本記事は、Kaien公式YouTubeにて、Kaien代表取締役:鈴木慶太が毎週配信しているライブ配信番組「お悩み解決ルーム」2026年4月2日配信分より再構成したニュース記事です。

元NHKアナウンサー。自身の長男が発達障害の診断を受けたことをきっかけに、米国留学(MBA取得)を経て株式会社Kaienを設立。 「数的な凸凹があっても、強みを活かして働ける社会」を目指し、大人向けの就労支援から子ども向けの学習支援(TEENS)まで幅広く事業を展開している。 経営者として、また一人の親としての視点を交えた発信は、多くの当事者・家族から支持を得ている。
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記事の概要
先日、精神・発達障害の当事者団体が実施したアンケート結果が報じられました。それによると、自身の特性を職場に明かさずに働くクローズ就労を経験した人が6割を超えたといいます。社会全体で障害者雇用の枠組みが広がっている一方で、依然として多くの方が一般枠での就労を選択している現状が浮き彫りになりました。
しかし、現場で日々多くの方のキャリア支援に携わっている立場からすると、この数字は驚きというよりも、むしろ実態を過小評価しているのではないかとさえ感じます。今回はこのニュースを入り口に、現代の就労事情に起きている本質的な変化を読み解きます。
【制度の背景】データから見る「クローズ」という必然
今回のアンケートは26都道府県の181人を対象としたものですが、よりマクロな視点でファクトを整理してみましょう。
現在、精神障害者保健福祉手帳の所持者は全国で約150万人にのぼります。一方、障害者雇用枠で働いている精神障害・発達障害の方は20万人から30万人程度と推計されます。つまり、手帳を所持していても障害者雇用枠を利用していない、あるいは診断があっても手帳を持たずに一般枠で働いている人は、統計上、圧倒的多数を占めているのです。
当社の実感値では、クローズ就労の経験者は8割から9割に達していてもおかしくありません。制度上の障害者雇用枠はあくまで全体の受け皿の一部に過ぎず、実社会では障害というラベルを貼らずに、工夫と忍耐でキャリアを繋いでいる層が巨大な山を形成しているのが現実です。
【現場のリアルと懸念】二択の壁が生むリスク
現場で懸念されるのは、当事者がオープンかクローズかという二者択一の決断を迫られ、その中間にある支援にアクセスしづらい状況です。
クローズ就労には、配慮を受けられないことによる短期離職や二次障害の悪化というリスクが常に付きまといます。反対に、オープン就労(障害者雇用枠)を選ぼうとすると、今度は求人の職種が限定されたり、給与水準が下がったりするという「キャリアの天井」に突き当たることが少なくありません。
この、いわばゼロか百かの選択を強いる構造が、当事者のキャリアを不安定にさせています。企業側も、障害者雇用枠の管理には熱心であっても、一般枠で働く「少し配慮が必要な社員」への対応については、まだ十分な知見を持っていないケースが散見されます。
【代表の視点・哲学】支援は「グラデーション」へ向かう
私は、今後の就労支援はもっと滑らかで、グラデーションのような形に進化していくべきだと考えています。
注目すべきは、近年の法改正によって企業の努力義務となった治療と仕事の両立支援という動きです。これは、がんや難病、そして精神疾患などを抱える社員が、治療を続けながら働ける環境を整えることを求めるものです。
ここに、発達障害の特性を抱える方のキャリアのヒントがあります。
- 健康管理としての配慮: 障害者手帳の有無にかかわらず、企業の安全配慮義務として環境を調整する。
- 合理的配慮の一般化: 診断名ではなく、仕事上の困りごと(指示の出し方や音環境の調整など)に焦点を当てる。
このように、制度の名称に縛られるのではなく、個人の状態に合わせて支援の濃度を変えていく考え方が主流になるでしょう。企業も「障害者だから雇う」のではなく、「戦力として活用するために必要な環境を整える」という、より経済合理性に適った視点を持つことが求められています。
おわりに
制度やニュースの数字に一喜一憂する必要はありません。大切なのは、社会がどう変わろうとも、あなた自身が「自分にとっての持続可能な働き方」を知っておくことです。
もし今、あなたがクローズ就労で限界を感じていたり、就職活動の方向性に迷っていたりするなら、まずは以下の具体的なアクションを起こしてみてください。
- 自分の配慮事項を言語化しておく: 診断名ではなく、どのような環境なら集中でき、どのような指示ならミスが減るのかを整理しましょう。
- 新しい支援制度を確認する: 障害者雇用だけでなく、治療と仕事の両立支援や、自治体の就労支援窓口で使える「一般枠向けのサポート」を調べてみてください。
- 専門機関をセカンドオピニオンにする: 支援者の中には、クローズ就労を否定する人もいれば、逆に無理を強いる人もいます。複数の視点を持つ支援機関(Kaienを含む)に相談し、自分に合った「支援の濃度」を見極めてください。
社会の制度は常に後追いです。制度の矛盾に翻弄される前に、自らの特性をマネジメントする知恵を一緒に蓄えていきましょう。

