4回の転職を乗り越えて。自己理解とスキル向上で掴んだ長期就労への道

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「周囲の『当たり前』ができない……」そんなプレッシャーに長年悩み、4度の転職を繰り返してきたKさん。限界を感じて一歩を踏み出した就労移行支援事業所Kaienで、自身の障害特性の理解と新しいスキルの獲得に挑戦しました。今回は、自己理解を深める訓練やAIを活用した業務効率化、そして納得のいく就職活動を経て上場企業への内定を勝ち取るまでの道のりについて、じっくりとお話を伺いました。

(転居直後に行った神戸のハーバーランドでのお写真。偶然知り合ったカメラマンに撮ってもらったそうです)

▼Kさんの簡単なプロフィール


  • 年齢:20代
  • 性別:女性
  • 診断名:ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、社交不安障害
  • 苦手なこと:スケジュール管理、ワーキングメモリの低さ(口頭や抽象的な指示の理解)、メンタルのコントロール(過度な落ち込み)
  • 就職先:アパレル小売企業(EC事業室、障害者雇用)
  • 利用サービス:就労移行支援


周囲に馴染めず、スケジュールや人間関係に葛藤した学生時代

―――まずは幼少期から学生時代を振り返って、どのようなお子さんだったか教えていただけますか?

幼稚園から高校までを振り返ると、周囲の空気を読むのが苦手で、人との距離感を掴むのが難しい子どもでした。一方的におしゃべりをしてしまって、悪い意味で浮いてしまうことが多かったです。残念ながら友人関係には恵まれず、意地悪を受けることもあり、人間関係で悩むことが多かったです。

――― 人間関係で苦労を重ねられていたのですね。学業面や日常生活はいかがでしたか?

中学までは勉強がよくできて、自習ノートをコツコツ作って学年1位を取ったこともありました。ただ、高校に入ってから徐々に躓くようになったんです。美術部に入って油絵に熱中していたのですが、夜遅くまで作業をして寝坊や遅刻を繰り返してしまったり、授業についていけなくなったりしました。今思えば、その頃からスケジュール管理の難しさなど、ADHD的な特性の兆候が現れていたのかなと感じています。

社会に出て直面した「当たり前ができない」プレッシャーとメンタルの限界

――― 大学卒業後はデザインの道に進まれたのですね。社会人になってからは、どのようなお仕事をされてきたのでしょうか。

公立大学のデザイン科を卒業後、デザイナーとして主に4社を経験しました。大学の広報、広告代理店、SNSマーケティング会社などで印刷媒体、バナー、ロゴのグラフィックデザインに携わってきました。実務を通してデザインスキルを蓄積することはできたのですが、一方で仕事でのプレッシャーや人間関係に常に悩まされていました。

――― お仕事を進める中で、特にどのような点に困難を感じていましたか?

アルバイト時代からレジのミスや作業の遅さで叱られると極度に落ち込んで泣いてしまうことが多く、長続きしませんでした。会社員になってからも、周囲が「当たり前」にできている業務を自分だけがこなせないプレッシャーが常にありました。 また、私は他人の淡々とした話し方や強い態度に過敏に反応して「怒っているのではないか」と深読みしすぎる傾向(社交不安障害の特性)があり、メンタル面で追い詰められやすかったんです。さらにワーキングメモリが低く、口頭での多すぎる情報や曖昧な指示を一度に理解できず、パニックになってしまうこともしばしばありました。

――― その後、病院を受診されたのですね。どのような診断でしたか?

最初はADHDとASDの診断を受けました。ただ、転院して今の主治医になってからは「社交不安障害」の傾向も指摘されました。今の先生は、機械的な投薬だけでなくカウンセリングなど個々の特性に寄り添ったアプローチを提案してくださるので、とても心強く感じています。

4社目の退職、そして「このままではいけない」と駆け込んだKaien

――― Kaienでの訓練を利用しようと決意されたきっかけを教えてください。

4社目の勤務時に人間関係やメンタルの不調が限界に達し、家でパニックになって同居人を泣かせてしまうなど、自分自身をコントロールできなくなってしまったんです。これは本当にまずい、自分の特性をなんとかしなければならないと思い、存在を知っていた就労移行支援の利用を決意しました。

―――何社か検討された中から、Kaienを選んだ理由はどこにあったのでしょうか?

別の事業所にも見学に行きましたが、Kaienは定着支援の実績が高かったこと、そして何より一般事務だけでなくクリエイティブ職などの専門職への就職実績が豊富だったことが決め手でした。また、当事者やご家族を尊重した誠実な対応をしてくださる姿勢に、安心感を持てたのも大きな理由です。

自身のスキルを再発見し、最先端のAIツールも駆使した実践的な訓練

――― 訓練ではどのような目標を掲げて、何に取り組まれましたか?

「障害特性への対処法を身につけること」と「長期就労ができる安定した基盤を作ること」を目標にしました。 実務経験を活かすため「クリエイティブコース」を選択し、ポートフォリオサイトの作成やブログ運営、HTMLやCSSの受講、デザインツール「Figma」の独学に励みました。Kaienのブログ記事執筆では、ただ文章を書くだけでなく、スタッフとのオンラインでの報連相や修正指示のやり取りを経験し、実際の職場に近い環境で働くシミュレーションができました。

――― 訓練の中で、ChatGPTなどのAIツールも積極的に活用されていたそうですね。

はい、特性をカバーするためにあらゆる場面で活用しました。スライド資料の構成案作成や、カウンセリングのボイスメモの要約、メール文章の推敲など、大活躍でした。 さらに、未経験のツールの学習にも時間を割きました。これまでExcelやスプレッドシートの関数に触れる機会が少なかったのですが、ドロップダウンメニューを活用したタスク管理表や、ミスを防ぐ自作チェックリストの作り方を学びました。これにより、自分の作業にかかる時間を見積もり、計画的にタスクを終える段取り力が劇的に改善しました。

――― 素晴らしいですね!ご自身の行動に大きな変化を実感されたのではないですか?

