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「昔から、周りの人が当たり前にできていることが、自分にはどうしてもできない……」。そんな違和感を抱えながら過ごしてきた今回の主人公。新卒での就職、そして早期離職を経て、再び「働くこと」に向き合うためにKaienの門を叩きました。

自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動症(ADHD)の特性を理解し、自分自身の「コントロール」術を身につけるまでの道のり。そして、一人で海外旅行へ出かけるほどの行動力を手に入れた現在の生活について、じっくりとお話を伺いました。


▼Tさんの簡単なプロフィール


  • 年齢: 20代
  • 診断名: 自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)
  • 苦手なこと: 対人コミュニケーション、適切な距離感を掴むこと、Excelでの大量データ処理
  • 利用サービス: ガクプロ、生活訓練、就労移行支援
  • 就職先: メーカー 事務職(障害者枠)


「なぜ自分だけ?」幼少期から感じていた周囲との壁

――― まずは、幼少期について教えてください。

親から聞いた話では、幼稚園に行くのが嫌でよく泣いている子だったそうです。服の着替えなど、日常生活で他の子が自然にできていることが自分だけできていない、ということが多かったみたいですね。

――― 集団生活の中で、困り感はありましたか?

そうですね。友達はほとんどいなくて、いつも一人で遊んでいました。心の中では「みんなと一緒に遊びたい」という気持ちもあったのですが、どうやって輪に入ればいいのかがわからなくて。

――― ご自身の性格を、どう分析されていますか?

一言で言えば「好奇心旺盛だけど、こだわりの強い人」でしょうか。あと、どうしてもコミュニケーションに苦手意識があります。

――― 「自分は周りと少し違うな」と自覚されたのはいつ頃だったのでしょうか。

中学生から高校生くらいの時期です。人間関係をうまく築けず、「どうして自分はいつもこうなっちゃうんだろう」と悩むことが増えて。明らかに周囲との差を強く感じる場面が多くなったのが、その頃でした。

「働く」の前に「整える」。新卒での離職を経て選んだ、生活訓練というリスタート

カラオケの最高得点は96点!

――― 学生時代から「ガクプロ(大学生向け支援)」を利用されていたんですよね。

はい。ガクプロでは営業のシミュレーションゲームをしたり、趣味の話などをする「しゃべり場」に参加したりしていました。その後、新卒で一度就職したのですが……そこでの人間関係や仕事の難しさに直面してしまって。

――― 最初の就職は、順調にはいかなかった……?

勤怠が乱れてしまい、欠勤が続くようになってしまったんです。結局、長くは続けられませんでした。そこで「もう一度、土台から作り直そう」と考え、Kaienの生活訓練(自立訓練)を利用することにしました。

――― 生活訓練では、どのような目標を立てたのですか?

まずは「勤怠の安定」です。当時はオンラインも併用できたので、無理のない範囲から通所のリズムを整えていきました。あとは、対人スキルの習得ですね。

――― 具体的に印象に残っている活動はありますか?

「部活動」が楽しかったですね。拠点の近くにある緑の多い場所へみんなで散歩に行ったり、自分の趣味についてプレゼンしたり。あと、座禅を組むプログラムもありました。そうした活動を通して、ステップアップできた実感があります。

「武器」の発見と特性への対策

――― 生活訓練を1年弱継続した後、就労移行支援に移られた理由は?

周りの仲間たちが次々と就労移行へステップアップしていく姿を見て、「自分もやっぱり働きたい、自立したい」と強く思ったからです。生活していくためにはお金も必要ですしね。

――― 就労移行での利用はいかがでしたか?

