適応障害で休職はできる?利用できる制度や復職までの流れとポイント

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適応障害は、環境にうまく適応できないことによるストレスで、心身に影響が出ている状態です。会社に休職の制度があれば、適応障害で休職できる可能性があります。ストレスの原因となっている環境から離れることで症状が回復することが多いため、休職は有効な手段です。

この記事では、適応障害の方が休職制度を利用するときに知っておきたいポイントを解説します。休職期間の目安や休職中の給料、職場復帰の際に利用できる支援制度などを紹介するので、参考にしてくださいね。

適応障害とは

適応障害とは、職場や学校など身を置く環境にうまく適応できず、ストレスによって心身に不調をきたしている状態のことです。ストレス要因は人によってさまざまですが、例えば長時間労働やパワハラなどが横行している職場環境は、適応障害の原因となる可能性があります。

適応障害は、遺伝的な要因と環境によるストレスが絡み合って発症するものです。遺伝的にストレスに強くても過剰なストレスがかかれば適応障害になってしまう人もいますし、比較的ストレスが少ない環境でも遺伝的にストレスに弱い場合は、適応障害を発症することがあります。

遺伝的な強さや何をストレスと感じるかなどは人によって異なるため、同じ職場でも適応障害を発症する人もいれば、問題なく働ける人もいます。そのため、「自分が弱いだけ」と考えて我慢して働き続けてしまう人もいますが、ストレスで心身に影響が出ている場合は医療機関での適切な治療が必要です。

適応障害とうつ病の違い

適応障害とうつ病の症状は、区別が非常に難しいことがあります。どちらも気分の落ち込み(抑うつ)や食欲の低下、不眠や自尊心の低下といった症状が現れるからです。

一般的に、うつ病のほうが症状が重く長引く傾向があります。一時的に症状が良くなっても、しばらくするとまた状態が悪くなってしまうケースも少なくありません。一方適応障害は、ストレスの原因となっている環境から離れることで、比較的短期間で症状が和らいでいくことが多いです。

専門家である医師なら、患者さんの様子で適応障害なのかうつ病なのか、ある程度の区別はつきます。しかし、2つを定義として区別するのは困難です。そのため、医療機関を受診せずに適応障害やうつ病だと決めつけてしまうのはやめましょう。

その人が適応障害なのかうつ病なのか判断するには、医療機関で適切に診断してもらう必要があります。

適応障害で休職はできる?

医療機関で適応障害であると診断されたら、多くの場合休職が可能です。職場から離れると症状が良くなるケースも多いため、つらい状態が続く場合は休職を検討してみましょう。

ここでは、「休職とはどのような制度なのか」「休職できる期間の目安はどのくらいか」などを解説します。

休職とは

休職とは、怪我や病気によって就労が困難になったときに、会社に籍を置いたまま一定期間就労を休める制度です。休職制度が用意されている会社なら、適応障害で出勤が困難になったときに休職制度を利用できるでしょう。

ただし、休職について労働基準法や労働契約法上の規定はなく、休職制度を設けるかどうかは会社の判断となるため、そもそも休職制度が用意されていない会社もあります。この場合、残念ながら休職はできません。

また、休職制度を利用するときの具体的な条件などは、会社によって異なります。そのため、休職したいと思ったらまず会社と話し合って、どのような対応をとるか決めていかなければなりません。

会社が認めなければ休職はできないため、休職制度があるからといって必ず利用できるとは限らない点に注意しましょう。希望どおり休職できることもあれば、場合によっては退職を求められることもあります。

適応障害の休職期間の目安

実際に休職できる期間は会社によって異なり、1年や1年半など会社が定めた上限の範囲内で休職することになります。

適応障害の症状を考慮すると、休職期間は3ヶ月から6ヶ月程度がひとつの目安です。どの程度の期間で症状が改善するかは人によって変わりますが、1ヶ月の休職では一般的に短いとされています。6ヶ月以上の休職が必要な人も少なくありません。

休職に入った直後は、基本的に寝て過ごすことになる人が多いです。その後、散歩や料理などができるようになって、少しずつ活動的になってくると回復の目安となります。適応障害はストレス要因から離れることで徐々に回復していくので、焦らず治療していくことが大切です。

適応障害で休職中に給料はもらえる?

休職の利用を検討している方が気になるのが、休職中の給料の取り扱いではないでしょうか。食費や家賃、通院費などを支払う必要があるため、「休職したいけれど給料がもらえないのは困る」と悩む方も多いでしょう。

ここでは、適応障害で休職するときの給料について解説します。

給料は原則もらえない

休職中の給料の取り扱いも会社の規定によって異なりますが、ほとんどの会社は「休職中の給与は支払わない」としています。なぜなら、雇用契約では「ノーワークノーペイ」が原則となっていて、労働していない人に対しては給料を支払わなくてもよいとされているためです。

休職中は当然ながら仕事をしないので、給料も発生しないものと考えておきましょう。会社独自の休職制度によって手当の支給などを定めていない限り、残念ながら給料はもらえません。

傷病手当金や自立支援医療(精神通院医療)を活用できる

休職中は給料がもらえませんが、傷病手当金や自立支援医療(精神通院医療)の制度を活用して経済的負担を減らすことができます。

傷病手当金は、病気や怪我で働けなくなったときに支給される給付金です。1日あたりの支給額は、直近12ヶ月の標準月額報酬を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2で、最長で1年6ヶ月のあいだ支給されます。この制度を利用すれば、休職中の収入がゼロになるのを防げます。

