自分のこだわり・物差しを他人に押し付けている?

発達障害の人の視点で議論してもらいました ~キスド会 2017年9月 開催報告~
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 在職者向けのキスド会(土曜夕方に秋葉原と新宿で開催している、発達障害のある在職者向けのしゃべり場)での会話を皆さんの承諾をもとに記事にしています。今回は「職場などで自分の判断基準を他人に押し付けているかどうか」について議論しました。

お弁当のおかずをあげるのはおかしいか

Aさん) 職場の人との繋がりで気になったことがありました。親しめな同僚がいて、最近その人たちとランチをする機会が増えています。その人同士がやっていることが……あの……なんだろ、僕はこれって本当は親しい間同士だからといってやっていいことではないだとか、お互いの為にもならないとかっていうシーンがいくつかあったんです。僕は親しいからといって相手がしていることを見て見ぬふりだとか、遠慮したりするべきではないと思っています。親しい人間関係であるほど間違ったことを指摘したり、言い合えたりするということが大事ですよね。それについての相談です。

スタッフ) 話聞いていると、どんなことをその二人はしているのかって色々なことが想像されちゃって……そのなんなんだ……

Aさん) 両方とも男性です。XさんとYさんとします。Yさんの方は障害者枠ということもあるのでしょうか、注意を受けてもそれを理解するのに時間がかかるタイプで同じことを繰り返してしまう傾向があります。そのYさんがよく弁当のおかずをXさんからもらおうとするんですよ。Xさんは少食なので、XさんとYさんの間では一見問題がないように見えて、周りも黙認しているらしいんですけど。どうも僕はそれがちょっと良いとは思わないんですよ。

スタッフ) え?

一同) 笑

Bさん) すみません、それの何が悩みなんですか?

スタッフ) もう少し話を聞こうと、そこでかなり「?」がいっぱい出たけど、どうぞ、続けてください。

Aさん) 要は、そのXさんとYさんの関係がその部署で許されたり黙認されたりはちょっとおかしいんじゃないのかと思っているんです。Yさんを甘やかさない方がいいとXさんとYさんに直接言ったこともあります。

スタッフ) ちょっとよく分からないけど、それはAさんが自分の価値観・こだわりを押し付けているんじゃないかと思っちゃったんですけど…

Aさん) それは実際に私、よくあります。

スタッフ) 笑

Bさん) 例えば鉛筆をよく忘れる人がいて、鉛筆を貸していたら、「それは、Xさんのためにならないじゃないか!」みたいに、当事者間ではないのに盛り上がっている隣の人みたいな。二人がOKって言っているんだったら良いんじゃないのみたいに感じちゃいますけどね。

Aさん) でも例えば、それが会社のもので、会社のものをあたかも私物みたいに扱うのは…。

Bさん) それは良くない。でも今回の話はご飯でしょう。それを本人たちがどうしようが良いんじゃないでしょうか?

他人の関係がなぜ気になるの

Cさん) もしかしたらそれは、距離感が近すぎる人を目の前にAさんが戸惑っているのかなと思いました。もうちょっと距離感があった方が楽なのに、同じ距離感で自分にも来られるんじゃないんかなって不安とか感じているのかな。

Aさん) それはない、ありません。

Cさん) 大丈夫なんですね?

Aさん) ありません、ありません。

Dさん) じゃあ、えっと~つまり親しい間柄にある二人の感覚が理解できない感じでしょうか。

Aさん) 感覚が多分。

Dさん) なんであの二人あんな気持ち悪くこんなやり取りしているんだろう信じられねぇ…みたいな。

Aさん) ほとんどわかってないです。でも主観ではなくて大体6割ぐらいの人はその光景を見るとおかしいっていう風に僕は思うわけですよ。

Bさん) 職場でキスしているとか言ったらそれは気になるし礼儀としてどうなのと思うけど、弁当のおかずを少しあげているだけでしょう…。

Dさん) 人間同士って、最初は距離がありますよよ。でも一緒に飲み会に行ったり、雑談したりする中で少しずつ距離が縮まってくるわけです。その2人っていうのは、多分長い時間をかけて少しずつ距離を縮めたんだと思います。最初は、ただの同僚だけど、少しずつこう現実化したら、ありがとうとか、ちょっと消しゴム次借りるねとか、そういうやり取りをこう積み上げていった結果、そういう関係がある。だからそれは2人のものなので、基本的にはAさんとはあまり関係のないところじゃないでしょうかね。

