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HOME 発達障害とは 大人のASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)

大人のASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)▽主な特徴 ▽診断基準・チェックリスト ▽得意な仕事・職業 ▽仕事での困り感と対処法

 発達障害の1つである自閉症スペクトラムASD)は先天的な脳機能障害であり、いわゆる自閉症アスペルガー症候群AS)もこのカテゴリの中に含まれます。このページでは大人の自閉症スペクトラムの特徴診断基準得意な仕事仕事での困り感とその対処法についてまとめています。なお、子どものASDについては当社の小中高生向け放課後等デイサービス・TEENSのウェブサイトリンク をご覧ください。

【参考】大人の発達障害者向けの職業訓練・就活支援
【参考】発達障害(疑い含む)のある大学生・専門学校生向け”ガクプロ”
【参考】見学/相談/利用希望の方は ”ご利用説明会”へ

この記事でわかる事

大人のASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)の特徴

「社会でのコミュニケーションの難しさ」+「独特のこだわり(or 独特の感覚)」

 ASDは”Autism Spectrum Disorder (Disability)” の略で、日本語では自閉症スペクトラムと訳します。以前の診断基準では広汎性発達障害と呼ばれており、さらに自閉症アスペルガー症候群 (AS)、特定不能の広汎性発達障害PDD-NOS)など細かなカテゴリー分けがありました。現在ではそれらを全てまとめて自閉症スペクトラムと呼んでいます。

 ASDの人は、学校や職場など社会の様々な場面で人とのコミュニケーションや関わりに難しさが生じることが多くあります。また興味や関心が狭い範囲に限られやすく、独特のこだわり行動や振る舞いが見られることもあります。他にも五感などの感覚が人よりとても敏感に感じたり、逆にほとんど感じない分野がある人もいます。

 このような特性は人によってどの特徴が強く出るか、またどの程度の強さなのかもまちまちです。全く同じタイプの人は二人といないと言ってもよいでしょう。基本的に生涯これらの特徴を持ち続けますが、大人になり求められる行動基準が高くなってから初めて困難さが明らかになることもあります

「3つ組の障害」とは

 1979年にイギリスの児童精神科医ローナ・ウィングは、アスペルガー症候群を含む自閉症の人が持つ特徴として「ウィングの3つ組」を提唱しました。自閉症スペクトラムを理解する上でこの3つ組の障害という視点から考えるのが分かりやすいのでご紹介しておきます。

  1. 社会性の質の違い: 周囲の人とかかわる時に適切にふるまうことができず、相手と関係を築いたり、築いた関係を維持していくことが難しい。
  2. コミュニケーションの質の違い: 相手が言っていることや感じていることを理解したり気づくのが難しい。また自分が言いたいことや感じていることを相手にわかりやすく伝えたり表現するのが難しい。
  3. 想像力の質の違い:自分が見たり予想していた以外の出来事や成り行きを想像したり納得することが難しい。自分の興味のあることや心地よいパターンの行動に強いこだわりがあり、想定外の行動を取ることに抵抗を示す。
大人のASD 特徴1  グループでの業務・活動が苦手

 自閉症スペクトラムのお子さんには幼稚園・保育園や学校などの集団生活になじめない人が少なくありません。授業や行事で一斉に同じ活動をしたり、クラスの中で他のお子さんと適切な距離感を取りながら付き合うのが苦手な人が多いです。大人になっても職場や町内会・親戚付き合いなど様々な場面で集団活動に参加する必要があります。しかも子どもの頃よりも与えられた役割を果たすことを求められるようになり、「パス」したくてもできない事が多くなります。

 仕事の場面で言えば、自閉症スペクトラムの人は一人で黙々と作業をするのは得意な傾向にありますが、チームで業務を行うのが苦手な人が多くいますチーム内で孤立してしまったり、周囲と足並みを揃えずに自分が良いと思ったことを独断で行い他のメンバーを混乱させてしまうことがあります。よく「空気が読めない」と表現されますが、本人にはチームがどんな目標のためにどうやって動いているかを理解したり、それを踏まえて自分はどう動けばよいかを理解するのが難しいのです。結果として周囲からは非協力的な態度だと受け取られてしまいやすくなります。

