以前通っていたA型事業所でのWebサイト運営やデータ入力の経験を経て、「より本格的にプログラミングを学び、一般就労を実現したい」と就労移行支援の利用を開始したKさん。訓練を通じて自身の課題と誠実に向き合いながら未経験の言語を習得し、報告や相談のビジネススキルを確立していきました。最先端の技術を追い続けるエンジニアを目指して就職活動に挑む現在のお話を伺いました。

▼Kさんの簡単なプロフィール
- 年齢:30代
- 診断名:自閉症スペクトラム(ASD)
- 苦手なこと:大きな音や強い匂い、対人コミュニケーション(面接や人前で話すこと)
- 現在の状況: 就労移行支援にて就職活動中
- 志望業界:IT業界(エンジニア職)
言葉を話さなかった子ども時代。周囲からの「宇宙人」扱いで気づいた違和感
―――まずは、Kさんの幼少期について教えてください。当時はどのようなお子さんだったのでしょうか?
家族から聞いた話では、幼稚園に入る頃まで全く言葉を話さない子どもだったそうです。自分自身では、何が周囲の人たちと違うのか明確には分からない部分が多いのですが、身内からは「宇宙人」扱いされるようなこともありました。ただ、今振り返ると、そう言われることにも納得感があるため、、昔から周りとは少し違う感覚を持っていたのだと思います。
―――ご自身の性格を言葉で表すと、どのように分析されていますか?
自分の性格について、普段あまり深く思考を費やすことはありません。ただ、周囲の方々からいただく評価を振り返ると、大体「素直な性格だね」と言われることが多いですね。人からアドバイスをもらった時は、そのまま取り入れて行動に移すように意識しています。
感覚過敏と対人関係の悩み。A型事業所から「一般就労」へ向けた一歩
―――これまで生活や仕事の中で苦労されたり、苦手だと感じたりしたことはありましたか?
私の診断名は自閉症スペクトラム(ASD)なのですが、感覚過敏の特性があります。特に大きな音を聞いたときは、ショックを受けて動けなくなってしまったことがこれまでに数回ありました。また、強い匂いに対して非常に敏感で、発作を起こしてしまったこともありました。 その他の特性としては、対人コミュニケーションが挙げられます。自分としては悪気は全くないのですが、相手を不快な気持ちにさせてしまった経験がこれまでに何度かあり、人との関係構築には難しさを感じていました。
―――そうした悩みを抱える中で、Kaienを利用しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
当時通っていた障害者支援センターの担当者の方から、ご紹介いただいたのがきっかけです。その前はA型事業所に通所し、WordPressの更新・運営業務や、Excelでのデータ入力、ダブルチェックなどを主に行っていました。しかし、私の中では将来的には、企業で「一般就労」を達成したいという気持ちがあったんです。そのため、一般就労を実現するための足掛かりとして、就労移行支援で本格的に訓練を始めようと入所を決めました。
AI時代を見据えてPythonを選択!Udemyを活用し独学で習得したアプリ開発
―――利用を開始するにあたって、どのような目標を持っていましたか?また、その目標は達成できましたか?
一番の目標は、「新たにプログラミング言語を習得し、アプリケーション開発の経験を積むこと」でした。元々アプリ開発をやってみたいという気持ちがありましたし、訓練を通じて実際にPythonとDjangoを使ってアプリを作成することができたので、当時の目標はしっかりと叶えられたと思っています。
―――クリエイティブコースで学ぶプログラミング言語に「Python」を選んだ理由を教えてください。
A型事業所に通っていた時代から、元々Pythonという言語にはずっと興味がありました。また、現在は様々な分野でAI(人工知能)が注目されていますが、PythonはAIを作成したり活用したりできる言語としても親和性が非常に高いですよね。「これからの時代、学んでおいて絶対に損はない言語だ」と考えたため、学習を開始しました。実際の学習方法としては、オンライン動画学習プラットフォームの「Udemy」を見ながら、実際に手を動かして実習形式でコードを書き進め、数ヶ月ほどかけて基礎を習得していきました。
苦労したER図の設計。前職の経験と「利用者視点」を活かした蔵書検索アプリ
―――訓練の中で、最も力を入れて取り組んだ成果物について教えていただけますか?
講師の方から提案を受けて開発に取り組んだ、「蔵書検索アプリケーション」の制作です。私にとって本格的なWebアプリケーションの開発は初めての経験でもあったため、全体の設計から完成までに約3ヶ月を要しました。
―――長期間にわたる開発の中で、特に苦労した場面や、それを乗り越えた工夫はありましたか?
一番苦労したのは、データベースの構造を表す「ER図」の作成でした。今までシステム設計図を自分で作った経験が全くなかったので、そもそもどう書けばいいのか戸惑いました。そこで、インターネット上で先人たちが書いてくれているER図についての記事をたくさん見て、「ER図とはどういう構造なのか」を独学で徹底的に調べたんです。単なる処理の順序を表すフローチャートになってしまわないよう、データの関連性を正しく表現することに一番気を配りながら作りました。
―――前職のA型事業所でWebサイトを運営されていた経験は、開発に活きましたか?
