看護師から未経験の事務職へ。実習を通して自分に合う職場を見つけたHさん

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▪年齢:20代後半
▪診断名:自閉症スペクトラム(ASD)
▪仕事における苦手なこと:変化の激しい状況で瞬時に優先順位を付けて動くこと、仕事や予定を詰め込んで頑張りすぎてしまうこと
▪就職した職種:事務職(障害枠)


幼い頃から好奇心旺盛で頑張りすぎる性格

―――幼い頃はどんなお子さんでしたか?

好奇心が旺盛で、小学生の頃から習いごとや地域のワークショップ、委員会など、興味を持った活動に積極的に参加していました。委員会活動では発展途上国支援の募金活動をしており、昼休みも先生と打ち合わせをするほど熱中していましたね。漢字や計算のドリルを7回繰り返す、英語の書き取りを1週間で100ページ行うなど、過集中で頑張りすぎる面もあったと思います。

小学校高学年の頃から周囲のグループに馴染めない感覚があり、大人になってからも飲み会など大勢で話す場が苦手です。冗談をそのまま受け取って真面目に答えてしまうなど、その場のノリを理解するのが難しいと感じています。

―――診断名と苦手なことを教えてください。

ASDと診断されており、医師からはADHDの傾向もあると伝えられています。

特に苦手だと感じているのは、変化する状況に応じた瞬時の優先順位付けです。例えば、大学生のときにアルバイトをしていたハンバーガーチェーンでは、レジ、ドリンク作り、ドライブスルーの対応など、一気に複数の作業が重なることが多くありました。すると、どこから手を付ければよいのかわからなくなり、戸惑って動けなくなってしまったのです。

一方で、中長期的な計画には苦手意識がありません。現在の仕事でも3つほどの作業を並行して進めていますが、時間をかけて計画を立て修正できるため問題なくこなせています。

―――Kaienにつながる前はどんなことをしていましたか?

大学を卒業後、精神科の慢性期病棟で看護師として勤務していました。患者さんとのコミュニケーションにはやりがいを感じましたが、医療現場の状況変化や業務スピードに追いつくのが難しく、業務時間外の作業や夜勤で次第に疲れが溜まっていきました。入職してから年数を重ねて先輩からのフォローも受けにくくなり、当時の上司と相談して「ほかの職場の方が得意を活かせるのでは」という結論に至って退職しました。

相談して作業の量を決め、メリハリをつけられるように

―――Kaienで訓練を始めようと思ったきっかけがあれば教えてください。

Kaienを知ったきっかけは、Youtube動画です。大学生の頃のアルバイトで自分の特性を意識しており、発達障害に関するさまざまな情報を集める中で、Kaienの動画も視聴していました。そのときに「グレーゾーンや大人の発達障害についても深く理解してくれている」と感じ、相談するならKaienと決めていました。

看護以外の職種を目指そうと考えていたため、Kaienではさまざまな業務を体験してスキルを身に付けられる点も魅力に感じましたね。

―――未経験の職種へキャリアチェンジするに当たり、役に立ったと感じた訓練は何ですか?

Excelを使ったデータ集計や、PowerPointでの資料作成・発表です。Excelはほとんど未経験でしたが、講座や実習を通じて関数、ピボットテーブルなどの実務的なスキルを習得できました。現在の業務にも、とても役に立っています。

報告・連絡・相談の効率的な方法も身に付きました。要件に入る前にひと声かけたり、結論から伝えたりするなど、相手の状況を踏まえた円滑なコミュニケーションが取れるようになったと感じています。

―――「頑張りすぎる」という特性について、訓練を通してどのような対策を身に付けましたか?

訓練を始めた当初は「早く就職したい」という思いが強く、電車の中で講座の動画を見たり、訓練時間外に細かく計画を立てたりと、作業を詰め込んでいました。しかし、担当のキャリアカウンセラーから「頑張りすぎだ」とアドバイスを受け、一緒に対策を考えることになりました。

最も効果があった対策は、訓練に取り組む時間を区切ってメリハリを付けることです。例えば就活の準備であれば、今週は求人を見て候補の企業を5つだけ挙げる、次の週は自己PRだけ書くといったように、作業の量を具体的に決めました。

一人で考えていると不安になって詰め込みたくなってしまうため、誰かと相談して一緒に作業量を決めることが特に大事だと学びました。現在の職場でも上司と相談し、業務時間外に仕事に関する作業をしないと約束しています。詰め込みすぎるよりも、休むときはしっかり休んでメリハリを付けるほうが疲労感が少なく、より集中して作業ができると気づけたため、今も作業量の調整を意識しています。

実習への参加で自分に合う職場を見つける

(Hさんが所属しているゴスペルサークルで歌った会場)

―――訓練開始からどのくらいで就活を始めましたか?

訓練開始から約2か月後です。面談会に参加して就活を開始し、6社を受けて4社で実習を経験しました。

―――事務職を希望した理由や就活の軸を教えてください。

事務職を希望したのは、急変が少なく計画的に進めやすい仕事が自分に合っていると感じたからです。看護師として働いていた頃の経験から、発達障害を開示して配慮を受けたほうが働きやすいと感じていたため、障害者雇用を中心に検討していました。

―――就活の際にしておいて良かった対策を教えてください。

自己PRや志望動機の書き方を学び、得意・不得意や特性を整理しておいたのが役に立ちました。面接対策では想定問答集を細かく作り込み、面接練習も繰り返し重ねました。しかし、あえてあまり準備をせずに面接練習に向かったこともあります。その場合は本番でのとっさの対応力が鍛えられるので、実践的な訓練ができました。

これから就活する方には、多くの実習への参加をおすすめします。私はさまざまな企業の実習に行ったおかげで、自己成長していける職場やコミュニケーションを取りながら働ける職場が自分に合っているとわかりました。似た職種でも企業によって風土が異なるため、自分に合う職場環境や得意・不得意を確かめるためにも、実習は大事だと思います。

―――就活で苦労したことはありますか?

最初の内定を思ったよりも早くいただけたものの、承諾するか辞退するか迷ったことがありました。就活を開始した頃はそもそも就職できるかどうか不安が強く、断った場合「これ以降内定をいただけなかったらどうしよう」と怖くなっていたのです。

当時は実習に参加していてほとんど通所できない状況でしたが、メールや電話でKaienに相談できました。スタッフの方に「絶対に大丈夫」と言っていただけたので自信を持って就活を続行でき、結果として現在の企業につながれました。「焦って決断しなくてよかった」と、心から感じています。

看護師の経験を活かし、障害があっても働きやすい環境をつくりたい

―――現在の職場での仕事内容を教えてください。

定型業務の自動化やアプリ開発など、デジタル技術による業務改善が主な仕事です。入社後半年は研修期間として学習に専念し、現在は実際の案件にも携わり始めています。将来的には、障害枠の新入社員のトレーナーとして、指導や育成も行う予定です。

―――今後の目標や挑戦したいことはありますか?

RPAやアプリ開発の案件を完結させることが直近の目標です。今後は、未経験から挑戦した経験を活かし、初学者にもわかりやすく教えられるトレーナーになりたいですね。看護師時代の経験を活かして、知的障害や精神障害のある方が働きやすい環境づくりにも貢献していきたいと考えています。

付録  ~Hさんのこと~

(「大きなシャンデリアの前で歌ったこともあります」とHさん)

プライベートでは、ゴスペルとボランティア活動に取り組んでいます。ゴスペルサークルでは100人で一緒に歌う機会があり、よい思い出になりました。来年には大規模なホールで歌う予定もあり、とても楽しみにしています。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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