Bさん) 不快に思っちゃうのは羨ましいって訳ではないの。

Aさん) 羨ましいはほとんどない。0に近い。やっぱり職業人・人間としての付き合いを考えると、ご飯をあげちゃうとか、あるまじき行為をしていると。

Bさん) 何かそのいじめに見えるような。Xさんのお弁当を、Yさんが恐喝して奪っているような。Xさんがすごく遠慮していて、それに付け込んでいるYさんが許せないとか。

Aさん) それは、あの~、僕は少なからず可能性はあると思っています。可能性は低いんですけど

自分の物差しを信じる?信じても行動しない?

Eさん) いいですか。似ている話とかどうか分からないんですけど、私も自分の判断の物差しが、他の人に自分の基準を当てはめるかすごく不安なときがあります。例えば、私の隣のデスクの方はですね、お仕事中に本を読んでいたんですね。仕事に関係する本ではあるんですけれども、別に今読まなくてもいいじゃんっていう感じで。その方は本を読むのを優先するだけではなく、なおかつその日に残業するんですよ。作業後回しにして。残業代がかかるじゃないですか。私もおかしいんじゃないかと思うんですけど、自分の物差しに自信が無いので、放置をしていたんです。そういう人なんだと思って。しばらくしたら会社自体も何かこれはおかしいということになって、結果その方は部署を異動・降格されたんですね。この話で言いたいことは、やっぱりAさんがお話されたXさんYさん。

Aさん) はい。

Eさん) その方のことをみんな不快に思ったら、しかるべき処置は来るので、周りの人がしかるべき処置をするだろうっていうのを待てばよいのではないかと思うのですね。それとXさんが本当苦しくてもう助けて!という時はご自身から助けを求めると思うんですよ。

Aさん) はい。

Eさん) それをそのヘルプの要請が無いのに動いてしまうのは、余計なお世話なのかなって。一般の方は変なことが職場であるとさすがに改善しようって動きますし、Xさんが本当に嫌なら自分も改善しようとたぶん動くので、その時に手を差し伸べてあげるのがいいじゃないですか。

Aさん) 本人が声を上げるかもしれないし、自分の物差しがずれている可能性があって、もし本当にみんなが変だなと思っていたら、介入されるはずということですね。

Eさん) そうです。Aさんが鉄拳制裁をしに行かなくてもいい、ということです。

かえって自分がおかしいと思われてしまう

Fさん) 私の意見も同じで。ちょっと私、深刻に考えています。Aさんは凄く危険なことをしているように私は見えるのです。Xさん、Yさんはその2人同士の付き合いで成り立っていますよね。仮に周りが問題を感じていたとしても、特に行動に出る人はいない中で、第三者である貴方が何か行動を起こしたら、たぶん周りの人はもしかしたら貴方が考えているように「XさんYさん、おかしいだろ」と思っている人いるかもしれませんけど、貴方が手を出してしまったら今度は「貴方がおかしい」と見られる可能性が高いかなとちょっと思うんですよ。そうなったら、矛先が貴方にむく可能性があるんじゃないのかなということです。疑問に思うのはしょうがないことだと思うのですけど、貴方の為にも行動を起こすのは止めたほうがいいんじゃないかと思いました。

Aさん) 僕が受け手側になった場合に想像が完全にずれているんです。例えば、相手側から相手の価値観を押し付けられたら、僕は思い切りずれていると思ったら蹴散らそうとしますが、それが間違えていないと思えば僕は潔く認める感覚なんです。でも多くの人はそういう風にさっぱりとは考えないようなんですよね。歪んでいるように自分には思えるのですが、他の人の反応が想像できないということでもあるかもしれません。

Cさん) 価値観の話で繋げるのであれば、例えばそのXさんがあげていてYさんがもらっている関係があるわけですよね。で、先ほど話があったようにあんまりAさんが介入しすぎると逆に痛い目を見ると思うので、まずAさんが自分で持ってきているお弁当で一番うまいおかずをちょっとXさんに「ちょっと、よかったら食べて」って声をかけてみるのはどうですか?それでXさんが本当に少食であんまり食べられないからって言ったら、もうそれはそれ以上介入しないことにする。XさんとYさんがああじゃあそういう関係で成立しているんだなって思ってみるというか、Xさん・Yさんの関係が本当に正しいのか正しくないのかっていうのを判断してみるというのは、どうでしょう。

スタッフ) 高度ですね。直接Xさんに「本当にお腹空いてないんですか?ひょっとしたら怖くてYさんにあげているのですか」と聞くんじゃなくて、他の行動への反応で確かめるんですね。発達障害の方にはやや難しい、想像性が関わりそうですが、他の人で今回のテーマでなにかありますか?

