発達障害のグレーゾーンの方は仕事ができない?特徴や対処法、向いてる仕事を解説

公開: 2024.11.18更新: 2026.5.9

発達障害*のグレーゾーンの方の中には、仕事上のミスやトラブルが続き、「自分は仕事ができないのでは」と感じたり、「この先も働き続けられるだろうか」と不安になったりする方も少なくありません。それでも、自分の特性を理解し、適切な対処法を習得すれば、少しずつミスを減らし、自信も取り戻せるようになります。

この記事では発達障害のグレーゾーンの特徴や、仕事で起こりやすい困りごとを取り上げ、対処法について解説します。適職探しの支援機関も紹介しますので、お悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

発達障害のグレーゾーンとは

発達障害のグレーゾーンとは、発達障害の特性が見られるものの診断基準をすべて満たしていないため、発達障害とは診断できない状態のことです。グレーゾーンは程度を示すものであり、正式な診断名ではありません。しかし確定診断のないグレーゾーンであっても、発達障害の特性や症状が軽いわけではない点に注意が必要です。

発達障害は就職などの環境の変化を機に困りごとが増え、大人になってから自身の特性に気づく場合もあります。大人の発達障害については以下で詳しく説明していますので、併せてご覧ください。

大人の発達障害(神経発達症)とは?種類と症状、診断方法や相談先を解説

ADHDのグレーゾーンの具体例

注意欠如多動症(ADHD)とは、発達障害の一つで、主に「不注意」「多動性」「衝動性」といった3つの症状が見られる疾患です。注意欠如多動症(ADHD)のグレーゾーンにあたる方にも、以下のような特性が現れる傾向があります。

  • うっかりミスが多い
  • 忘れ物や遅刻が多い
  • 整理整頓が苦手で、物をよくなくす
  • 一つのことにじっくりと取り組めない
  • じっとしているのが苦手で動き回る
  • 衝動的な発言や行動が多い
  • 思い立ったらすぐに行動してしまう

グレーゾーンの方も、注意欠如多動症(ADHD)と同様に、うっかりミスや忘れ物が多いといった不注意さや、落ち着きのなさや衝動的な言動といった多動性や衝動性の特性が見られます。

大人の注意欠如多動症(ADHD)の特徴や治療について詳しくは次の記事も参考にしてください。

関連記事:大人のADHDは治せる?特徴や治療方法、改善策を解説

自閉スペクトラム症(ASD)のグレーゾーンの具体例

自閉スペクトラム症(ASD)は、人とのコミュニケーションが苦手で特定の事柄に強いこだわりを持つといった特性が見られる発達障害です。自閉スペクトラム症(ASD)のグレーゾーンの方にも、下記のような特性が現れる場合があります。

  • 人と視線を合わせられない
  • 表情や動作から相手の気持ちを読み取れない
  • 空気を読むのが苦手で、場の雰囲気を感じ取りにくい
  • あいまいな指示や表現が理解しづらい
  • 他人への関心はあるが、関係の築き方が分からない
  • 集団での活動や協力が苦手
  • 興味のあることには強いこだわりを見せるが、それ以外には関心が薄い
  • 感覚が過敏だったり、反対に鈍かったりする
  • 自分の思い通りに物事が進まないと強く動揺する

上記のような特性があり、「軽度の自閉症スペクトラム症(ASD)かもしれない」とお悩みの方は、下記の記事も参考にしてください。

関連記事:軽度のASD(自閉症スペクトラム)とは?一般的な特徴や相談先を解説

限局性学習症(SLD)のグレーゾーンの具体例

限局性学習症(SLD)は、知的発達には遅れがないものの「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった特定の学習分野に困難を抱える発達障害です。困難のある領域によって、「読字障害(ディスレクシア)」、「書字障害(ディスグラフィア)」、「算数障害(ディスカリキュア)」の3つに分類されます。

限局性学習症(SLD)のグレーゾーンの方にも、次のような困りごとが現れる傾向があります。

  • メモが取れない、議事録がうまく書けない
  • 説明書やマニュアルを読むのに時間がかかる 
  • 文字がマス目からはみ出てしまう
  • 数字の大小が分からない
  • 文章は理解できるが計算式になると分からなくなる
  • 数字を扱う仕事に強い苦手意識がある

