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大学生の発達障害学生生活・就職活動での困り感とその対応法をまとめました大学就活

  (独)日本学生支援機構による平成27年度の調査では障害のある学生の占める割合は0.68%。発達障害のある学生は急増し、病弱・虚弱の6,462人、精神障害の5,889人に次ぐ3番目の多さで3,442人。それでも発達障害の学生約1,000人に一人(0.1%程度)というのが公式の発表です。

 ただ大学の現場で話を聞くと、その10倍の1%は確実におり、大学によっては10%に迫るほどではないかという人もいます。大学全入時代でお金があり希望さえすれば、どんな学生でも進学し、その多くが卒業できる時代に、発達障害の傾向がある大学生はどのように大学の4年(または専門学校や大学院の2年)を使っていけばよいのか。発達障害(含・疑い)のある大学生・専門学校生向けのガクプロでの支援経験をもとに考えます。

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インデックス

大学・学部選びのポイント

 大学が発達障害の受け入れを積極的にしていると公表するのは稀であることと、体制が整っていることがそれぞれの学生にとってふさわしい環境だったり、必要な支援を受けられたりではないため、支援が充実している大学に入れようと親が頑張りすぎるのは考え物でしょう。

 むしろ体制よりもきちんとした「かかりつけの担当者」を大学内に一人でも二人でも探せるかが大きな部分です。障害のある学生への合理的配慮が国公立大学は義務化されており、私立大学でも努力義務となっていますが、まだまだ組織としてよりも個人として意欲・情熱をもって動いてくれる支援者によって大学生活の充実度が変わるのが実際です。

 あえていくつか発達障害の人にふさわしい大学・学部を上げると以下のようになります。▽マンモス大学よりも小規模大学、▽女子大学は概ね手厚い、▽卒論がない学部・学科が良い、▽出席点への加算が高い大学が良い、▽本人のこだわりがある学部に行ったほうが良い(※親が将来を見越して本人の興味はない学部などは難しい)などと大きな傾向はあります。

 また、特に精神的にやや落ち込みやすいタイプについては、▽学力的に余裕がある大学・学部を選んだほうが良いでしょう。以下で触れるようにただでさえ、レポートや実験など発達障害の学生にとって困難な壁が多いのが大学・大学院です。このためぎりぎりの学力レベルですと周りの学生への引け目を感じやすい可能性があり、そもそも大学を卒業できないことも多いからです。

【参考】発達障害のお子さんへ お勧めする大学とは?

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入学前にどの程度、障害・特性を伝えるか?

 今のところ入試で発達障害であるということを理由に大きな配慮が得られる例は少数です。高校時代に別室での受験を許可されていた、時間の延長を許可されていた、などの”実績”がないと、センター試験の配慮をはじめ、各大学での配慮を得られることは稀なようです。

 一方で大学入試前の相談会などで、障害や診断があることを伝えたことで、合否で不利益を受けたという例もほとんど聞きません。例えば対人恐怖が強く実習などの要件が入学後に達するのが難しい医学部や看護学部などで特性を理由に入学の可否を検討してもよいかというのは専門家でも意見が複数出るところかもしれませんが、ほとんどの場合では入学前の相談で障害特性について確認する程度になるでしょう。

 相談が必要なのは合格が決まった後です。発達障害の専門のセンターが設けられている大学は一部の総合大学や障害学生支援に熱心な数えるほどの大学に限られますが、高校までの保健室的な役割を果たすことも多い「学生相談室」などに入学前に個別相談を申し入れるとよいでしょう。合格が決まった2・3月は担当の先生が休みの可能性もありますが、大学の職員としては余裕のある時期です。この時期にしっかりとご本人の特性の説明、相談の方法やタイミングを取り決めておくとよいと思います。

履修の注意点

 履修で躓く大学生があまりにも多くいます。多くの新入生にとっても、高校と大きく異なるのが履修登録です。必修はきちんととれているのか、必修以外の”選択必修”など大学ごとに名前や概念の異なるルールを理解しているのか。取得しやすい授業をある程度織り交ぜられているのか。曜日や時間が重なっている(つまり履修がそもそもできない)授業を重なって取ろうとしていないか。様々な難しさについて時間があればご家族が確認してあげるのが良いと思います。もちろん1年後期、2年前期と徐々にご本人に任せてよいと思いますが、履修登録を忘れたなどの理由で半年、1年を棒に振る学生を数多く見ていますので、念には念を入れるのが良いと思います。

