パーソナリティ障害があると仕事は難しい?他責傾向が起こる理由と発達障害との違い・対処法や支援先

公開: 2025.1.23更新: 2026.10.3

仕事において他人を責めてしまう傾向は、単なる性格の問題として片づけられない場合があります。パーソナリティ障害の特性である強い不安や自己防衛を背景にした他責傾向はその一つです。

「仕事でミスを指摘されると強く反発してしまう」「責任を人に押し付けているといわれる」「対人関係が苦手で転職を繰り返している」といった方のなかには、パーソナリティ障害が関係している方もいます。

そこで本記事では、パーソナリティ障害の特性やタイプなどの基礎知識と、仕事で起こりやすい悩み、他責的に見える反応の背景、対処法、相談先などをKaienがわかりやすく解説します。

パーソナリティ障害があると仕事でどんな悩みが起こる?

パーソナリティ障害のある方は、他責傾向を示す場合があります。他責傾向とは、仕事上のミスやつらい出来事が起きたときに、その原因を自分よりも周囲の人や環境に強く求めやすい傾向です。性格や人格などの問題ではありません。

他責傾向の背景には、傷つきやすい自尊心、失敗への強い不安、他者に見捨てられることへの不安など、パーソナリティ障害の特性が関係している場合があります。こうした特性を理解して対処したり、環境を調整したりすることで、状況が改善する場合もあります。

ただし、他責傾向はパーソナリティ障害の現れ方の一つに過ぎません。まずは、パーソナリティ障害とは何か、なぜ職場で困りごとが起こりやすいのかをみていきましょう。

パーソナリティ障害とはどんな病気?

パーソナリティ障害とは、ものの受け取り方や考え方、感情の動き、人との関わり方に強い偏りが続き、そのために本人がつらくなったり、仕事や日常生活で困りごとが起こりやすくなったりする状態です。

他責傾向のほかにも、感情の波が大きい、相手との距離感をうまくつかみにくい、傷つきやすさから人と対立しやすいなどの特性が、職場での困りごとにつながる場合があります。

これらは性格の問題として受け取られやすいですが、背景にはパーソナリティ障害の特性があります。そのため、職場での摩擦や行き違いを性格の問題だけにせず、特性によって生じやすい状態として、ご本人やご家族、周囲の方が理解していく姿勢が大切です。

なぜ仕事で悩みが強く出やすいのか

パーソナリティ障害は、青年期後期から成人期早期に目立ってくる場合があるとされています。その時期になると、学校よりも対人調整や自己管理が求められ、もともとの特性が表れやすくなるからでしょう。

例えば、職場では以下のようなことが求められるため、パーソナリティ障害の苦手な部分が出やすくなります。

  • 報告・連絡・相談の徹底
  • 周囲との共同作業
  • ミスをしたときに共有し、支援を求める
  • 指摘を受けて改善する

そのため、家庭やプライベートでは問題が目立たなくても、仕事では悩みを抱える方が少なくありません。

パーソナリティ障害のある人が仕事で抱えやすい悩み

パーソナリティ障害の特性は、ご本人も周囲も気づきにくい場合があります。まずは、「仕事でどんな困りごとが起きやすいか」から整理すると、自分の状態を理解しやすくなるでしょう。

ここでは、仕事での困りごとをパーソナリティ障害の特性と関連づけて説明します。あくまで現れ方の一つですので、参考程度にしてください。また、説明で出て来る「境界性」「自己愛性」「回避性」などのパーソナリティ障害の種類については、後ほど説明します。

人間関係のトラブルが起きやすい

パーソナリティ障害では、考え方や感情の動き、対人関係のパターンに偏りがあるため、上司や同僚の言葉を強く否定や攻撃のように受け取り、関係がこじれやすくなる場合があります。

例えば、境界性パーソナリティ障害では、見捨てられることへの不安が強く、相手の反応にとても敏感になりやすいのが特徴です。少し返事が遅れただけで「避けられている」と感じて強い怒りや不安が出たり、最初は強く頼っていた相手に急に失望したりするなど、距離感が極端になりやすい面があります。