限局性学習症(SLD)は、以前は「学習障害(LD)」という診断名で広く知られていました。限局性学習症(SLD)について詳しくは、下記の記事も参考にしてください。

関連記事:学習障害(LD)とは?読み書きや計算が苦手な特徴や仕事での対策方法を解説

グレーゾーンの方が仕事ができないと言われる理由

発達障害のグレーゾーンの方が「仕事ができない」と言われる理由は、特性によって職場環境や仕事内容にうまく適応できないためです。

例えば、注意欠如多動症(ADHD)のグレーゾーンの方は、うっかりミスが多かったり、約束やスケジュールを忘れたりするため、「仕事に対する意識が低い」と誤解されがちです。

また、自閉スペクトラム症(ASD)のグレーゾーンの方の場合は、あいまいな指示が理解できないため、「指示を聞いていない」「勝手に動く」といった評価を受けてしまう場合があります。

さらに、限局性学習症(SLD)のグレーゾーンの方は、「書類作成が雑」「数字のミスが多い」といった印象をもたれやすく、評価に影響する場合もあります。

発達障害と診断されていないグレーゾーンの方の場合も、発達障害と同じような特性が見られるため、仕事がうまくいかないと悩むケースは少なくありません。

グレーゾーンの方の仕事上の困りごと&トラブル例

発達障害のグレーゾーンの方に多く見られる仕事上の困りごとやトラブルは、次の通りです。

  • 仕事の指示などを自己流に解釈してそのまま進めてしまう
  • 集中力が続かずミスを繰り返してしまう
  • あいまいな指示を出されると混乱してしまう
  • 優先順位付けが苦手なため締切に間に合わない
  • マルチタスクができなくて仕事が遅い

加えて、自閉症スペクトラム症(ASD)のグレーゾーンの方は「すぐに疲れてしまう」「仕事に対する不安が強い」といった困りごとが見られる場合があります。これは空気を読もうと周囲に合わせて気配りをし過ぎてしまうことで、過剰適応が起こるためです。

上記はあくまで一例ですが、いずれの困りごとも無理をしすぎるとうつ病などの精神疾患を発症する二次障害につながる恐れがあるため、早めの対処が重要です。

グレーゾーンの方が仕事ができない場合の対処法

発達障害のグレーゾーンの方ができる仕事の対処法として、主に次の5つが挙げられます。

  • 自身の特性を理解する
  • 会社に合理的配慮を求める
  • 障害者雇用や向いている仕事への転職を検討する

それぞれの対処法について以下で詳しく解説します。

自身の特性を理解する

自身の特性を理解することで失敗しやすいパターンを予測できるようになり、勘違いやミス、周囲の人とのトラブルなどの予防につながります。自己理解を深めることで、自分の得意不得意や活かせる能力、配慮してほしい事項などが見えてくるはずです。

具体的なやり方としては、ノートなどに困りごとや失敗した状況などを記録し、振り返りをしてみましょう。可視化されることで、自分を客観視できるようになります。

会社に合理的配慮を求める

雇用の形態や障害者手帳の有無を問わず、障害の特性による困りごとがある方は会社に合理的配慮を求めることができます。合理的配慮とは、障害のある方が障害のない方と同等に社会生活を送れるよう、特性や困りごとに合わせた配慮を行うことで、すべての事業者に対して合理的配慮の提供が義務付けられています。

したがって、発達障害の診断のないグレーゾーンの方も合理的配慮を求めることは可能です。例えば「あいまいな指示ではなく、具体的に指示してほしい」「休憩をこまめにとりたい」など、会社の負担になりすぎない範囲で相談してみましょう。

合理的配慮について詳しくは下記の記事も参考にしてください。

関連記事:合理的配慮とは?具体例や障害者差別解消法について解説

障害者雇用や向いている仕事への転職を検討する

障害者雇用や向いている仕事への転職を検討するのもよいでしょう。

雇用形態には主に一般雇用と障害者雇用があり、障害者手帳を取得していればどちらにも応募できます。障害者雇用は、障害のある方の採用を前提としているため特性への理解や配慮を受けやすいメリットがあります。

