「医師からの診断は受けていないものの、特性により仕事で困りごとを抱えている」、そんなお悩みのある方はいませんか?
いわゆる発達障害*のグレーゾーンにあたる方は、明確な診断を受けていないがゆえに周囲から理解されにくく、仕事の悩みを抱えがちです。
そこで本記事では、グレーゾーンの方の特徴や仕事上で起こりやすい困りごとを整理しながら解説します。向いている仕事の見つけ方や、利用できる支援サービスについても紹介しているので、参考にしてください。
発達障害のグレーゾーンとは
発達障害のグレーゾーンとは、発達障害の特性が見られるものの診断基準をすべて満たしていないため、発達障害とは診断できない状態のことです。グレーゾーンは程度を示すものであり、正式な診断名ではありません。しかし確定診断のないグレーゾーンであっても、発達障害の特性や症状が軽いわけではない点に注意が必要です。
発達障害は就職などの環境の変化を機に困りごとが増え、大人になってから自身の特性に気づく場合もあります。大人の発達障害については以下で詳しく説明していますので、併せてご覧ください。
大人の発達障害(神経発達症)とは?種類と症状、診断方法や相談先を解説
グレーゾーンの方の特徴
発達障害のグレーゾーンの方によく見られる特性は、主に次のようなものがあります。
- 集中力が続かない
- ケアレスミスや忘れ物が多い
- 自己流の解釈をしがち
- 相手の気持ちを読み取るのが苦手
- 急な予定変更や臨機応変な対応が難しい
グレーゾーンの方は仕事の困りごとやトラブルが生じても、対応の仕方がわからずに自分も周囲も困ることがあります。診断がないからといって症状が軽いわけではなく、ストレスや生きづらさが続くとうつ病などの二次障害を発症する恐れもあります。まずは困りごとの種類や自分の特性を把握し、適切な対処をすることが大切です。
グレーゾーンの方の仕事上の困りごと&トラブル例
発達障害のグレーゾーンの方に多く見られる仕事上の困りごとやトラブルは、次の通りです。
- 仕事の指示などを自己流に解釈してそのまま進めてしまう
- 集中力が続かずミスを繰り返してしまう
- あいまいな指示を出されると混乱してしまう
- 優先順位付けが苦手なため締切に間に合わない
- マルチタスクができなくて仕事が遅い
加えて、ASDのグレーゾーンの方は「すぐに疲れてしまう」「仕事に対する不安が強い」といった困りごとが見られる場合があります。これは空気を読もうと周囲に合わせて気配りをし過ぎてしまうことで、過剰適応が起こるためです。
上記はあくまで一例ですが、いずれの困りごとも無理をしすぎるとうつ病などの精神疾患を発症する二次障害につながる恐れがあるため、早めの対処が重要です。
発達障害のグレーゾーンの方に向いている仕事
「発達障害のグレーゾーンだからこの仕事に向いている」など、特性を一括りにして言うことはできません。発達障害の特性の出方は人それぞれであり、自身の特性や得意分野に合わせて仕事を選ぶことが大切です。
ここでは、発達障害の主な特性をいくつか取り上げ、それぞれに適した職種の例を紹介します。
ルールやルーティンに則った作業が得意な方の場合
- データ入力
- 経理・財務・法務担当
- 部品などの整理や管理
- 倉庫での仕分け作業
- 図書館司書
- 設備点検 など
自分の興味・関心のある分野で高い集中力を発揮できる方の場合
- 研究者
- Webデザイナー
- イラストレーター
- プログラマー など
コミュニケーションが苦手で、自分のペースで作業をこなしたい方の場合
- エンジニア
- ライター など
このように、適職を選ぶためには得意・不得意などの自己理解が欠かせません。
グレーゾーンの方が避けるべき仕事はある?