また、自己愛性パーソナリティ障害では、自尊心の調整が難しいため、上司や同僚との摩擦につながる場合があるでしょう。回避性パーソナリティ障害では、拒絶や批判への恐れが強く、人と関わる場面を避けやすいため、職場での孤立につながるケースがあります。

ミスや評価への反応が大きくなりやすい

パーソナリティ障害の特性が影響すると、よくあるミスや他人の指摘に過剰に反応してしまう場合があります。境界性パーソナリティ障害では、単なる注意や助言であっても「自分が否定された」と感じて、怒りが強く出る場合があるでしょう。

また、自己愛性パーソナリティ障害では、自尊心を守るためにミスを他人や環境のせいにするなど、他責傾向が表れたりすることがあります。一方、回避性パーソナリティ障害では、失敗への不安を強く感じて、指摘を受けた場面で黙り込んだり、その後の相談や報告を避けたりすることがあります。

完璧主義や不安の強さで働きづらくなることもある

パーソナリティ障害のある方のなかには、完璧主義や不安の強さが仕事のしづらさにつながる方もいます。

強迫性パーソナリティ障害では、秩序や完璧さ、やり方の正しさへのこだわりが強いため、確認に時間がかかる、細部に気を取られて締切に遅れる、人に任せられず共同作業が難しくなる、といった場合があるでしょう。回避性パーソナリティ障害では、他人の評価を気にしすぎてしまう、新しい仕事にチャレンジできない、といった悩みを持つ方がいます。

また、依存性パーソナリティ障害では、自分で決めることへの不安が強く、助言や保証がないと判断しづらい面があります。業務内容が厳密に決まっている場合は問題が出にくいといえますが、主体的な判断が求められる仕事では、困りごととして現れる場合があるでしょう。

パーソナリティ障害は3つのタイプに分けて考えられる

パーソナリティ障害にはさまざまな種類があり、それによって仕事上の悩みも変わってきます。パーソナリティ障害は、以下の3群・10種類に分類されています。

群特徴種類
A群不信感・孤立しやすさ・認識のずれが出やすい妄想性パーソナリティ障害シゾイドパーソナリティ障害統合失調型パーソナリティ障害
B群感情の波の大きさや衝動性から、対人関係が不安定になりやすい境界性パーソナリティ障害演技性パーソナリティ障害自己愛性パーソナリティ障害反社会性パーソナリティ障害
C群不安や恐れが強く出やすい回避性パーソナリティ障害依存性パーソナリティ障害強迫性パーソナリティ障害

特徴や傾向をおおまかに知っておくと、後ほど紹介する医療機関や支援機関に相談しやすくなるでしょう。

A群の「不信感や距離感の難しさ」は職場での孤立や衝突を招きやすい

A群は、不信感・孤立しやすさ・認識のずれが出やすく、職場での人間関係や連携のしづらさにつながりやすいタイプです。

  • 妄想性パーソナリティ障害

周囲の注意や助言を「悪意がある」「だまされるかもしれない」と受け取りやすい傾向があります。そのため、上司や同僚を信頼しにくく、衝突が起こりやすくなります。

  • シゾイドパーソナリティ障害

人との親しい交流への関心が薄く、1人でいることを好みやすい傾向があります。雑談や報連相が少なくなり、孤立しやすくなります。

  • 統合失調型パーソナリティ障害

考え方や受け取り方が独特で、社会的な合図を読み取りにくい傾向があります。会話や行動の意図が伝わりにくく、「話がかみ合わない」などと受け取られる場合があります。

B群の「感情の揺れや対人摩擦」は他責傾向として表れやすい

B群は、感情の波の大きさや衝動性、対人関係の不安定さが特徴で、職場でのトラブルにつながる場合があります。

  • 境界性パーソナリティ障害

感情の揺れが大きく、相手の言動を強く受け取りやすいため、怒りや混乱をぶつけてしまい、対人関係が悪化する場合があります。

  • 演技性パーソナリティ障害

注目されたい気持ちが強く、感情表現が大きくなりやすいのが特徴です。「目立ちたがり屋」「派手な人」などと誤解され、周囲との摩擦が生じる場合があります。

  • 自己愛性パーソナリティ障害

評価されたい気持ちが強く、批判に敏感なため、自分を守ろうとして相手の落ち度を強く責めてしまう場合があります。

  • 反社会性パーソナリティ障害

ルールや周囲への影響を軽く見て、自分本位な行動や責任回避が出やすいのが特徴です。「わがままな人」「協調性が乏しい」などと誤解され、職場の信頼関係を損なう場合があります。