グレーゾーンの方は特性の現れ方に幅があり、受診のタイミングによって診断基準に当てはまり、障害者手帳を取得できる可能性があります。障害者雇用を検討する場合は、良心的に診断をつけてもらえるようセカンドオピニオンを検討するのも1つの方法です。

向いている仕事については、グレーゾーンの方の特性は人それぞれであるため、特性や得意分野に合わせて選ぶとよいでしょう。

例えば、ルールやルーティンにのっとった作業が得意な方には、下記の仕事が向いています。

  • データ入力
  • 経理・財務・法務担当
  • 部品などの整理や管理
  • 倉庫での仕分け作業 など

また、関心分野で高い集中力を発揮できる方の場合、次の職種が向いているでしょう。

  • 研究者
  • Webデザイナー
  • イラストレーター
  • プログラマー など

発達障害のグレーゾーンで仕事の悩みを抱える方は支援機関の利用がおすすめ

グレーゾーンの方も利用できる、発達障害などの障害がある方向けの就労に関する支援機関はいくつかあります。ここでは以下の支援機関について概要や具体的な支援内容を解説します。

  • ハローワーク
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 地域障害者職業センター
  • リワーク
  • 就労移行支援
  • 自立訓練(生活訓練)

なおグレーゾーンの方の就活の進め方や就活に利用できるサービスについては、下記の記事も参考にしてください。

関連記事:グレーゾーンの方の就活の進め方!コツや利用できるサービスも解説 – 株式会社Kaien – 強みを活かした就労移行支援・自立訓練(生活訓練)

ハローワーク

ハローワークとは、各都道府県に設置されている職業紹介所で、無料で職業紹介や就労支援サービスを行っています。

ハローワークでは、一般の相談窓口のほか、障害についての専門知識を持つ担当者によるサポートが受けられる障害者専用の相談窓口が設置されています。障害者専用窓口は、障害者手帳を持っていなくても利用可能です。自身の特性による仕事上の困りごとの相談や、就職活動のアドバイス、求人情報の提供や採用面接への同行、就労後の定着支援も受けられます。

ハローワークの障害者専用窓口について詳しくは下記の記事も参考にしてください。

関連記事:ハローワークの障害者専用窓口とは?相談できる内容や利用の流れを解説

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の雇用促進と安定を目的として、全国に設置されている支援機関です。発達障害を持つ就業者や就職・転職を希望している方に対して、個別相談や就労・生活支援プログラムの提供、企業との連携による雇用サポートを行っています。

障害者手帳や発達障害との診断がなくても、就業や日常生活において困りごとがある場合は相談できる場合があります。利用を希望する場合は、事前に問い合わせてみると安心です。

障害者就業・生活支援センターについて詳しくは下記の記事も参考にしてください。

関連記事:障害者就業・生活支援センターとは?対象者や業務内容を紹介 – 株式会社Kaien – 強みを活かした就労移行支援・自立訓練(生活訓練)

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害のある方に対し、ハローワークと連携して専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。障害者手帳がなくても、仕事や就職でお困りごとを抱えている場合は相談可能です。グレーゾーンの方は、医師の意見書があると利用がスムーズです。

地域障害者職業センターでは、相談者のニーズや障害の特性に応じた職業準備訓練などの職業リハビリテーションなどを受けられます。障害者職業カウンセラーといった専門家に相談することが可能です。

就労に向けた実作業の訓練や知識習得のための講習を受けることで、基本的な労働習慣が身につくほか、コミュニケーション能力の向上なども図れます。

リワーク

リワークとは、心の病気が原因で休職・離職した方の職場復帰や転職を支援するプログラムです。障害手帳がなくとも利用できるため、発達障害のグレーゾーンの方も利用できる場合があります。

リワークは、実施主体により主に次の4つに分けられます。

  • 医療機関でのリワーク:病状の安定や回復、再休職の予防を目的とした医学的リハビリテーション
  • 就労移行支援や自立訓練(生活訓練)でのリワーク:事業所に通い、就労や就労後の定着に向けたサポートや自立した生活を送る力を身につけるための支援
  • 障害者職業センターでのリワーク:休職者・雇用主・主治医の3者で調整された職場復帰プランにそった復職支援
  • 職場でのリワーク:休職者の所属する企業が実施する職業復帰サポート