事務作業のプログラムでは、自分の「得意」と「苦手」がはっきりしました。Excelの細かいデータ処理は最初は苦手でしたが、一方でPowerPointを使った資料作成が得意だということに気づくことができました。

――― 作成した資料が、拠点内で評判になったと伺いました。

ランチマップ作成のプログラムにおいて、補助資料としてテレビ番組風の紹介スライドを作ったんです。そうしたらスタッフの方だけでなく、後輩の利用者さんたちからも「自分たちもこういうのを作りたい!」と言ってもらえて。事業所内ウェブサイトにも掲載されたのは、本当に自信になりました。

――― 苦手だった作業についても、何か対策を見つけられましたか?

数をこなす業務のときは、細かく目標を立てるようにしました。「この時間内に50件終わらせよう」と区切ることで、集中力を切らさずに、落ち着いて取り組めるようになりましたね。

「認知の歪み」を正し、自分の心を守るスキルを習得

大阪「あべのハルカス」で食べたお寿司

――― プログラムを通じて、ご自身の考え方に変化はありますか?

スタッフさんからいただいたアドバイスで、「コントロールフォーカス」、「問題解決力」、「認知を変える」という考え方を学んだことが大きいです。

――― それはどのようなものですか?

例えば、電車に乗っているときに「誰かに見られている気がする」と不安になることがあったんです。でも、そこで一旦立ち止まって考える。「今、周りの人はスマホを見たり風景を見たりしているはず。自分の服が汚れているわけでもないし、見られる理由がない。これは自分の勘違いだ」と。

――― 自分の思考を客観的に捉え直す、ということですね。

はい。以前は、注意を受けると「自分そのものを否定された」と思い込んで落ち込んでいました。でも今は「問題の本質はどこか」「自分に変えられる部分か」を切り分けて考えられるようになり、以前よりずっと楽に対策が取れるようになりました。

1年以上の継続就労。「無理をしない」が長く働く秘訣

――― 就職活動についても教えてください。最終的に30社ほど受けられたそうですが、軸にしていたことは?

1回目の失敗があったので、「無理をせず、短時間からでも長続きできる環境」を一番の軸にしました。背伸びをせず、等身大の自分でいられる場所を探しました。

――― 現在のお仕事の内容は?

総務事務として、経理などの入力業務、給与やその他総務関係の軽作業業務、主に給与明細を入れる袋や納品書の入力などを行っています。今の会社に入って1年以上が経ちました。

――― 職場には慣れましたか?

徐々に、ですね。まだサポートしていただくことも多いですが、落ち着いて業務に取り組めるようになってきました。過去の失敗を教訓に、自分の特性を整理して対策を持った状態で入社できたのが良かったのだと思います。

――― 最後に、今後の目標を教えてください。

2026年の目標は、引き続き「無理をしないこと」と「周囲への影響を考えて行動すること」。そして2028年には、ロサンゼルスにオリンピックを観に行きたいです!

付録~Tさんについて~

ロサンゼルス・ドジャースタジアムにて野球観戦

――― 趣味についても教えてください。休日はどのように過ごされているのですか?

Kaienの当事者会や、土曜セッションに参加することが多いです。それ以外の時間は、趣味関連の買い物に行ったり、カラオケや旅行を楽しんだりしています。最近はスポーツ観戦にも興味が出てきて、いろいろと意識して動くようにしていますね。

――― 実は昨年もロサンゼルスへスポーツ観戦に行かれたとか?

はい、ドジャースの試合を観に一人で行ってきました!

――― 一人で海外! すごい行動力ですね。不安はなかったですか?

英語はそこそこだったので大変なこともありましたが、行ってみたらなんとかなりました(笑)。みんなに話をしたら、「その行動力はすごい!」と驚かれました。

――― 一人で行ける自信がつくと、どこへでも行けそうな気持ちになりませんか?

確かにそうなんですけど、ヨーロッパはまだハードルが高いかな……と思っています。少しずつチャレンジの幅を広げていきたいですね。

――― Kaienで手に入れた「自分を扱う技術」が、仕事だけでなく、人生を自由に楽しむための武器になっているのですね。これからもTさんの挑戦を応援しています。本日はありがとうございました。

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