就労継続支援B型は、障害や難病のある人が、一般企業での雇用契約のもとで働くことが難しい場合に、就労や生産活動の機会を得られるサービスです。利用を検討している人の中には、どのような仕事ができるのか、実際にどういった人が利用しているのかなど、就労継続支援B型の実態を知りたい人もいるでしょう。
本記事では、就労継続支援B型の概要から、就労継続支援A型や他の就労支援サービスとの違い、利用方法、自分に合った事業所の選び方まで詳しく解説します。2025年10月からスタートする就労選択支援のポイントについても紹介していますので、ぜひご覧ください。
就労継続支援B型とは
就労継続支援B型とは、障害などにより一般企業で雇用契約を結んで働くことが難しい人に対して、働く機会と作業の場を提供する障害福祉サービスです。
利用者は、一般企業で働くために必要な知識やスキルの習得や就労に必要な支援を受けられます。参加できる生産活動の内容は事業所によって異なりますが、軽作業が中心で、利用期間も柔軟に調整しやすい点が特徴です。
就労継続支援B型と就労継続支援A型の違い
就労継続支援B型と就労継続支援A型は、どちらも就労継続を支援するための福祉サービスですが、雇用契約の有無が異なります。A型は就労継続支援事業所と雇用契約を結ぶのに対し、B型は事業所を利用するのに雇用契約は不要です。
そのため、A型では最低賃金が保証される一方で、B型は作業の成果に応じて工賃という形で報酬が支払われます。A型に比べると、B型は報酬が少ない傾向にありますが、症状や体調に合わせて自分のペースで無理なく利用できます。
その点、A型は勤務時間や日数の条件が定められており、ある程度安定して勤務する必要があり、一定の就労能力や体力が求められるでしょう。
就労継続支援A型について、詳しくは下記記事で解説していますのであわせてご覧ください。
就労継続支援B型のメリット
就労継続支援B型のメリットは、自分の体調や症状、障害による困りごとの状況などに応じて無理なく働けることです。A型と違って雇用契約がないため、就労のハードルが低く、体調やメンタルの状態に波がある場合でも比較的利用しやすい傾向があります。
また、事業所での作業内容は、軽作業や自由制作など多岐にわたり、自分の特性や興味に応じて選べる点も特徴です。
加えて、障害に理解のあるスタッフが身近にいる環境で働けるため、安心して継続しやすいというメリットもあります。利用する事業所によって決まりがあるものの、働く時間や日数について相談できる場合が多く、自分のペースで働けるでしょう。
就労継続支援B型の対象者
就労継続支援B型の対象者は、障害や難病のある人で、下記のいずれかに当てはまる人です。
- 企業や就労継続支援A型での就労経験があり、年齢や体力などが理由で一般企業で働くことが困難な人
- 50歳以上の人
- 障害基礎年金1級を受給している人
- 上記の条件に該当しない人で、就労移行支援事業者によるアセスメントにより、就労面に係る課題があると判断された人
なお、特別支援学校の生徒が卒業後すぐに利用したい場合は、在学中に就労アセスメントを受けることが必要です。
就労継続支援B型の利用に障害者手帳は必要?
就労継続支援B型を利用する際に、障害者手帳は必須ではありません。障害者手帳を取得していなくても、障害福祉サービス受給者証があれば利用できる場合があります。
障害者手帳は、障害があると認められた人が取得できる手帳で、都道府県が交付するものです。一方、障害福祉サービス受給者証は、障害福祉サービスを利用するために必要なもので、市区町村が支給します。
障害福祉サービス受給者証について、詳しくは下記記事をご覧ください。
障害福祉サービス受給者証とは?障害者手帳との違いや取得の流れを紹介
就労継続支援B型の作業内容と日数・時間
就労継続支援B型で参加できる生産活動は、A型に比べてより細分化された作業が多く含まれます。具体的な活動内容は事業所によって変わりますが、代表的な作業内容は以下の通りです。
- パンやお菓子などの製造
- 農作業
- ミシン作業や手工芸
- 清掃業務
- 検品や印刷作業
- 袋詰めや封入作業
- シール貼り、値札付け
- 簡単なパソコン入力
- 製品の梱包、発送作業
また、作業する日数や時間については、基本的には事業所の方針や本人の希望によって柔軟に調整可能です。一般的な働き方は1週間あたり20〜25時間ですが、たとえば1日3時間×週3日など自分のペースで無理なく働いている人もたくさんいます。
就労継続支援B型の工賃と利用料
就労継続支援B型事業所では、利用者が行った作業の成果に応じて「工賃」と呼ばれる報酬が支払われます。B型では雇用契約を結ばないため、労働基準法に基づく賃金ではなく、仕事をした分の対価として工賃が支給されます。ここでは、就労継続支援B型の工賃とサービスの利用料について解説します。
就労継続支援B型の平均工賃
就労継続支援B型事業所の2023年度の平均工賃は、23,053円です。2022年度の工賃(17,031 円)と比較すると大幅に増加していますが、これは2024年度の報酬改定にて計算方法が変更されたことが影響しています。
就労継続支援B型の利用料
