――新しい技術への挑戦、素晴らしいですね。応援しています!

付録~Aさんについて~

―――Aさんは「動物がお好き」とお聞きしたのですが、特に好きな動物はいますか?

特に「鳥」が大好きです。可愛らしい見た目の鳥もいれば、シュッとしてかっこいい鳥もいて、多様な魅力があるところに惹かれます。

―――どんな鳥がお好きですか?

日常の身近にいる鳥たちが好きなんです。スズメやカラス、カモやサギなど、普段の生活の中で見かける鳥たちを眺めている時間がとても癒やされますね。

(「手作りのカラスの刺繍です。刺繍は絵を描くみたいで楽しかったです。」と教えてくださいました)
(公園にいたカモの写真。鳥を撮るためにカメラを買ったそうです)

―――身近な自然に目を向けて楽しまれているのですね。最後に、内定が決まった今の率直なお気持ちをお聞かせください。

Kaienでの訓練が約1年9ヶ月に及んだこともあり、「本当に自分は再就職できるのだろうか」と大きな不安や焦りを抱えていました。それだけに、無事に内定をいただけたときは本当に嬉しかったです。

―――本当におめでとうございます! 新しい職場でのご活躍を心より応援しております。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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