C群の「不安の強さや完璧主義」は仕事の負担を大きくしやすい

C群は、不安や恐れが強く出やすいタイプで、仕事をつらいと感じやすい場合があります。

  • 回避性パーソナリティ障害

批判や拒否を強く恐れ、失敗しそうな場面を避けやすい傾向があります。そのため、「会議で発言できない」「キャリアアップにつながる機会を断ってしまう」などで仕事の幅が狭まる場合があります。

  • 依存性パーソナリティ障害

自分で決めることに強い不安があり、人に判断や責任をゆだねやすい傾向があります。そのため、「何度も確認する」「相手に合わせすぎて疲れる」などから、業務が滞る場合があります。

  • 強迫性パーソナリティ障害

ミスを避けたい気持ちや完璧に進めたい思いが強く、細部にこだわりすぎる傾向があります。「作業に時間がかかる」「人に仕事を任せられない」「予定変更に対応しにくい」などから、負担が重くなりがちです。

発達障害の「他責に見える反応」との違い

発達障害*は、脳機能の発達が関係して認知や考え方に偏りがあり、コミュニケーションや対人関係に困りごとが出る可能性がある障害です。発達障害のある方のなかには、パーソナリティ障害の他責傾向と似た反応がみられる方もいます。

しかし、発達障害でみられる他責的な反応は、情報処理の特性などを背景に生じており、パーソナリティ障害とはメカニズムが異なります。仕事でミスを指摘されたときの反応と結果を、以下にまとめました。

脳内メカニズムミスを指摘されたときの反応
1.情報入力情報が一度に多く入ってくる
2.脳のワーキングメモリーの処理口頭指示を一時的に保持して整理することが苦手で、情報が多くなると頭の中がいっぱいになり、抜けや漏れが生じやすい
3.脳内状態混乱、フリーズ、パニック
4.結果自分のやり方への固執や他者への怒りなど

結果は似ていても、パーソナリティ障害とは背景にある特性が異なります。そのため、対処方法や訓練の仕方、必要な支援も変わります。

関連記事:発達障害とは?種類や特徴、相談先について解説

他責傾向のある人がミスを指摘された際に脳内で起こっている状態

パーソナリティ障害のある方が仕事でミスを指摘された際は、どのような反応が起こり、他責という結果につながるのでしょうか。反応と結果を以下にまとめました。

脳内メカニズムミスを指摘されたときの反応
1.情報入力相手の言葉や態度を、拒絶・批判・攻撃として受け取りやすい
2.感情や認知の処理自己評価が下がることへの不安などから感情の揺れが強くなり、冷静に情報を整理できない
3.脳内状態思考停止、注意散漫、フリーズ
4.結果他者を責める言動につながる場合がある

このように、パーソナリティ障害の他責傾向には、相手の言葉の受け取り方や感情の揺れが大きく関わります。この点において、情報処理の負荷や記憶の整理の難しさ(ワーキングメモリー)が背景にある発達障害とは、メカニズムが異なります。

そのため、パーソナリティ障害の他責傾向を和らげるには、背景にある傷つきやすさや不安を理解しながら、受け取り方や感情の整え方を見直す取り組みが大切です。

仕事で他責傾向が出やすいときの対処法

パーソナリティ障害は短期間で治療できる病気というより、時間をかけて特性とうまく付き合えるようにしていくイメージのほうが実態に近いといえます。ここでは、パーソナリティ症で他責傾向が出てしまいそうな際、自分で比較的手軽に実践できる対処法を紹介します。