傷病手当金は健康保険から支給されるため、利用する場合は会社の人事をとおして自身が加入する健康保険組合に申請を行うのが一般的です。

自立支援医療は、適応障害やうつ病などで継続的な治療が必要になる場合の医療費の負担を軽減できる制度です。この制度を利用すると、通常の医療費が3割負担のところ1割負担で済みます。

自立支援医療は国の制度のため、手続きはお住まいの地域の担当窓口で行います。制度を利用したい場合は医療機関で診断書を作成してもらい、申請書と併せて地域の窓口に提出しましょう。

適応障害の治療方法と経過

適応障害の治療の基本は、ストレスの原因から離れて休養することです。適応障害は薬を使わなくても自然と回復していくケースも多く、ゆっくり寝て治すことになります。気分の落ち込みや眠れないなどの症状が重い場合は抗うつ薬や睡眠薬を使用することもありますが、すべての方に薬物治療が必要になるわけではありません。

緊張状態で仕事をしていた人が休職に入るなど適応障害の治療を開始した直後は、一時的に症状が悪化することが多いです。休職に入ったばかりの時期は日中も寝てしまう方もいますが、それで問題ありません。

休養を続けて心身が回復してくると、散歩や料理、片付けなどができるようになってきます。食べたいものが思い浮かんだり、部屋を片付けたいと思い始めたりしたら、症状が良くなってきている目安です。

リワークやリハビリ出勤とは?

休職は、症状を改善させて会社への復帰を目指す期間です。しかし、体調が良くなったからといって、いきなり休職する前と同じように働き始められるとは限りません。

そこで、必要に応じてリワークやリハビリ出勤などの制度を利用しながら、スムーズな復帰を目指します。

ここでは、リワークとリハビリ出勤がどのような制度なのかを解説します。

リワークとは

リワークは、適応障害などの精神疾患によって休職している方を対象に、職場復帰のためのリハビリを行うプログラムです。「復職支援プログラム」「職場復帰支援プログラム」などと呼ばれることもあります。

具体的には、決まった時間に施設に通って通勤のシミュレーションを行ったり、仕事に近いオフィスワークに取り組んだりして、復職後の生活に心身を慣らしていきます。集団生活に慣れるためのレクレーションや、復帰後にまた体調を崩さないための休職前の振り返りなども、リワークのひとつです。

リワークは、医療機関や地域障害者職業センターなどで実施しています。いきなり復職するのが不安な方は、リワークの利用を主治医に相談してみましょう。また、会社によっては独自のリワークプログラムを実施しているところもあります。

リハビリ出勤とは

リハビリ出勤は、本格的に職場復帰する前の試し出勤制度です。法的に定められた制度ではないため、利用できるかどうかやリハビリ出勤の内容は会社によって異なります。

リハビリ出勤の例としては、「自宅と職場付近を往復する」「出勤して一定時間自席で過ごす」「午前中だけ働く」など、段階的に職場で過ごす時間を長くして心身を慣らしていく方法があります。

会社によって対応が異なるため、まずリハビリ出勤が可能かどうか人事に確認しましょう。リハビリ出勤が可能な場合は、体調に合わせて無理せず身体を職場に慣らしていくことが大切です。

適応障害から回復後は同じ職場・仕事に復帰すべき?

休職して体調が回復してきたら、少しずつ仕事などの社会復帰を考えるようになります。このときに多くの方が心配になるのが、「同じ職場に復帰すべき?」という点ではないでしょうか。

適応障害を発症したときと同様のストレスフルな環境に戻ると、せっかく回復しかけているのにまた適応障害の症状が表れる可能性があります。そのため、職場復帰をする前に「この仕事を続けるべきか」「同じ環境に戻るべきか」などを見直すことが大切です。

そのためには、そもそも自分にとっての人生や仕事とはどんなものなのかを見直すことが必要となります。これらを突き詰めて考えてみると、今後どうすべきか自分なりの答えが見えてくるでしょう。今後を考える上では思考のベースとなる知識を身につけることも重要です。

適応障害の改善には休養と環境の見直しが大切

適応障害とは、強いストレスを感じる環境で過ごすことで心身に不調をきたしてしまう症状のことです。例えば、長時間労働やパワハラがある職場で働いていると、適応障害になってしまうことがあります。

心身の不調が強い場合、まず休養をとることが大切です。適応障害は薬が不要なケースが多く、ストレス要因から離れて過ごすことで自然と回復していく方も少なくありません。休職制度が利用できる会社に勤めているなら、休職するのがよいでしょう。

ストレスへの遺伝的な強さや感じ方は人それぞれなので、「自分が甘えているだけなのかもしれない」と考えてしまう方もいるかもしれません。しかし、ストレスで心身に影響が出ている場合はひとりで抱え込まず、医療機関や支援先を頼りましょう。


監修者コメント

適応障害は、最新の新しい診断基準(DSM-5-TR)の訳では「適応反応症」と記されるようにもなりましたが、本文にある通り、症状(抑うつ気分、不安、不眠、心身疲労など)の原因としての明らかなストレスが特定できることが特徴です。症状に違いが無いことがあるとはいえ、うつ病では必ずしも何が原因とは言えないことが違いの1つです。従って、治療も、ストレスから離れることが大事になりますし、離れられない状況では回復も不十分にしかならず、薬物が対症療法的に必要になったりもします。環境が大きな問題になりますし、逆に環境改善無くして回復無しとも言えるのが適応障害です。どうすればご自身の回復を目指せる環境となるのか、診察室だけでは解決しないこともあり、使える手段は何でも検討しながら自分にとって良い環境、仕事や家庭生活の持続可能性を探って行くのをお勧めします。


監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。



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