大学中退後の葛藤を経て、自身の得意領域であるITを軸に再スタートを切ったKさん。Kaienでの訓練を通じてプログラミングなどのハードスキルだけでなく、これまで課題だったタスクや時間の管理術を身につけました。プロの客観的な評価を追い風に、就職を果たしたKさんの体験談をお届けします。

▼Kさんの簡単なプロフィール
- 年代:20代
- 性別:男性
- 障害種別:ASD(自閉スペクトラム症)
- 苦手なこと:朝の起床や準備、時間の管理、過敏さによるコミュニケーションの偏り
- 利用サービス:就労移行支援
- 就職先:大手外資系コンサルティングファーム(一般枠・事務職)
周囲との違いを感じ始めた小中高時代と、大学での模索
―――まずは幼少期から学生時代のことについてお聞かせいただけますか?
幼少期の記憶や母から聞いた話だと、近所の子とおしゃべりはするものの、基本的には一人遊びが多くて外で遊ぶのは嫌いでした。人並みに会話はできるけれど、自分から「一緒に遊ぼう」と誘うことはなかったですね。
運動も当時から苦手で、みんなが竹馬で遊んでいる中で自分だけ何回やってもできなくて「もう嫌だ」となっていたのを覚えています。
―――「周りとどこか違うのかもしれない」と意識し始めたのはいつ頃でしょうか?
明確に意識したのは小学校高学年頃です。友達との会話で自分が気になるポイントと人が気になるポイントが違っていたり、服が濡れたり汚れたりしたときの不快感に対する過敏さが人一倍強くありました。
人間関係では「広く浅く」付き合うことがどうしても難しく、交友関係の輪に入りにくさを感じていました。学習面では提出物が期限に間に合わない、先生の話を聞きながらノートを取ることができない、テストも時間内に解ききれないことがありました。小学校までは学力だけでカバーできていた部分が、中学・高校と難易度が上がるにつれて誤魔化せなくなり、「自分は周りに追いつかない」という感覚が強まっていきました。
体調不良からの回復と、得意を客観視するためのKaienとの出会い
―――その後、大学に進学されてからKaienを利用するまでの経緯を教えてください。
2024年3月に大学を中退したのですが、その後は週1〜2回の塾のアルバイトだけを続けつつ、「これからどうしよう」と悩む日々でした。当時は気持ちの落ち込みのある状況でしたが、しばらくしっかり休むうちに少しずつ体調が回復してきて、「このままじゃいけない、何か行動を起こさなきゃ」と冷静に考えられるようになりました。その時にふと思い出したのが、大学時代に母が教えてくれたKaienを思い出しました。
―――数ある支援機関の中で、最終的にKaienの就労移行支援を選んだ決め手は何でしたか?
WebサイトでIT系のプログラムを受けられるコースがあることを知ったのが大きかったですね。元々独力で学んでいたこともあり、IT分野が得意ではあったのですが、大学では電気電子系にいたため、客観的に「自分はITができます」と証明できる資格や経歴が何もありませんでした。「仕事として通用するレベルなのか」を測り、客観的な証明を得る場所として、専門コースがあり通いやすい場所にあったKaienが一番適していると考えました。
ハードスキルにとどまらない、タスク管理と報告の実践的な訓練
―――Kaienに入所されてからは、具体的にどのような訓練に取り組まれましたか?
最初はExcelのマクロ(VBA)やGAS(Google Apps Script)といった業務自動化の技術を学びました。その後、ITクリエイティブコースへ本格的に移行し、Webアプリケーションの作成やポートフォリオの制作に取り組みました。
―――プログラミングなどのハードスキル以外にも、実践で役立った訓練はありましたか?
特に大きかったのが「スケジュール・タスク管理」の訓練です。Webアプリ制作でもただ作るのではなく、最初にガントチャートで全体の計画を立て、今自分が何パーセント進んでいてスケジュールに対して遅れているのか進んでいるのかを日常的に管理しました。
―――日々の進捗を講師やスタッフに報告する形式だったのでしょうか?
はい、1日1回の定期報告のタイミングでガントチャートを共有していました。「計画の立て方が甘い」「これでは仕事上で上司に伝わらないよ」など、具体的なフィードバックを受けることもあり、この運用を通じて実践的なタスク管理と適切なビジネス報告の手法を叩き込むことができました。
講師の言葉から得た「確信」と、自分自身に起きた変化