 またお家でのサポートが難しい場合は、先の学生相談室や、今は各大学に設置されているラーニングセンターティーチング・アシスタント(TA)、あるいは教官が直接教えてくれるオフィス・アワーなどの制度を確実に使えるようにしましょう。問題が起こる前から定期的に相談をする癖をつけておけると安心できます。

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学業では「出席」「レポート」「実験」が鍵

 履修をきちんとできたとしても、今度は出席レポート実験という関門が立ちふさがります。特に出席は一人暮らしをしている学生は朝きちんと起きることが難しく、単位を落としがちです。できれば一人暮らしは避けたほうが良いですが、一人暮らしをさせざるを得ないときは「留年をしても仕方ない」と親がある程度覚悟を決める必要があるでしょう。

 そもそも若者はなかなか規則的に生活できないものです。特に発達障害の傾向があるとその困難性は高まります。特に大学では長期休暇が長く、かつ空きコマなど1日の中でも自由すぎる時間が多いため、予定が詰まっていないと上手に時間を過ごせない特性があると、授業にしっかり出席するという当たり前の行為が難しくなります。(ほかの”定型発達”の学生はそのあたり友人のノートを借りたり、適当に試験の出題の部分を見当をつけて乗り切れますが、発達障害の傾向が強いとなかなか要領よくやり過ごせません。)

 対策としては繰り返しになりますが一人暮らしは避ける、一限の授業を極力避ける、などの方法のほか、ご本人が積極的に生活リズムを整えたくなるような何らかのインセンティブ、ご褒美を作っていく必要があるでしょう。大学生にまでなって、と思われるかもしれませんが、背に腹は代えられません。

 レポートは多くの学生が難しさを感じるようです。高校までの勉強と違って、自分で問いを立ててそれにこたえるという方式がレポートです。考えを文章でまとめることが苦手なタイプの人には、無数にある話題から何を選べばよいか、またそれなりに文字数を埋めて書くというところが、周囲からは見当もつかないほど苦痛を伴う作業になりえます。そもそも読書感想文で多くの発達障害のあるお子さんは苦労しているでしょうから、親御さんとしても想像に難くないでしょう。

 理系では実験も加わります。実験は複数の学生で行うことが多いため、人間関係の困難さも顔を出すほか、実験では段取りや器用さといったこれまた発達障害の学生が苦手な要素が求められます。

 レポートや実験については、「型がある」ということを気づくことができるまでは、ご本人の隣で細かく見てあげる必要があるでしょう。繰り返しになりますが、ラーニングセンター、TA、オフィスアワーなどを活用していきましょう。

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【参考】大人の発達障害者向けの職業訓練・就活支援
【参考】発達障害(疑い含む)のある大学生・専門学校生向け”ガクプロ”
【参考】見学/相談/利用希望の方は ”ご利用説明会”へ

社会性が高まらない? サークル・アルバイト

 親としてはひょっとしたら学業よりも、サークルやアルバイトで社会性を高めてほしいというのが、願いかもしれません。しかしサークルやアルバイトをできる学生は、発達障害の傾向がある人では少数派といってもよいでしょう。特にアルバイトは面接で不合格になるケースが多めです。このため人が不足していて受かりやすい、短期間で仕事が覚えやすい、学業に影響が与えづらい期間にできる、ものを探すことが良いでしょう。

 例えば次のようなアルバイトは発達障害のある学生にお勧めできます。まずは、郵便局の年末年始のアルバイトがお勧めです。ガクプロに通う学生でも相当数の学生がこの場を”アルバイト・デビュー”の機会にできています。そのほか、長期休暇に日雇いバイトで倉庫業務イベント会場設営警備員誘導員などを行うのもよいでしょう。スーパーの品出し業務なども人手が足りないことが多くねらい目です。一方でファミレスや牛丼店・喫茶店などの飲食業やコンビニなどの同時並行が必要な業務は苦手な業務が満載ですので避けたほうが良いでしょう。