そうですね。以前は極度に落ち込んだり、逆に「何もかも環境や他人のせい」にして心を閉ざしてしまう時期もありましたが、訓練やグループワークを通じて「客観的に出来事を見つめ直し、自分の課題に主体的にアプローチする姿勢」が身につきました。同居人からも「以前に比べて物事を客観的に捉え、自己改善しようとする意識が高くなったね」と言ってもらえました。

自分の言葉で正直に向き合った就職活動。譲れない「安定」を最優先に

(夙川(兵庫)でお花見をした時の一枚)

――― 素晴らしい変化ですね。本格的な就職活動はいつ頃から始められたのでしょうか。

引っ越しなどの生活環境が落ち着いた、今年(2026年)の1月から2月頃にかけて本格的にスタートしました。就職活動の軸として、私は「大手企業や上場企業で、障害者雇用のサポート体制や定着実績が充実していること」を最優先に据えました。2つ目を「自分のクリエイティブなスキルが活かせること」とし、給与や勤務地については優先度を下げました。

――― 就職活動の中で、苦労された点は何でしたか?

書類選考で落ちたときに、過剰に「もうどこにも受からないのではないか」と深く落ち込んでしまうマインドのコントロールが難しかったです。また、転職回数が多いので、面接や書類で話す「退職理由」の作成に心理的な負担を感じていました。 最初はAIで綺麗にまとめようと試みたのですが、それだと自分の言葉ではなく均一的な仕上がりになってしまうんです。そこで一度、退職に至った経緯を正直にノートに全て書き出し、スタッフの方に客観的なアドバイスをいただきながら納得のいく退職理由をブラッシュアップしていきました。

――― 自身の過去から逃げずに、正直に向き合われたのですね。

はい。その結果、本当の自分の言葉で説明ができるようになりました。面接では無理に自分を良く見せようとするのをやめ、「企業と自分の相性をすり合わせる場所」だと捉えて数をこなすうちに、緊張しすぎずに挑めるようになりました。最終的には6社に応募し、障害者雇用のノウハウがしっかりと整った上場企業のEC事業室から、嬉しい内定をいただくことができました。

新しいステージ、そして未来への展望

――― 見事内定を掴み取られました。今後の目標について教えていただけますか?

久しぶりの社会復帰なので、最初はとても緊張や不安もあります。ですので、まずは焦らず、指示された業務を確実に遂行することを目指します。こまめな報連相や体調記録など、訓練で培った自己管理やセルフケアを徹底して、何より「長期にわたって健康的に働き続けること」を第一の目標にします。

――― 将来の夢や展望はありますか?

業務に慣れて長年安定して働けるようになったら、自分がそうであったように、長引く生きづらさや発達障害を抱えている方々の力になりたいと考えています。デザインのスキルや私自身の体験談、移行支援での学びを還元する形で、何らかの障害者支援のお仕事に関われたら素敵だなと思っています。

――― Kさんの温かい志が、いつか次の誰かの道標になることを確信しています。本日は貴重なお話をありがとうございました!

付録~Kさんについて~

(Kさん手作りのお弁当。夙川(兵庫)に花見へ行くために作られたそうです)

――― さて、ここからは少しプライベートなお話も伺いたいと思います。休日はどのように過ごされているのですか?

休日はもっぱら家事ですね。同居人が金銭管理、私が家事全般を担当しているので、最近は料理のレパートリーを増やすことにハマっています。この前は「ハンバーグが美味しい!」と喜んでもらえました。

――― ご自身で作った料理をおいしく食べてもらえるのは嬉しいですね!他に何か趣味がありますか?

実はかなりの温泉好きなんです。お湯に浸かるだけで、メンタルの安定だけでなく、健康や美容にも良い影響をダイレクトに感じるので、セルフケアの一環としても楽しんでいます。最近も鎌倉や箱根、草津などへ日帰りや宿泊で温泉旅行に行きました。今は大阪の鶴橋の近くにある気になっている温泉施設にいつか行ってみたいと狙っています。

――― 温泉でのデジタルデトックスは最高のリフレッシュですね。

あとは外食も大好きで、特においしいラーメン屋さんをレビューサイトで検索して巡るのが好きなんです。最近嬉しかったのは、西宮北口にある野菜ビストロで新鮮なランチを食べたことです。生でも甘くて、味付けをしなくても食べられるほどのお野菜で、すごく満たされました。

――― 素敵ですね!普段はどんなお食事が多いですか?

コース料理をゆっくり楽しむこともあれば、「やよい軒」で焼き魚定食を食べて『体に染みるなあ』と噛み締めたり、先週末はデリバリーピザを豪快に食べたり、かなり自由です(笑)。でも、自分の好みに合わせて「美味しくご飯を食べられていること」自体が、今の自分の健康や心のバロメーターになっている気がします。

――― 美味しいものを笑顔で食べられるのは、最大の健康の証ですね。新生活でも、美味しい食事と温泉でエネルギーをたっぷりチャージしながら、Kさんらしく一歩ずつ進んでいってくださいね!応援しています!

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