気になっても他人に過度に介入しない心構え

Eさん) 思ったのが、正義感があるということ。

Aさん) 正義感……?

Eさん) Aさんは正義感があって、それで行動していると思うんですね。間違ったことをしている、だから正義を与えなきゃいけないって。でも、やっぱり危険もある。じゃあどうしたらよいかというと、間違ったことをする人間には神様が見ていて必ずバチが当たると思っておけば、自分で懲らしめてやろうとか、こう言ってやろうという気持ちが少なくなると思うんです。私も周囲にすごい言いたいっていうのはあるんですけど、そういう時は必ずバチが当たるんだ、この人は地獄に行くとか思いつつ、そうすることで自分の感情を落ち着かせています。上司とかがすごいキツイ口調で言ったら、絶対絶対絶対コケる、絶対風邪引くよ、っていう感覚で、Twitterとかに吐き出す。悪い人間は必ず悪いことが起きるし必ず評価はされないって自分の中で積み込んで、そこのストレスは解消できるかなぁと少し思います。

Fさん) でも、私がちょっと思ったのはその二人は結構そっとしておいてほしいかもしれないんですよね。そういうやりとりって結構楽しいんですよ。恋愛とまではいかないですけど、なんて表現したらいいんだ。

Aさん) もうフレンドリーですよ。

Fさん) つまりほかの人より仲が良い状況を維持しているわけですよね。で、二人も楽しいわけですよね。だから、そっとしておいてあげるのもいいのではないのかという風に思います。こう楽しい時ってあんまり横やりが入るといやな気分になるじゃないですか。だからきっとこの人たちは楽しいんだなっていう風に思ってそっとしておいてあげれば。

Gさん) 自然に関わりを持てないですかね。つまり、AさんがXさんのことを本当に考えているのだったら、まず輪に入る。何が正しいかについて意見をいうよりも、例えば私にも分けてくれませんかとかでXさんとYさんの関係に入っていく。ちょっと今日美味しいものあるのでどうですかみたいな形で関わっていこうって気持ちはない。

Aさん) あります。それはそうです。でも僕がいや。

一同) 笑

Gさん) AさんはXさんのことを好きなんだと思うんですよ。その感じは恋愛感情に近いもので、ものすごく気になってしょうがないんだけれどもこいつの事なんて嫌いなんだみたいな思いがあって。少女漫画見たいな。そうなんですよ多分。だから三角関係の中で自分が勝手に入っている感じで世界が広がっている。

Hさん) という事はばっさりの方がいいですよね。

Gさん) ばっさりも何も起こってないので二人としては。

一同) 笑

Gさん) つまり少女漫画の中のすっごい脇役がなんかこの二人はちょっといけ好かないみたいなことを考えているんだけれどもセリフすら漫画に出ていないみたいな。

Hさん) そうだな。Aさんはもうちょっと気さくにXさんと話せたらいいな~って気持ちが隠れているのかもしれない。

Aさん) あの~隠れてはいますね。本当の関係がどうなっているのかすら、自分では分からない。

スタッフ) 正に恋愛なのですかね~。僕も深い学びがあったなあと思います。それにしてもAさんの話に、皆さんが笑いながらも真摯に付き合ってくれていて、やりとりに感動しました。発達障害的なズレとか、それへの対応とか、実践で使える技も満載でしたしね。

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監修者コメント

どこまで他者に介入していくのか、反対に介入を受け入れる、というのはなかなか難しい問題です。こだわりをおしつけると、ASDの積極奇異型のようですし、相手の意見に左右されすぎると、受動型と呼ばれたり、最近だとHSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれたりします。

自他の区別をつけ、自他を尊重することを自立と言います。自立とは、経済的な意味だけではなく、そういう人とのかかわりについても、大事な要素です。


監修 : 益田 裕介 (医師)

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