はい、とても活きたと感じています。前職でPHPをやっていたおかげで、HTMLやCSSの仕組みもスムーズに理解できましたし、Pythonのコードを書いていても「あ、これは感覚的に身に覚えのあるコードだな」と思うところが度々ありました。 また、技術面だけでなく、「利用者がいる前提」でシステム作りに臨めたと感じています。自分が作ったシステムは誰かに使ってもらうものですから、ただ機能すればいいというわけではなく、実際の利用者がどう感じるかを考慮しながら画面のデザインや操作性を考える大切さは、前職の経験があったからこそ意識できた点です。
「スケジュール管理」の弱点を自覚。細分化と即時相談の徹底で実感した成長
―――技術面の成長はもちろんですが、訓練を通じてご自身の働き方やタスクの進め方に変化はありましたか?
私にとって非常に大きかったのは、「自分のスケジューリングの出来なさを明確に自覚できたこと」です。決められた納期に向けて、開発工程を管理することの難しさを痛感しました。自分の弱点に気づくことができたからこそ、それを改善するための対策を立てられるようになったのは良かったと思います。
―――そのスケジュール管理や報告業務の課題を、どのように乗り越えていったのでしょうか?
自分の素直さを活かして、スタッフの方々からいただいたアドバイスを忠実に取り入れるよう努めました。まずは大きな仕様を一度に把握しようとせず、できる限り細かく分割して、一つひとつのタスクを自分が確実に理解できるように整理しました。 また、以前は自己判断で進めてしまいがちだった部分も、少しでも仕様の変更や疑問点があればすぐにスタッフの方へ報告し、すり合わせを行う体制を自分の中で確立しました。
苦手な面接は実践練習で克服!最先端の技術を追い続けるエンジニアへ
―――現在は、本格的に就職活動を進められている段階ですね。どのような業種や職種を目指していますか?
これまで学んできたスキルを活かし、IT業界でエンジニアとして就職することを目標に活動しています。
―――就職活動を行う中で、現在一番大変なことは何ですか?
やはり「面接」ですね。幼少期から言葉を発するのが遅かったこともあり、人と話すことやコミュニケーションに対して大変だと感じています。そのため、面接の場で面接官と対話し、自分の考えを適切に伝えることにとてもエネルギーを使いますし、大変だと感じています。
―――面接の対策や就活を進める上で、Kaienのプログラムやサポートは役に立っていますか?
とても助かっています。「就活シアター」やオンライン講座を通じて就職活動に必要な基礎知識を聞きつつ、実践的な部分でお力をお借りしています。特に、面接練習や志望動機の添削をスタッフの方に何度もお願いできる環境は本当に心強いです。苦手なコミュニケーションも、事前の準備と練習を重ねることで対策に取り組んでいます。
―――最後に、将来的にどのようなエンジニアになりたいか、今後の目標を教えてください。
IT業界は非常に進歩が速いですが、将来の目標としては、資格やキャリアを問わず、「最先端のIT技術を常に追い続けられるエンジニア」になれたら嬉しいです。技術に対する好奇心を忘れず、新しいトレンドにキャッチアップし続けながら、企業や社会に貢献できる人材を目指してこれからも頑張っていきたいと思います。
【付録】休日はゲームやイラスト制作!優しさと温かみが垣間見えるKさんの素顔
―――ここからは少しリラックスして、Kさんのパーソナルな一面についてお伺いします。休日はどのように過ごされていることが多いですか?
休日はもう「趣味のためだけに過ごしている」と言ってもいいくらいですね(笑)。外出はあまりせず、家にいることがほとんどです。ゲームをしたり、絵を描いたり、あとは最近だと自分が興味のある資格に関する勉強をしたりして、自分のペースで充実した時間を過ごしています。
―――充実した過ごした方をされていますね!事前に「うさぎをモチーフにしたオリジナルキャラクター」のイラストを拝見しました。もっちりとして可愛らしいデザインですが、こだわりポイントはありますか?
実はあのイラスト、5分ほどでサラッと描いたものなんです。言葉ですぐに「ここがアピールポイントです」と出すのは難しいのですが、パッと見た時に「柔らかそうで温かみがあるな」と思ってくれたらいいなと思いながら描きました。

―――5分で描かれたとは驚きです!また、休日に資格の勉強もされているとのことですが、どのような資格に取り組まれているのですか?
「基本情報技術者試験」の学習です。ただ、来年からまた出題傾向や問題が一新されるみたいなので、今すぐ資格取得を絶対目指すというよりは、ITの基礎知識を広げるために自分用の勉強という意味合いが強いですね。
―――自分の興味を広げるために勉強を楽しめるのは素晴らしい強みですね。最近の日常生活の中で、何か楽しかったことや嬉しかったな」と思ったエピソードがあれば教えてください。
ほんの些細なことなのですが、今朝、バスを降りた時にお姉さんがハンカチを落としてしまったんです。急いで追いかけて、「落としましたよ」とハンカチを渡すことができました。その時に「あ、いいことをして役に立ててよかったな〜!」と思って、朝からとても心がほっこりしました。
―――Kさんの優しさと温かい人柄が伝わってくる、とても素敵なエピソードですね。本日はお忙しい中、インタビューにお答えいただき本当にありがとうございました!就職活動、応援しています。
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