
文字を書くことへの苦手意識
私は昔から文字を書くことがとにかく苦手でした。授業のノートを取るのも遅く、作文の宿題が出るたびに頭が真っ白になってしまう。何を書けばいいのか分からず、時間だけが過ぎていく。先生や親からは「もっと考えて書きなさい」と言われるものの、自分なりに考えても上手く言葉にできませんでした。周りの同級生たちは当たり前のようにノートを取り、スラスラと文章を書いている。それを見て、「やっぱり私は頭が悪いんだ」と思い込むようになりました。
社会人になってからも、文字を書くことへの苦手意識は変わりませんでした。仕事でメモを取るのも遅く、伝えたいことを文章にするのも難しい。職場では「要領が悪い」「報告が分かりづらい」と指摘されることが多く、自信を失っていきました。そして、気づけば「どうせ私なんか」と自分を責める日々が続いていました。
障害を知ることで変わった視点
そんな私が自分の障害について知ったのは、40代になってからのことでした。ずっと「自分の努力が足りないからダメなんだ」と思っていましたが、診断を受けたことで「そうではなかったのかもしれない」と思えるようになりました。私はASD(自閉スペクトラム症)とSLD(限局性学習症)を持っていることが分かり、特にSLDの影響で文字を書くことが極端に苦手だったのです。
それを知った時、今までの生きづらさの理由が少しだけ分かった気がしました。でも、だからといってすぐに何かが変わるわけではありません。「どうしたら今の自分でも働きやすくなるのか?」を考える必要がありました。そんな時に知ったのが、就労移行支援の存在でした。
自分に合った働き方を探す
就労移行支援に通い始めると、今まで気づかなかった自分の特性を理解する機会が増えました。支援員の方々は、「なぜ文字を書くのが苦手なのか?」を一緒に考えてくれました。そして、無理に克服しようとするのではなく、「どのように工夫すれば良いのか?」という視点でサポートしてくれたのです。
たとえば、ノートを取るのが苦手なら、スマホで音声メモを活用する方法を試してみる。文章を書くのが難しいなら、短い箇条書きや図を使って伝える方法を取り入れる。こうした工夫をすることで、少しずつ「自分にもできることがある」と思えるようになりました。
また、就労移行支援を通じて、自分に合った仕事の探し方も学びました。今までは「仕事とはこういうもの」という固定観念に縛られていましたが、「自分の特性に合った環境を選ぶことが大切」という考え方を知ることができたのです。
等身大の自分で働く
現在、私は清掃の仕事をしています。以前は「事務職ができないのはダメなこと」と思っていましたが、今は「自分に合った仕事をすることが大切」と考えられるようになりました。清掃の仕事は、文字を書くことが少なく、動きながら作業することが多いため、私には向いていると感じています。
もちろん、今でも「もっと上手に書けたらいいのに」と思うことはあります。でも、無理に苦手を克服しようとするのではなく、「どうすれば自分にとって負担が少ないやり方で仕事ができるか?」を考えるようになりました。その結果、少しずつ自分を受け入れられるようになってきた気がします。
就労移行支援を利用したことで、「苦手を責めるのではなく、工夫して付き合っていく」という視点を持てたことは、私にとって大きな収穫でした。これからも、自分に合ったやり方で、無理なく働き続けていきたいと思います。
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