大人のASD 特徴2  やり取りがうまくかみ合わない

 自閉症スペクトラムの人の中には、子どもの頃に言葉の発達に遅れがあると指摘を受けていた人も多くいます。その後成長して日常生活の読み書きや会話は十分できるようになった人でも、独特の言葉の使い方をすることがあります。少し表現が不自然な程度であればやり取りしていても大きな問題にはなりません。しかし言われたことを独自に解釈して理解のズレが生じたりわかりにくい表現をして相手にうまく伝わらないことも少なくありません。

 仕事の上では業務の指示を誤って理解したり、報告や相談をするときに話が分かりづらく支障が出ることがあります。また職場では状況が色々と変化する中でその場で言われたことを理解し適切に返答するといった動的なコミュニケーションが求められるようになります。そのようなスピード感のあるやり取りだと理解が追いつかなかったり言いたいことをぱっとまとめて伝えられないという人も少なくありません。学校では急な変化が少なく自分のペースで落ち着いてやり取りできる静的なコミュニケーションが多いため、学校生活では問題が目立たない人もいます。しかしそのような人でも就職してから困り感が急に大きくなることがあります。

 言葉の使い方以外にも、会話をする中で相手がどんな気持ちでいるか表情などの様子から読み取ったり、読み取った相手の気持ちを踏まえて伝え方を修正することが苦手です。そのため例えば怒っている相手に火に油を注ぐようなことを気にせず伝えてしまうといったことが起こりがちです。他にも会話を円滑に進めるために笑顔で応えたり共感の気持ちを態度で示すことがうまくできず、会話をしていても何となくぎくしゃくした雰囲気になってしまうこともよくあります。

大人のASD 特徴3  自己流で物事を進めたがる

 自閉症スペクトラムのあるお子さんは特定の物事を手順通りに行うことに強くこだわることがあります。例えばいつもの道順でなく別の道から行こうとすると拒否したりします。自分の知らない別の方法ではどんな結果になるか想像ができず、恐れや抵抗を強く感じてしまうためです。子どもであればパニックになるほど混乱することもありますが、成長するにつれてそのような場面は減っていきます。しかし大人になってもやはり自分が納得した方法で物事を進められない時には困惑してしまうことがあります。

 仕事であれば、マニュアルや指示の通りに作業をするよう言われていても、自分が気になってしまうと作業を先に進めることができなかったりします。中には指示されていないことも気になってしまい作業してしまう場合もあります。このため作業の効率が落ちたり作業が完了できなくなることもあり、職場での評価が下がってしまうことも残念ながら少なくありません。

自閉症・アスペルガー症候群から自閉症スペクトラムへ

 もともと発達障害の歴史は1940年代のアメリカの精神科医レオ・カナーによる知的障害をともなう自閉症(カナータイプ)の研究から始まりました。そのため1970年代までは自閉症というと知的障害があるという認識が一般的でした。

 その後1979年に、先ほど「3つ組の障害」のコーナーで取り上げたローナ・ウィングが、1940年代にオーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーが行っていた知的な遅れのない自閉症の研究について改めて取り上げました。ウイングがアスペルガーの研究にちなんで知的障害をともなわない自閉症のことをアスペルガー症候群と名づけたことで、その存在が世界中に知られるようになりました。

 その後2013年にDSM-5というアメリカ精神医学会の診断基準の改訂がありました。その際に古典的な自閉症やアスペルガー症候群、また特定不能の広汎性発達障害(全ての特徴はそろっていないが自閉症・アスペルガー症候群のいくつかの特徴を持っている)などを自閉症スペクトラムに統合することになりました。虹の色が連続して変わるように、特性の出方が人によって強く出たり弱く出たりしているという、自閉症の新たな捉え方を打ち出しました。

【参考】広汎性発達障害(PDD)と自閉症スペクトラム(ASD)はどう違う?

ASD(自閉症スペクトラム)とADHD(注意欠如多動性障害)との併存

 先ほどお話ししたDSM-5という診断基準から、自閉症スペクトラム(ASD)と注意欠如多動性障害(ADHD)が併存していると診断できるようになりました。

 ADHDの特徴は①不注意②多動・衝動性の2つで、ASDの特徴である①社会的コミュニケーションの障害②こだわり(感覚含む)と大きく違うように思われるかもしれません。

 しかし実際には「社会性の難しさから空気を読んでいない(ASD的)」のか「衝動的に行動している(ADHD的)」のか、また「こだわりから作業を続けている(ASD的)」のか「過度に集中している(ADHD的)」のか、専門家でも判別しづらいことがあります。そのため当社では診断名にこだわらずに、個別にアセスメントした上で具体的な支援方法を検討するようにしています。