就労継続支援B型は福祉サービスのため、世帯収入によっては利用料が発生します。前年度の世帯収入に応じた利用料は以下の通りです。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯(注1) | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円(注2)未満)※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く(注3) | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
注1:3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下
注2:収入が概ね670万円以下
注3:所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者で市町村民税課税世帯の場合は「一般2」に該当
利用日数や頻度にかかわらず、負担上限月額を超える利用料が請求されることはありません。ただ、自治体によって料金設定や条件などが異なる場合があるため、詳しくはお住まいの市区町村の窓口に問い合わせてみましょう。
就労継続支援B型の利用期間
就労継続支援B型には、利用期限の制限は設けられていません。利用者の状況や達成したいゴールに応じて、ゆっくりと時間をかけながら継続的に支援を受けられます。
体調が安定しない人や、就職よりも生活リズムの安定や居場所づくりを重視したい人も長期的に利用しやすいでしょう。
また、将来的には就労継続支援A型や一般就労を目指したい人も、段階的なステップアップが可能です。支援内容は定期的に見直されるため、状況や希望の変化に応じて柔軟な支援を受けられます。
就労継続支援B型とその他の就労支援サービスの違い
就労継続支援B型や就労継続支援A型の他にも、さまざまな就労支援サービスがあります。ここでは、就労継続支援B型と他の就労支援サービスの違いについて解説します。
就労移行支援との違い
就労移行支援とは、障害や難病のある人が一般企業への就職を目指すための支援サービスです。就労に必要な知識・スキルの習得や自己分析、履歴書の作成指導、面接対策といった就労準備に関するサービスを提供します。
就労継続支援B型が、働く場所を提供しているのに対し、就労移行支援は一般企業での就労に必要な訓練を行う場所である点が異なります。また、就労継続支援B型には利用期限はありませんが、就労移行支援は原則として2年以内の利用に限られます。
就労定着支援との違い
就労定着支援とは、一般企業などに就職した人が長く働くための支援サービスです。職場での人間関係や体調の悩み、生活面の不安などへ対応するために、定期的な相談やアドバイスが受けられます。
就労定着支援は原則として就職してから6ヶ月を経過した人が利用対象で、利用期限は最長3年に設定されています。
就労継続支援B型が、一般企業での雇用や就労が困難な方を対象としているのに対し、就労定着支援は一般企業などに就労・復職した方が対象となります。
自立訓練(生活訓練)との違い
自立訓練(生活訓練)とは、日常生活に必要なスキルを習得することを目的とした福祉サービスです。掃除や整理整頓、料理、買い物、対人コミュニケーションなどのトレーニングなどが中心で、就労前の土台づくりに該当します。
就労継続支援B型が、就労の機会を提供するのに対し、自立訓練(生活訓練)は生活リズムを身につけたり、お金の管理方法を学んだりするなど生活力を習得することを目的としています。
2025年10月から始まる「就労選択支援」とは
就労選択支援とは、障害のある人が自分に合った働き方や就労支援サービスを選べるようサポートする制度です。本人の自己決定を重視した、納得感のある進路選びのサポートを目的とし、就労に関する適性や能力の評価、希望や意向の整理などを通して進路選択を支援します。
2025年10月より、まずは就労継続支援B型の新規利用を希望する人を対象としてスタートし、その後就労継続支援A型や就労移行支援を希望する一部の人にも対象範囲が拡大する予定です。
就労継続支援B型から一般就労へのステップアップは可能?
就労継続支援B型の利用後に就労継続支援A型や就労移行支援、一般企業への就職を目指すケースも見られます。就労継続支援B型の利用者でも、体調が安定し、スキルや働く意欲など就労の準備が整ってきた場合には、一般就労へのステップアップも可能です。
就労系障害福祉サービスの利用終了者のうち、一般就労へ移行した人の割合(2023年)は以下の通りです。
- 就労継続支援B型:11.2%
- 就労継続支援A型:26.9%
- 就労移行支援:58.8%
就労継続支援B型から一般就労は可能ではあるものの、数値としてはあまり高くないのが実情です。一般就労を目指す場合は、焦らず自分のペースで次のステップに進むために、今後の計画について事業所スタッフや専門員と相談することが大切です。
また、就労移行支援を利用するなど、より一般就労に直結したサービスの利用も検討してみましょう。
出典:厚生労働省「就労支援施策の対象となる障害者数/地域の流れ」
就労継続支援B型の利用の流れ
就労継続支援B型を利用する際には、いくつかの手順を踏む必要があります。ここでは、就労継続支援B型の利用方法を、4つのステップに分けて解説します。
主治医へ相談する
まずは主治医に就労継続支援B型の利用について相談しておきましょう。体調やメンタルの状況などを踏まえて、就労継続支援B型の利用が適切かどうか判断を仰いでおくと安心です。
