障害者グループホームとは?メリットや利用条件、料金などを解説

公開: 2025.7.16

障害のある方が地域の中で安心して暮らすための選択肢の一つが「障害者グループホーム」です。「将来は一人暮らしをしたいけれど、いきなりの独立は不安」「家族のサポートだけでは限界を感じている」といった悩みを持つ方やご家族にとって、グループホームは心強い支援の場となるでしょう。

この記事では、障害者グループホームの支援内容やメリット、費用の目安やホームの探し方などをわかりやすく解説します。グループホームの利用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

障害者グループホームは障害福祉サービスの一つ

障害者グループホームは、障害のある方が必要な支援を受けながら、他の入居者と共同生活を送ることができる住まいです。障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つであり、生活全般の支援や介助を行う支援員やスタッフが常駐しているホームもあります。

アパートや一戸建て、公営住宅など、住まいの形態はさまざまです。それぞれのホームによって設備や支援体制は異なりますが、障害のある方が地域の中で自立した生活を目指すための大切な支援拠点となっています。

共同生活援助とグループホームの違い

「共同生活援助」とは、障害者グループホームの正式名称です。一般的に「グループホーム」と呼ばれることが多く、両者はほぼ同じ意味で使われています。

ただし、「グループホーム」が建物や施設そのものを指すのに対し、「共同生活援助」はそこで提供される生活支援や介助などのサービス全般を意味する場合もあります。このように、文脈によって使い分けるケースがあることも知っておくとよいでしょう。

障害者グループホームを利用するメリット

障害者グループホームを利用するメリットは多岐にわたります。

まず、他の入居者や支援員との交流によって孤立感が軽減され、自然と社会性が育まれていきます。日常生活で食事の準備や掃除、金銭管理などの支援を受けられるため、自立に向けた第一歩を踏み出すことが可能です。

さらに、スタッフが常駐しているホームなら、困ったときにすぐに相談できる環境が整っている点も大きなメリットです。こうしたサポート体制は、利用者の心の安定や健康の維持につながります。

また、「そばで見守ってくれる人がいる」という安心感があるため、ご家族の介護の負担や精神的な負荷の軽減も期待できるでしょう。

このように、障害者グループホームは単なる生活支援にとどまらず、障害のある方とそのご家族が豊かで安心した生活を送れるよう後押しする役割を担っています。

障害者グループホームはどんな人に向いている?

障害者グループホームは、将来的に自立を目指す方にとってステップアップに最適な住まいです。

例えば、「いずれは一人暮らしをしたいが、いきなりの独立は不安」「まずは生活スキルを身につけながら、自立に向けて訓練したい」といった方にとって、サポート体制のあるグループホームはぴったりです。

また、「他の人と協力しながら暮らすことができる」「友人や仲間をつくりたい」「決められたルールを守って生活できる」といった協調性や生活意欲がある方も、グループホームの利用に向いています。

さらに、実際にグループホームでの生活を経て一人暮らしを始める先輩たちの姿を間近で見られるため、自立に向かって前向きに取り組みたい方にも心強い環境といえるでしょう。

障害者グループホームの入居条件

障害者グループホームは障害福祉サービスの一つであるため、知的障害・身体障害・精神障害・発達障害*・難病のいずれかに該当する方が対象です。原則として18歳以上の方が対象ですが、児童相談所長の判断によって15歳以上の方でも入居できるケースがあります。

また、身体障害のある方については、以下に該当する場合も対象となります。

  • 65歳未満
  • 65歳の誕生日の前日までにいずれかの障害福祉サービスの利用歴がある

ホームによって対象とする障害や障害支援区分を設けているケースもあるため、詳しくは入居を希望するホームやお住まいの自治体にお問い合わせください。

障害者グループホームの利用に障害者手帳は必要?

「障害者グループホームの利用には障害者手帳が必要」と思っている方も多いかもしれませんが、実際に必要となるのは「障害福祉サービス受給者証」です。グループホームを含む障害福祉サービスを利用する際には、こちらの受給者証が必須となります。

障害者手帳がなくても、障害福祉サービス受給者証を取得していればグループホームの利用は可能です。グループホームの利用を希望する場合は、お住まいの自治体にある障害福祉課の窓口で手続きを行い、受給者証を取得しましょう。

障害福祉サービス受給者証を取得するまでの流れは以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

障害福祉サービス受給者証とは?障害者手帳との違いや取得の流れを紹介

障害者グループホームには何年いられる?

