
周囲に気を張り巡らせ、休む間もなく走り抜けてきた福祉業界での日々。今回は、過負荷から休職を経験されたEさんの再出発のストーリーをお届けします。Kaienのリワークプログラムを通じた心理検査や、AI・スタッフとの対話による客観的な自己理解のプロセス、そして新たな一歩を踏み出すまでの軌跡を伺いました。
▼Eさんの簡単なプロフィール
- 年齢:40代
- 利用サービス:リワーク
- 診断名・特性:発達障害傾向
- 苦手なこと:曖昧な課題の処理、キャパシティ管理
- 前職:福祉職
- 新しい就職先:福祉事業所のサービス管理責任者
自分の世界に没頭した幼少期と周囲とのマイペースな違い
――― まずはEさんの幼少期について伺わせてください。幼い頃はどのようなお子さんでしたか?
すごく内弁慶でした。家ではすごく喋るのですが、外では人見知りが激しくて全然話さない子でした。一人遊びに没頭するタイプで、工作をしたり、興味本位で実験のようなことをしてみたり、一人で山に登ったりしていました。一人の世界に入り込んでしまうと、周りが全く見えなくなってしまう子どもでした。
――― ご自身で「周りとちょっと違うな」と感じるようなエピソードはありましたか?
とにかくマイペースでした。周囲に合わせることが苦手でよく注意されていました。例えば、学校でみんなで「いただきます」の挨拶をする前に給食を食べ始めてしまったり。あと、ランドセルを重く感じてしまって1年しか使わず、2年生からは普通のリュックや手提げ袋で通学していました。周りからは「なんで?」という目で見られて浮いていたと思います。ただ、親は私の個性をそのまま尊重して自由にさせてくれていました。家族が自分を一番に理解して味方でいてくれたのは、とても心強かったですね。
福祉の現場で駆け抜けた日々と限界を超えていた自分の体調
――― その後、大学からお仕事に至るまでの経緯を教えてください。
大学は芸術系に進んだのですが、就職はあまり考えておらず2年で中退しました。その後、事務職員として働き始め、結婚や出産、育休を経て退職しました。29歳くらいのときにシングルマザーになったので、そこからは子育てと仕事を両立させるために必死で、自分のことを振り返る余裕なんて全くありませんでした。子どもが中学生、高校生くらいになったタイミングで、「これからの自分のキャリアをしっかり考えたい」と思い、福祉業界に飛び込みました。そこで約7年間働きました。
――― 7年間現場で頑張られていた中で、休職に至った背景にはどのような事情があったのでしょうか?
一言で言えば、自分に負荷を詰め込み過ぎてしまっていたんです。今までの調子で頼まれた業務をすべて引き受けてしまっていました。当時はそれがしんどいとも思っていなくて、むしろやり切った満足感すら感じていました。でも、蓄積された疲労やストレスで心身のバランスを崩してしまい、結局療養のために退職・休職せざるを得なくなってしまったんです。
離職を繰り返さないために開けたKaienリワークの扉
――― 休職された後、Kaienのリワークを利用しようと思ったきっかけは何だったのですか?
当事者の方が色々な事業所を見学するYouTube動画を見ていた時に、Kaienの存在は知っていました。ただ、本格的に調べ始めたのは休職してからです。その時に初めて「リワーク」という仕組みがあることを知りました。
――― 単なる就労支援ではなく、リワークプログラムに惹かれた理由は何だったのでしょうか?
ただ次の就職先を探すのではなく、「離職を繰り返さない」というキーワードに惹かれました。自分自身の「走りすぎて壊れてしまうパターン」の解決法が見えないまま再就職しても、また同じようにしんどくなってしまうという不安があったんです。「一回ここで自分を根本から見つめ直そう」と決意して、今年(2026年)の1月中旬から正式にKaienのリワークを利用し始めました。
AIとの壁打ちとスタッフとの対話で気づいた「人に頼る」大切さ
――― Kaienに入られてからは、どのようなプログラムや取り組みを行いましたか?
体験利用の時期から「自分史作成」に取り組み、自分のこれまでを振り返りながら得意・不得意や好き嫌いを整理していきました。また、そこで「AIを使ったメンタルケア」や壁打ちを自分なりに始めてみました。
――― AIをメンタルケアや自己理解に活用するというのは面白いですね。具体的にどのように使われたのですか?
私は感情に乏しく、「できることは何でもやる」というタイプだったので、自分の好き嫌いや体調の波を掴むのがすごく難しかったんです。そこで、職場で起こった出来事や自分の状態をAIに入力して、客観的に掘り下げてもらいました。最初は専門用語ばかり返ってきて戸惑うこともありましたが、自分の思考の癖や負荷の原因を知るヒントになりました。
――― AIを活用しながら順調に回復に向かわれたのでしょうか?
実は、最初の3ヶ月くらいは順調ではありませんでした。グループワークに参加しても、「以前の自分」のように気を張ってしまい、「何か良いコメントをしなきゃ」「お節介と思われるくらい周りをフォローしなきゃ」と100%の力で臨んでしまったんです。その結果、終わった後にものすごい疲労感に襲われ、一人で「あの発言は良かったのだろうか」と一人反省会を始めてしまって…。AIに相談しても「そういう考え方もありますね」という一般的な回答にとどまり、モヤモヤから抜け出せませんでした。
――― その状況を打ち破ったきっかけは何だったのでしょうか?
スタッフさんに「ちょっとしたモヤモヤを聞いてもらっていいですか?」と、不満や不安を思い切って吐き出してみました。人に相談し、話を深掘りしてもらうことで、初めてスッと胸が軽くなったんです。AIは言語化やヒントの整理には役立ちますが、やっぱりリアルな人との対話や体感を通してしか得られない安心感や気づきがあるんだなと実感しました。