以下の順番で実践すると、他人を責めずに建設的なやり取りにつなげやすくなります。

1.感情が強く動いた瞬間に「防衛反応が出ている」と気づく

2.その場を離れるか深呼吸をして反応を遅らせ脊髄反射を防ぐ

3.事実と感情を分けて整理する

4.次の対策を添えて報告する

感情が強く動いた瞬間に「防衛反応が出ている」と気づく

他責傾向を和らげる第一歩は、感情が強く動いた瞬間に「防衛反応が出ている」と気づくことです。パーソナリティ障害の他責傾向を和らげるには、自分の心の状態を理解する力が大切とされており、感情のモニタリングによる客観化はそのきっかけになります。

具体的には、以下のように心の状態を短く実況中継する方法があります。

  • 「今、防衛本能が働いている」
  • 「今、強い怒りを感じている」
  • 「今、相手に否定された気がしている」

このように言葉にすると、感情にのみ込まれにくくなります。相手の言葉や態度を、攻撃や拒絶として受け取りやすい傾向を改めて自覚する方法なので、気持ちを抑え込んだり、考え方をすぐに変えようとしたりするより、取り組みやすいといえます。

その場を離れるか深呼吸をして反応を遅らせ脊髄反射を防ぐ

前述した感情のモニタリングを意識していても、ミスを注意された直後などは怒りや不安が高まってしまうかもしれません。そこで、「怒りをぶつけたい」「相手をやり込めたい」といった反射的な行動をとらない工夫もしておきましょう。

特に取り入れやすい工夫は、身体面に働きかけたり、物理的にストレス源から離れたりする方法です。

  • 怒りや不安を感じたら深呼吸を3回すると決めておく
  • 感情が強くなりそうなときは、短時間だけ席を外す
  • 「確認します」「少し整理してからお返事します」などと即答を避ける

こうした工夫によって、次項で紹介する「事実と感情を分けて整理する」時間が生まれます。

事実と感情を分けて整理する

他責的な反応を減らすには、起きた出来事をそのまま受け止める前に、「事実」「感情」「解釈」を分けて整理する方法が役立ちます。

やり方はシンプルです。紙やスマホのメモに、次の3つを書き分けます。

  • 事実:何を言われたか、何が起きたか
  • 感情:悔しい、怖い、恥ずかしい、腹が立つ
  • 解釈:責められた気がした、見下された気がした

パーソナリティ障害では、「特性によって事実の受け取り方にバイアスがかかる」→「その受け取り方が不安や怒りを生む」→「不安や怒りによって冷静な判断がしにくくなる」という流れで他責行動が生じる場合があります。このように事実・感情・解釈が混じった状態だと物事を整理しにくいため、メモとして一つずつ取り出して整理する方法が役立ちます。

次の対策を添えて報告する

事実・感情・解釈まで整理できたら、反論や言い訳を先に返すのではなく、「何が起こったか」と「次にどう防ぐか」をセットで伝えやすくなっているはずです。例えば、「この資料の数字が間違っている」と言われた際に、以下のように整理できたとします。

  • 事実:自分が作成した資料の数字が間違っていた
  • 感情:恥ずかしい、悔しい
  • 解釈:相手に強く否定された気がした

この場合、実際に起きたミスと、感情や解釈を分けて考えやすくなるため、ミスの原因を冷静に考えやすくなります。その結果「数字入力にミスがありました。次回は提出前に数字の欄をもう一度見直し、チェックリストでも確認します」のように伝えやすくなります。

言い訳の応酬になりにくく、改善に向けたやり取りにつながりやすくなります。

パーソナリティ障害があっても働き続けるためにできる工夫

先ほど紹介した対処法とは別に、継続的な対策として環境調整があります。特性に合った職場環境を整えると、負担を軽くしながら働き続けやすくなるでしょう。

一例を以下に挙げます。

  • 業務指導や相談に関して、障害特性を理解している担当者を定めてもらう
  • 日誌交換など冷静にやり取りしやすい方法で仕事の悩みや体調を把握してもらう
  • 感情が高ぶった際の休憩を許可してもらう
  • 業務の優先順位を見える化して、不安や焦りなどが生じにくくする