 次にサークルについてです。サークルは入れるものの、なかなか輪の中に入れず、徐々に居心地が悪くなってやめてしまう人が多いのが実際です。できる限り自分の趣味に重なること、中高生の部活と違って顧問の先生がいるわけではないので指示待ちをせずに自分から仕事をもらったり協力したりしていくことが必要かもしれません。アルバイトよりは敷居が低めですが、サークルはアルバイトと違った難易度があります。親としては学外にも居場所を作るように考えておくことも必要でしょう。

就職活動を円滑に進めるために

 発達障害のある大学生の就職活動については当社のガクプロでの支援内容の解説をご確認ください。ポイントとしては、▽一般枠と障害者枠のメリットとデメリットをいつどのようにご本人に伝えるか、▽一般枠を選んだ場合多くのほかの学生とどの程度同じような就活をするか(初めから小規模の企業など”ニッチ”を狙うのか、大企業も受けるのか)、▽理系の場合は自分の専門が生かせる就職先を目指すのかあきらめるべきなのか、▽(秋以降に実際の就活が始まることが多い)障害者枠の場合は春夏をどのように過ごすか、また▽障害者枠の場合は1,2週間の実習があるため就活の速度が遅く同時に受けられる会社が限られるので3月までに内定が決まらない可能性があるが受け入れられるか、などを理解したり事前に話し合っておく必要があるでしょう。

 ただし就活で一番大事なのは3年生までに単位をほぼ取り終わっておくことです。就活・単位・卒論(卒研)と、2つ3つを同時並行で順調にこなせる、発達障害のある学生は稀です。就活に力を入れるためには4年は週に1,2日学校に行けば十分というような体制を整えておく必要があります。この点は強調しすぎておいてしすぎることがないほど多くの学生が困る点ですので、ご家族としては1年のうちから履修や授業への出席、レポートの提出などを気にしておいたほうが良いでしょう。

 頼る機関としてはまず大学の就職課になります。特に今の就活はリクナビ・マイナビに登録しておけば気持ちとしては進んだように感じますが、実際はリクナビ・マイナビのみで内定を得るのは難しいのが実情です。(トップ校の学生を獲得するような媒体であり、必ずしも多くの学生にとってふさわしい媒体ではありません。)一番活用できるのが大学の就職課となります。彼らが持っている求人リストや合同面接会は、発達障害のある学生にも適性のあるものがある可能性が高いですし、大学の職員が求人の表にできづらい情報も含めて勧めてくれるので信頼性が高いからです。

 障害者枠を受ける場合については、残念ながら、大学の就職課はほとんど対応してくれないでしょう。そのときは当社のような支援機関のほか、新卒応援ハローワークを頼るとよいでしょう。まだ全国的ではないかもしれませんが、新卒応援ハローワークは一般枠では地場の企業の求人を、障害者枠では大企業の求人を持ち、発達障害の学生の現状に近い求人情報を持っています。無料で活用できますので、早めにご登録されることをお勧めします。

【参考】大学生向け支援「ガクプロ」の就活支援 一般枠も障害者枠も対応

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合理的配慮を受けるには?

 2016年4月に施行された「障害者差別解消法」によって、合理的配慮が、国立大学では義務、公立・私立大学では努力義務となりました。これまでルールが明確でなかった「このような支援・配慮を学内で受けたい」という要望のプロセスが明確になり、発達障害の学生にとっては学びの機会・権利を生かす大きな追い風となっています。

 ただし合理的配慮は、まずご本人が困り感・変化の必要性を感じることがスタートになります。また、障害のある学生本人が大学側に要求するという自身による権利主張・擁護が原則で、保護者や周囲の人の動きだけでは配慮を求めることにはつながらない恐れがあります。大学に入学する数年前、できれば中高生のころから、保護者や周囲の先生方がご本人に凸凹の存在を正しく前向きに伝え、ご本人が特性を理解し自ら発信する力を育む必要性が高まっています。

【参考】合理的配慮とは 大学編 発達障害のある大学生・院生の入試・学業・就活を合理的配慮の観点から考えます

最後に

 英米では高等教育機関に在籍する障害のある学生は10%を超えているという統計があります。日本の障害学生が全体1%にも満たないことを考えると、まだまだ障害のある学生の受け入れが進んでいない国と言えるでしょう。残念ながら日本において発達障害の学生の卒業率は70%台という低い率で推移しています。2016年から義務化・努力義務化となった大学での合理的配慮を上手に使いながら、親子で充実した学びの時間を作る準備をしていきましょう。

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