発達障害のグレーゾーンと一括りにすることは難しいため、避けるべき仕事を判断する際は、自身の特性により苦手と感じるものや、ミスが起こりやすくなる仕事は避けた方が良いでしょう。例えば、特性ごとに以下のようなケースが考えられます。
- コミュニケーションが苦手な方:接客業や営業職など他人と関わる機会が多い仕事
- 注意力が散漫になりやすい方:ミスが許されない医療現場や、単調な作業が多いデータ入力や工場のラインなど
- 環境の変化や臨機応変な対応が苦手な方:突発的な対応が多いコールセンターや飲食店など
ここで気を付けたいのが、これらの職種を一括りに考えないことです。職場によって環境や受けられる配慮の度合いなどは違うので、自分の特性に合った働き方ができるかを基準に判断しましょう。
グレーゾーンの方の仕事探しのポイント
発達障害のグレーゾーンの方が仕事を探すポイントは、主に以下の3つです。
- 自己分析をして特性を理解する
- 適職を検討する
- 働き方の選択肢を知る
特性に合わない仕事を選んでしまうと、ストレスや失敗が重なって余計に自信を失ってしまう可能性があります。そうならないためにも、気をつけたいポイントをそれぞれ詳しく見ていきましょう。
自己分析をして特性を理解する
最初に取り組むべきことは、自分自身の特性や得意・不得意を理解することです。自己理解を深めることで、自分の得意不得意や活かせる能力、配慮してほしい事項などが見えてきます。
具体的なやり方としては、ノートなどに困りごとや失敗した状況などを記録し、振り返りをしてみましょう。これまでの職務経験や学校生活における「うまくいったこと」と「困ったこと」などを書き出してみると、可視化されて自分を客観視できるようになります。
適職を検討する
自分の特性を把握できたら、次は自分に向いている仕事を検討しましょう。その際に役立つのが、仕事をするうえで特に必要とされる代表的な9種の能力(適性能)から適職領域を検討できるGATB(一般職業適性検査)です。
GATBでは、円の中に点を打つ、記号を記入する、形と大きさの同じ図形を探し出すなど、15種類の検査が行われ、知的能力や言語能力、数理能力など9つの能力を測定します。
客観的なデータをもとに適職の傾向を知ることができ、自分の特性に合った職種を絞る参考にもなります。検査は全国のハローワークなどで無料で受けることができるため、利用を検討してみましょう。
働き方の選択肢を知る
無理なく働き続けるには、特性や体調に合わせた働き方を選ぶことも大切です。環境を変えるだけで、今まで以上の能力を発揮できるようになる場合もあるので、積極的に検討していきましょう。
以下に働き方の選択肢とメリットをまとめました。
- 在宅勤務:通勤のストレスや人間関係の負担を軽減できる。自分のペースで働きやすい。
- 合理的配慮を求める:転職をせずに仕事環境の改善が期待できる。対応の度合いは企業との話し合いによって決める。
- 障害者雇用:障害者手帳を取得している場合は、障害者雇用で働くという選択肢もある。勤務時間や業務内容が調整しやすく、障害に対する職場の理解も得やすい。
支援機関を利用する
発達障害の方はさまざまな支援機関を利用できます。生活を含む発達障害のお悩み全般を相談できる主な支援機関は次の通りです。
- 発達障害者支援センター
- 精神保健福祉センター
また、発達障害の方が仕事や就職・転職について相談したい場合は、主に次の支援機関が利用できます。
- 就労移行支援事業所
- ハローワーク
- 障害者就業・生活支援センター
- 地域障害者職業センター
就労に関する支援機関の概要や、具体的な支援内容は後述します。
発達障害の特性により仕事でお悩みの方へ
発達障害の特性に悩んでいる方に知ってほしいのが、Kaienが提供している、就労移行支援と自立訓練(生活訓練)です。一般就労を目指す方や、就職に向けた生活の基盤を整えたい方に利用をおすすめしています。
どちらも発達障害の診断がなくても、障害福祉サービス受給者証があれば利用可能です。ここでは、Kaienの支援サービスの特徴をそれぞれ紹介します。
Kaienの就労移行支援
就労移行支援とは、主に18歳以上65歳未満の障害がある方を対象に、一般就労を目指すための支援プログラムを提供する福祉サービスです。
Kaienの主な支援内容には、以下のようなものがあります。
- スキルの習得:事務、プログラミング、デザイン、生成AIなど
- 自己理解のサポート:自分に合う仕事や職場環境の検討
- 就職活動の支援:面接練習、求人紹介、書類作成の支援など
- 職場定着の支援:就職後も必要に応じて継続的にサポート
Kaienの就労移行支援の大きな特徴は、利用者の特性を理解したうえで支援内容を決めていく点です。利用者に合った「働き方」を軸に、無理なく働き続けられる職場を見つけるお手伝いをしていきます。
Kaienの自立訓練(生活訓練)
自立訓練とは、障害がある方が自立した生活を送れるようにするためにサポートする福祉サービスです。
Kaienの主な支援内容には、以下のようなものがあります。
- 生活スキルの向上:時間・金銭管理、健康管理、睡眠管理の方法を学ぶ
- 自己理解と特性への対応:自分の特性を知り、対処法を学ぶ
- 感情コントロール:ストレスや不安、抑うつ的な感情などの対処法を学ぶ
- コミュニケーション訓練:人との距離感の保ち方や具体的なコミュニケーション手法などを習得する
なお、プログラム終了後は就労移行支援に移行することも可能です。
特性に合った仕事選びで働きやすい環境に
発達障害のグレーゾーンの方は明確な診断が出ていないために、仕事への困りごとの原因や解決策が分からないという悩みを抱えがちです。だからこそ、GATBや就労支援機関などを利用して自分を見つめ直し、適切な対処法や自分に向いている仕事を知ることで、悩みや負担が軽減されるでしょう。
Kaienでは、専門知識を持ったスタッフたちが生活の安定から就労準備、職場定着までを一貫してサポートしています。無料の見学会や体験利用も随時開催していますので、「なんとなく働きづらい」と感じている方は、お気軽にご相談ください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。