なお、Kaienでは就労移行支援や自立訓練(生活訓練)のほかに、新しい復職支援として「こころのリワークセンター」を開所しました。YouTuberとしても知られる精神科医の益田裕介先生監修のもと精神医学や復職・就職支援の知見を持つ専門スタッフが、就労に向けたサポートをしています。

リワークについて詳しくは下記の記事も参考にしてください。

関連記事:リワークプログラムとは?種類や対象者、利用の流れやメリットを解説

就労移行支援

就労移行支援は、発達障害などの障害があり、一般企業への就労を目指す方を対象に、スキルや知識の習得など、就労に向けたさまざまな支援を行うサービスです。障害者手帳や医師の診断書がなくとも利用できる場合があり、発達障害グレーゾーンの方は医師の意見書があると利用がスムーズになるでしょう。

なおKaienでは、発達障害グレーゾーンの方のご利用も多く、一人ひとりの特性に合わせた就労支援を提供しています。独自の適職診断で自分に合った職業やキャリアパスが分かるほか、実践プログラムや実習を通じて自分に合った職種や業務に出会う方も少なくありません。

例えば、自閉スペクトラム症(ASD)のグレーゾーンのSさんは、訓練を通じてデータリサーチなどの得意分野に気づき、事務職への転職に成功しました。また、自閉症スペクトラム(ASD)の傾向があると診断された看護師の女性も、実習を通して事務職への適性を発見し、キャリアチェンジを実現しています。

関連記事:考え方を変えれば見える世界が変わる!発達障害グレーゾーンのSさんが抱えていた苦悩

関連記事:看護師から未経験の事務職へ。実習を通して自分に合う職場を見つけたHさん

関連記事:就労移行支援

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、障害のある方が自立した生活を営むために必要な能力の習得や向上を支援する福祉サービスです。発達障害のグレーゾーンの方でも医師の意見書や定期的な通院履歴などがあれば利用できる可能性があります。

就労移行支援との違いは、就労移行支援が「就労」を目的としているのに対し、自立訓練(生活訓練)は、「自立した生活の実現」を目的とする点です。

例えば、Kaienの提供する自立訓練(生活訓練)では、生活スキルやコミュニケーション、進路選択などについて学びながら、ソーシャルスキルを身につけられます。プログラムには、事業所の外に出て行う見学や体験など、就職や日常生活に役立つ多彩な内容が用意されています。

自立訓練(生活訓練)について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

関連記事:自立訓練(生活訓練)サービスについて

発達障害のグレーゾーンで仕事ができないと悩む方は支援の活用を

「この先も働き続けられるだろうか」と悩む発達障害のグレーゾーンの方も、自分の特性に合った職場や仕事を選べば、長く働き続ける道が開けます。

そのためにも、専門の支援機関の活用がおすすめです。専門スタッフとの相談を通じて自己理解が深まり、支援プログラムを受けることで自分に合った仕事に出会える可能性が高まります。

例えば、Kaienの就労移行支援では、発達障害に理解のある企業の求人を多数取り扱っており、適職診断やスキル向上のための多彩なプログラムを備えています。自立訓練(生活訓練)では、自分の特性への理解を深めながら生活スキルが身につくプログラムを豊富に提供しています。

専門知識を持つスタッフが相談に応じますので、お悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

監修者コメント

「グレーゾーン」はいつ聞いても悩ましい言葉です。発達障害特性はある、でも診断までは難しいということですから。精神科診断は検査値によって自動的につけられるものではないので、診察する医師によるバラツキと呼べる面もあります。いずれにしても、困りごとはあるので、それがグレーゾーンと表現されるかはともかく、自分に必要な支援があると考えるのであれば、職場に要請したり、支援機関を頼ってみるのは選択肢ですね。
もし、診断を求めて医療機関を訪ねた場合にグレーゾーンと言われて納得ができない場合には、改めて別な医療機関に掛かるのもお勧めします。発達障害診断に非常に慎重であったり、どちらかといえばしない方針の医師もいるためです。私自身は支援が必要な場合には積極的に診断することが多いです。特に「グレーゾーン」では今の問題が解決しない場合には尚更です。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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