【参考】ADHDとアスペルガー症候群・自閉症スペクトラムの見分け方は?
【参考】大人のADHD(注意欠如多動性障害)

ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)の診断基準

ASDの診断までの流れ

 自閉症スペクトラムを診断できるのは医師だけです。診断を受けたいと思ったら、精神科や心療内科に通院する必要があります。発達障害を診ることができる医療機関はまだまだ多いとは言えませんので、お住まいの自治体の障害福祉課や発達障害者支援センターなどで、発達障害に詳しい医療機関の情報を集めた上で通院先を選ぶことをお勧めします。

 クリニックでは医師の問診を主に行います。初診では生育歴の聞き取りなどで1~2時間程度時間を取ることもあります。通常の診察は1回15分程度が一般的です。他にもAQテストというケンブリッジ大学の研究チームが作成した簡易検査を行ったり、臨床心理士とWAIS-Ⅲ(ウェクスラー成人知能検査改訂第3版)という知能検査を行ったりします。知能検査では全検査IQ(一般的に”IQ”と言う時はこちらを使います)の他に、言語性IQ動作性IQ、さらに細かい能力を計測する群指数などが算出され、どのような能力の凸凹があるか確認することができます。発達障害のある人は能力のばらつきが大きいため、各項目のIQ値の差(ディスクレパンシー)が通常より大きく出ることが多くあります。いわゆるアスペルガー症候群の人は言語理解などの言語性が高く、処理速度などの動作性が低く出ることが多いでしょう。逆に動作性が高く言語性が低いという人も自閉症スペクトラムの人の中にはいるため、全体の能力の凸凹の様子を見た上で診断の参考にしているようです。

 通院頻度は月1、2回から週に1回など個人差があります。半年以上通院を続け、ASDの症状が継続して現れていることが確認できると、診断を受けることができます。周囲から見て症状があまりわからないタイプの人は「自閉症スペクトラムの傾向がある」という言い方で医師から伝えられることもあります。そのような人も困り感が強ければ支援を受ける必要がありますので、障害者枠での就労など必要な支援を受けるのに確定診断が必要な場合は、主治医に相談されることをお勧めします。

ASDの診断基準

 最新の診断基準であるDSM-5では、以下の4つの基準を満たした時に診断できるとしています。

■ 社会でのコミュニケーションや対人交流の持続的な障害

  • 社会での情緒的な相互交流の障害

興味や感情、愛情など相手と共有できる割合が少ないために、一般的でない人へのかかわり方をしたり言葉のキャッチボールに失敗してしまうような例から、人とのかかわりを自分から持てなかったり相手からの働きかけに反応できない例まで幅広くある。

  • 社会的交流における非言語コミュニケーション行動の障害

アイコンタクトやボディランゲージが一般的でない使い方だったりジェスチャーの意味理解や使用がうまくできない例から、表情や非言語コミュニケーションが全く欠けている例まで幅広くある。

  • 人間関係を築いて保ち理解することの障害

様々な社会的文脈に合わせて行動を変化させることに難しさがある例から、一緒にごっこ遊びをしたり友達を作るのが難しい例、また仲間をつくることに全く興味がない例まで幅広くある。

■ 限られた反復されるパターンの行動や興味、活動(以下の項目のうち少なくとも2つに当てはまる)

  • 型にはまった体の動き、物の使用や発話

単純な常同運動やおもちゃを一列に並べる、物をひっくり返す、エコラリア(オウム返し)、奇妙な言い回しなど

  • 同一性へのこだわり、決まった手順への融通の利かない固執、儀式化された言語もしくは非言語行動パターン

小さな変化に対して過剰に嘆き苦しむ、変化への対応の難しさ、融通のきかない考え方のパターン、儀礼のような決まった型での挨拶、決まり事を必ず行ったり同じものを毎日食べる必要性など

  • 集中の深さや狭さが一般的でないほど非常に限られている大変強い興味・関心

一般的でない物への強い愛着や没頭、過度に限られたもしくは固執した興味など

  • 感覚入力に対しての反応性の過度の上昇もしくは低下、もしくは周囲の環境の感覚的側面に対しての並外れた興味

痛みや温度に対して明らかに反応しない、特定の音や触感に対する強い拒否反応、過度に物のにおいを嗅いだり触ったりする、光や物の動きを夢中で追っているなど

■ 症状は早期の発達段階までに発現していなければならない(が、社会的な要求が限られた能力を超えるまで全てが現れないかもしれない。もしくは後天的に学んだ対処法で見えなくなっているかもしれない。)

■ 症状によって社会や職業またはその他の重要な分野で臨床的に重大な機能障害が起こっている

【参考】発達障害チェックリスト

ASDに治療薬はある?