―――訓練を重ねる中で、どのような成果や気持ちの変化を感じましたか?
一番の収穫は、業界経験のあるプロの講師の方から「十分仕事としてやっていけるレベルだよ」「できている方だから自信を持っていい」と客観的な評価をいただけたことです。自分の技術に確信が持てず不安だったのですが、プロからの言葉によって自信を得ることができました。
―――実際の「働くイメージ」も具体的になっていきましたか?
半年ほど訓練を続けたことで、「オンライン環境なら問題なく働ける。週1〜2日程度の出社ならオフィス環境でもやっていけそうだ」という具体的な見通しが立ちました。オフィス環境での報告の手順や定型文のようなものを事前に疑似体験できたことで、未知の職場環境に対する不安や恐怖感がかなり薄れたと感じています。
自分の「得意」と「必要な条件」を掛け合わせた就職活動
―――就職活動はどのように進めていかれましたか?
春頃からスタッフの方と相談しながら、自分の軸に合う求人やインターンを探し始めました。私には特性上、起床に時間がかかったり、朝の準備においてタスク漏れが生じやすかったり、といった課題がありました。そのため「フルリモート」または「フレックスタイム制」という働く環境の条件で探し始めました。
―――未経験領域かつリモート希望となると、求人探しも難しかったのではないでしょうか?
まさにそこが苦労した点です。経験者向けの求人が多く、未経験で条件に合致する求人は非常に限られていました。そこで私は、書類や短時間の面接だけで判断されるよりも、実際の作業姿勢や人柄を見てもらえる「長期インターンシップ」を積極的に受ける戦術をとりました。
―――現在の就職先に出会った経緯を教えてください。
3社目にインターンでチャレンジした企業でした。実は求人票には完全リモートやフレックスとは書かれておらず「出社時間は応相談」とあったんです。そこで選考段階から「朝の出社時間について配慮をいただきたい」と素直にこちらの希望を提示しました。結果としてそれを受け入れた上でインターンに採用していただけたので、お互いに納得感を持ってスタートすることができました。
長期インターンを経て掴んだ実務と、将来の目標
―――現在の業務内容について教えていただけますか?
今年の5月から勤務を開始し、現在は事務領域のチームに所属しています。ただ一般的な事務作業というよりはかなりテクノロジーに近い内容で、マクロを使った業務効率化やPowerShellを用いた自動化コマンドの作成、各種ツールの権限設定などを行っています。
―――実際に働き始めてみて、大変だと感じる部分はありますか?
約3ヶ月間の長期インターンを経験してから採用されたこともあり、扱うツールやコミュニケーションの形式がインターン時とほぼ同じだったため、大きなギャップや苦労を感じることなくスムーズ業務に入ることができました。
―――今後の目標についてお聞かせください!
まずは現在の時短勤務からフルタイムに移行し、正社員へのステップアップを目指したいです。そして最終的には社内制度を活用して開発エンジニアへの部署異動を果たし、自分の得意な「モノづくり」に直接関わっていくことが大きな目標です。
付録~Kさんについて~
―――ここからは少しプライベートなこともお伺いさせてください。休日はどのように過ごされていますか?
相変わらずモノづくりが好きで、最近はNAS(ネットワーク対応ストレージ)を購入して設定を変更してみたり、自分の日常の課題を解決する自作アプリを開発したりしています。
私自身、アラームの設定忘れやスマホの充電忘れがよくあるんです。充電切れでアラームが鳴らないと困るので、複数の端末間でアラーム設定を同期して、1台の充電が切れていても別の端末でアラームが鳴るようなシステムを組もうとしています。

また、たまに思い立ったときに旅行へ行きます。旅行先は歴史のある名所(寺社仏閣、有名な地形・景色など)に行くことが多いです。
最近も、同期入社した仲間と一緒にプチ旅行へ行きました。

―――同期の方と旅行に行ける関係性はとても素敵ですね。
とても気心の知れる仲になれて嬉しかったです。Kaienで培ったスキルや管理手法を土台に、これからも仕事とプライベートの双方を充実させていきたいと思っています。
ご自身の特性や得意・不得意を冷静に分析し、戦略的に就職活動へ臨まれたKさん。Kaienでの学びを存分に活かし、現場でも即戦力として信頼を得られている姿が印象的でした。これからのエンジニアとしての更なるご活躍を応援しております!
またはお気に入りの場合は
いいねをクリック!
人気の記事はこちら
-
2026.3.3自己分析から見つけた私だけの仕事の処方箋
「昔から、周りの人が当たり前にできていることが、自分にはどうしてもできない……」。そんな違和感を抱えながら過ごしてきた今回の主人公。新卒での就職、そして早期離職を経て、再び「働くこと」に向き合うためにKaienの門を叩き […]
-
2024.12.26自己分析が、自分を知るきっかけに!Oさんが“第一希望の会社”に就職できた理由
▪年齢:40代後半▪診断名:ASD▪仕事における苦手なこと:臨機応変な対応、口頭指示、同時並行で作業を行う▪就職:専門職(IT・障害枠) 仕事で出会ったお子さんが、幼少期の自分と重なった ―――幼い頃はどんなお子さんでし […]
-
2025.11.10生活訓練で引きこもりから脱却。自分への信頼を取り戻したHさん
▪年齢:30代後半▪診断名:ASD・双極性障害(疑い)▪苦手なこと:生活リズムと睡眠の管理▪出口:Kaienの就労移行支援 気分障害による不眠が離職の原因に ―――幼い頃はどんなお子さんでしたか? 小さい頃は近所の子とケ […]
-
2026.7.24「100か0か」の白黒思考をほどき、自分に合った歩幅で歩み出すまで
働くことが怖くなり、家から出られなくなってしまった時期を経て、Kaienの自立訓練(生活訓練)から一歩を踏み出したKさん。かつては「正社員でなければ意味がない」という白黒思考に苦しんでいた彼女が、どのようにして自分に合っ […]
-
2025.11.10Kaienでの学びが導いた「自分らしく働ける場所」ーMさんが理想の職場を見つけるまで
▪年齢:20代後半▪診断名:ADHD、境界知能(IQ70)▪仕事における苦手なこと:マルチタスク、未経験のことを覚えること(時間がかかる)、複雑な説明が理解しにくい、見通しや優先順位付けが苦手▪就職:総務庶務(障害者雇用 […]
-
2026.3.10自立訓練での再出発。「生きるのに必死」だった私が安心できる職場と新たな夢を見つけるまで。
「自分はどこか変かもしれない」。幼少期から抱えていた違和感は、大人になり、社会の壁にぶつかる中で確信へと変わりました。一度はデザインの世界でプロとして歩み始めたものの、特性との折り合いがつかず、メンタルを崩してしまったH […]
まずはお気軽に
見学・個別相談会に
来てみませんか?
当社サービスの説明、事業所見学、個別相談を行っています。全体で約1時間。参加は無料です。
日によっては当日体験も可能。ご家族、支援者の方の同席もできます。ぜひお気軽にご来所ください。