こうした合理的配慮を職場に求めたり、無理のない働き方に変えたりするには、専門家のサポートを受けながらの障害特性の理解と環境調整の助言が欠かせません。

そこで次項から、各種の相談先とKaienの福祉サービスについて紹介します。

パーソナリティ障害で仕事に悩んだときの相談先

パーソナリティ障害で仕事に悩んだときの代表的な相談先を以下にまとめました。それぞれ特徴があり、困りごとや目的に応じて選べます。

相談先概要・役割どんな人に向くか・何を相談できるか
精神科・心療内科診断や治療を行う医療機関・パーソナリティ障害でないかと思っている方・診断や治療を受けたい方
精神保健福祉センター・保健所地域の公的なこころの相談窓口・受診先や支援先が分からない方、そのご家族
こころの健康相談統一ダイヤル地域の公的電話相談窓口につながる全国共通番号・電話で気軽に相談したい方・どこに相談すればよいか分からない方
働く人のこころの耳相談働く人向けの電話・SNS相談・仕事の悩みを中心に相談したい方
就労移行支援一般就労に向けた訓練や就職支援を行う障害福祉サービス・働く準備をしたい方・就職や職場定着に不安がある方
自立訓練生活面の安定や日常スキルを整える支援・まず生活や対人面を整えたい方
リワーク主に休職中の人の職場復帰支援・復職準備、再発予防などのプログラムを受けたい方

Kaienの支援で自己理解を深め職場での対人スキルを整える

「パーソナリティ障害の特性で人間関係がうまくいかず、職を転々としている…」そんな悩みをお持ちの方へ。Kaienでは、疾患の特性を理解した専門スタッフが、自己理解を深めるワークや、あなたに合った環境調整の提案を行います。

就労移行支援では、就職に向けた職業訓練や求人紹介、就活支援などの手厚い支援を一括で受けられるのが特徴です。コミュニケーションや職場で困ったときの対処法なども練習でき、就職後は合理的配慮の提案を含めた職場定着のサポートも受けられます。

Kaienの就労移行支援プログラム

自立訓練では、生活リズムを整えながら、感情コントロールや対人スキルの土台づくりに取り組めます。気持ちが高ぶったときの対処法や、心のケア方法などを身につけて、働く前の土台を少しずつ整えていけます。

自立訓練(生活訓練)プログラム

リワークでは、休職中の方が復職に向けた準備を進められます。体調や気分の波を整えながら、再発予防の方法を考えたり、無理のない働き方を見直したりします。

新しい復職支援をあなたに!こころのリワークセンター

まずはKaienの個別相談会でお気軽にご相談ください。

パーソナリティ障害と仕事に関するよくあるFAQ

Kaienはパーソナリティ障害を含めた精神障害の方への支援に豊富な実績があります。ここでは、パーソナリティ障害の方々からよく質問をいただく内容についてお答えします。

パーソナリティ障害があっても、障害者雇用で働けますか?

はい、働ける場合があります。

一般的に、障害者雇用では障害者手帳が必要です。パーソナリティ障害がある方は、精神障害者保健福祉手帳の対象となる場合があり、取得できれば障害者雇用枠に応募できます。障害者雇用は、一般雇用に比べると必要な配慮を受けやすく、安定して働きやすい点がメリットです。

ただし、パーソナリティ障害の診断を受けただけで手帳を取得できるとは限りません。就労状況、対人交流の状況、日常生活の状況なども含めて審査を受ける必要があります。まずは主治医や自治体窓口に確認してみてください。

パーソナリティ障害があると仕事は続けられませんか?

いいえ、続けられないとは限りません。

パーソナリティ障害があっても、特性に合った環境調整や支援を受けることで、働きやすくなる方はいます。例えば、対人ストレスが強い方なら個人作業が多い仕事を選ぶ、通勤や対人負荷が大きい場合は在宅勤務を取り入れるなど、働き方や職場環境の工夫によって負担を減らしやすくなります。

また、Kaienのリワークや就労移行支援、自立訓練(生活訓練)のようなプログラムを活用して自分の特性への理解を深めたり、対人スキルを練習したりすると、悩みや困りごとを減らせる可能性があります。

職場で「他責」と指摘されます。本人が改善できるトレーニングはありますか?