 ADHDと異なり、自閉症スペクトラムのための治療薬は現時点では存在しません。社会生活を送る中で人間関係などで困り感が大きく、躁鬱などの二次障害が起きている人には二次障害用の治療薬が処方されます。

 自閉症スペクトラムの治療薬の開発は国内外で行われています。例えば人間の体内でホルモンや脳内神経伝達物質として働くオキシトシンを投与することで、自閉症のある人の社会性を改善するという臨床試験は国内の研究機関でも行われています。しかし効果があるかどうかはまだ未知数であり、メカニズムも含め詳細はよくわかっていません。

【参考】ADHDのお薬 薬の種類の解説や服用方法

ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)の人が得意な仕事・職業

 自閉症スペクトラムの特徴があると日常や仕事で不都合なことも起きやすいですが、その特徴のおかげで逆に業務の上で長所として発揮できることも少なくありません。「社会性の弱さ」のために周囲の視線や暗黙の了解にとらわれることなく、いい意味で周りを気にせずに自分の仕事に打ち込める人もいるでしょう。「こだわり」が業務で求められている方針と一致すれば、きっちりとルールを守り継続して同じ作業を続けられることを評価してもらえる職場も多いはずです。

 また自閉症スペクトラムのある人は多くの人が見逃しがちな細かい部分に気づいたり、ほかの人が面倒に思いがちな工程も抜け漏れなく行う特徴を持っている人が多く、正確さを求められる業務では重宝されるはずです。他にも自閉症スペクトラムの人には嘘がつけず裏表のない実直な方が多く、まじめに仕事に取り組む姿勢はどんな業務でもプラスに評価されるのではと思います。

 自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群の人がはまり役になる可能性の高い職種は以下のようなものとなります。詳しくは参考リンクをご参照ください。

  • ルールやマニュアルがしっかりしている:経理・財務、法務・情報管理、コールセンターなど
  • 専門分野の知識を活かせる:プログラマー・テスター、テクニカルサポート、電化製品等販売員など
  • 視覚情報の強さが活かせる:CADオペレーターなど

【参考】発達障害に向く仕事を考える 基本編
【参考】発達障害に向く仕事を考える ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)編
【参考】大人のアスペルガー症候群 就職に必要なコミュニケーション力を磨くには?

ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)の人の仕事での弱みへの対処法

弱みが見えにくい業務・環境

 自閉症スペクトラムの人の弱みが目立ちにくい環境の条件としては、①業務の指示が明確で、②決まった対応をコツコツと進められ、③報告・連絡・相談をしやすいことなどが挙げられます。

 仕事では指示を受けた業務に取り組み、最終的に求められている成果物を仕上げる必要があります。しかし自閉症スペクトラムの人はコミュニケーションの苦手さや独特のこだわりから、業務の進め方や成果物が上長がこうしてほしいと考えているものとズレが生じてしまうことが少なくありません。

 このようなズレを減らすためには、①指示の内容や業務の段取り・締切などをわかりやすく伝え、②臨機応変にその場で対応を変化させる必要が少ない業務をアサインし、③相談先を明確に決めて普段からこまめに連絡を取り合い、業務のズレが生じていないか確認するような職場環境であることが望ましいです。

 ADHDの人への支援がセミオーダーメイドのように個別に対応を考える必要があるのとは対照的に、自閉症スペクトラムの人への支援は上記のような環境を整えればある程度画一的に支援できるという特徴があります。

自分でできる弱みへの対処法

 実は自閉症スペクトラムの人の弱みへの対処方法は、ミスや抜け漏れが多いADHD(注意欠如多動性障害)の方の対応と重なる部分があります。

アドバイス① 職場での適切なふるまいが苦手な方へ

 まず全ての基本として押さえていただきたいのは、職場は働く場であり、社員は組織の一員として業務で成果を出すことが求められているということです。つまりしっかり働いて仕事で貢献できていれば基本はOKです。仕事をきちんと行っていれば、上司や同僚はその仕事ぶりを見てあなたに対して信頼感を持つはずです。仕事で信頼できる人に対しては、普段の振る舞いが少々規格外でも好意的に捉えてもらいやすいでしょう。とにかく仕事でしっかり成果を出すことが何よりも大切なことです。