また、後のステップでも紹介しますが、利用申請を自治体の窓口で行う際に、医師の意見書が必要になる場合もあります。B型を利用したい旨を事前に伝えておくと、今後の手続きがスムーズになるでしょう。
事業所を探す
就労継続支援B型の事業所を探す方法として、インターネット検索で近隣の事業所を探す他に、住んでいる市区町村の障害福祉窓口で紹介してもらう方法などがあります。また、地域の相談支援事業所に相談すると、自分の希望や現状に合った事業所を教えてもらえる可能性もあります。
気になる事業所が見つかったら、事前に問い合わせてみましょう。見学や体験を実施している場合は、現場の雰囲気や通いやすさを把握できるため、実際に足を運ぶことをおすすめします。なお、就労継続支援B型は定員が決まっており、空きがないなどの理由で利用できない可能性もあるため、事前に事業所に確認しておくと安心です。
自治体の窓口で手続きを行う
利用したい事業所が決まったら、市区町村の福祉課などの窓口で障害福祉サービス利用申請をします。利用にあたって「サービス等利用計画案」という書類を求められる場合があります。
サービス等利用計画案を自身で作成することが難しい場合、専門の相談支援員に依頼することも可能です。その場合、利用者側に費用負担はありません。
また、医師の意見書が必要なケースもあります。自治体によって提出書類は異なるため、事前に窓口へ確認するとともに、申請にかかる時間を考慮して早めに準備を始めると良いでしょう。
受給者証が発行されたら利用を開始する
利用申請を行い、面談や書類審査を経て障害福祉サービスの利用が認められたら、自治体より「障害福祉サービス受給者証」が支給されます。受給者証を受け取り、利用する事業所と契約を結んで、就労継続支援B型の利用が開始となります。
最初は、週に1〜2日の通所から始めて、慣れてきたら徐々に日数や時間を増やすなど、自分に合った働き方を見つけていくことが大切です。
自分にあった事業所を選ぶポイント
就労継続支援B型事業所を探す際には、自分の状況や希望に合った事業所を見つけることが重要です。ここでは、事業所選びのポイントについて紹介します。
事業所での作業内容
就労継続支援B型事業所の作業内容は、事業所によってさまざまです。例えば、お菓子作りや検品といった軽作業からパソコンを使うデスクワーク、清掃業務や農作業のように体を動かす作業まで幅広く提供されています。
また、働き方も多岐にわたり、事業所内で作業するケースの他、企業への出向や在宅勤務が選べる場合もあります。作業内容や働き方が合わないと、継続的に通うことが困難になる可能性があるため、事前によく考えて選ぶことが大切です。
見学や体験ができる事業所もあるため、申請前に現場で確認してみると良いでしょう。
工賃や利用時間
就労継続支援B型では、多くの場合、自分の特性や体調、希望などに合わせて柔軟な働き方ができます。たとえば「午前中だけ」「午後だけ」といった短時間の利用や週1日・数時間からの通所も可能です。
また、作業中に体調が悪くなった場合には、途中で帰宅できるように配慮されている事業所も多くあります。
自分の体調やペースに合わせて無理なく通い続けるためには、利用時間や頻度を調整できる事業所を選びましょう。また、同じ作業内容でも事業所によって工賃が異なるため、事前に確認しておくと安心です。
事業所の支援力
自分に合った支援を受けるためには、事業所の支援方針や支援力も重要です。
例えば、自分のペースで無理なく継続的に働きたい場合には、作業内容やスケジュールの柔軟性に重きを置いている事業所が好ましいでしょう。就労継続支援B型に通う目的と事業所が合致しているか見極めることが大切です。
支援力のある事業所を選ぶためには、地域の支援者や支援機関から情報を集める方法が有用です。住んでいる市区町村の福祉課や障害福祉担当、発達障害者支援センター、就労支援関係の相談支援専門員などに相談すると、参考になる情報をもらえる場合があります。
事業所の雰囲気
和気あいあいと作業したい人もいれば、区切られた作業スペースで静かに作業したい人もいるでしょう。アクティビティ中心の活発な雰囲気の事業所もあれば、落ち着いた雰囲気の事業所もあり、事業所ごとに雰囲気はさまざまです。
長く働き続けるためにも、混雑具合やスタッフの人数などを含め、ストレスなく過ごしやすい環境であるかどうかを見学や体験時にチェックしておきましょう。
事業所までのアクセス
継続的に通所するためには、事業所までのアクセスの良さも重要です。作業内容や雰囲気を気に入っていても、自宅から遠かったり、交通の便が悪かったりすると、体力的・時間的な負担が大きくなってしまいます。
自宅からの移動時間や公共交通機関の使いやすさ、通勤時間帯の混雑状況などを含めて、無理なく通えるかどうかを判断することが大切です。また、自治体によっては、交通費の一部を助成してくれる場合もあるので、事前に確認してみましょう。
特徴を理解して、自分にあったサービスを選ぼう
就労継続支援B型は、障害や難病のある人が、雇用契約を結ばずに生産活動や働くためのスキル習得の場を提供する福祉サービスです。作業内容や働き方は多岐にわたり、自分の希望や状況に合わせて選ぶことが大切です。
事業所によってサービスの利用時間や雰囲気なども異なるため、自分に合った事業所を見つけるために、見学や体験を利用しましょう。
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