多様な視点と心理検査が教えてくれた「本当の自分」と「対処法」
――― スタッフ以外にも利用者同士の対話の機会も多くあったと思います。どのような気づきが得られましたか?
グループワークや自助会で他の利用者の方々と話す中で、「考え方の幅」の広さに驚きました。私はこれまで「失敗=ダメなこと」ではなく「経験」だと捉える合理的なマインドでやってきましたが、世の中には色々な考え方を持つ人がいて、その時々の自分を守るために必死なんだということに気づけたんです。「正解・不正解はない」ということが腑に落ちて、自分自身に対しても少し優しくなれました。
――― コミュニケーションの面でも大きな変化があったそうですね。
以前の私は、自分が正しいと思う意見を一方的に相手に伝えるだけで、それを「コミュニケーション」だと思い込んでいたんです。ある自助会で「職場での上司とのやりとり」についての話題になったとき、ある利用者さんから「それは相互のコミュニケーションになっていた?」と問いかけられてハッとしました。アサーション(相手も自分も尊重する表現)を学ぶ中で、相手の認識や背景を汲み取ることの大切さに気づき、正しさを押し付けるのではなく歩み寄る姿勢が身につきました。
――― その他、自己理解に繋がったことはありましたか?
はい、Kaienで受けられる心理検査を受けたことも自分を理解する機会となりました。自分の脳の構造や特性にすごく納得できました。私は、答えが一つに決まっていない曖昧な課題や目に見えない人の感情を推し量ることがすごくストレスになるタイプだったと気づきました。また、入ってくる情報をすべて片っ端から処理しようとして頭の中がオーバーフローしていたことも分かりました。
――― 自分の特性が分かってから、どのような対策を取られたのですか?
頭の中だけでスケジュールやタスクを管理するのをやめて、「ジャーナリング(ノートに思考や予定を書き出すこと)」を本格的に始めました。視覚化することで頭が整理され、ケアレスミスが激減したんです。生活リズムが整って夜もぐっすり眠れるようになり、「このセルフケアのサイクルができているなら、また仕事ができる」という手応えを得ることができました。
自分の希望と向き合い、新たなキャリアへ
――― そこから就職活動へと移っていくわけですが、元いた職場への復職ではなく「転職」を選ばれたのはなぜですか?
私はルールや体制がしっかりしている環境の方が力を発揮できるタイプだと気づいたからです。「会社の求めている人物像」と「自分が成長できる環境」を客観的に照らし合わせた結果、別の環境で挑戦したいと思い転職を決めました。
――― 就職活動はどのように進められましたか?
最初は事務職にするか福祉職にするかも決められず迷っていました。職業訓練をしてくれる上司役の講師に相談した際、「福祉の事務や管理という選択肢もあるのでは?」と助言をいただき、視野が広がりました。無理に自分を良く見せるのではなく、等身大の自分に合った求人を探しました。
いきなり面接を受けるのは不安があったので、まずはカジュアルな会社見学からスタートし、どのような動き方を求められるのかをしっかり確認できたのが良かったです。結果、福祉事業所の「サービス管理責任者」というポジションで内定をいただき、受諾しました。自分の役割が明確な環境を選ぶことができました。
――― 新しい職場での意気込みや今後の目標をお聞かせください!
サービス管理責任者としての実務は未経験なので、まずはそのポジションにしっかりチャレンジすることが目標です。以前から「現場スタッフ間を調整する役割」に興味がありました。会社の方針と現場の苦労の間に立って良好な人間関係や業務のバランスを整える役になりたいと思っています。自分が身につけた対処法やコミュニケーションを活かしていきたいです。
――― これからリワークの利用を検討している方へメッセージをお願いします。
自分の特性や希望を整理する上で、AIなどのテクノロジーを使って求人票や自己分析を整理するのはすごくおすすめです。そして何より、一人で抱え込まずに信頼できるスタッフや周囲の人に「ちょっとしたモヤモヤ」を話してみてください。誰かと一緒に自分を紐解いていくことで、きっと新しい可能性や自分に合った働き方が見つかるはずです。
付録~Eさんについて~
――― ここからは、少しプライベートな話題について伺いたいと思います! Eさんは休日やプライベートではどのようなことをして過ごされていますか?
ものづくりが好きで、DIYや手芸全般をやっています。材料がたくさん家にあって、休日は何かしら手を使って作っていますね。

写真を撮ることも好きです。自転車で遠出して、山の中を散歩したりもします。新しいことに挑戦するのも好きで、やったことがないことでも「とりあえずやってみたらできる」と思うタイプです。最近は「自分ができない感覚」を知りたくて、音楽教室に通い始めました。

――― 最近嬉しかったことや楽しかった出来事はありますか?
ジャーナリングなどで生活に余裕が出てきたので、家族サービスをする時間が増えたことです。近所に住んでいる姉の家族やいとこの家族と、デイキャンプやバーベキューを企画して楽しんでいます。子どもたちもたくさんいるので賑やかですし、心からリフレッシュできる最高の時間ですね!

――― 充実したプライベートのお話までお聞かせいただき、ありがとうございました。Eさんの新しい職場でのご活躍を心より応援しております!
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