「正直」ゆえの困難に向き合い、私らしいペースで掴む新たな働き方

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▪年齢:30代
▪診断名:うつ、ADHD、ASD
▪苦手なこと:空気を読む、理解に時間がかかる、計算、運動


周囲と自分を隔てる「空気」への違和感

――― まず、ご自身の性格を一言で表すとしたら何になりますか?

そうですね、一言で言うなら「正直」です。嘘がつけない性格だとよく言われます。あとは、少し融通が利かないところもありますが、それが自分の強みでもあり、正確な部分だと思っています。

――― 嘘がつけないというのは、とても信頼できる強みですね。一方で、周囲とご自身が「何か違うな」と感じたことはありますか?

あります。周りの人が上司や人の指示を聞きながら、周囲の空気を読んで行動している時に、自分が「どう動いたらいいか分からない」と感じ、取り残されているような感覚をよく覚えました。

――― それを意識し始めたのはいつ頃でしょうか?

小学生の頃は「人より行動が遅い子」という認識だったのですが、中学生になると、授業によっては内容についていけたり、いけないことがあったり、という差が出始めました。その頃から、「周りとは少し違うのかな」と感じ始めていました。

――― その後、診断を受けられた時のお気持ちはいかがでしたか?改めて診断名も教えてください。

診断名はうつ病と発達障害(ADHDとASDの併発)です。ADHDの不注意については、小学校の頃から通知表にも忘れ物が多いと書かれていたので、「やっぱり当てはまっていたんだな」という感覚でした。

一方で、ASDについては少し目から鱗が落ちる思いでした。診断を受けてから知ったASDの人の特徴と、実際の自分の症状とが当てはまる部分があったからです。社会通念上理解できるものもありますが、抽象的な物事を理解しにくいところや、臨機応変に対応できないところに、自分はつまずきがあったんだと分かりました。

命に関わる現場で直面した特性

――― ご自身の特性で苦労されたエピソードがあれば教えてください。

学生時代から運動全般が苦手で、特に球技は全くできませんでした。これは「努力してもできないことはある」と割り切っていましたが、日常生活で困ったのは計算が苦手なことです。学生時代は特に数学の学習についていけず、日常生活で簡単な計算をする際にも困ることがあります。

――― 過去の職務経験で、特性と向き合うことになったエピソードはありますか?

以前は約2年間、看護師として働いていました。

看護師は、新人の時期に多くの知識や技術を覚え、それを実践しながら失敗を減らしていく必要があります。しかし、私は覚えるのにも理解するのにも人一倍時間がかかり、何度も失敗を繰り返さないと覚えられないという特性がありました。

さらに、命に関わる現場なのでマルチタスクが求められますし、自分で判断して動くという経験を積み重ねる必要がありました。人とのコミュニケーション自体はそこまで負担はなかったのですが、気軽に相談ができない環境となると、何をどのように相談したらよいかを考え、行動することは苦手でした。業務量の多さと、その場で判断し実行する責任感の重さもとてもしんどかったです。自分の特性が仕事に就いて初めて分かった、という感覚でした。

自己理解を深めるためにサービス利用に踏み切る

――― Kaienに繋がろうと思ったきっかけを教えてください。

最初は他社の就労移行支援事業所に通っていました。そこで、自分の特性を掘り下げたり、それに対処したりするプログラムにあまり取り組めない環境だと感じたんです。

そこで、自分の中で診断への確信が深まったこともあり、「発達障害の特性がある人に特化している」というKaienの事業所を探し、自分の得意・不得意を見つめ直したいと思ってKaien大阪天六(就労移行支援)に繋がりました。

――― その後、リワークセンターに移られたのはどういう理由があったのでしょうか?

就労移行支援での自己理解をさらに深めたいと思った時、支援員の先生から、自分の得意不得意や、どういう環境が苦手なのか、ストレス対処の訓練を積み重ねられる場所の方が合っているのではないか、とアドバイスをいただきました。

そういった経緯があり、リワークセンターで取り組めるプログラムの方が就職後に安定して働き続けることに繋がるだろうと考え、移籍を決めました。

客観的に自分を捉え、固まった思考を柔軟に

――― リワークセンターに初めて通所した時の印象はいかがでしたか?

前の事業所(Kaien大阪天六)とは違い、とても静かで、空間が広いと感じました。初期の頃だったので人も少なかったですが、静かな環境で、良い意味でリラックスできる印象でした。

―――リワークセンターで取り組んだプログラムの中で、特に印象に残っているものを教えてください。

特に印象に残っているのは、認知行動療法(CBT)のプログラムです。

CBTを通して、自分の気分と行動を切り離して考えること、自分の思考の普段の癖を見直すこと、そして気分に波があってもそれを否定せずに受け入れることが大切だと学びました。そうすることで、徐々に自分の思った価値観に沿って行動できるようになっていきます。

このプログラムは、自分の特性にマッチしていました。例えば、自分の持つ「白黒思考」や「思考の偏り」など、融通の利かない部分を少しずつ変えていくためには、集団でのプログラムで概要を学びながら実践に移していく必要があったからです。

――― 通所当初と比べて、ご自身が変わったと感じる点はありますか?

プログラムを通して学んだことを日常生活で実践できていることです。また、支援員の方からも「話すトーンが明るくなった」と言われることがあり、自分でも良い変化を実感しています。

特性に合った環境で長く安定して働く

――― 現時点で思い描いている未来や目標について教えてください。

ここ最近思っている目標は、やはり就職活動をして、もう一度社会復帰することです。

ただ、環境が合わないまま働き続けてしまうと、すぐに疲弊してしまったり、また同じサイクルで病気になってしまったりする可能性があります。ですから、今度は、自分の特性に合った環境、困った時にサポートしてもらえる環境を選びたいと思っています。

そして、その環境で「楽しいな」と思いながら長く安定して働き続けたいというのが、私の目標です。実現できるように頑張っていきたいです。

――― 最後に、読者の方に伝えておきたいことはありますか?

今日は、リアルな話をそのままお話させていただきました。私のように、自分の特性で悩み、病気を経験した人が、リワークセンターの利用を通して「学びがあってよかった」と感じてもらえる声が、次に迷っている誰かの助けになれば嬉しいです。

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