障害者グループホームには、原則として入居年数に明確な期限は設けられていません。そのため、本人の状況や希望に応じて、長期にわたって暮らすことが可能です。

ただし、後ほど詳しく紹介しますが、グループホームの種類によってはあらかじめ入居期限が定められている場合があります。例えば、一人暮らしを目指すための準備を目的としたホームは、原則3年以内での卒業が前提です。

また、ホームによっては一定の年数ごとに契約の更新が必要になり、その際に更新料が発生するケースもあります。グループホームを選ぶ際は、入居期限の有無や更新の条件、費用面などについてしっかり確認しておきましょう。

障害者グループホームの種類

障害者グループホームには、入居者のニーズや自立の目標に応じて複数のタイプがあります。ここでは、それぞれの特徴や支援内容を紹介します。

サービス包括型

サービス包括型は、夜間や休日に介護支援が必要な方を対象としたグループホームです。食事や入浴、排泄など、日常生活に必要な介助を受けることができます。

利用者は、就労継続支援施設などの福祉サービスを利用し、基本的に日中はホーム以外の場所で就労や訓練を行うのが特徴です。そのため、支援員は介助のほかに就労先との連絡調整や休日の余暇活動をサポートする役割も担っています。

4つあるグループホームの形態の中で最も施設数・利用者数が多く、一般的な形式といえるでしょう。

外部サービス利用型

外部サービス利用型も、夜間や休日に生活支援を受けられるグループホームです。基本的な支援内容はサービス包括型と同様ですが、支援を行うスタッフの所属先に違いがあります。

サービス包括型では、グループホームに勤務する職員が支援を担当します。一方、外部サービス利用型では外部の介護事業者と委託契約を結び、その事業者に所属するホームヘルパーが支援を行うのが特徴です。

日中活動サービス支援型

日中活動サービス支援型は、夜間や休日に加えて、日中も支援が必要な方を対象とするグループホームです。24時間体制で必要なサポートを受けられるため、より手厚い支援が必要な方に適しています。

特に、重度の障害がある方や高齢の障害者に対しての支援を想定しており、2018年に新たな制度として設けられました。1日を通して支援を行うため、他の形式に比べて支援員の配置が多く、常に見守りや介助が受けられる環境が整っています。

サテライト型

サテライト型は、共同生活をするグループホームの近隣で一人暮らしをしながら、必要に応じてサポートを受けられる仕組みです。支援員の訪問や相談対応が受けられ、孤立を防ぎつつ自立に近い暮らしを実現できます。

また、他の利用者との交流の機会も設けられているため、安心してステップアップを目指せます。原則として利用期間は3年と定められており、自立を目指す準備期間としての位置づけとなっているのが特徴です。

通過型

通過型は、グループホームでの生活を通じて一人暮らしへの移行を目指すことを目的とした制度です。精神保健福祉士や社会福祉士といった国家資格を持つ支援員が所属しており、生活スキル向上のための支援が受けられます。

衣食住の管理や金銭管理、日常生活のトレーニングなど、実践的な訓練を通して自立を目指します。模擬的な一人暮らしを体験できるのがメリットで、原則3年間の利用期間内に卒業を目指す仕組みです。

障害者グループホームの費用の目安と内訳

日本知的障害者福祉協会が発表した「令和5年度 全国グループホーム実態調査報告」によると、2023年4月1日時点で、利用者の自己負担額が7万円未満のケースは全体の約8割を占めていました。さらに、約半数が6万円未満という結果も出ており、グループホームの利用料はこの金額をひとつの目安とすることができます。

ただし、実際に必要となる費用は世帯の収入状況や選ぶグループホームの種類などによって異なるため、詳細についてはお住まいの自治体や入居を検討しているグループホームに直接問い合わせてみてください。

ここからは、障害者グループホームを利用する際の費用の内訳について詳しく紹介します。

障害福祉サービス利用料

障害者グループホームは障害者総合支援法に基づく「障害福祉サービス」に分類されており、その利用にあたっては利用料が発生します。世帯の収入状況によって負担上限額が定められていて、生活保護世帯や住民税非課税世帯の自己負担額は0円、それ以外の世帯の自己負担額は最大で37,200円です。

負担上限額の詳細は、以下の表をご確認ください。

区分世帯の収入状況負担上限額
生活保護生活保護受給世帯0円
低所得市町村民税非課税世帯(注1)0円
一般1市町村民税課税世帯(所得割16万円(注2)未満)※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く(注3)9,300円
一般2上記以外37,200円

注1:3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下

注2:収入が概ね670万円以下

注3:所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者で市町村民税課税世帯の場合は「一般2」に該当

出典:厚生労働省|障害者の利用者負担

家賃

グループホームの家賃は、その地域の家賃相場と同程度の金額に設定されているケースが一般的です。基本的には自己負担となりますが、生活保護を受けている方や市町村民税非課税世帯の場合、「特定障害者特別給付費」という制度を利用することで、家賃の一部補助を受けられます。

この制度では、利用者一人あたり月額1万円を上限として補助が支給され、家賃が1万円未満の場合はその実費分が対象となります。また、この制度とは別に独自の家賃補助制度を導入している自治体もあります。