はい、改善に向けて取り組めるトレーニングはあります。

パーソナリティ障害では、ものの受け取り方や感情の動き方、対人関係のパターンに偏りが生じやすく、注意や評価を「強く責められた」と受け止めてしまうことがあります。こうした反応に対しては、ものの受け取り方や考え方に働きかけて気持ちを整理する「認知行動療法」や、対人場面での伝え方や受け止め方を練習するSST(対人技能訓練)が役立つ場合があります。

実際に、Kaienの就労移行支援、自立訓練(生活訓練)、リワークでは、認知行動療法やSSTの考え方を含むプログラムを採り入れています。

パーソナリティ障害で人間関係に悩み職を転々としている方はKaienへご相談を

パーソナリティ障害の方のなかには、人間関係のトラブルや他人を責めてしまうことに悩む方がいます。こうした仕事上の悩みは性格の問題ではなく、特性を踏まえたアプローチによって改善できる場合があります。お一人で悩まず、医療機関や各種の支援機関のサポートとつながると、負担の少ない働き方をみつけやすくなるでしょう。

Kaienでは、「人間関係がうまくいかず、職を転々としている…」「自分に合う仕事を見つけたい」などとお悩みの方のために、障害者雇用を含めた就職・転職を目指す就労移行支援や、就労前に生活基盤を整えるための自立訓練(生活訓練)、負担の少ない働き方を見直すリワークを提供しています。

全国の事業所で随時、見学・個別相談会を開催していますので、ぜひお気軽にご連絡ください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

監修者コメント

 「人のせいにする」というのを少し専門的に言うと、「他罰的」となります。自分のことはさておき、相手に非が100%あるかのように責めてしまうのです。誰でも怒髪冠を衝く怒りを覚えたときは、他罰的になってしまうかもしれません。ただ、この他罰性が日常的に見られると困ったことになります。本コラムで紹介された、Bクラスターの中でも境界性パーソナリティ障害(BPD)や自己愛性パーソナリティ障害(NPD)に他罰的な言動が見られることがあります。

 このような方々と接するのは非常に大変ですので、かつて日本の精神分析の大家でいらした小此木圭吾先生が著書で言われるように「かかわりは慎重に、時には一定の距離を置いて、普通の隣人や社会人同士の付き合い以上には近づかないで暮らす」*1)ようにした方が良いでしょう。BPDやNPDの方々が医療に繋がるチャンスは、自身がうつ状態に陥ったときだとよく言われます。周囲が腫れ物を触るように接すると、彼らは自分から人が離れていると敏感に察知するため、抑うつ的になり医療者に援助を求めるのです。

 ただし、パーソナリティ障害は精神分析の影響力が精神医学から消えつつあるなかで、かつてのような強い意義を持たなくなりました。大きな理由の一つは脳科学的な基盤に乏しいこと、もう一つはその時代や文化によって好ましくないパーソナリティ像が変化する可能性があり、必ずしも普遍性を持つ概念でないことが挙げられます。このため、現在ではパーソナリティ障害と診断名をつけるより、双極性障害や自閉スペクトラム症など脳科学的に知見が出ている診断名を付けることが多くなっています。

 ところが、人のこころの成長過程での躓きが引き起こすと考えられるパーソナリティ障害は、いまや社会学に応用されつつあります。特に他者とのリアルな付き合いが減って、ソーシャルメディアに没頭する人が増えるようになって、社会のあちらこちらでモラルハザードが起きています。匿名と言うペルソナ(「仮面」という意味で、パーソナリティの由来になっています)を付けて、激しく他者を攻撃し、炎上させてしまう現象が先進国をはじめ世界的に見られるようになりました。

 「匿名性」を借りて他人を糾弾する現象――「なんでも人のせいにする」ペルソナは、私たち誰もが潜在的に持っている悪魔なのかもしれません。

*1)小此木圭吾、『あなたの身近な「困った人たち」の精神分析』、大和書房、1997

監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。


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