 また職場では効率的に業務を行うためにチームをつくり、チームのメンバーを管理するリーダーを設けています。基本的にはチーム全体を見通すことのできるリーダーの指示や考えに従ってメンバーは業務を進める必要があります。他にも、自分よりも経験が豊富な先輩社員からはたくさん学ぶべきことがあるはずです。新しい業務を覚えてチーム全体の業務の流れが見えるようになるまではまずはリーダーや先輩から聞いたことを確実に実行するというスタンスでいれば間違いありません。また仕事に必要な内容であればリーダーや先輩から受けたアドバイスを素直に受け取り、行動を変えることにも是非チャレンジしてみてください。

アドバイス② 相手の話を理解したり言いたいことを伝えるのが苦手な方へ

 職場で頻繁に行われる動的なコミュニケーションは、テキストや講義で勉強して学べるようなものではありません。スポーツの練習のように、実際に「指示を受ける」「理解する」「実行する」ことを実践する中で体感的に習得していく必要があります。職業訓練など実際のオフィスに近い環境の中でシミュレーションを繰り返し、コミュニケーションの「型」を覚えることをお勧めします。

 コミュニケーションというと言いたいことを上手く人に伝えられないという「発信」に困り感を持っている人が多いと思いますが、実はコミュニケーションの肝は「受信」にあります。うまく言いたいことがまとまらなかったり、分かりやすく伝えられないということは、そもそもやり取りの中で相手が伝えたいことを理解できていないことに原因があることが多いのです。

 業務の指示など必要な情報を確実に受け取るために大切なのが、メモ復唱です。自閉症スペクトラムの人には聴覚情報が弱く、視覚情報に強い人が多いので、話を聞く時にはペンとメモ帳を準備して記憶が薄れる前に聞いた内容を書き留めておきます。また話を聞き終わったら、メモに書いてあることを読み上げて相手に確認してもらいます。もし聞きもらしや理解のズレがあっても相手から指摘してもらえますので、情報の受け渡しが確実になります。復唱する前に「伺った内容を確認していただいてもよろしいでしょうか?」と一言お伝えするとよいでしょう。

 職場で自分から発信する場面としては、業務が完了した時に行う報告、業務の途中で進捗状況を共有する連絡、業務が上手く進まないなど困ったときに行う相談、業務の進め方を確認する質問などがあります。自分が伝える必要がある内容はわかっているのに、うまく話をまとめられない時には、ここでもメモが大切になります。相手に話に行く前に話したい内容を箇条書きなどで書き出して、何をどのような順番で伝えればよいか整理します。相手に理解してもらうための情報が不足していたり、細かい話を盛り込み過ぎて要点がわかりづらかったりしないかセルフチェックしましょう。メモを見ながら話せば、どのように話を進めていけばよいか確認できるので安心です。

■アドバイス③ 仕事が自分独特の進め方になりやすい人へ

 職場では様々な業務のオペレーションが決まっており、入社すると上長や先輩社員から作業手順を教わります。まず教わった流れ通りに作業することを職場では求められますが、自閉症スペクトラムの人の中にはつい別の方法で行ってしまったり、教わった方法では納得いかずモヤモヤするという人もいます。しかし決まったオペレーション以外の方法で作業するのは一般的に避けたほうがよいです。

 今あるオペレーションは、これまでの担当者が実務で学んできたことを踏まえて、必要なことを効率的に進められるように決めているはずです。別の方法はまだうまく進められるか検証できておらず不確かで、作業効率が落ちたりミスが出やすくなる可能性があります。また仕事ではチームを組み、上司がチームの業務全体に責任を持って様々なタイミングで意思決定を行い業務に当たります。つまりメンバーの業務の進め方についても上司が責任を持っているので、メンバーが自己判断で作業手順を変えることはできないと考えてください。

 もしご自身の特性上これまでのやり方ではうまく作業ができないということであれば、上司に相談してみましょう。自分でどうしてその作業手順だとうまくできないのかわかっていれば、合わせて伝えましょう。「これは無理です、できません」といったネガティブな姿勢よりは、「できるようになりたいがどうしたらよいかわからないので良い方法を探したい」といったポジティブな姿勢で相談することをお勧めします。

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