
| ▪年齢:40代 ▪診断名:ASD ▪特性/苦手なこと:時間管理 |
”考えすぎてしまう”特性からくる困難
――― まず、ご自身の性格を一言で表すとしたら何になりますか?
そうですね、すごく難しいですが、「考える人」でしょうか。よく言えば「思慮深い」と言われます。常に頭の中でいろいろな物事を考えているタイプだと思います。
―――周囲の方とご自身が「何か違うな」と感じたことはありますか?
あります。それは「物事を処理する速度」ですね。他の人に比べて、すべてがゆっくりになってしまう。気が付くといつも私が一番最後になってしまったり、周りの話についていけずに浮いてしまったりする感覚がありました。
――― 苦手と感じていることや具体的なエピソードがあれば教えてください。
とにかく時間管理が苦手で、学生時代から提出物や時間に間に合わせることが難しかったです。遅刻もよくしていましたし、提出物も期限に間に合わないことが多かったです。順序立てて物事を進めることはそこまで苦手ではないのですが、私の場合、こだわりが強いために、一つのことに時間をかけすぎてしまう傾向があります。あれこれ考えすぎて工程が増えてしまったり、急に別のことが気になりだして集中力が途切れたり…。「いつまでに提出しなきゃ」と分かっていても、一つ一つにこだわりたくなると時間がかかってしまう、という悪循環がありました。
「引きこもり」を経て社会復帰を目指す
――― 今までにご経験されたお仕事について教えてください。
信用金庫での事務、飲食店の接客、それから葬儀会社での事務やアシスタント業務を経験してきました。一番長く働いたのは葬儀会社で、事務とアシスタントを合わせて約3年半ほど従事しました。
―――その後、社会復帰を目指す中で、リワークセンターでの訓練を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
私は主婦歴が長く、その間に引きこもりの時期もあったんです。そこで、いきなり企業で働くことを目指すのではなく、まずは生活を立て直して、外に出ていくことから始めたいと思いました。
最初は就労移行支援事業所を探していましたが、自分の状況を考えた時に「リワーク」というものがあることを知り、まずは生活リズムの安定や社会との接点を持つことを優先しようと、こちらのリワークセンターに通所を決めました。
客観視と安心できる環境
――― リワークセンターに初めて通所した時の第一印象を覚えていますか?
そうですね、率直に「明るい、そして静か」という印象でした。内装が明るく、通い始めた当時は今ほど利用者さんも多くなかったので、静かで落ち着いた雰囲気だったのを覚えています。
――― これまで様々なプログラムを受けられてきたかと思いますが、特に印象に残っているプログラムはありますか?
「当事者研究」が印象に残っています。みんなで一緒に自分の特性や困難について考え、それが派生して色々な話が聞けるのが面白かったです。自分自身について深く考える良い機会になりました。
――― 今後働く上で、特に役に立ちそうだと感じている知識やスキルは何でしょうか?
「認知行動療法」と「アサーション」です。
アサーションは、自分の気持ちの伝え方や考え方について、一歩引いた目線で見られるようになる点が非常に大事だと感じています。
認知行動療法は、「理想の自分」と「実際の自分」を見比べたり、客観的に自分の状態を見つめたりすることで、目指すべきものが明確になり、とても分かりやすいです。どちらのプログラムも、感情や考え方を客観的に捉えられるようになるという点で、私にとって大きな学びとなりました。
――― 通所当初と比べて、「ここが変わったな」と思うところはありますか?考え方でも、行動や生活面でも大丈夫です。
引きこもりの時期が長かったため、人と関わる機会が本当に少なかったのですが、リワークに通い、人と関わる中で「今の自分の状態」が把握できるようになったことが大きな変化です。
グループワークやプログラムを通して、「自分はこういうことはできるんだ」「でも、まだこういう課題があるんだな」といった発見があります。ここは、そうした自分の課題を安心して発見できる環境だと感じています。また、対話型のプログラムを通じては、利用者さん同士がお互いの話を安心して話せる場だと思います。
社会復帰から趣味を楽しむ人生へ
――― 今、描いている未来や目標について教えてください。
直近の目標は、やはり社会復帰です。今の自分ができる範囲で企業で働くということを、まずはスタートさせたいと思っています。
その先、働いてお金を稼げるようになり、自立していけるようになったら、旅行や好きなことに時間やお金を使えるようになりたいですね。
――― 最後に、何か他の人に伝えておきたいことはありますか?
こんな話で良かったのか、という気持ちもありますが(笑)、私のように引きこもり経験があっても、一歩踏み出して生活を立て直す場所があるということを伝えたいです。
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