一般的な一人暮らしでは家賃が大きな負担になりがちですが、障害者グループホームの場合はこうした補助金制度によって費用を大きく抑えられるケースも少なくありません。

食費や水道光熱費

グループホームで提供される食事の食材費や水道・電気・ガスといった光熱費、また共有スペースで使用する日用品の購入費などは、生活実費として利用者が実費で負担します。

食費は、実際にホームで食事をした日数分だけ支払う形式が一般的です。水道光熱費は、月ごとの使用量や利用者数に応じて各自の負担額が変動します。生活費の負担の仕組みについては、入居前に具体的に確認しておくと安心です。

その他日用品の費用

歯ブラシや洗面用品、レクリエーション用の材料費、外出時の交通費など、個人にかかる細かな生活費も別途必要になります。

これらの費用は、実費で都度請求されるホームもあれば、毎月一定額を定額で徴収するホームもあります。金額やルールはホームによって異なるため、入居前の説明や契約時にしっかりと確認しておきましょう。

障害者グループホームの探し方

障害者グループホームを探す際は、まずお住まいの自治体の障害福祉窓口や、相談支援事業所に相談するのが一般的です。これらの機関は地域のグループホームに関する情報を把握しており、利用者の希望や状況をもとに、条件に合ったホームを紹介してくれます。

ただし、希望に合うグループホームが見つかったとしても、すぐに入居できるとは限りません。そのホームの入居状況によっては、空きが出るまで入所を待たなければならないケースもあります。

また、インターネットで「自治体名+障害者グループホーム」などのキーワードで検索すると、地域ごとの一覧やパンフレットが見つかることもあります。情報収集の一つの方法として活用してみてください。

障害者グループホームを利用する際の注意点

障害者グループホームは自立を目指すうえで大きな支えとなる一方で、共同生活ならではの注意点もあります。ここでは、入居を検討する際に押さえておきたいポイントを紹介します。

行動が制限されたり、ほかの入居者とトラブルになる可能性がある

グループホームは複数の利用者が一緒に暮らす共同生活の場であるため、自由な一人暮らしとは異なり、ある程度のルールや制限が生じることがあります。例えば、門限が設定されていたり、食事や入浴の時間に制約があったりするケースです。

厚生労働省が公表した「障害者の居住支援について(共同生活援助について)」によると、「グループホームの生活でいやだと思うこと」として、「周りの人がうるさいときがある」が34.1%と最も多く、次に「自由に外出ができない」が20.3%という結果が出ています。

一方で、「グループホームの生活でよいと思うこと」として「仲間がいるのでさみしくない」と回答した人は45.5%にのぼり、人とのつながりをメリットに感じる方も多いことがわかります。こうしたデータからも、入居するホームの雰囲気や他の利用者との相性が、生活のしやすさに大きく影響するといえるでしょう。

障害支援区分によっては入居できないケースもある

グループホームによっては、設備や支援体制の都合から、受け入れ可能な障害の種類や障害支援区分があらかじめ決められている場合があります。また、ホームの定員や職員配置の関係で、希望を出してもすぐに入居できないケースも珍しくありません。人気のあるホームほど空きが出にくく、入居までに時間がかかることもあります。

立地や支援内容、設備などが希望に合っていても、そもそも利用対象外であったり定員に達していたりする可能性もあるため、入居できるかどうかの確認が必要です。入居可能なホームが見つからない場合は、空きが出るのを待つか、条件を見直して再度探すといった対応が求められます。

障害者グループホームの利用手続き

障害者グループホームを利用するには、「障害福祉サービス受給者証」が必要です。まず、お住まいの自治体の障害福祉窓口でグループホームの利用を希望している旨を伝え、受給者証の申請手続きを行いましょう。

申請を進めると、障害の程度や日常生活の状況などを総合的に判断するための認定調査や、サービスの利用意向を確認する聞き取り調査が行われます。その結果、グループホームの利用が適切と判断されれば、障害福祉サービス受給者証が発行されます。

受給者証が交付されたら、実際に入居するグループホームを探しましょう。可能であれば実際に見学に行き、ホームの雰囲気や生活のルール、支援体制などを直接確認するのがおすすめです。

条件に合うグループホームが見つかり、空きがあれば、契約手続きを経て入居となります。

自分にあったグループホームを見つけよう

障害者グループホームは、支援員やスタッフのサポートを受けながら安心して共同生活を送れる場所です。グループホームにはいくつかの種類があり、支援内容や利用目的も異なるため、自分に合ったグループホームを見つけましょう。

「将来は就職を目指したい」「生活リズムを整えてから就職活動に挑みたい」という方には、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)といった障害福祉サービスの併用もおすすめです。

Kaienが提供する就労移行支援は、実践的なプログラムを通じてスキルを磨くことができ、全国で86%という高い就職率を誇っています。さらに、就職や生活に役立つ100種類以上のプログラムを体験できる自立訓練(生活訓練)もあり、「生活基盤を安定させてから働きたい」という方にも最適です。

見学・個別相談会を実施しているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

サービスについて詳しく知りたい方はこちら
就職を目指す方
就労移行支援
自立を目指す方
自立訓練(生活訓練)
復職を目指す方
リワーク(復職支援)
学生向けの就活サークル
ガクプロ(学生向け)